デジモンでポケモンやっちゃいけないだろう……と、デジモンハリケーン上陸!!/超絶進化!! 黄金のデジメンタルを見ながら思う。まあ、映画としては本当に迷作で、主題歌である「スタンド・バイ・ミー ~ひと夏の冒険~」からも分かる通り、アメリカのロードムービーを意識した作りになってます。ロードムービーってのは有名どころを上げると「パリ、テキサス」とか、そういう作品のことを言うわけだけど、いくらアメリカを舞台にしているからってデジモンでこれをやっちゃいけないよね。

これが例えば、ポケモンならどうか? 戻れない過去がテーマになっている本作を観て、私がまず思ったのはこれをやるべきはデジモンではなくポケモンだ、ということ。昨今のポケモン映画は娯楽映画としての意識を強めているのか、あまり内容面を追及している作品は少ないとされているが、このテーマとネタを表現するにあたってはポケモンが一番いいんじゃないかと思う。なにせ主人公にしてから旅人だしね。逆に大迫力のバトルシーンとかは、もちろんポケモンでも可能だけど、それはデジモンのほうが強みがあるというか、例えばポケモンの映画に伝説なり最強なりのポケモンが出てきたとして、それに相対するは所詮ピカチュウとか一般的なポケモンで、最近の対決図式からも分かるように相手にならないじゃないですか。伝説には伝説で、最強には最強で、一般のポケモンバトルにすら敗北することがあるピカチュウが戦う隙間なんて存在しないわけで、そこが弱みというかなんというか。デジモンはなにせ、主人公のパートナーであるデジモンが、完全体、究極体と次々に強くなっていき、どんな強い敵ともガチのバトルを繰り広げるわけですから、映画でぽっと出てきた伝説ポケモンたちが戦ってます、ふーん、よりも思い入れがしやすいと思うんですよ。ポケモンの映画における欠点というのはまさにそこで、主人公とその仲間が戦うという意味ではいつも迫力に欠けるんですよ。一作目と三作目は良い線いってましたけど、あれっきりですね。あくまで個人的な意見だけど、あれ以降はバトル展開で燃え上がる作品は出ていないと思う。

逆に言うと、デジモンの映画の欠点というのはストーリー性が求められていない点にあって、これはウォーゲームと続編のディアボロモンの逆襲に比べて、デジモンハリケーン上陸!!/超絶進化!! 黄金のデジメンタルの評価が低いことからもうかがえる。デジモンユーザーが高いストーリー性や濃密で深みのあるシナリオを求めていないと断定することは出来ないが、長編アニメを作るにあたってデジモンほど不向きなものもないだろう。圧倒的なバトルシーンが売りデジモン映画だが、まさか60分、90分戦い続けるわけにもいかないし、そもそも世界観が狭い。日本とデジタルワールドが中心のテレビシリーズの世界観では話を広げるにも不向きだし、出来て無印の東京編のような話だったはずだ。それを解消させるためにアメリカへと舞台を移したのだろうけど、そうすることで今度は逆に作品の雰囲気が大きく変わってしまい、観る者への違和感を生み出してしまった。ディアボロモンの逆襲が制作された経緯は知らないが、デジモンの映画というのは40分、それこそ30分でも表現出来てしまうのだ。徹底的にバトル色を強めた娯楽作品ならば。
一つの場所に固定されない作風という意味では、常に旅人であり続けるポケモンのほうが分かりやすい。歌にもあったと思うが、彼にとって旅とは過ぎ去った過去であり、そこにはいくつもの出会いと別れがあるのだ。そうしたある種の時の流れを表現することが、デジモンでは難しかった。特に02では。映画オリジナルキャラの過去を主軸に置いていたけど、それでは観る人がすぐに感情移入が出来ないし、その経験がないはずの既存キャラクターがなにを言っても不自然さが出てしまう。

作品が持つ独自の色合い、作風、世界観、それらを使って出来ることというのは意外に限られていて、その作品にあった物語作りというのが確かにあるんだと思います。ビューティフルドリーマーは例外にしても、それを見極めた上での作品作りを心掛けたいですね。これは一次創作も二次創作も同じことです。二次創作のほうが顕著なのかな。その題材、元ネタでなにをするか、なにを作れるのかというのをよく考えなくてはいけないのだから。
日記のネタがないからって随分と偉そうなこと書いてますね、私。
ちなみに個人的にも評価が低い上記の映画ですけど、主題歌だけは別格です。歌だけ映画とは言わないけど、この歌があるからロードムービー的な映画をうまくまとめることが出来ているんだと思う。まあ、02自身、作品が楽曲に勝っていないといわれることがあるけど、それが明確に表れている気がする。

それにしても、これはポケモンに限らずコナンとか長く続いているアニメ映画シリーズに言えることだけど、壮大さを追求するあまり荒唐無稽になりつつあるというか、薄っぺらい、深みのない作品ばかりが出来てしまっている気がする。ミュウツーの逆襲や、結晶塔の帝王みたいな作品はもう望めないのだろうか……いや、子供向けということを考えれば、あれでいいのかもしれないけど。大人の視線で見ているからつまらないと思う、実はそうなんだろうか。

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