劇場版マクロスF 恋離飛翼~サヨナラノツバサ~を川崎チネチッタで観てきました。丁度ファーストデーだったし、時間帯もいいのがあったから、私にしては珍しく公開後数日での鑑賞になった。しかも、チケット自体は先日川崎に行った際、イベント帰りに購入していたから、真ん中の列のど真ん中を早々に確保済みで。当日は悠々と入場し、サービス期間で値下げしていたホットドッグなんて買っちゃったりしながら上映開始を待ちました。私は前作の映画も公開終了日でしたが鑑賞していたし、それほど悪い印象を持っていなかったら続篇も観る気になったんですよね。そして、それが大間違いだった。

予め断っておくと、私は別にマクロスFという作品が嫌いではありません。元よりマクロスシリーズにはちょっとした思い入れもありますし、スタジオぬえとは浅いですが繋がりもあるから、そんなに悪くもいえいないんだけど……それでもこの映画はないと思った。公開したばかりなのでネタバレ全開で書いていいのか迷うけど、2時間という尺を使ってそれしか出来なかったのかと、そんな風に感じました。マクロスで歌をメインにしている作品は、これまでならマクロス7であり、あれは主人公がバンドを組んでおり、歌を歌いながら戦場を駆け巡る作品でした。マクロスFもまた歌がメインであることには変わりませんが、歌うのはヒロインであって主人公ではない、どちらかと言えば初代マクロスに近い形です。
作品の中にあらゆる要素を組み込み、それを全面に出して行くのはもはやマクロスの特色と言っても差し支え無いと思いますが、今回の映画はそれが見事に裏目に出たというか、ハッキリ言ってしまうとなにがやりたかったのかわからないものであり、鑑賞後にだから、どうしたと言ってしまいたくなるような、そんな出来栄えだったように思う。作中、ブレラがアルトのことを中途半端な男だと言ってのけますが、私からすると作品そのものがそうだったのではないかと考えざるをえない。今までTVシリーズがリメイクの形で映画化した例はアニメなら多数あって、代表的なのはガンダムシリーズでしょうけど、例えばラーゼフォンとかその辺も、TVよりも映画のほうが……と思われるような出来でしたよね。マクロスにしたところで劇場版の愛・おぼえていますかの方が断然良いわけですし。

仮にこの劇場版の主人公をアルトではなく、ランカ・リーだとするならば、確かにこういう流れや結末も悪いものではない。今回の映画はマクロスFのTV版と直接繋がりのない、前述のとおりリメイク作品ですから、キャラの性格や思考などに違いがあっても問題はありません。特に、マクロスは作品そのものがマクロス世界における史実を元にした劇中劇という場合があるから、そう考えてもキャラ映画そのものに違和感はないのです。そもそも質の良くない作品を粗悪にリメイクした結果だなどと、昨日はTwitterで軽挙な呟きをしてしまいましたが、冷静になって考えて見れば、キャラ自体はあれでいいのかもしれない。ランカはTVシリーズで酷評されていた部分もありますし、ランカの成長という意味でなら見るべき点はあるんですよ。TVシリーズのラストで成長を遂げたランカ、それを下地に劇場版のキャラが作られたというのなら、シェリルを越えるカリスマや強さを魅せつけたのにも納得が行くし。映画のシェリルは、言ってしまえば歌うことに執着したテロリスト兼スパイですからね。真意や本心は定かでないにせよ、ランカを犠牲まで歌と命、そしてアルトを手にれようとしたところは生々しかったと思う。
敢えてこういう言い方をさせてもらうけど、シェリルは死ぬべきだったのではないでしょうか。いえ、最終的に死んだも等しい状態であることは変わりませんが、彼女が犯罪者として罪を犯し、重ねてきた事実が覆るわけではありませんし、人気アイドルならそれも許されるのか、結果的にフロンティアを救う手助けをしたからそれでいいのかと、そんな気がしてしまう。劇場版を通して頑張っていたのは、シェリルでもあるとでもなくランカではないですか。悲劇的な境遇だから可哀想? 彼女だって苦しんでいたんだから仕方ない? それも一つの意見なんでしょうが、シェリルのために死んだ命があり、壊された街があることを忘れてはいけないと思う。映画の中でシェリルはアルトに飛ぶのを辞めてくれといった。でも、彼が飛ぶ切っ掛けを、バルキリーに乗る原因を作ったのは誰か? シェリル本人じゃないですか。都合が良すぎるんですよ、彼女は。名誉も栄光も、何一つ捨てることが出来なくて、次々に欲しいものだけを手に入れようとして自滅した。それは駆け上がり、成長することを主体としていたランカと、既に頂上にいて転げ落ちるしかなかったシェリルの差なんです。恋愛に決着をつけたのは良いけど、あのアルトとシェリルの過去は映画として唐突だし、ああいう結果に繋げるための強引さが目だった。大体、三角関係なんてものは誰かが泣いて終わるものですけど、あれじゃあ誰にとっても意味のないラストじゃん。得ることと失うことを同時に体験したランカと、手に入れる瞬間に消滅したアルト。シェリルはもうなにも出来ない状態だし、誰一人として喜ばない、幸せになってはいないラストでした。

まあ、単に私がひねくれているだけなのかもしれないけど、少なくともパンフレットを買いたくないと思うぐらいには、私の中で評価の低い映画でした。ファフナーと比較するよりOOと比較したほうが的確だと思うけど、あれは映像がうるさかったけど、これは演出がつまらないとでも言うべきか。TVシリーズから言われていることだけど、ただ歌っているだけの作品になんか意味はないんですよ。リピーターキャンペーンやってるみたいですけど、多分二度目はないと思います。全体的な感想を一言で表すなら、物足りないですかね。その一言に尽きるでしょう。

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