お前にも判っているはずだ。世の中はいつもバラ色じゃぁない。それなりに厳しく、辛いことも待ってる。気を抜いていたらどん底まで落ち込んで、二度と這い上がれなくなる。それが人生だ。人生はどんなパンチよりも重くお前を打ちのめす。だが、どんなにキツイパンチだろうと、どれだけこっぴどくぶちのめされようと、休まず前に進み続けろ。ひたすら苦痛に耐え前に進むんだ。その先に勝利がある! 自分の価値を信じるなら、迷わず前に進め。決してパンチを恐れるな。人を指さし、自分の弱さをそいつらのせいにするな、それは卑怯者のやることだ! お前は卑怯者なんかじゃないんだ! この俺の息子だ!

ロッキー・ザ・ファイナル ロッキー・バルボア


私は自分の失敗を誰かのせいにはしたくない。自分の行いを、周囲の人や、親兄弟、環境のせいにして、自分はそれに流され、巻き込まれただけだなんて叫きたくはない。それは愚か者の言い訳だからだ。自らの過ちを悔いることの出来ない人間に、明日はないと思った。永遠と続く昨日と今日を過ごす中で、自分で道を切り開くことを忘れてしまった人がいて、私はそんな人間にだけはなりたくない、なってたまるかと誓った。
けれど、現実は厳しく、私がどんなに頑張っても失敗や問題から逃れることは出来ない。失った信頼や信用を取り戻すことが、どれだけ大変なことか。判っていたつもりだが、あるいは判っていたふりをしていただけなのか。自らの過ちに気付くのが、私は遅すぎた。色々思うところはあるが、どうやら問題解決の優先順位を見事に間違えていたようだ。今更どうしようもないことではあるし、時計の針は戻しようもないので、後は流れに逆らわず結末まで身をゆだねようと思う。私には流れを変える資格がないのだ。
私は押しつけがましい人間にもなりたくないし、恩着せがましい人間になろうとも思わない。自分が過去どれだけのことをしてきたからといって、それを持って今の失敗を覆せるとは思っていない。これだけのことをしてきたから、相手にもそれだけのことを望むというのは、人としてもっとも最低な行為であると私は思うからだ。

「私はパンを焼いてあげました。だから、あなたも私にパンを焼いてください。私は誕生日プレゼントをあげました。だから、あなたも私の誕生日にはプレゼントをください。私はこれだけの事をしてあげました。だから、あなたも私に同じだけの事をしてください。私はあなたを愛しています。だから、あなたも私を愛してください」

君が望む永遠 大空寺あゆ


好意というのは誰かのためにしてあげることであって、そこに打算や見返りを求めてはいけないのだ。それは単なる人の我が儘にしかならないし、そんなやることなすことすべてに裏があるような対人関係を私は望まない。
高潔な人間でありたいと思った。あいつのような人間にだけはなりたくないと思い、あいつのような人生だけは歩むまいと誓った。けれど気付いたとき、私が歩いていたのはあいつとほとんど変わらない道だった。私の中に蠢く劣等感は、同じような道しか選ぶことが出来なかったのだ。
自分の力で人生を切り開こうと思った。私は昨日を振り返りたくなかったし、今日で足踏みもしたくなかった。私は明日が欲しかった。バラ色の人生を求めていたわけでも、輝ける未来を強く望んでいたわけでもないが、不幸せになりたかったわけでもない。
私は思い上がっていたのだろうか。とある人が私のことを高慢な人間だと言った。あなたは礼節や礼儀を重んじ、形式を大事にしている割には、それ以上は不要であると言い切るかの如く、なにもしない。傲慢ではないにせよ、あなたは自分を優秀だと思い込んでいる節がある。たった一人の人間より優秀でありたいと望む心が肥大化して、他者を見くびり、侮り、見下すようになったと。つい最近言われた。
それはおそらく正しくて、自分が高慢ちきな人間であることは私も気付いている。私は根拠のない自信で自分を塗り固め、実績を10倍以上に考えることでしか自己を高めることの出来ない人間だから、常に自分を“お高く”みてしまうのだろう。現実のほど、自分がどれだけ矮小な存在か判っているくせに。

私の隣には天才がいた。どんなことにでも才能を開花させ、あらゆる物をそつなくこなすことが出来る、本物の天才だった。あるいは私や、周囲がそう思っていただけなのかも知れないが、天才は一度の挫折と数度の間違いで落ちぶれた。けれど、それを認めたのは天才本人と私だけだった。
私は先頃、自分が天才に一生敵わないことを知った。もう天才ではないのに、周囲がそれを認めない、肯定しようとしないのだ。天才が一番下の存在であることはあり得ない。天才には常に下の存在が必要で、その存在を見下すことでプライドを保つ必要があった。欠片ほど残った天才のプライドを守るために、私は下であり続けなければならなかったのだ。少なくとも、私がどれだけのことをしようとそれを認めてくれる人がいないことを、私は知った。
上であってはいけないのだ。事実や現実はともかく、私が天才の上に立ったとき、天才とその周囲に取り巻く、天才を信奉していた人々の幻想は終わる。認めたくないのに、認めざるを得ない。その夢がとっくに死んでいたのだという真実から、目を背けなくなる。
だからお前は、天才の上に立つことは許されない。お前が天才より優秀なわけはない。

お前に出来ることは皆、あの子にだって出来るんだ。

私の筆が折れた瞬間だった。

気に入らないなら、お前が消えてしまえばいい。お前は必要ない

私の心が砕けた瞬間だった。

あの子はお前なんかと違うんだ。頑張れば、やればどんなことだって出来るんだ

私の存在と行いのすべてが、否定された瞬間だった。

天才よ、私は貴女に同情する。憎悪もするが、同情する。貴女は夢を忘れられない、幻想を盲目的に見続ける人たちに囲まれて、自らの人生を閉ざしていく。私にはもう貴女に差し伸べる手がないし、連れ出すだけの気力もない。
天才よ、私は筆を持てなくなった。私はキーが打てなくなった。私が貴女に受ける劣等感は、永久に解消されることがないのだと改めて思い知ってしまった。消えるべき存在はどちらであるか、周囲の目は明らかだ。
天才よ、私は貴女のいる世界では異端者だ。貴女を否定すること、貴女を超えること、それは世界のルールに反する絶対悪なのだ。故に私は、この世界を出ることにした。

古巣が最近荒れていた。かつて仲違いした人たちが集まって、夢よもう一度と叫んだ。私は協力すると言った。けれど、ほどけた糸が再び絡み合うことはなかった。
主義と主張がぶつかった。信条と思想が争いになった。私にはなにも出来なかった。私には彼らが持っている主義も主張も、信条も思想も持ち合わせてはいないから。
矛先が私に向いてきた。間に立てと要求された。私はそれを断った。
相手は私にこういった。

裏切り者の恩知らず!

かくして私の今は否定され、これから先もなくなった。
こんな人生の、果たしてなにが楽しいのか。夢の終わり、精神死。ここ数日間は問題が重なりすぎていた。私にはどうすることも出来なくて、なにひとつ解決もしなかった。

私は自分が立ち直れることを知っている。私は自分が立ち直らなければいけないことを知っている。でも、今すぐは無理だから。少し時間が欲しいんだ。
だから私は旅に出る。誰も居ないその場所で、明日の自分に会うために。あるいは帰ってこないかも、そんなこともあり得るが、それでも私は生きていく。

自分に出来ることだけは、精一杯やるために。

コメント

nophoto
ななし
2009年10月4日11:12

Are you lonely?:-(

MLW
2009年10月4日12:23

You get more joy out of the giving to others, and should put a good deal of thought into
the happiness you are able to give.