イモウトノカタチ-瀬名美優樹編-
2012年8月30日 イモウトノカタチ
ネット通販した分が1日早く届いたので、早速レビューを書きます。私はあまり通販という物を利用しないから、こんな風に正式な発売日よりも先にエロゲを手にする事ってのは、書籍のそれに比べると少ない方なんですが、何とも新鮮な気分ですね。配送業者の都合もあるんだろうけど、丁度積みゲーを崩している最中だったので、どちらを先にやるか少し迷いました。でも、この作品は週明けまでに全ルートを攻略、つまりゲームクリアしておきたかったから、先に済ませてしまうことに。時間はそれほど、掛からないと思いましたし。
イモウトノカタチ-瀬名美優樹編-ということで、私はこのシナリオを一番最初か、あるいは一番最後にプレイすることをオススメします。というのも、この作品はルートロックが掛かっているため、最初にミータを攻略することが出来ません。ヨスガノソラにおける穹みたいに、誰か一人でもクリアすれば解禁されるという類いのものではなく、美優樹、あやか、千毬の3人を全てクリアすることで、初めてミータルートのロックが解除されるわけですね。ちなみに上記3人、どのルートにも進まないという選択肢もあるにはあるのですが、それは後述するバッドエンドに行ってしまうので、観てみたい人でもない限りは時間の無駄だと思います。
瀬名美優樹という少女は、主人公である美馬雪人が鵠見市において一番最初に出会う少女です。同年代で、共に災害孤児という境遇から親しくなり、箱入り娘であった美優樹は良い意味でも悪い意味でも行動力がある雪人を頼りにしていくというのが、序盤の流れです。体験版で語られた部分については掻い摘まんで話しますが、生き別れの家族、特に兄妹を捜したかった二人は鵠見市に留まり、お互いに協力し合いながら兄妹捜しを始めるんですね。ここまでは言ってしまえば共通ルートであり、特別美優樹編というわけではないのだけど、なんだかんだで、一番関わってくるのが彼女ですから、そのままの勢いで美優樹ルートに進んだ方が、私は自然だと思うんだよね。一応は、彼女がメインヒロインな訳だし。
イモウトノカタチは無駄に選択肢が多いエロゲで、今時珍しいMAP選択方式を採用しています。ただ、学内や寮内に限って言うと、数が多いだけでヒロインと遭遇するようなイベントもないので、ハッキリ言うと意味がありません。
さて、美優樹の個別ルートはお互いの兄妹捜しが軸となって話が進みます。二人ともそのために鵠見市にやってきたんだから当たり前の話ですが、災害被災という特殊な事情を抱える町や人の中で、二人は思うように活動することが出来ません。大っぴらに捜そうにも、被災者の気持ちを考えてあげてと、どこかで聞いたような文句で説教される始末。まあ、その説教自体はもっともなことですから良いのだけど、そのために雪人のウザいぐらいの積極性は殺され、思うように身動きが取れなくなってしまうんですね。
そこで考えたのが、兄妹の方からこちらを見つけて貰うという方法であり、雪人は鵠見市の親善大使コンテストに興味を示します。これは1年間鵠見市の広報活動をする男女ペアを決める大会のことで、まあ、客寄せパンダの一種です。余程の目立ちたがり屋でもない限りは断ることが多いらしいのだけど、雪人たちはこの親善大使として広報活動に参加すれば、自然と顔が売れてどこかにいるであろう兄妹の目にも留まるのではないかと、そう考えたわけです。
しかし、美優樹は箱入り娘にしてお嬢様学校通いでしたから、人前に出ることに対する抵抗感があります。要は恥ずかしがり屋なんですが、雪人は自分の都合や目的を優先するタイプですから、やや強引ながらも美優樹を説得し、二人で親善大使を目指すのでした。この流れで分かるのは、雪人が相手の都合よりも自分の都合を、勿論本人は良かれと思ってやっているのでしょうが、それを最優先に行動することが印象づけられます。彼はノリが良いように見えて、言動や行動に強引さがあり、それでいて他人の気持ちに気付きません。鈍感と言えば主人公にはありがちなタイプのように思えますが、雪人の場合は、そもそも他人をあまり気に掛けないんですね。こうした性格が後々問題になっていくのだけど、今の段階では少々ウザいぐらいに抑えられています。
主人公である美馬雪人には一つの設定があり、彼は実のところ美優樹やあやかといったクラスメイトよりも、年上なんだそうです。年上クラスメイトと言えばヨスガの亮平が思い出されますが、別に留年したとかそう言うのじゃなくて、災害に被災したときに大怪我をしてしまい、1年近く入院生活送っていたため入学が遅れてしまったと、まあ、そういうことらしい。
入学というのは小学校のことでしょうが、逆算すると15年前のことだから……あれ、20歳越えちゃいますね。当初の設定通り、10年前のことならしっくり来るのだけど、いや、エロゲには18歳以上のキャラしか出てこないとはいえ、何だろうこの違和感。災害から10周年を15周年に変えたのは、雪人が皆よりも入学が1年遅れたという設定から、明記していない年齢を逆算されないためなんだろうか。変なところに拘るもんだと思うけど、制作が分からしてみれば重要なことなのかな。私に言わせれば、あんな人間の出来ていない成人男子は嫌だと言いたいのだけど、この作品は美馬雪人という主人公にどこまで耐えきれるかというレベルに達しているほど、主人公が残念な作品なので……これに関しては後でみっちり書くつもりですが。
つまり、ここで重要となるのは雪人は皆よりも年齢が上と言うことで、彼にとっては美優樹は勿論、あやかなどのクラスメイトも年下の女の子であると言うことです。美優樹はそれまで似た境遇でありながらも雪人が兄であるはずがないと思っていました。だって彼は同学年であり、年齢は同じのはずでしたから。しかし、そうした前提が彼の告白、というには大袈裟なシーンによって崩れてしまい、美優樹はある種の疑惑を感じ始めます。これは本来、最初に雪人が気付くべき事だったんですが、何せ彼は筋金入りの馬鹿であり、人の気持ちを理解出来ない奴なので、美優樹の考えを察することもなく、シナリオは進んでいくことになります。そこに何が待ち受けているかも、理解しないままに。
親善大使コンテストに向けての特訓、コンテストは何故か男女ペアによる二人三脚なんだけど、それを行うにつれて雪人と美優樹の距離はどんどん縮まっていきます。美優樹は元々雪人に対する好感度が高いし、一番身近な男性でもありますから、惹かれるところが多いんでしょうね。正直、箱入り娘が最初に出会った男性を好きになっているだけのような気もしますが、まあ、惚れる理由なんてそんなもので良いのかも知れませんね。強引なところはあれど、このルートにおける雪人は世間ズレしているだけで、箍が外れている訳ではありませんから。
雪人は他人の気持ちに鈍感と言うより、自分のことだけしか考えていない部分が非常に強いので、美優樹の気持ちに気付くのも遅いです。何せ、美優樹から告白されても実感が湧かなかったぐらいですし。彼のこうした性格は、彼だけが知らぬ間に相手を傷つけているのだけど、どのルートも基本的にヒロインが雪人に惚れているわけですから、例外除いてそれほど大きな問題にはならないのがせめてもの救いです。
先に書いてしまいましたが、美優樹は親善大使コンテストで優勝した際のスピーチで、雪人に対して告白します。彼女にとっては一世一代の、自分の中にある勇気を総動員しての行動だったんですが、当の雪人は実感も湧かなきゃ、恋愛というものがどう言うものかすらよく分からないと言う感じで、なんとも頼りない。けど、美優樹のことは好きだし、彼女が言ったずっと一緒にいたいという気持ちは同じだったので、漠然とではありますが理解はしているようです。
雪人は馬鹿で世間ズレしていると周囲から言われているように、色々なことに対して無知です。それは日常的なことから、精神的な面まで、あらゆることへの欠落が見られます。でも彼は、そうした分からないを、分からないままにしてしまう傾向が非常に強く、理解することに対しての努力をしないんですね。分からないもんは仕方ないで物事を済ませ、説明する側が却って気を遣ってしまうと言う、読み手としては非常にイライラするパターンです。イモウトノカタチはSF色もある話なので、それに対する説明や解説が入ると、雪人は難しすぎてついて行けず、結果としてごく簡単なたとえ話に置き換わってしまうんです。ハッキリ言うとプレイヤーは雪人ほど馬鹿ではありませんし、彼のために一々説明が中断されるのは、正直どうかと思いました。
家族の手がかりを探す雪人と美優樹は、やがて封鎖地区における発掘作業を手伝うようになります。そこは旧実験施設があった場所であり、最も災害の被害を受けた、土砂に埋もれた廃墟です。そこ何かを感じたという雪人は、自分たちの家族に対する手がかりを得ようと、必死になって作業を手伝うのですが……恋人である美優樹はとある事への不安から、即座に賛同することが出来ませんでした。少し考えれば分かることなのに、それでも雪人は理解することが出来ない。彼女の気持ちを、汲み取ってあげることが出来ません。彼は、そういう男なんです。他ルートをやればよく分かりますが、雪人は自分の気持ちには正直なんですが、恋愛というものに相手がいることを、本質的な面で分かっていない節がある。愛は育むものと言いますが、彼はそれをどこまで理解しているのか、
相手が自分と異なる考えを持っているかも知れないというごく簡単な事実に、行き当たらないんですよ。だから彼は、最後の最後まで美優樹の真意に気付くことが出来なかった。でも、それは仕方ないことなのかも知れません。だって雪人には分からないことなんですから。
結果的に雪人たちは家族の手がかりを、タイムカプセルを発掘することに成功しました。けれどそれは、そこに書いてあったのは、美優樹が最も知りたくない事実、雪人と美優樹が兄妹であるという真実でした……
真実を知った美優樹は雪人との関係に終止符を打とうとします。彼女は真面目で、常識人で、ごく当たり前の倫理観を持っていましたから、既にやることやってしまった後とはいえ、兄妹である二人が恋人ではいられないと考えました。けど、美優樹は雪人を愛してしまったから、愛しているのに結ばれないことが耐えきれず、逃げ出してしまうのです。彼女が残した手紙から、遅れて事実を知る雪人ですが、彼はこの期に及んでも事実の全てを飲み込むことが出来ません。美優樹が悩んできたこと、苦しんできたことを一度も察することが出来なかった彼は、彼女が抱え込んできた全てを、いっぺんに受け止める羽目になったのです。色々なことが「一度に起きすぎなんだよっ!!」と怒鳴る雪人だけど、そうなったのは他でもない雪人自身のせいです。彼がもう少し、後一欠片でも頭を働かせていれば、こうはならなかったかもしれない。結局これは、美馬雪人が無知であることと、分からないことを分からないで済ませてきたことへの、しっぺ返しでしかないのです。でも、彼は自分を省みようとはしません。逃げだそうとしているのは美優樹であって、彼は知らなかっただけなのだから。無論、自分にも落ち度があったこと位は認めていますが。
結局雪人は美優樹を連れ戻すことに成功し、彼は美優樹が恋人だろうと妹だろうと好きな気持ちは変わらないと説得します。まあ、彼は恋愛感情もろくに分かっていない男ですから、恋人と妹の違いさえ、実は分かってないんじゃないかという気もしますが、そこがまあ、タイトルであるイモウトノカタチという奴なんですかね? 雪人は本当にろくでもないですが、自分が兄だと自覚した途端、生まれ変わったように美優樹を諭すもんだから、全く調子が良いというかなんというか……調子が良いというレベルの話じゃありません。
美優樹シナリオは、そこそこ上手くまとまっています。終盤の展開が早すぎることと、ややこじつけ気味にタイトルとの関連性を持ち出してきたところも含めて、まあ、こんなものだろうという気分にさせてくれる。作品の入口という意味では、丁度良いんじゃないでしょうかね? ルートロックされているミータシナリオに関するネタバレ要素があるにはあるんだけど、ぶっちゃけ皆分かっていたことだから、それほど意味があるものでもありません。むしろ、どうしてその設定にしちゃったのかと私は思うんだけど、これはミータルートで語ることにしましょう。
ちなみに最初の方で書いたバッドエンドとは、幻の理事長ルートのことです。ヒロイン3人に対してMAP選択時に均等な数だけ選択すると、フラグの足りなさから個別ルートに進むことが出来ず、兄妹が見つからないことに絶望した美優樹が帰ってしまうのです。元々期限付きの転校でしたし、彼女はそれほどメンタルが丈夫ではないですから、分からない話でもありません。まあ、他キャラのルートではしっかり残ってるんだけどね。美優樹という共通の目的を持った相手が去ったことに雪人はショックを受けるんですが、そこに理事長が現れて彼を叱責し、励ましてくれます。それが効いたのかは知りませんが、何を思ったか雪人は唐突に年下の男に興味はありませんか? と理事長を口説き始め、何と告白してしまうという凄まじいエンディングです。当然、その後が書かれることはないまた別の話なんだけど、何とコメントして良いのか、正直わかりませんね。
しばらくはイモウトノカタチ日記を書きます。なので、次回は澄稀あやかですね。このルートも結構やりやすいというか、分かりやすいシナリオなんですが、それについては明日じっくりと書くことにしましょう。
イモウトノカタチ-瀬名美優樹編-ということで、私はこのシナリオを一番最初か、あるいは一番最後にプレイすることをオススメします。というのも、この作品はルートロックが掛かっているため、最初にミータを攻略することが出来ません。ヨスガノソラにおける穹みたいに、誰か一人でもクリアすれば解禁されるという類いのものではなく、美優樹、あやか、千毬の3人を全てクリアすることで、初めてミータルートのロックが解除されるわけですね。ちなみに上記3人、どのルートにも進まないという選択肢もあるにはあるのですが、それは後述するバッドエンドに行ってしまうので、観てみたい人でもない限りは時間の無駄だと思います。
瀬名美優樹という少女は、主人公である美馬雪人が鵠見市において一番最初に出会う少女です。同年代で、共に災害孤児という境遇から親しくなり、箱入り娘であった美優樹は良い意味でも悪い意味でも行動力がある雪人を頼りにしていくというのが、序盤の流れです。体験版で語られた部分については掻い摘まんで話しますが、生き別れの家族、特に兄妹を捜したかった二人は鵠見市に留まり、お互いに協力し合いながら兄妹捜しを始めるんですね。ここまでは言ってしまえば共通ルートであり、特別美優樹編というわけではないのだけど、なんだかんだで、一番関わってくるのが彼女ですから、そのままの勢いで美優樹ルートに進んだ方が、私は自然だと思うんだよね。一応は、彼女がメインヒロインな訳だし。
イモウトノカタチは無駄に選択肢が多いエロゲで、今時珍しいMAP選択方式を採用しています。ただ、学内や寮内に限って言うと、数が多いだけでヒロインと遭遇するようなイベントもないので、ハッキリ言うと意味がありません。
さて、美優樹の個別ルートはお互いの兄妹捜しが軸となって話が進みます。二人ともそのために鵠見市にやってきたんだから当たり前の話ですが、災害被災という特殊な事情を抱える町や人の中で、二人は思うように活動することが出来ません。大っぴらに捜そうにも、被災者の気持ちを考えてあげてと、どこかで聞いたような文句で説教される始末。まあ、その説教自体はもっともなことですから良いのだけど、そのために雪人のウザいぐらいの積極性は殺され、思うように身動きが取れなくなってしまうんですね。
そこで考えたのが、兄妹の方からこちらを見つけて貰うという方法であり、雪人は鵠見市の親善大使コンテストに興味を示します。これは1年間鵠見市の広報活動をする男女ペアを決める大会のことで、まあ、客寄せパンダの一種です。余程の目立ちたがり屋でもない限りは断ることが多いらしいのだけど、雪人たちはこの親善大使として広報活動に参加すれば、自然と顔が売れてどこかにいるであろう兄妹の目にも留まるのではないかと、そう考えたわけです。
しかし、美優樹は箱入り娘にしてお嬢様学校通いでしたから、人前に出ることに対する抵抗感があります。要は恥ずかしがり屋なんですが、雪人は自分の都合や目的を優先するタイプですから、やや強引ながらも美優樹を説得し、二人で親善大使を目指すのでした。この流れで分かるのは、雪人が相手の都合よりも自分の都合を、勿論本人は良かれと思ってやっているのでしょうが、それを最優先に行動することが印象づけられます。彼はノリが良いように見えて、言動や行動に強引さがあり、それでいて他人の気持ちに気付きません。鈍感と言えば主人公にはありがちなタイプのように思えますが、雪人の場合は、そもそも他人をあまり気に掛けないんですね。こうした性格が後々問題になっていくのだけど、今の段階では少々ウザいぐらいに抑えられています。
主人公である美馬雪人には一つの設定があり、彼は実のところ美優樹やあやかといったクラスメイトよりも、年上なんだそうです。年上クラスメイトと言えばヨスガの亮平が思い出されますが、別に留年したとかそう言うのじゃなくて、災害に被災したときに大怪我をしてしまい、1年近く入院生活送っていたため入学が遅れてしまったと、まあ、そういうことらしい。
入学というのは小学校のことでしょうが、逆算すると15年前のことだから……あれ、20歳越えちゃいますね。当初の設定通り、10年前のことならしっくり来るのだけど、いや、エロゲには18歳以上のキャラしか出てこないとはいえ、何だろうこの違和感。災害から10周年を15周年に変えたのは、雪人が皆よりも入学が1年遅れたという設定から、明記していない年齢を逆算されないためなんだろうか。変なところに拘るもんだと思うけど、制作が分からしてみれば重要なことなのかな。私に言わせれば、あんな人間の出来ていない成人男子は嫌だと言いたいのだけど、この作品は美馬雪人という主人公にどこまで耐えきれるかというレベルに達しているほど、主人公が残念な作品なので……これに関しては後でみっちり書くつもりですが。
つまり、ここで重要となるのは雪人は皆よりも年齢が上と言うことで、彼にとっては美優樹は勿論、あやかなどのクラスメイトも年下の女の子であると言うことです。美優樹はそれまで似た境遇でありながらも雪人が兄であるはずがないと思っていました。だって彼は同学年であり、年齢は同じのはずでしたから。しかし、そうした前提が彼の告白、というには大袈裟なシーンによって崩れてしまい、美優樹はある種の疑惑を感じ始めます。これは本来、最初に雪人が気付くべき事だったんですが、何せ彼は筋金入りの馬鹿であり、人の気持ちを理解出来ない奴なので、美優樹の考えを察することもなく、シナリオは進んでいくことになります。そこに何が待ち受けているかも、理解しないままに。
親善大使コンテストに向けての特訓、コンテストは何故か男女ペアによる二人三脚なんだけど、それを行うにつれて雪人と美優樹の距離はどんどん縮まっていきます。美優樹は元々雪人に対する好感度が高いし、一番身近な男性でもありますから、惹かれるところが多いんでしょうね。正直、箱入り娘が最初に出会った男性を好きになっているだけのような気もしますが、まあ、惚れる理由なんてそんなもので良いのかも知れませんね。強引なところはあれど、このルートにおける雪人は世間ズレしているだけで、箍が外れている訳ではありませんから。
雪人は他人の気持ちに鈍感と言うより、自分のことだけしか考えていない部分が非常に強いので、美優樹の気持ちに気付くのも遅いです。何せ、美優樹から告白されても実感が湧かなかったぐらいですし。彼のこうした性格は、彼だけが知らぬ間に相手を傷つけているのだけど、どのルートも基本的にヒロインが雪人に惚れているわけですから、例外除いてそれほど大きな問題にはならないのがせめてもの救いです。
先に書いてしまいましたが、美優樹は親善大使コンテストで優勝した際のスピーチで、雪人に対して告白します。彼女にとっては一世一代の、自分の中にある勇気を総動員しての行動だったんですが、当の雪人は実感も湧かなきゃ、恋愛というものがどう言うものかすらよく分からないと言う感じで、なんとも頼りない。けど、美優樹のことは好きだし、彼女が言ったずっと一緒にいたいという気持ちは同じだったので、漠然とではありますが理解はしているようです。
雪人は馬鹿で世間ズレしていると周囲から言われているように、色々なことに対して無知です。それは日常的なことから、精神的な面まで、あらゆることへの欠落が見られます。でも彼は、そうした分からないを、分からないままにしてしまう傾向が非常に強く、理解することに対しての努力をしないんですね。分からないもんは仕方ないで物事を済ませ、説明する側が却って気を遣ってしまうと言う、読み手としては非常にイライラするパターンです。イモウトノカタチはSF色もある話なので、それに対する説明や解説が入ると、雪人は難しすぎてついて行けず、結果としてごく簡単なたとえ話に置き換わってしまうんです。ハッキリ言うとプレイヤーは雪人ほど馬鹿ではありませんし、彼のために一々説明が中断されるのは、正直どうかと思いました。
家族の手がかりを探す雪人と美優樹は、やがて封鎖地区における発掘作業を手伝うようになります。そこは旧実験施設があった場所であり、最も災害の被害を受けた、土砂に埋もれた廃墟です。そこ何かを感じたという雪人は、自分たちの家族に対する手がかりを得ようと、必死になって作業を手伝うのですが……恋人である美優樹はとある事への不安から、即座に賛同することが出来ませんでした。少し考えれば分かることなのに、それでも雪人は理解することが出来ない。彼女の気持ちを、汲み取ってあげることが出来ません。彼は、そういう男なんです。他ルートをやればよく分かりますが、雪人は自分の気持ちには正直なんですが、恋愛というものに相手がいることを、本質的な面で分かっていない節がある。愛は育むものと言いますが、彼はそれをどこまで理解しているのか、
相手が自分と異なる考えを持っているかも知れないというごく簡単な事実に、行き当たらないんですよ。だから彼は、最後の最後まで美優樹の真意に気付くことが出来なかった。でも、それは仕方ないことなのかも知れません。だって雪人には分からないことなんですから。
結果的に雪人たちは家族の手がかりを、タイムカプセルを発掘することに成功しました。けれどそれは、そこに書いてあったのは、美優樹が最も知りたくない事実、雪人と美優樹が兄妹であるという真実でした……
真実を知った美優樹は雪人との関係に終止符を打とうとします。彼女は真面目で、常識人で、ごく当たり前の倫理観を持っていましたから、既にやることやってしまった後とはいえ、兄妹である二人が恋人ではいられないと考えました。けど、美優樹は雪人を愛してしまったから、愛しているのに結ばれないことが耐えきれず、逃げ出してしまうのです。彼女が残した手紙から、遅れて事実を知る雪人ですが、彼はこの期に及んでも事実の全てを飲み込むことが出来ません。美優樹が悩んできたこと、苦しんできたことを一度も察することが出来なかった彼は、彼女が抱え込んできた全てを、いっぺんに受け止める羽目になったのです。色々なことが「一度に起きすぎなんだよっ!!」と怒鳴る雪人だけど、そうなったのは他でもない雪人自身のせいです。彼がもう少し、後一欠片でも頭を働かせていれば、こうはならなかったかもしれない。結局これは、美馬雪人が無知であることと、分からないことを分からないで済ませてきたことへの、しっぺ返しでしかないのです。でも、彼は自分を省みようとはしません。逃げだそうとしているのは美優樹であって、彼は知らなかっただけなのだから。無論、自分にも落ち度があったこと位は認めていますが。
結局雪人は美優樹を連れ戻すことに成功し、彼は美優樹が恋人だろうと妹だろうと好きな気持ちは変わらないと説得します。まあ、彼は恋愛感情もろくに分かっていない男ですから、恋人と妹の違いさえ、実は分かってないんじゃないかという気もしますが、そこがまあ、タイトルであるイモウトノカタチという奴なんですかね? 雪人は本当にろくでもないですが、自分が兄だと自覚した途端、生まれ変わったように美優樹を諭すもんだから、全く調子が良いというかなんというか……調子が良いというレベルの話じゃありません。
美優樹シナリオは、そこそこ上手くまとまっています。終盤の展開が早すぎることと、ややこじつけ気味にタイトルとの関連性を持ち出してきたところも含めて、まあ、こんなものだろうという気分にさせてくれる。作品の入口という意味では、丁度良いんじゃないでしょうかね? ルートロックされているミータシナリオに関するネタバレ要素があるにはあるんだけど、ぶっちゃけ皆分かっていたことだから、それほど意味があるものでもありません。むしろ、どうしてその設定にしちゃったのかと私は思うんだけど、これはミータルートで語ることにしましょう。
ちなみに最初の方で書いたバッドエンドとは、幻の理事長ルートのことです。ヒロイン3人に対してMAP選択時に均等な数だけ選択すると、フラグの足りなさから個別ルートに進むことが出来ず、兄妹が見つからないことに絶望した美優樹が帰ってしまうのです。元々期限付きの転校でしたし、彼女はそれほどメンタルが丈夫ではないですから、分からない話でもありません。まあ、他キャラのルートではしっかり残ってるんだけどね。美優樹という共通の目的を持った相手が去ったことに雪人はショックを受けるんですが、そこに理事長が現れて彼を叱責し、励ましてくれます。それが効いたのかは知りませんが、何を思ったか雪人は唐突に年下の男に興味はありませんか? と理事長を口説き始め、何と告白してしまうという凄まじいエンディングです。当然、その後が書かれることはないまた別の話なんだけど、何とコメントして良いのか、正直わかりませんね。
しばらくはイモウトノカタチ日記を書きます。なので、次回は澄稀あやかですね。このルートも結構やりやすいというか、分かりやすいシナリオなんですが、それについては明日じっくりと書くことにしましょう。
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