先月は何故か早川書房の回し者みたいなことしてましたけど、まあ、色々事情があったんですよ。単純な知り合いのよしみというよりは、私が好きだからやったことなんですが、おかげさまで初音ミク特集のSFMも売れまくったようで良かったですね。仮にも創刊50年の歴史で、史上初の重版を果たしたのだから、なにかあってもいいような気がしますけど、そこはまあ早川ですからね。自他共に認めるケチな出版社ですので、多分なにもないでしょう。締まり屋という表現を使うことすら語弊があるのだから、あそこも相当なものです。まあ、私は大変お世話になっているんですけど。

そんな早川書房ですが、先日こんな質問をされました。「あなたは早川書房が出している本で、なにが一番好きですか?」というものです。ミク特集のSFMを買って、早川に興味を持った人から質問されたんだけど、私は少々困惑してしまった。質問としてはありきたりだけど、文庫単位ならまだしも出版社単位ですよ? 例えば、角川書店が出している本でお勧めを教えてくださいとか言われて、まず漫画なのか小説なのか、それすらも判別付かないじゃないですか。質問としてはありきたりだけど、範囲も広がれば大雑把なものになるんだなと、そんなようなことを感じてしまった。
早川書房というのはいくつかの文庫と雑誌、それに単行本を発行している出版社で、代表的なものにSF文庫ミステリー文庫があり、ついでファンタジー文庫や、主に日本人作家のSF等を出すJA文庫があります。他にもノンフィクションとか、ポケットミステリとか、イソラ文庫……は、もうないんだっけ? まあ、色々なものがあるわけですよ。それら全部を引っ括めて好きな本はなにかと言われると、そりゃ答えられなくはないんだけど、個人的にSFとミステリーを同じ土俵で争わせるのは好きじゃない。だってほら、ラノベで例えるなら、もうないけど富士見ミステリー文庫と富士見ファンタジア文庫って全然別物じゃん? いや、今は同じようなもんかも知れないけど、私は今少し細かい単位で好き嫌いを分けたいんですよ。

まあ、個人的な好みで言えばSF文庫が好きですけど、FT文庫、つまりファンタジーなんかも昔はよく読んでましたよ。テリー・ブルックスのランドオーヴァーシリーズなんかが好きだったけど、あれって2009年に続巻が出たらしいね。まあ、今の早川におけるFT事情を考えると、検討はされても本として出ることはないと思うけど、妻を無くした壮年の弁護士が、たまたまギフトカタログで見かけた「魔法の王国売ります!」という記事に興味を示し、私財を叩いて購入するという第1巻のあらすじは心惹かれるものがあったし、是非最新刊も読みたいところなんですが……自分で原書取り寄せて翻訳するしかないのかねぇ。
JA文庫なら桜坂洋のスラムオンラインなんかがお勧めだけど、SF文庫だと迷うね。最近だと彷徨える艦隊が良い感じで、これは銀英伝の艦隊戦シーンが好きな人とかは面白く思えるかも知れないね。先々月のSFセミナーで堺三保が、「彷徨える艦隊は、銀英伝におけるヤン・ウェンリーの奇策部分だけをひたすらやっているような小説だ」と評したのは、なかなか見事な喩えだと思った。まあ、SF文庫はやFT文庫の4倍とか出ているはずですし、一つだけ選ぶとか難しいよね。堅苦しい話も多いけど、最近は新訳版とかも出て読みやすくなってるから、それほど取っ付き難くもないとおもいます。
ミステリーに関しては……私、ミステリーは創元の方が好きだからな。というのも、好きな海外作家がアントニー・バークリーと、フランシス・アイルズだから。ミステリー作家に詳しい人は、クスリとくるかも知れませんが。

とりあえず質問者には「夏への扉」と、アガサ・クリスティーの作品を薦めておきましたが、切っ掛けはなんであれハヤカワ文庫にも目を向けてもらえるようなら嬉しい話です。私も色々書いた甲斐があったというものだ。これ以上は本当に回し者になるから、まあ、またなにかあったときにでも触れるということで。当分はなにもないだろうけど。

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