劇場版「文学少女」を観てきました。昨日観た最後の映画で、21時15分開始の23時終了というレイトショー。場所がららぽーと横浜であることを考えると、結構無茶したなとは思う。しかも、正直言ってそこまでしてみるほどの映画だったのかといえば、全然そんなことはなかったというか、ハッキリいうとこの作品は駄作以外の何物でもなかった。アニメ映画としてもだが、そもそも映画として全く完成されていない、酷い作品でした。レイトショーに行ってまで見る作品じゃないね。1800円払う気もしないけど。

以前の日記で涼宮ハルヒの消失を見るには、最低でもアニメ一期の数話と笹の葉ラプソディを見る必要があるとは書いたけど、なんというか文学少女の映画はそういうのを超越していた。説明も紹介も解説も一切なしで、いきなり原作の一部を抜き出しての映画化。原作未読はさっぱりどころか訳がわからないだろうし、原作既読にしたところであまりといえばあまりの構成にポカーンとせざるを得なかったと思う。ちなみに私は後者ね。
主要キャラの解説が一切なされないというのは致命的で、つまりはこいつら何者なのよという話が全くなされていないから、その時点でどのように、誰に感情移入をするべきなのか、こいつはこういうヤツで、主人公とはいつからどんな関係で、今までどんなことがあったのか、というのが漏れ伝わってもこないんですよ。唯一明確に表現されているのはヒロインである遠子先輩だけだけど、これは当たり前というか、彼女の説明までしなかったらこの映画は作品として完全に終わっていたともう。まあ、今だってほとんど終わりかけだけどさ。
なにがしたいのか、なにを見せたいのか、そういうのもまるで伝わってこないというか、言ってしまえば平野綾が演じるキャラがひたすら毒はいてどす黒いことしているだけ。それに主人公が振り回され、傷つき、そういった姿を見せているに過ぎない。そこに映画的面白みはあるのか? 映像的にはどうなのか? I.G.が作った割には、テレビシリーズぐらいのクオリティしかなかったように思えます。
要するに、総じて質が低いんですよ。映像としても脚本としても。やりたい事は伝わってこないし、テーマすらも不明確。長い原作の中で、無理矢理一部分だけを切りいとって、しかも最後はやっつけのごとく他の箇所から切り取ったものをつなぎ合わせる。それに一体、どれほどの意味があるというのか。原作を持つ映画としての出来も価値も、なにもかもが低く、粗悪だった。

意味がわからなくてパンフレットを買うというのは、私の中でもそれほど経験のあることじゃなかった。それでもなんだってこんな駄作を作ってしまったのか気になって、例えば声優はこの映画に疑問をもっていないのかと、そう思ったから買ってみた。けど、当然のごとく、そんな映画の質を自ら貶めるような発言や記述はなくて、まったく当たり障りの無い内容だったと思う。
映像化不可能と呼ばれた作品を映像化することは、同じく今現在公開されているいばらの王の宣伝文句にもありましたけど、あれは本当に上手くやっている。でも、文学少女は駄目だった。漫画媒体ならまだしも、文章媒体でここまで映像化に適していない作品もないというのに、それを無理矢理映画化なんてしたもんだから、流石に無理が発生してしまった。結構苛烈なことを言うけど、これを良い作品だとか、そういう文句で宣伝したり紹介したりするヤツの気が知れない。つまりは、花澤香菜とかのことを言ってるんですけどね。原作の良さを知れば知るほど、映画のダメなところが浮き彫りになってくる中で、良い作品だと宣伝する人たちの言葉は本心なのか嘘なのか、それすらもわからないほど軽いものになっている気がする。
ただまあ、原作既読の立場として考えれば面白い箇所がなかったわけでもない。原作ほど酷くはなかったけど、美羽のヤンデレっぷりは平野綾が良い演技していたこともあってか、声優の演技面では見るべきものがあった気もする。水樹奈々はともかくとして。いや、原作での美羽は最低最悪以外のなんでもないんだけど、この昼メロにも似たドロドロっぷりは最高だね。美羽とななせがやりやって、だけど心葉は最終的に遠子先輩のところへいってしまう展開とか、楽しくって楽しくって、かませ犬共を笑ってやりたくなる。私はドロドロの三角関係が第三者に壊されかすめ取られて行く展開が大好きです。

全体的に私の評価は低いけど、要するにわかりにくいにわからないの一言に尽きると思う。原作を5巻まで読んでいること前提に映画作るなんて、それが商業作品のすることか。監督か構成か脚本か、誰が悪いのかはしらないが、一つ言えるのは原作が悪いんだよ。いや、原作に罪はないんだ。単に映像化しにくい、出来ない作品だったというだけで。
人気作品はとりあえず映像化してしまえ、という昨今の酷い商業主義手法によって生まれた典型的なまでの産物が、この映画なんでしょう。嘆かわしいものです。

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