最低でもキスは覚悟しなければいけないと、誰かが言いました。ヨスガノソラハルの物語だけど、他のヒロインにスポットを当てる関係上、少なからず色恋沙汰は見せなくてはいけないんだと。私もそれは分かってたし、そういったことに対する覚悟をするために徳島まで行ったという事情もあります。けど、私はハルキノソラ出張版でこんな言葉を聞きました。
「ヨスガノソラという作品を全部楽しもうというコンセプトの元に制作している」と。
そのとき、私はこう思ったのです。口には出しませんでしたし、表情も消してましたが、こう思ったんです。ヨスガノソラをという作品を、全部楽しむ必要性がどこにあるのかなって。アニメ版が私の望む展開にはなり得ないことを悟った瞬間であり、そのときから覚悟はしていたつもりでした。でも、こうやって現実に見せつけられると、正直心を抉られたような痛みを覚えます。私は今、泣いてます。

なにを書けばいいのか。私は自分のすべてを賭けてアニメ版ヨスガノソラを否定するべきなんでしょうか? 徳島に行ったとき、私が懸念していたことは現実となった。実はあのときの日記には書いてなかったけど、嫌な予感はしてたんです。私が春日野悠という主人公が持つ、穹にも近い絶大な人気について言及したとき、スタッフの反応はあまりにも薄すぎたから。
もはや内容に触れる気も起きませんが……それでも書かなければいけないことがある。なんの価値も、一欠片だって残っていない作品だけど、書かなくてはいけない。
私は知りました。
どうして世の中には、アニメのDVDやゲームソフトなどのディスクを割る奴がいるのか。
それは要するに、こういうことなんですね。
今、私の手元にBDがなくて安心しました。渦巻く感情を発散する方法として、物に当たるというのは確かに有効かも知れません。この怒りはどこにぶつけるべきなのか、江戸川橋にあるレコード会社か、それとも池袋にあるエロゲ会社か。プロデューサーはハルについて私が言及したとき、「何故、そうしたのかはちゃんと説明していきたい」と、ハルキノソラで説明を行うようなことを言っていました。もちろん、それはメールが山のように届いてはじめて口を開くのでしょうが、なにかしらの説明があるのであれば、納得のいくものを聴かせて貰おうじゃありませんか。理解ではなく納得です。それが出来るというのなら、ですけど。
2話の時点で減少していたものが、3話で早くも底をついたというか、本当に酷い展開だった。これが原作のない作品ならばありなのかも知れないけど、春日野悠という主人公を汚してしまった罪は大きい。ハルというキャラクターのすべてが全否定されて、これのどこがヨスガノソラだというのか。ハルが誰かを愛すること、恋することを否定するわけじゃありません。それが穹じゃないのだとしても、仕方ない場合だってある。
けど、違うでしょう。ハルは誰か一人を愛さなければいけないんですよ。ハルが一人である以上、彼は一人の少女しか愛せないはずなんだ。移り変わりの果てにある穹ルートなんて、誰も望んでいないし、私はそんなものを観たいとは思わない。

さて、なんとか冷静さを取り戻すことに、一時的ではありますが成功したので第3話について。いきなりダメイドこと初佳が出てきたのには驚いたけど、考えてみれば1話にも出ていましたし、別にCパート限定のキャラってわけじゃないからね。そもそも、Cパート自体が初佳主人公の話だけじゃないですから。ここだけの話。
初佳が渚さんの携帯を預かるのは当然として、何故ハルは女子更衣室まで来たのか。初佳だからネタとして茶化してくれたけど、傍目に観れば覗きを行おうとしている不埒な輩と言われても仕方がないし、叫ばれたっておかしくない。現に渚さんと瑛には気付かれましたし、ハルは委員長にでも頼むべきだったんだ! なんでハルが携帯を届けるためとはいえ、女子更衣室まで足を運ぶ必要があるんだよ。
帰り道も、なんでハルは一人で帰ってるわけ? 穹はどうしたんだよ、今日が初登校で、慣れないプール掃除ですっ飛ばされた、お前の双子の妹はどこいったんだよ。おかしいだろ、おかしいでしょ、なんで穹が隣にいないんだよ、どうして穹と一緒に帰ってないんだよ。クラスが違うから? 時間帯が合わなかったから? 待つよ! 待つに決まってるだろ、春日野兄妹なら。初めての通学路で、いきなり帰りは自分で帰れとかハルは言っちゃうわけ? 結構な距離があって、一度じゃ憶えられないと言っていたあの道を、穹一人で帰ったとでも言うのかよ。冗談も休み休み言ってくれ、瑛と渚さんの百合妄想なんてしている場合じゃないだろうに。
ところで、サブタイトルロゴの部分に出てきたK3ってなんでしょうね? 3は3話の意味だとしても、それならエピソードの略であるEPとか使うはずだし……一葉のKとか? なんかしっくり来ないな。私が英語に疎いだけで、本当はもっと単純な意味があるのかも知れないけど、ちょっと気になった。
ハルを体操着で追いかけに来た渚さんは意味不明です。立ち聞きされていたのに気付いたとはいえ、その日の内にどうこうする問題だったのでしょうか? 体操着を着ているのは制服がずぶ濡れになったからでしょうが、初佳が来た時点で迎えの車か、もしくは着替えを手配すれば良いだけの話じゃないですか。大体、なんでヴィオラ背負ってのよ。体操着にヴィオラ背負ってるとか、萌え要素どころかシュールでしかないんだけど。
瑛の生い立ちを話すのが渚さんってのは、まあ、渚さんがメインであるから判らなくもない話です。けど、ハルが勘違いをしていた。勘違いをしていることに渚さんも気付いた。それならそこで、はぐらかすことだって出来たはずです。それを話したと言うことは、渚さんの中でハルがそれなりに大きい存在へとなっていたからでしょう。なんか、彼女のキャラじゃないとは思いますけどね。父を否定する渚さんだけど、問題があるのは父親じゃなくて母親だろうに。まあ、渚さんの決意そのものは立派だけどさ。

ほとんど唯一のハルと穹の会話シーン。
「ねぇ、穹」
「ん?」
「実はもう一人兄妹がいたとしたら、どう思う?」
問われた穹は、唖然としてぬいぐるみを取り落とします。
「ああ、いや! ただの例え話」
「なにそれ?」
笑ってごまかそうとするハルに、穹は不機嫌そうな表情を見せる。
「ハルだけで十分。他にはなにもいらない」
穹の台詞は良いんだけどさ、たったこれだけだよ? 3話におけるハルと穹の絡みって。なんか、申し訳なさ程度に、入れておかないとマズイから入れましたみたいな、そんな歪んだ印象さえ受けてしまう。2話の終盤からこっち、春日野兄妹の絡みがこれでもかというぐらい減少してしまいました。こういうのを延々と見続けていられれば、それで満足できたのに。どうして、なんで横道にそれてしまうんでしょうか。
ハルと穹が観たいんだよ! 他にはなにもいらないし、観たくもないんだよ。他のキャラにスポットを当てても良いけど、春日野兄妹を疎かにしている時点で、なんの価値もないじゃないか。ハルが他キャラとイチャイチャするのが観たくて、みんなアニメを観ているとでもいうのかい? そうじゃないだろう。

渚さんが学校でヴィオラについて触れるシーンは、割と本当にどうでも良いからスルーします。元々、原作にしたところでキーアイテムってわけじゃないし、ただのキャラ付けですから。音色について言及するハルは……この時点ではまさか、と思っていました。
亮平の投げた鞄に渚さんは顔面を殴打しますが、さすがにこれはやり過ぎだろう。なにが入っているかは知りませんが、金具や角の部分が当たってれば失明の恐れだってあるよ? まあ、実際には傷一つないし、腫れてすらいなかったけど。
亮平の誘いで海へ行く話は、いくらなんでも早すぎじゃないか。まだ3話だというのに、いや、3話だからこその梃子入れか? 空回ってしかいないように見えるけど、この辺りからハルと渚さんが急速に接近しています。何気に委員長までいますけど、特に喋ることもなくいるだけという感じです。なんていうか、あらゆる場面で渚さんが目立っていることにすら不快感を憶え始めてるけど、彼女はなにも悪くないんだと必死で自分に言い聞かせています。
穹がとけ込めるように配慮して、みたいなことをハルは言ってたけど、それならどうして2話の段階で絡めなかったのよ。一言も喋ったことがないハルのクラスメイトと、いきなり穹は海へ来ちゃうんだ。そんな積極的な娘でしたっけ? なんか、みんなと遊んでいるシーンに強烈な違和感を感じてしまう。違うでしょ、穹は。穹が海でするべき行動は、そういうことじゃないでしょ。すべてが薄ら寒いというか、滑稽なものを見せられてるなと、そう感じてしまった。登場するキャラのすべてが、みんな空回っているかのように、意味が分からなかった。

意味が分からないと言えば海からの帰りの電車もそうです。穹が気にしてましたけど、なんで電車内あんなガラガラなのにハルと渚さんだけ離れた場所に2人だけで腰掛けてんの? せめて前か後ろ、ていうか横に座ればいいじゃない。怖気が走るかのような2ショットだけど、このシーンは認めたくないが超重要なところです。
何故なら、ハルも渚さんも優先すべきものを優先していないんです。ハルの場合は妹の穹を、渚さんの場合は姉である瑛を、常にどんなことよりも優先していたはずの人をほっぽり出して、自分たちを選んだんです。この時点で、2人の関係がそこまで言ったと推測するのは難しいことではなく、私が諦めを悟った瞬間でもあった。あからさまで強引な、直視することすら辛いシーンだけど、製作側としては綺麗さや美しさを訴えたいんだろうなと、映像からはそんな印象を受けました。まったくもって、無駄でしかないと思いましたけど。
ハルが渚さんに惚れたのはこのときでしょうね。そう、前回までは良かったんですよ。あくまで渚さんがハルを意識しているだけだったし、それだけなら別に構わなかった。けど、今回でハルまでも渚さんに惚れてしまったから、もう取り返しが付かなくなってしまったんです。遠く離れた場所にいる2人を見つめる穹はなにを思うのか、このシーンを良いシーンだと評価する人がいるなら、私はその人と仲良くなれそうもありません。なりたくもない。映像的にどれほど優れていようと、作品として私はここを否定する。否定しなければならない。認めてしまえば、今まで自分が信じてきたものをすべて捨て去ることになってしまうから。

学校の昇降口前。穹を待つハルの元へ、信じられないメールが届きます。
sub:友達と
先に帰る
勝手に帰って

あり得ないでしょ、意味分からないでしょ、穹に友達が出来たことは一万歩譲って認めても良いけど、穹なら友達よりハルを優先するだろ! ハルとの約束を破って友達と帰る? ハルのことを一番に考えている穹が? ハルと一緒にいたくて学校にまで通い始めた穹ですよ? 馬鹿言ってんじゃないよ。
けど、これに関しては嘘という可能性があります。本当は友達なんて出来ていなくて、渚さんとの関係を気にしている穹が意図的に距離を取ってみたと、そう考えられなくもない。穹に友達が出来たよりは、よっぽど現実的じゃないだろうか。いや、穹の対人コミュニケーションを全否定するわけじゃないけど。
唐突に現れる渚さんには、もうなにも言うことはありません。渚さんのことを考えると、彼女が大嫌いになりそうなほど辛くなってきた。頭では分かってるんですよ、渚さんに罪がないことぐらい。分かっちゃいるんですよ。でも、これは……前の日記にも書いたとおり、穹と一番遠い距離にいる渚さんが相手じゃ、穹には手も足も出ないんです。それを逆手に取られたというか、見事に渚さんをヒロインへと仕立ててくれましたよ。えぇ、もう、あっぱれだね。
距離縮め、関係を深めていくハルと渚さん。単純な恋愛話と考えれば、実のところそれほど悪いものでもありません。だけど、これをヨスガノソラでやってしまうのはどうなのよと、そういうわけでして。最終的に穹ルートが来るんだとしても、こんなの見せつけられた後にどうしろっていうんだよ。来たとして、盛り上がれるわけ? 一度、渚さんとくっついたハルと、穹の物語なんて。私にはちょっと無理だと思う。

オムニバスだから許されるとか、リセットされるから別に構わないとかじゃないんです。気持ちの問題だし、受け入れられるかどうかは自分次第。私の感性は現状すべての方向を拒絶してるけど、こうまで嫌な予感が当たるってのはね。
後半、ハルが渚さんを連れ出して、隣町でデートと洒落込むわけですよ。渚さん曰く強引らしいけど、これがアニメで言うところのポジティブなハルってわけですか? 互いに気があるとはいえ、女の子を無理やり街まで連れ出して、あまつさえキスをするのがハルのポジティブだっていうわけ? 馬鹿馬鹿しい、愚かしいにもほどがある。お前は他の女の唇を奪ったその口で、穹の唇に触れるつもりなのか。他の女を抱いたその身体で、穹の身体を抱こうというのか。汚らわしい、軽薄にもほどがある。
道ばたをトボトボと歩く穹の、不憫な姿といったらないよ。ハルは、断言できますけど穹になんの連絡もしていないと思います。渚さんと隣町でデートしていることも、例え穹からメールが来ようともそれに気付かず。穹は探してるんですよ、ハルを。暑いと思いながらハルを探して、町を彷徨っているんですよ!
「ハルが……」
呟く穹は、虚勢は張れても元気がなかった。なにを、ハルはなにをしているんだ! 渚さんも瑛をほっぽり出して、分かりますか? 瑛は2人をあそこで待ってたんですよ。待ってたのに、ハルと渚さんは2人だけの世界にへと没頭してしまった。ふざけるなよ、お前ら。
瑛が倒れたのは、体調不良か別の理由か、過労というのがしっくり来そうだけど、渚さんは瑛に対するツケを払うことになりそうですね。瑛のことを忘れ、ハルとの甘い時間を過ごした渚さんには、今後瑛になにがあろうと文句をいう資格なんてない。原作もそうだけどさ、渚さんは少し瑛に対して傲慢で、押しつけている部分があると思うのよ。責任感が強いのは認めるけど、果たしてそれは正しいの? って話で。まあ、渚さんルートやれば分かることですが。

それにしても、3話にして褒めるべき点が一欠片もなくなるとは思いませんでした。次回予告? あー、うん、アニメ版はもう終わったってことで良いんじゃないの? ハルと穹を守らずして、なにがヨスガノソラかって言うことですよ。結局、製作側はもっとも大切にしなければいけないキャラである、ハルという存在を軽視していたのさ。ハルがいてこその穹であり、穹がいてこそのハルだった。春日野兄妹ってのは、二身一体の人気と魅力があったのに、その大前提が崩壊してしまった。VFBの表紙を観れば、ユーザーがなにを求めているかなんて、すぐにでも分かりそうなのにね。
私はさ、一面的なハルと穹が見たかったし、ヨスガノソラを全部楽しむ必要なんて、どこにもないと思ってるのよ。確かにハルと穹だけじゃ尺が足りないけど、それにしたってやりようはあったんじゃないかとね。現にコミカライズは見事な構成をしているわけだし。仮にリセットするのだとしても、このまま続けるのだとしても、既にハルは犠牲になってるんですよ。
スタチャがなにを狙っているのか、私にはなんとなくそれが見えてきたんだけど、そのやり方は果たして正しいのか、暗澹たる気分になってきます。スタチャといえば、公式ページにある3話のあらすじが、実物とまったく違うのは何故なんでしょうね?
ある日、瑛や悠と一緒に叉依媛神社で夏祭りの準備をしていた一葉は、夏祭りの下見をしに神社にやってきた父親と鉢合わせしてしまう。一葉の表情が怒りに満ちているのを見た悠は、口実を作ってその場から一葉を引き離した後、自宅での夕食に誘う。そして、誰もいない自宅でバランスを崩した一葉と悠は、倒れこみながらも唇を重ねるのだった……。
このあらすじ通りなら、負わされる羽目になった傷も小さくて済んだだろうに、残念な話です。もっとも、穹がいない春日野家なんてまず考えられないけど。

しかし、あれだね。人の覚悟なんてものはちっぽけなものだね。徳島まで行って、ハルが他の女とヤることを否定されなかった時点で、私は覚悟を決めていたはずなのにな。いやはやなんともはや、色々な意味で来週が、第4話が楽しみでなりませんよ。心身に負ったダメージはきついけど、時計の針が戻らない限りどうにもならないんだから、もはや作品を最後まで観ること以外に、答えを出す方法はない。
けど、そうだね、ちょっと疲れたというか、凄い泣きたい気分だから、コミカライズを読みながら寝ることにしましょう。じゃないと、私のすべてが壊れそうだ。

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