偏食家な私だけど、最近になって自分の体調というものが気になってきた。若い頃はなにをどれだけ食っても死ぬことはなかったけど、そんな若かりし10代の頃とはとっくにおさらばしてますし、こんな食生活を続けていて本当にいいのかと思い始めた今日この頃でして。悲恋堂の店主に話すと、「やっと気付きましたか」と頷いてくれたのだけど、だからといって私は自分の食生活をどのように変えるべきなのかが分からない。店主はいっそ、2~3ヶ月店に下宿しますかなんて言ってるけど、そんな荒療治はごめんです。

私は基本的に野菜を摂取しない生活をずっとしてきて、さらに言えば揚げ物好きだから身体の中は多分ボロボロで、血もドロドロになっていると思います。ここまで偏食な理由は食育がどうとか、そういうのじゃなくて、私の体質的な問題にあるのではないかというのが悲恋堂の結論。味覚以前に、野菜を受け付けない身体になっていると言われると、なんとなくそれが正しいような気もして、どこか納得している自分がいました。店主は勿論、偏食家などではなく、料理の腕も私の5倍じゃ利かないほどですから、何かにつけては私の偏食を治そうと策を講じてきました。店主は面倒くさがりに見えて集中力があるので、一時期は如何にして野菜嫌いに野菜を食べさせるかということばかり研究していたように思う。そして、その尽くが通用しなかったのだけど。
今回、私が自分から偏食を改善しようと思ったのは、勿論年齢的なものもあるけど、ここ最近の体調不良から。日常生活が困難なほど酷いわけではないものの、見えないところの肌荒れとかも気になってきたし、そろそろ体質改善も必要なのかなって。店主に言わせれば、ここまで生きてこられたのが不思議な食生活とのことだけど、そんな不思議が永続的に続くわけもないし、各種病の心配もあります。なにかこう、いい手はないものかと相談したところ、店主は頭を悩ませてしまった。なにせ、今までどんなことをしても私の偏食を治すことが出来なかったのだし、いい加減ネタ切れもいいところだろう。それでも考えてくれる辺り、さすがは店主といったところか。
「どうです、ここは発想の転換をして、食べないというのは?」
「今までとなにも変わらないじゃないか」
「野菜を食べない、というわけじゃありません。野菜以外のものを食べないんです」
店主はいつになく不敵な笑みを浮かべていた。

悲恋堂の店主はなにも飯を食うなと言っているわけじゃなくて、私が好んで食べる揚げ物とか身体に悪そうなものを控えるべきだと考えてきた。つまり、そうったものをしばらく食べないことで身体の毒素を輩出して、そこから徐々に変化をつけていくのはどうだろうか? とのことらしい。昨年末、とある事情からカレーというものを一切食べない生活を始めたんですけど、原理的にはそれと同じようなものですかね。ただ、ひたすら揚げ物に絞った断食を行い、油分みたいなものを全部出してしまおうと、つまりはそういうこと。
「別に肉や魚を食うなと言っているわけじゃないですし、これならあなたにも出来るでしょう」
随分な言われようだが、店主の今までの努力を考えれば、これでもかなり生易しい言い方なのだろう。世捨て人である店主は、基本的に誰かのためになにかをするというのが好きではない。形だけの客商売をやっているとは言え、そもそもが人好きな性格をしていないからね。私とはもう長い思付き合いですが、店主に言わせると「唯一、腐らせたくない縁だと思いました」とのことらしい。まあ、お互いに色々あって今の関係になったわけだけど、出会った当初はこんなにも長い付き合いになるとは思っていなかったな……互いに相手のことが興味なかったし。あの頃は、どちらも単なる客だった。

まあ、大事な親友の助言ですから、とりあえず2月から1ヵ月ぐらい揚げ物を断ってみようかと思います。どうして来月なのかといえば、2月は28日間しかないですからね。通常より短いなら我慢も出来るのではないかと。食べ物に対する禁断症状なんて私は持ち合わせていないはずだし、このまま少しずつ食事の内容を変えていければ、少しは長生きできるんじゃないでしょうか。最初から健康になることを考えるからハードルが高いわけで、まずは不健康なものを辞めることから始めて見ようじゃないか。成功するしないはともかく、やって見る価値はあると思う。

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