川崎チネチッタで蒼穹のファフナー HEAVEN AND EARTHを観てきました。私はふと思い立って映画を観に行くことが多いんだけど、今回もそんな感じです。元々、映画館というかシネコンというものが大好きで、随分前の日記にそれらに対する熱情的なものを書いたこともありましたね。仕事で東京方面へと出るようになってから川崎も随分と行きやすくなったので、ここ数年は特に映画を観る機会が増えたと思います。まあ、チネチッタは割引やサービスデーが少ないので財布的には厳しいですが、空間的には最高だと思うので、よく利用すると映画館です。

私は元々、蒼穹のファフナーという作品はそれほど好きではなくて、決して嫌いじゃないんだけど心の底から好きになることは出来ないという、そんな複雑な感情をずっと抱いていました。当時は種と種死の間に挟まれ、同じ平井絵でしたからなにかと比較されてきたファフナーですが、別にそういうのはどうでも良くて、私って暗い作品が好きじゃないんですよ。所謂、欝な作品っていうの? 基本、ハッピーエンド至上主義だから、登場人物が傷ついたり、死んだりするのが凄い苦手で。世の中にはそういうのが大好きという血も涙もない人もいるそうだけど、なんかこう心が痛くなるというか、観ていられない感じがしてさ。あんま救いないじゃないですか、ファフナーって。特別編は置いておくとしても、TVシリーズなら6話で翔子が死にますし、それ以降もバッタバッタと死んだり倒れたりしていく。それをリアリティで済ませることは簡単だけど、死んでいるのは十代も前半の少年少女なわけですからね。精神が脆い私には辛く悲しいものがありました。
その劇場版ということで、最初はスタチャもネタが無くなったのかと思う程度だったんだけど、別に嫌いな作品ではなかったことと、冲方丁書き下ろしによる完全新作であることが分かり、なんとなく観にいきたくなって。私がこれを言ってしまうと色々不味いんだけど、少なくともマルドゥック・スクランブルよりはファフナーの方が好きだしね。思い立ったら即実行ということで、チネチッタまで観に行ったわけです。TV本編の続編がどんな話なのか、それに対する関心や興味も強かったから。

それでまあ映画なわけだけど、ネタバレ全開で行きますが凄く楽しかった。いや、内容的に楽しいという言葉が適切なのかは分からないけど、続編としてここまで綺麗にまとめたものはないんじゃないかというぐらい、見応えがありました。主人公は変わらず一騎が務めているんだけど、脇のキャラたちもいい味を出してましてね。真矢やカノンは勿論ですが、剣司や復活した咲良も良かった。特に後者は、十代とは思えないほどの相愛関係にあって、その繋がりの強さは丁寧に描かれていたと思う。
ただ、私がこの映画を観に行ったのは主に後輩組が目当てであり、立上芹とか西尾里奈とか、その辺りがどのように成長を遂げたのか、それを知りたかったというのがあります。特に立上芹に関しては、TV本編で一番好きなキャラクターでしたからね。これを再び観ることが出来るというのは、正直言って嬉しかった。この娘と乙姫の関係が本当に好きで、上映後に買った人物相関図で乙姫にとっての親友であると記されていたのは良かったなぁ。
2年というのはそれほど人を変えてしまうだけの時間ではないと思うけど、レギュラー組ではカノンが、そして後輩組では里奈がTV本編と大分違うキャラになってましたね。カノンの場合はいい方向での成長でしたが、里奈の場合は悪い意味での停滞というか、明るい姿は以前と同じなんだけど、その内心には強い不安や不満が渦巻いていたというね。里奈の双子の弟である暉は、TV本編でも一応出ていたキャラです。しかし、失語症ということもあってか喋ることはなく、声優が付いたのは劇場版が初めてでした。蒼穹作戦終了後、一応の平和を手に入れた竜宮島ですが、2年経っても暉の失語症は治ることがなく、里奈はそのことに対する複雑な思いを抱いていた。それが明確な苛立ちに変わったのは、おそらく暉が真矢に喋りはしないものの、自らの意思や感情を伝えたことが原因なんじゃないだろうか?
「こいつは私と同じで――」と、喫茶店において暉の注文を自分と同じものにしようとしていた里奈の口調は、それが当然且つ自然であるかのように慣れたものだった。おそらく2年前から、いや、それ以前から暉はずっとこんな感じだったのだろうし、里奈が代わりに喋って、色々とフォローするということを繰り返してきたのだろう。にもかかわらず、暉は真矢に対しては自分の意志を見せた。これは、里奈にとって少なからずショックだったに違いない。里奈は元々真矢に憧れていた少女であるけど、劇場版に関してはそういった設定がクローズアップされることはあまりない。むしろ、真矢に片思い中である暉が描写されることが格段に多く、里奈が真矢と絡むこと自体、ほんの僅かでしかないのだ。お祭りに行こうとしない暉を里奈が叱咤するシーンは、どうして自分にはなんの反応もしてくれないのかという、ある意味では真矢への嫉妬も含んだものだったようにも思える。無論、里奈が真矢のことを嫌いになったはずもないが、それ以上に暉は里奈にとって重要な存在なのだ。故に自分のほうを振り向いてくれない、自分に意思や感情を見せてくれないことが苛立たしかった。まあ、一方的な姉弟喧嘩と言えばそれまでだけど、今回の里奈は基本的に自分と暉のことしか考えていない節があって、短い時間の中で姉弟の関係性や和解みたいのが描かれたのは面白いと思った。特に医務室で里奈が暉に自分の本音や本心をぶちまけるシーンは最高だったね。前段階としてファフナーに乗ることで言葉を取り戻した暉を里奈は罵倒するわけだけど、あれだって良く言葉を考えてみると、暉のことを心配していっているのが分かりますし、それだけになんとか生還できた暉に涙を見せる里奈というのが際立っていたと思う。
また双子に嵌っているのか言われれば、その通りだとしか答えようがないけど、後輩組では一種のドラマ性があったのはこの2人ぐらいですからね。というのも、ゴウバインと叫んでいる広登はともかく、芹は1人で独立した感じがありましたから、後輩組ってそれほど絡みも多くないんですよ。チームワークのなさは剣司も指摘しているところでしたが。まあ、芹に関しては後述しますけど、あの娘に関しては乙姫の存在が大きすぎたね。

なんか、西尾姉弟に付いて書いただけで凄い分量になったので感想を2回に分けることとします。なので、明日は芹をメインに書きますかね。本当なら一騎とか来栖操について書かなきゃいけないんだろうけど、私はそこまで心惹かれるものがなかったというか、良いキャラだとは思いますが。まあ、触れないわけにはいかないので少しぐらいは書くつもりではいるけど、基本は芹なので。芹と、そして乙姫を観れただけでも劇場版に入った価値がありました。それこそ、もう一度行きたくなるぐらいには。

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