西口有香が主演の舞台をせんがわ劇場なるところまで観に行ったんですが、いや、これがすごく面白かった。先月だったかに神楽坂まで観に行った芝居の100倍は面白かった。まあ、喜劇とシリアスなSFを比べる時点で間違ってるんだろうけど、中身の濃さに大きな差があったというかなんというか。やっぱり私は単純な人間だから、堅苦しい話よりも気楽に楽しめる喜劇とかコメディの方があってるのかなぁ。

カスタムプロジェクト第2回公演「ミス・コン」なる舞台だったのですが、この劇団の芝居を見るのは実は初めて。前回はどうしても都合がつけられず、観に行くことが出来なかったんですが、今回はメチャクチャ忙しい合間をぬってなんとか観てきました。だって、映画と違って芝居は一期一会じゃないですか。大きな劇団とかじゃない限り再演はまずないし、これを逃すと次の機会なんてないんですよ。まあ、よく客演をしている極楽天国の公演もチェックはしてきたけど、あっちは結構年季入った劇団だけに、その違いが良く出ていた気がする。劇団ってのは劇団の数だけ様々な色合いがあるから、そういうのも魅力の一つだよね。同系色だとしても、そこにある僅かな違いが必ず芝居そのものを変えて行く、そんな気がします。
さて、簡単にあらすじを紹介しますけど、とりあえずは公式からの引用。
あらすじ
「いやいやいや!単位の為というより、人生の為だよ!」
先輩・葛西の卒業単位取得のために、不人気な学園祭イベント・ミスコンに
出場することになったまどかと晶子
しかし、まどかにはどうしてもミスコンに出場できない秘密があった
「私……やっぱり言えない!」
嘘が嘘を呼ぶライアーシチュエーションコメディ

私は主人公の大宮まどか役の西口有香に惹かれて観に行ったわけですが、なかなかどうした、大いに笑わせてもらいました。あらすじの時点で主人公がなにを抱えているのかは想像がつくと思いますが、物語としてはそれを隠すためにひたすらその場限りの嘘を重ねに重ね、繋げに繋いでいくんですよ。そうして嘘を積み重ねていった結果、最終的に破綻しかけて、さてどうなる? という感じ。どれもこれも、「おいおい、そりゃないだろう」と思わせる嘘なのに、何故か状況がそれを受け入れてしまう展開はシチュエーションコメディならではですね。場するキャラクターは10人以上とそれなりに多いわけだけど、特にキャラがかぶっているわけでもなく、それぞれが独自の個性を持っていて、キャラがちゃんと立っているんですよ。各々が自らの役割をちゃんと演じていて、個性のぶつかり合いが起こっていない。それが非常に観やすかった。

芝居ってのはその場のノリで笑わせることが出来る数少ない媒体で、瞬間的な視覚的効果を凄い利用してると思うんですよ。袖に引っ込んだキャラが次に登場したときは、とんでもない格好になっていたりとか、そういう瞬間的な変化で笑いを取れる。これって文章媒体にはまず出来ないことなんですよ。これはあくまで映像的な面白さですから、視覚表現ではない文章媒体では表現も再現も無理なんです。
だから私は芝居が好きだし、コメディを好んでみるんでしょうね。あの展開の流れと素早さは、ちょっと真似出来ないわ。切り替わりの間隔を参考にすることはできても、それを置き換えることは難しいし、文字媒体というよりは私自身の限界なんだと思う。悔しい気もするけど、それを感じさせないほどに面白かったからよしとするかな。
主演の西口有香さんは、もう長いこと私がファンやってる声優さんですけど、どちらかと言えば舞台人だからアニメとかで声を聞く機会があまりない人です。昨年の3月ぐらいまで、調布FMの方でラジオをやってたんですけど、FM放送はAMと違って受信しにくいものだから、ほとんど聴けた試しが無かったなぁ。そういや今回の公演をやったせんがわ劇場って、京王線の仙川駅ですけど、調布に近いといえば近いのだろうか。駅前が妙に小奇麗な街で、クイーンズ伊勢丹とかがありましたね。
後、どうでもいいことですけど、駅前に駅名と同じとんかつ屋が合ったんですよ。目と鼻の先にさぼてんもあったけど、こっちはまんま地元の店って感じがする奴で。通りすぎるときになんとなく横目で見てたら、なにやらフライが黄色いんですよ。足を止めてみてみると、なんとトンカツの上にチーズが乗っかていたという。一般的にチーズカツってのは衣と肉の間にあるものをイメージしがちですけど、そのとんかつ屋はハンバーグみたいにチーズを直置きしていたんですよ。なんかそれが凄い新鮮で、どうでもいいことなのに鮮明に覚えているという。むしろ、時間と金があったら食ってたかも。

行き帰りの移動時間を利用しつつ原稿のチェックも続けてるけど、かなり妥協している自分がいる。甘さを残すつもりはないけど、予定していたことがほとんど出来ていない現状に愕然としてしまう。単に時間がないというだけじゃなくて、それ以上に私の力そのものが足りていないんだと思う。頑張って入るけど、頑張るだけでどうにかなるなら苦労はしないしね。
色々な人に迷惑をかけつつ、それでも形にしたいから足掻いているわけだけど、こだわりを捨てきれない自分というものが存在して、逆襲の最終話は本当に難航している。これでいのか、こんな文章で大丈夫なのか、読んで面白いと言えるのか、書いては直し、書いては直し、本当なら今日明日中にできてなきゃいけないのに、私はなんてダメな奴なのか。失笑も侮蔑も超越した自己嫌悪がそこにあるけど、複雑に絡まった話を解きほぐし、形を整えるまでにはあと少し、ほんの僅かな時間を必要としそうです。

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