イモウトノカタチ-澄稀あやか編-
2012年8月31日 イモウトノカタチ
イモウトノカタチ感想レビュー2回目と言うことで、本来であれば今日が正式な発売日なんですよね。勿論、私も横浜や秋葉原に出掛けて店舗予約していた分を回収してきましたが、どの店舗でもやはりこの作品をメインに売っている印象が強く、売上本数は相当なものになりそうです。まあ、売れた作品が必ずしも良作であるとは限らないわけですが、イモウトノカタチは買った先から売りに出されているのか、ヨスガノソラと同じく買い取り価格が暴落しており、このままいけば在庫過多で買い取り拒否になるかもしれません。週明けには、二束三文となっていることでしょう。
まあ、そんな話はどうでも良いとして、今回は澄稀あやか編になります。新作では唯一ハッシーこと橋本タカシが原画を担当しているヒロインで、体験版の時点では声優の演技や声について難があるのではないかと一部で言われていました。私もその一人ですが、これに関しては慣れてしまえば、さほど問題にはならないでしょう。独特な声ではありますけど、体験版の頃に比べれば安定しているような気もするし。
あやかというヒロインは主人公のクラスメイトであり、市の有力者である澄稀製薬の令嬢です。つまり、俗に言うお嬢様キャラな訳ですが、一般的なお嬢様キャラみたく高飛車な面は一切なく、かといってヨスガノソラの渚さんみたいな、淑やかな少女という感じでもない。常識人であるところは同じですが、送迎車による送り迎えもありませんし、お嬢様っぽく各種習い事に大忙しという感じでもなく、放課後や学校がないときは街をブラブラしているというのが彼女の日常。たまきんこと晴哉や、ロボットであるミータがぶっ飛んだ存在であるためツッコミ役に回ることが多く、この辺りは渚さんに近いものがありますか。
主人公の雪人とあやかは、何故か彼女が白鳥寮の主人公の部屋に居座っていたことから交流を持つようになりますが、あやかは基本的な面で常識人であり、雪人と違い世間ズレしていませんから、謝るべき所はきちんと謝りますし、仲良くなるのは比較的早いです。晴哉曰くあやかはぼっちだったことがあるらしく、ミータや晴哉と出会うまでは、割と孤独だったらしい。まあ、市の有力者である大企業の令嬢ですからね。本人の性格はともかく、気負いするところもあるのでしょう。分からなくはない話です。
あやかと主人公の関係が密接になっていく過程で重要になってくるのは、主にあやかの家庭環境になります。要は澄稀家なわけですが、ヨスガノソラがそうであったように、両親を始めとした大人が積極的に絡んでくるわけではなく、軸となるのはあやかの兄である順也との関係性です。このルートとシナリオの特徴的な面として、メインが雪人の妹探しではないことが上げられます。彼は他のルートだと、それはもうウザくてウザくて仕方ないぐらい、自分の妹を探すことへ躍起になっているのですが、あやかルートに限っては明確に彼女の側に問題があるため、それを解決するために奔走し始めるわけです。
雪人は独り善がりで、大変自分勝手な性格をしていますが、あやかシナリオでは彼女の境遇に同情し、率先して協力してくれるんですね。この時点で、他ルートの彼と微妙な違いが出てきます。自分とは関係ない他人の、他人と言っても友達ですが、その子のために自らの目的を一時置いてまで助けてくれるという、比較的まともな行動を取ります。これがどれだけ貴重なことかというのは、他ルートを進めて行くにつれて分かるのですが、あやかに対する手助けにも彼特有の強引さが見られる辺り、おそらく美馬雪人という少年は、相手の心情を忖度することが出来ないんでしょうね。彼が常に重要視しているのは自分自身の都合と感情であり、相手の気持ちを汲み取ったり、受け入れたりしているように見える場面でも、結局は自分のことを第一に考えているのが分かります。ただ、あやかルートに関しては、あくまで人助けをしているわけだから、その強引さが男らしさにすり替わったかのような印象を受けるんですね。
まあ、少し嫌な書き方をしてしまいましたが、自分のことへ親身になってくれて、尚且つ助けてくれる相手に心を許さないはずもなく、あやかが雪人に惹かれる過程というのは、そのスピードの早さはともかくとして、割と自然な流れになっています。ろくにツンツンする間もなくデレデレになっていますが、そこはあやかチョロいということにしておきましょう。
さて、あやかが抱える問題というのは、表面的なことを言えば家庭環境にあります。雪人がそもそも彼女を助けるようになったのは、あやかが町中で黒服の集団に追われていたからです。お嬢様だけに誘拐かと思えば、そういうわけではないらしく、どうにも歯切れの悪いあやかは、自分が家族と、特に兄と折り合いが悪いことを告白します。あやかの兄である順也は、しばし外国に遊学していたのですが、最近になって帰国し、横柄かつ尊大な態度であやかに接し、特権階級特有の嫌みな性格で、妹いびりをしていると言います。
それが嫌であやかは家に帰らず、街をブラブラしては時間を潰すという毎日を送っているんですが、ヨスガノソラでは奈緒が似たようなことをしていましたね。もっとも彼女の場合、家族との折り合いが悪いのは自業自得であり、一方的な被害者であるあやかとは、事情が全く異なりますけど。
順也の嫌みったらしさは、馬鹿な雪人でも分かるぐらいハッキリとしたもので、彼があやかに送りつけてきたメールを読んだだけでも、滲み出る悪意を感じ取れたほどでした。雪人は自分の感情に対して非常に正直な男ですから、自分の考えや精神にそぐわないと見れば、例え会ったこともない相手だろうと即座に嫌うことが出来るのです。無論、順也が嫌な奴であることはミータの証言からも分かっていることですし、現実にあやかが困っているわけですから、疑いようがないのですけどね。私は当初、もしかすれば順也にも筋の通った意見や、不器用ながら妹を想う感情があるのかも知れないと考えていたのだけど、そんなことは全然ないどころか、最初から最後まで嫌みな奴という印象を残しました。思うに、あやかルートの雪人がまともに見えるのは、もっと直接的に人の嫌悪感を逆なでする順也というキャラがいたからでもあるんじゃないでしょうか? 要は、より目立つ嫌われ者がいたから、そっちの方が目に付いただけとも言える。正直、他ルートの雪人は順也より質が悪いことをしてしまうのだけど、あやかルートではひたすら彼女を守り助ける、心強い恋人であり続けます。
あやかにも一応それなりの秘密があるんですけど、これも体験版や各種情報が後悔されていく内に囁かれていた、養女説そのまんまでした。なんとも分かりやすいというか、あやかは災害孤児だったところを澄稀さんちのおばあさん、つまり義理の祖母に保護されたんですね。幼かったからなのか、それとも被災時に記憶障害でも起こしていたのかは知りませんが、あやかはその事実を知らず、祖母が銀行の貸金庫に残した手紙から真実を知ることになります。彼女は祖母が亡くなるまで、基本的に祖母の家で暮らしていたという過去があり、それが両親や兄との間に距離感を生じさせる原因にもなっていました。
別にあやかの両親は祖母が保護した災害孤児である彼女を疎んでいたわけでも、嫌っていたわけでもないらしいのですが、澄稀あやかという存在を否定されたあやかは半狂乱になり、自分自身を保てなくなりました。そりゃそうでしょう、元々今の自分が本当の自分でないことを知っている雪人や美優樹と違って、あやかは澄稀家の娘であることが事実であり、当然のことだと思ってきたわけですから、ショックも大きいはずです。けれど、その手紙にはもっと大きな秘密が、気付いてはいけない事実が記されていました。雪人に言わせれば隠しておく必要のないことなんですが、あやかは優しい性格をしていました。彼女は家柄や身分といったものへの執着とは、常に無縁の位置にいましたが、向こうがそうじゃないことを熟知していたからです。つまり、兄順也プライドの高さが、何を持って成り立っているのか……そうです、養子は決してあやかだけじゃなかったのです。兄である順也もまた、同じ立場にあった。それを知らずに本人は、ずっとあやかをいびり倒していたのです。まったく、どうしようもない奴ですね。彼のあやかに対する所業に耐えきれなくなった雪人が全てを暴露してしまうんですが、これに関しては雪人の独断専行が強いです。あやかは兄のプライドが崩壊することを恐れて最後の最後まで黙っていたんだけど、自分の感じた怒りを発露したかった雪人が、ぶちまけちゃったわけです。
そしてあやかの予想通り順也のプライドとアイデンティティーは崩れ去り、ショックで精神崩壊寸前まで行くのだけど……それを助けたのもまた、妹あやかだったという話。まあ、本当にもう良く出来た娘だ。
あやかシナリオは、妹探しという本筋が絡まない分、あやかと雪人の交流に重きが置かれており、そう言った部分では一番ラブコメらしい内容になっています。あやかがバイト初めて、なにやらメイド服っぽいウエイトレスになったりとか、平凡ながらも流れにまとまりがあるんですよね。気になる点があるとすれば千毬であり、公式サイトの字音物相関図によると、千毬は美優樹に対し雪兄が取られる?と危機感や焦りのようなものを持っていたはずなんですが、実際に作品をプレイしてみると、そうした嫉妬心や独占欲を見せるのは、主にこのあやかシナリオであり、美優樹シナリオではそうした面がまるで書かれません。千毬にとっては少し辛い内容でもあるんだけど、この子にも個別ルートはありますから、そっちで報われることを祈りましょう。
そんなわけで、次回は雪人の義妹である美馬千毬について書きます。何かと影が薄い、話題にもなっていないルートですが、ここら段々と本筋に入っていくはずだったんだよね……本当なら。まあ、詳しくは明日書きます。
まあ、そんな話はどうでも良いとして、今回は澄稀あやか編になります。新作では唯一ハッシーこと橋本タカシが原画を担当しているヒロインで、体験版の時点では声優の演技や声について難があるのではないかと一部で言われていました。私もその一人ですが、これに関しては慣れてしまえば、さほど問題にはならないでしょう。独特な声ではありますけど、体験版の頃に比べれば安定しているような気もするし。
あやかというヒロインは主人公のクラスメイトであり、市の有力者である澄稀製薬の令嬢です。つまり、俗に言うお嬢様キャラな訳ですが、一般的なお嬢様キャラみたく高飛車な面は一切なく、かといってヨスガノソラの渚さんみたいな、淑やかな少女という感じでもない。常識人であるところは同じですが、送迎車による送り迎えもありませんし、お嬢様っぽく各種習い事に大忙しという感じでもなく、放課後や学校がないときは街をブラブラしているというのが彼女の日常。たまきんこと晴哉や、ロボットであるミータがぶっ飛んだ存在であるためツッコミ役に回ることが多く、この辺りは渚さんに近いものがありますか。
主人公の雪人とあやかは、何故か彼女が白鳥寮の主人公の部屋に居座っていたことから交流を持つようになりますが、あやかは基本的な面で常識人であり、雪人と違い世間ズレしていませんから、謝るべき所はきちんと謝りますし、仲良くなるのは比較的早いです。晴哉曰くあやかはぼっちだったことがあるらしく、ミータや晴哉と出会うまでは、割と孤独だったらしい。まあ、市の有力者である大企業の令嬢ですからね。本人の性格はともかく、気負いするところもあるのでしょう。分からなくはない話です。
あやかと主人公の関係が密接になっていく過程で重要になってくるのは、主にあやかの家庭環境になります。要は澄稀家なわけですが、ヨスガノソラがそうであったように、両親を始めとした大人が積極的に絡んでくるわけではなく、軸となるのはあやかの兄である順也との関係性です。このルートとシナリオの特徴的な面として、メインが雪人の妹探しではないことが上げられます。彼は他のルートだと、それはもうウザくてウザくて仕方ないぐらい、自分の妹を探すことへ躍起になっているのですが、あやかルートに限っては明確に彼女の側に問題があるため、それを解決するために奔走し始めるわけです。
雪人は独り善がりで、大変自分勝手な性格をしていますが、あやかシナリオでは彼女の境遇に同情し、率先して協力してくれるんですね。この時点で、他ルートの彼と微妙な違いが出てきます。自分とは関係ない他人の、他人と言っても友達ですが、その子のために自らの目的を一時置いてまで助けてくれるという、比較的まともな行動を取ります。これがどれだけ貴重なことかというのは、他ルートを進めて行くにつれて分かるのですが、あやかに対する手助けにも彼特有の強引さが見られる辺り、おそらく美馬雪人という少年は、相手の心情を忖度することが出来ないんでしょうね。彼が常に重要視しているのは自分自身の都合と感情であり、相手の気持ちを汲み取ったり、受け入れたりしているように見える場面でも、結局は自分のことを第一に考えているのが分かります。ただ、あやかルートに関しては、あくまで人助けをしているわけだから、その強引さが男らしさにすり替わったかのような印象を受けるんですね。
まあ、少し嫌な書き方をしてしまいましたが、自分のことへ親身になってくれて、尚且つ助けてくれる相手に心を許さないはずもなく、あやかが雪人に惹かれる過程というのは、そのスピードの早さはともかくとして、割と自然な流れになっています。ろくにツンツンする間もなくデレデレになっていますが、そこはあやかチョロいということにしておきましょう。
さて、あやかが抱える問題というのは、表面的なことを言えば家庭環境にあります。雪人がそもそも彼女を助けるようになったのは、あやかが町中で黒服の集団に追われていたからです。お嬢様だけに誘拐かと思えば、そういうわけではないらしく、どうにも歯切れの悪いあやかは、自分が家族と、特に兄と折り合いが悪いことを告白します。あやかの兄である順也は、しばし外国に遊学していたのですが、最近になって帰国し、横柄かつ尊大な態度であやかに接し、特権階級特有の嫌みな性格で、妹いびりをしていると言います。
それが嫌であやかは家に帰らず、街をブラブラしては時間を潰すという毎日を送っているんですが、ヨスガノソラでは奈緒が似たようなことをしていましたね。もっとも彼女の場合、家族との折り合いが悪いのは自業自得であり、一方的な被害者であるあやかとは、事情が全く異なりますけど。
順也の嫌みったらしさは、馬鹿な雪人でも分かるぐらいハッキリとしたもので、彼があやかに送りつけてきたメールを読んだだけでも、滲み出る悪意を感じ取れたほどでした。雪人は自分の感情に対して非常に正直な男ですから、自分の考えや精神にそぐわないと見れば、例え会ったこともない相手だろうと即座に嫌うことが出来るのです。無論、順也が嫌な奴であることはミータの証言からも分かっていることですし、現実にあやかが困っているわけですから、疑いようがないのですけどね。私は当初、もしかすれば順也にも筋の通った意見や、不器用ながら妹を想う感情があるのかも知れないと考えていたのだけど、そんなことは全然ないどころか、最初から最後まで嫌みな奴という印象を残しました。思うに、あやかルートの雪人がまともに見えるのは、もっと直接的に人の嫌悪感を逆なでする順也というキャラがいたからでもあるんじゃないでしょうか? 要は、より目立つ嫌われ者がいたから、そっちの方が目に付いただけとも言える。正直、他ルートの雪人は順也より質が悪いことをしてしまうのだけど、あやかルートではひたすら彼女を守り助ける、心強い恋人であり続けます。
あやかにも一応それなりの秘密があるんですけど、これも体験版や各種情報が後悔されていく内に囁かれていた、養女説そのまんまでした。なんとも分かりやすいというか、あやかは災害孤児だったところを澄稀さんちのおばあさん、つまり義理の祖母に保護されたんですね。幼かったからなのか、それとも被災時に記憶障害でも起こしていたのかは知りませんが、あやかはその事実を知らず、祖母が銀行の貸金庫に残した手紙から真実を知ることになります。彼女は祖母が亡くなるまで、基本的に祖母の家で暮らしていたという過去があり、それが両親や兄との間に距離感を生じさせる原因にもなっていました。
別にあやかの両親は祖母が保護した災害孤児である彼女を疎んでいたわけでも、嫌っていたわけでもないらしいのですが、澄稀あやかという存在を否定されたあやかは半狂乱になり、自分自身を保てなくなりました。そりゃそうでしょう、元々今の自分が本当の自分でないことを知っている雪人や美優樹と違って、あやかは澄稀家の娘であることが事実であり、当然のことだと思ってきたわけですから、ショックも大きいはずです。けれど、その手紙にはもっと大きな秘密が、気付いてはいけない事実が記されていました。雪人に言わせれば隠しておく必要のないことなんですが、あやかは優しい性格をしていました。彼女は家柄や身分といったものへの執着とは、常に無縁の位置にいましたが、向こうがそうじゃないことを熟知していたからです。つまり、兄順也プライドの高さが、何を持って成り立っているのか……そうです、養子は決してあやかだけじゃなかったのです。兄である順也もまた、同じ立場にあった。それを知らずに本人は、ずっとあやかをいびり倒していたのです。まったく、どうしようもない奴ですね。彼のあやかに対する所業に耐えきれなくなった雪人が全てを暴露してしまうんですが、これに関しては雪人の独断専行が強いです。あやかは兄のプライドが崩壊することを恐れて最後の最後まで黙っていたんだけど、自分の感じた怒りを発露したかった雪人が、ぶちまけちゃったわけです。
そしてあやかの予想通り順也のプライドとアイデンティティーは崩れ去り、ショックで精神崩壊寸前まで行くのだけど……それを助けたのもまた、妹あやかだったという話。まあ、本当にもう良く出来た娘だ。
あやかシナリオは、妹探しという本筋が絡まない分、あやかと雪人の交流に重きが置かれており、そう言った部分では一番ラブコメらしい内容になっています。あやかがバイト初めて、なにやらメイド服っぽいウエイトレスになったりとか、平凡ながらも流れにまとまりがあるんですよね。気になる点があるとすれば千毬であり、公式サイトの字音物相関図によると、千毬は美優樹に対し雪兄が取られる?と危機感や焦りのようなものを持っていたはずなんですが、実際に作品をプレイしてみると、そうした嫉妬心や独占欲を見せるのは、主にこのあやかシナリオであり、美優樹シナリオではそうした面がまるで書かれません。千毬にとっては少し辛い内容でもあるんだけど、この子にも個別ルートはありますから、そっちで報われることを祈りましょう。
そんなわけで、次回は雪人の義妹である美馬千毬について書きます。何かと影が薄い、話題にもなっていないルートですが、ここら段々と本筋に入っていくはずだったんだよね……本当なら。まあ、詳しくは明日書きます。
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