1年以上続いたヨスガノソラのコミカライズも最終回ということで、やけにあっさりと終わってしまいました。事前に終了の告知がなかったことは、コンプエースだとそう珍しいことではないんですけど、あるいはハルカナソラまでやってくれるのではないかと思っていただけに、結構なガッカリ感があったりします。今現在、アニメ放送中の作品に対する扱いとしては、必ずしも良いとはいえないよね。特典のリバーシブルポスターに騙されがちだが、もう少し雑誌を上げて盛り上げて欲しかったという気持ちがある。

最終回は原作の穹ルートとほぼ同じなので、殊更書くことがなかったりします。先月号のような良い改変が特になされていたわけでもないので、前回が良かっただけに今回は普通と表現するのが相応しいかも知れない。だからこそ、あっさり終わってしまったと感じるんでしょうね。まあ、これは物足りなさというべきものだし、全体的に考えればハル×穹の話として綺麗にまとまっていたとは思う。
春日野家を見つめる委員長から話は始まり、そこに奈緒や亮平の2人が現れる。主を無くした家は寂しいものだと語る奈緒に、いなくなってしばらくだしなと呟く亮平。そう、今の春日野家は無人であり、そこにハルと穹の姿はなかった。曇る委員長の顔は、自然と空を見上げてしまう。
「春日野君…」
その頃ハルは、とある空の下で大きく伸びをしていた。服装はいつもと同じでよそ行きという感じはせず、とてもじゃないが異国を旅行しているふうには見えない。けど、ハルがいるのは日本ではなかった。スーツケースに腰掛ける穹の服装もいつもと変わらないものの、2人が見上げる空は、奥木染よりもずっと深い、綺麗な青空だった。

「穹、そろそろいいか?」

「もう疲れた」

原作で2人が奥木染に来た時を思わせるやり取り。

「何よここ、ど田舎じゃない」

「奥木染といい勝負だろ」

「奥木染の方がまだマシよ。道路も舗装してないじゃない」

「向こうが恋しくなった?」

最初にほとんど原作と同じと書きましたけど、このシーンなんかは随分と違いますよね。原作のラストは穹が結構ゆったりと構えており、逆に初めての海外であるハルがワタワタしているという感じで、こんな風に余裕を感じさせはしなかった。やはりコミカライズ版のハルは一味違いますね。
穹はハルにどうしてこの国へ来たのかと問い、ハルは穹に父さんと母さんの知り合いに会いに行くといいます。穹はその言葉に若干驚いたようですが、ハルはちゃんと伝えと言います。

「聞いてないまたひとりで決めたから…」

「話したよ…あ、また話半分にしか聞いてなかったな」


一方、日本の穂見学園では瑛を始めとしたいつものメンバーが外で昼食をとっていました。そこには委員長もいて、渚さんがハルから届いたというメールを披露します。仲間内で携帯を持っているのは渚さんだけですが、瑛もメールができない携帯と称して自宅の子機を取り出してみる。それだけのために仕込んでいたのか……コミカライズの瑛もやっぱり違うね。回し読みするまでもないということで渚さんがメールの文面を読み始めますが、その内容に関してはさほど原作と大差あるものではありません、北欧の小さな国に来ていること、両親の知人に招待されたことなど、後はまあ近況のようなものですか。

『それからみんなへ――僕と穹のことなのに親身になって助けてくれたことを一生忘れない。また会う日まで元気でいてください』

別れの言葉に感極まり、思わず委員長は涙しますが、その文面にはまだ続きがありました。

『P.S. いつ帰れるか分からないけど、お土産のリクエストを聞いておきます』

呆然とする委員長を尻目に、本場のソーセージが欲しいという亮平や、チーズとヤギの首についている鈴みたいのが欲しいという瑛。ハルが帰ってくることを知らなかったのは委員長だけで、みんな誰かしらが伝えているものと思っていた様子。もちろん、2人は駆け落ちしたわけでも逃避行したわけでもなく、単に旅行へ出掛けているだけでした。直通便のない外国だけに期間は長めですが、そのうち帰ってくることには変わりありません。
「私は無事に帰ってきてくれれば、それでいいです」
お土産として欲しいものを訊ねられたとき、委員長はこのように答えました。既に先ほどの曇は顔から消え失せており、安堵の笑顔がそこには広がっていた。


場所は異国に戻り、ハルの余裕が徐々に薄らいできました。車も来ない田舎道に取り残され、計画性の無さを穹に指摘されています。見渡してもあるのは小屋一つで、人影すら見当たりません。

「穹はここにいて車が来たら止めといてくれない?」

「えー」

「じゃあ、小屋に誰かいないか見てきてくれる?」

「やだ」

ちょっとは協力してくれというハルに、穹はせっかちだと言います。せっかくの旅行なんだから、もっと楽しめばいいのにと。

「ねぇ、ハル。一緒にいてよ。せっかく二人きりなんだし。それとも私と一緒は嫌?」

往年の口説き文句にハルは声もなく顔を赤らめました。のんきなものだと口では言うものの、まんざらでもないのか穹の横へと腰掛けます。たまにはいいでしょと答える穹に、ハルは余裕とはまた違う暖かな表情を取り戻していく。

穹と生きていく

お互いを想い合える僕たちなら、歩いていける

この果てしない空のように――

エストニアの空を見上げるハルと穹の二人を描きながら、物語は終りを告げました。


本当に、これこそがヨスガノソラという感じでしたね。これ以上にないほど素敵な物を見せられたというか、最初から最後まで追いかけ続けたかいがありました。まだコミックス第2巻の発売を控えてますし、そのときにもまた長々と書こうと思うので今回は控えめにしておきますが、私はこのコミカライズを読んでいて良かったと、心からそう思います。
水風天先生、1年間の連載お疲れさまでした。コミックスの発売もすぐですが、またなにかの機会で会えることを楽しみにしています。コンプエース版、いえ、水風天版ヨスガノソラは最高でした。素晴らしいハルと穹を本当にありがとうございました!

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