イモウトノカタチの公式サイトが更新されて、体験版が公開されたので早速プレイしてみました。19時からの一斉配布だったようですけど、場所によってはフライングしているところもあったとかで、結構まばらでしたね。かくいう私も少し早くプレイすることが出来たのだけど、何というか少し懐かしい感じがする体験版だと思いました。開始からすぐに本編が始まるのではなく、体験版をプレイするに当たって~みたいな、茶番劇が入るところなんて、ここ最近じゃ見られなくなった光景だし、そういった意味でもこの作品は王道をひた走っているのかもしれない。

茶番劇はヒロイン達による体験版説明と、主導権争いが展開されるわけですが、この時点で既にミータは抜きん出ていますね。毒の存在感と言い回しで周囲を翻弄し、相手が出来るのは長い付き合いらしいあやかぐらいな物というのがよく分かります。逆に、比較的雪人に近い位置にいるであろう美優樹や、今のところの妹である千毬などは、素直であり単純であることからも、ミータに良いようにあしらわれてしまっています。
そんなミータを御すことが出来るのは、おそらく関係者である律佳や真結希なのでしょうけど、今のところは生徒会長兼寮長も先輩だけあってミータも気を遣って行動しているみたい。起こると怖いって設定があるからだろうけど、この人もまた典型的な先輩キャラだよなぁ。イモウトノカタチはなんて言うか、テンプレートが多いというか、記号としての萌え要素が分かりやすく形になっているから、ある意味でキャラが単調なんだと思う。
例えば、主人公である雪人はヨスガノソラの主人公ハルに比べると、容姿、性格共に標準と言ったところで、エロゲにはよくあるタイプであることが体験版をやると分かります。これまで雪人はWebドラマにも登場しませんでしたし、キャラクター造形が見えてこなかったわけですが、第一印象としてはどんなエロゲにも良そうな感じ、ってところかな。

内容を事細かに書く必要はないと思うけど、学園ラブコメと言うだけあってノリが非常に軽いね。背景としての設定は災害の被災者と被災地区だから非常に重苦しいはずなんだけど、それに引き替え登場するキャラクターはどこか楽天的な部分が多いと思う。ラブコメ、つまりギャグ要素がある以上は暗かったり真面目ぶったキャラクターは少ない方が良いんだろうけど、設定と照らし合わせると、ちょっと落差があるよね。ただ、雪人にしろ美優樹にせよ、エロゲの登場人物は18歳以上という建前を抜きにして考えれば、被災した当初は年端もいかぬ子供だった可能性が高いから、所謂トラウマを抱え込むほどではなかったのかも知れない。いつか書いたかも知れないけど、この辺りはminoriのefに近いものがあって、例えば広野紘や宮村みやこなんかの主人公世代と違って、紘の姉である凪や、火村夕などの年上たちは震災の記憶や、その爪痕を心に刻み込んでいるから、地震などに対してかなり敏感に反応してしまうし、廃墟に対する視線や考え方も違うわけです。
ところで、鵠見市を襲った災害というのは豪雨だったようですね。豪雨と、それによる山崩れや地滑り、それに洪水と言ったところかな。地震でないのは世情から考えても無理だったんだろうけど、水害か……実験区が一番酷かったと言うのは、本当のところ人為的な失敗等で起きた災害だったということの伏線かな? 水害と言われると、あまりピンとこない人もいるかも知れませんが、歴史的に見れば結構あることで、日本ですら近代、あるいは現代でも強い被害を受けることが多々あります。あやかの台詞ではないですが、環境特区と称して人間に都合に沿った環境を作ろうとした結果、それがすべて洗い流されたわけですから、まったく自然というのは怖いものだ。

体験版だけの感想で言うなら、実に平凡なエロゲだったかな。ギャグも面白いし、特にミータは良いキャラだと思いますが、突出したものに欠けると言いますか。王道というか、正統派の学園ラブコメを目指すあまり、看板や目玉のようなものが見当たらないんだよね。ヒロイン達は確かに可愛いが、今のところ魅力としては横並びって感じもするし、そういうところは、やっぱりヨスガを意識してるのかなと。つまり、ヨスガは穹だけ飛び抜けて人気だったから、他キャラのグッズを出すだけで文句を言われるようなこともあったけど、人気が同じならそういうことも起こらないでしょう。
もうちょっと野心的な作品でも良かったと思うけど、そこはまあ隠しヒロインの存在もありますから、今後に期待かな。私はまあ、楽しかったとは思いますよ。

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