イモウトノカタチ感想レビューも、いよいよ最後になりました。物語を締めくくるヒロイン、神志那真幸ルートへと突入したのです。まさか、ミータルートから地続きで繋がっているとは思いませんでしたが、どうやらこの二人のルートは共同みたいです。もっともミータは機能停止をしてしまいましたから、普通に考えればミータから真結希へ、ヒロインが入れ替わったと考えるのが妥当ですけど、そんな簡単な話でもないみたい。

「初めまして……清宮真結希、ううん……」

「神志那真幸、と言います。よろしくお願いしますね、幸人お兄ちゃん、美幸お姉ちゃん」


律佳から紹介された少女は、自らを神志那真幸と名乗りました。それは雪人と美優樹が探していた妹の名前であり、彼女はこの特別病棟に長期入院している患者でした。ここで最初に注目したいのが、真結希は最初から、真幸として登場しているんですね。この日記では書き分けが面倒なので、幸人は雪人、美幸は美優樹と表記しているのだけど、二人も自分たちの本名が分かって以降は、それぞれ本名を使用するようになっています。だから、あやかは神志那さんと呼ぶし、雪人のことは幸人と表記されるわけです。
でも、真結希は二人が本来の名前を取り戻した後に現れた存在であり、登場時した時点で自分の本名を知っています。だから、テキストでも常に真幸表記であり、彼女が真結希であるシーンは、意外なほど少ないんですね。雑誌や公式サイトなどの事前情報で、この子は清宮真結希であると知っていた私には結構違和感が強くて、戸惑いのような物を感じないでもなかったんだけど、神志那が本名なのだから仕方ない。ただ、個人的には真幸よりも真結希の方が字面が可愛いと思うので、この日記では雪人たちと同じく仮の名前をメインに書かせて貰います。

「ずっと会いたいと思ってました。夢に見るだけのお兄ちゃんと、双子のお姉ちゃん」
寝たきりで、自分で身体一つ起こすことが出来ない真結希は、全身麻痺を患っていました。正確には指先程度は動かせるようになったそうなんですが、逆に言えば、指先一つしか動かせないことになります。涙を流しても、その涙を自分で拭くことも出来ない。それが清宮真結希の現実でした。
唐突のこと、何故ミータの関係者が自分たちと真結希を、真幸を名乗る少女と引き合わせるのか不思議でならない雪人。混乱するのも無理はないし、信じていないわけじゃないと言い繕う雪人を、真幸は静かに制します。彼女とて、事実を知ったときは信じられなかったのだから。
「ずっと夢に見ていた人が、私のお兄ちゃんだったなんて」
訳の分からないこと、少なくとも雪人にはそう感じられた言動に、彼は自分のことを知っているのかと問いただします。すると、なんとか表情だけは動かすことの出来る真結希は拗ねたように唇を尖らせました。雪人は真結希に対して「君」という他人行儀な呼称を使いました。妹相手には使わない呼び方ですし、記憶にないだけで二人は初対面じゃありません。でも、雪人は他人行儀な姿勢を崩すことが出来ませんでした。
けど、何も真結希はそうした態度に怒っているわけではないのです。彼女が不満を見せた理由は、すぐに判明します。
「私はご覧の通りの寝たきりで、私の最初の記憶はこの部屋の天井から始まりました」
自分の過去を語り出す真結希。彼女は災害に被災した後、15年もの長きに渡って、この特別病棟の一室で治療を受けていたのです。一度たりとも病院の外に出ることはなく、娯楽と言えば室内に配置されたスクリーンで映画を観るぐらい。そんな生活を15年間、ずっと繰り返してきたと言います。「それが私の世界のすべてでした」と言い切る真結希の言葉に、嘘偽りはありません。ですが、嘘偽りでないからこそ、雪人や美優樹には想像も出来ない世界だったのです。

真結希は自分がそうなってしまった原因を、感染症による後遺症らしいと話します。あまり具体的でないのは、おそらくハッキリとした病名が定まっていないからなのでしょう。あるいは仮称ぐらいは律佳が決めているかも知れませんが、様々な事情から、それを真結希本人には告げていないんだと思います。真結希と律佳の繋がりは、言ってしまえばミータよりも強いものがあります。何せ過ごしてきた年数に10倍近くの差がありますし、ミータの存在理由を考えると、真結希の方により大きな気持ちを傾けていると言っても過言ではありません。けれど、そんな関係にありながらも、律佳は真結希に自分の知っていることの全てを話していないのです。
「脳以外の神経がすべて壊れて、筋肉そのものは無事なのに、それを動かす信号が伝わらなくて……機械に繋いで無理矢理生かされていたらしいです」
脳死とは逆に、脳だけが生きている状態。自身をそう定義する真結希の言葉は、雪人にとって欠片も理解できないものでした。ショックが大きすぎて、というわけではありません。単純に彼の知能が真結希の説明について行けないのです。彼に分かったことと言えば、その話が笑いながら話すような内容でないと言うことと、真結希にとってそうした不幸な境遇が、既に日常と化していたことだけでした。
この時点で、雪人は真結希という存在が分からなくなりました。これは仕方がないことかも知れませんが、健常者としていき、田舎の野山を駆けまわり、バイトに勤しんでいた彼には寝たきり少女の生活など理解できるはずもなく、屈託のない態度を取る真結希に超然としたものを感じても、不思議はないでしょう。すべては15年前に起きた、鵠見豪雨災害による爪痕の一つ。
しかし、それならば何故、真結希は自分が神志那真幸であることを知っているのか? 雪人の疑問に、真結希はこう答えます。
「タイムカプセルです。ミータちゃんが見つけた、タイムカプセルのデータを律佳さんが見て――」
ミータという名前に反応する雪人。どうして真結希がミータのことを知っているのか。何故、その名前が今になって出てくるのか? 混乱する雪人に、真結希はゆっくりと事実を告げるのでした。
「それは私が、ミータちゃんが介護する対象だからです」
衝撃の事実ですが、それを反復する雪人の地の文はそれは私が、ミータちゃんを介護する対象だからですになっています。いつから真結希がミータの介護する人になったんだという話だけど、まあ、これも誤字ですね。誤字を繰り返し言われてなんと言えない気分だけど、コピペしたんだろうか。

話を戻して、一体真結希にとってのミータとはなんなのか? 曰く、ミータは真結希のリハビリをサポートしていたと言います。
「より正確に言えば、私が体の動かし方を覚えるための、仮の肉体なんです」
唖然とするような内容を前に、雪人は即座に「よく分からない」と言います。彼の知能レベルでは、どうやら理解できなかったようです。真結希はそんな雪人に対して懇切丁寧に、自分の置かれた現状と、ミータの役割を解説しました。
「人間は適応力の高い生き物で、自分が生きている環境に合った体に変わろうとします」
例えば寝たきりの人間は、体を動かす必要がないので殆どの筋肉がなくなります。効率良く筋肉を動かす方法も忘れるし、軟骨が固まるから関節も動かなくなる。
「私なんて、体が動くということがどういうことなのかも、よくわかりません」
手足がどういうものかすら、自分の体の一部とさえ思えない真結希。神経が通っていないのですから、それも当然の話でしょう。相変わらず雪人は理解できていませんが、全身麻痺によって、痛みや熱さ、重たさなどの触覚すら失っていた真結希にとって、世界とはただ見たり聞いたりするだけものでした。ほんの、1年前までは。
「律佳さんは、私の主治医として15年間治療を続けてくれました」
律佳と真結希の繋がりの深さには、それを培うだけの年月がありました。15年間、律佳は真結希を治すために様々なことをしてきたといいます。後遺症の原因を探り、壊れた神経を修復する方法を研究し、実践と失敗を繰り返し……15年とは、そうして律佳が真結希と共に歩み続けてきた時の流れでもあったのです。

「諦めずにずっと私の側で、私を励ましながら、絶対に直るって何度も何度も約束して……約束を果たしてくれたんです」
律佳の尽力もあり、真結希の壊れた神経を繋ぎ治すことには成功しました。これによって機械に繋がれて無理矢理生かされていた彼女は、それがなくても生きられるぐらいには、回復したのです。僅か、1年前の話ですが。
物心ついたときからずっとベッドに上にいた彼女は、前述の説明通り、体の動かし方を知りませんでした。一度も動いたことのない人間に動けといっても、感覚としてそれを理解することが出来ないのでしょう。14年間、手足の存在すら実感できなかったのに、それをいきなり認識することなど出来ません。腕を動かしてご覧と言われたところで、そんなものは、今まで真結希の体にはなかったんですから。
「だから律佳さんは、ミータちゃんを作ってくれたんです」
淡々と、真結希は核心を語り始めます。
「ミータちゃんは、体の動かし方を知らない私の脳に、体の動かし方を教えるための機械でした」
ミータの体の中には、真結希と同じ神経網があった。故にミータが活動しているときの、脳の反応や神経網の状態は、私が体を動かしているときと同じ状態になると言います。そして、その蓄積されたデータを真結希の体で再現することで、真結希自身が体を動かしていたことにしてしまうと言うのが、ミータの本当の役割だったのです。全ては真結希のため、彼女のための活動データを収集することこそ、ミータの行っていた実験だった。かつて律佳はミータを誰かの身代わりではないと言いました。それもそのはず、ミータはあくまで真結希のサポートをするためだけに作られた存在であり、そのための機械だったのです。
真結希はミータのことを、自分のために作られた機械だと認識しています。事実、ミータは本人こそ知りませんでしたが、真結希のためだけに作られ、彼女のためだけに存在していたと言ってもいいでしょう。だってそれが、ミータの役割だったのだから。
語られた真実に対して、雪人は何も言えません。案の定、彼は何一つ理解することが出来ませんでした。「すみません、説明が下手でしたね」と謝ってしまう真結希ですが、これは単に雪人が自他共に認める馬鹿なだけです。そして、真結希は雪人が馬鹿であることも知っていました。

それは何故か? より踏み込んだ内容に差し掛かろうとしたとき、真結希の体は限界を迎えました。雪人や美優樹の感覚ではさして長くもない会話も、真結希にとっては重労働に等しい行為でした。話したりないこと、ミータとの関係において一番重要な部分を話す前に、真結希は疲労から眠りについてしまいました。
「君たちさえよければだが、これからもあの子に会いに来てやって欲しい」
病室の外で待機していた律佳はそのように言いますが、彼女の言葉は裏を返せば、嫌なら来なくても構わないと言っているようなものです。重病患者である真結希を前にして言葉をなくした雪人と美優樹を、やはり気遣っているのでしょう。逃げるなら、引き返すなら今だと、暗にそう言っているのかもいるのかも知れません。けれど、律佳の中にはやっと再会できた兄妹に、真結希の支えとなって欲しい気持ちもありました。既に真結希が回復する準備は整っており、後は彼女の意思次第で、これまでの時間を取り戻す勢いで回復が可能だというのです。それもこれもミータによる実験の成果な訳ですが、重すぎる事実を前に、雪人と美優樹は言葉を発することは出来ず、頷き返すことでしか答えられませんでした。雪人に至ってはなにが起きたのか? なにを話されたのか? 誰と会っていたのかすら理解できなくなっていたのです。要するに、頭が現実を受け止めきれなかったんですね。
「ねえ、お兄さん……あの人、本当に真幸なのかな……?」
帰り道、路面電車を途中で降りた美優樹は、雪人にそのようなことを言い出しました。やっと再会できた双子の妹を「あの人」と呼び、兄妹であることの真意すら疑っています。酷い話のようですが、美優樹にしたところで突然自分の前に現れた真結希の存在を、受け止めきれないでいたのでしょう。彼女のシナリオのラストがそうであったように、雪人にしろ美優樹にしろ、真幸はどこかで元気に生きているものと思っていました。兄妹の無病息災を願うのは当然のことですが、悲しきかな、二人が会いたかったのは元気な姿の真幸であって、病院で寝たきりの真結希などではなかったのだから。
真結希がそれに対してどう思うのかは分かりませんが、律佳はそれを考慮したからこそ、君たちが良ければと前置きをしたんでしょうね。現に美優樹は、真結希の存在そのものを信じ切れないでいた。

「わからない。でも疑う理由はないかなって、思う」
また、雪人の分からないが始まりました。
「事情とかは全然わからないけど、あの子が良い子なのはよくわかったから」
そういう問題じゃ、ないと思います。真結希が無理をしてまで語ったことを、雪人は一欠片も理解していませんでした。勿論、真結希が良い子であり、自分たちを騙すような相手でないことは認識したようですが、雪人の低すぎる知能では真結希の話は大きすぎて、理解どころか想像の範囲にさえ収まっていないのです。体のこと、ミータのこと、二人の関係。全てが明らかになったわけではないにせよ、真結希は自分に可能な限り、疲れて寝込んでしまうまで、必死で自分のことを伝えようとしました。再会した兄妹に、やっと会えた兄に、自分を知って貰いたかったのでしょう。
「やっぱり、よくわからないよ」
でも、雪人は馬鹿なんです。どうしようもなく、彼は頭が悪かった。これまで何人もの人が、彼に難しい話を、出来るだけ簡単に話そうとしてきました。けれど、その度に雪人は分からないで話を済まし、より簡単なものに話を置き換えてきました。そんな彼に真結希が生きてきた、歩むことすら出来なかった15年など、分かるわけもないのです。無論、困惑や戸惑いはあるのでしょう。兄妹とはいえ、殆ど初対面と言っても差し支えなく、あれだけ会いたがっていた真結希と再会できたのに、雪人は喜ぶことすら出来ませんでした。
「気持ちが追いついていかないよ」
美優樹の言葉は、彼女の心情を過不足なく表現していました。彼女は雪人と違って馬鹿ではありませんから、真結希の話に多少は理解できることもあったはずなのですが、それ故に壮絶な人生を味わってきた彼女を、自分の双子として受け入れることが出来ないでいました。雪人は、真結希にまた会わなければ行けないと言いました。それだけは間違ってないと、これに対しては美優樹も同意します。
わからないことだらけだけど、だからこそ、わかるまで何度でも繰り返すしかないから。
こうした雪人の決意に、私が少なからず彼を見直したのは事実です。といっても、多少は物事をマシに考えられるようになったぐらいのもので、どうして今までの人生でそれをしてこなかったのかと言いたいですけど、それに関しては真結希が雪人の妹かも知れないからなんでしょうね。まだ認めたわけではありませんが、妹に対すると兄としての意識が、無意識に出ていたのかも知れません。要するに妹だけは特別ってことですけど、まあ、彼が少なからず努力するようになったのだから、そこは素直に褒めてあげるべきでしょう。いつまで続くのか、という不安は勿論ありますけど……

行動するなら早いほうがいい。もともと考えるのは苦手なんだ。
雪人に少しでも期待した私が馬鹿だったんでしょうか? 彼は翌日になって、もう考えることを放棄して行動することを選びます。美優樹に自分の意志を伝えに行こうとしますが、彼女は部屋の中で着替え中。朝だから当然の話ですが、雪人はなんと「ちょっと待って――」という美優樹の言葉を無視します。妹とはいえ、つい先日までは他人だった女の子の部屋です。明確に拒否されているのに、雪人はどうどうと扉を開けて、「あ、ごめん。着替え中だったのか」と何でもないことのように言います。全裸の美優樹を前にして、です。
礼儀として扉を閉める雪人ですが、当然美優樹の気持ちは収まりません。待ってと言ったのに、何故待ってくれなかったのか? 怒る美優樹に、雪人は着替え中だとは思っていなかったと弁明します。朝なのだから当然だと怒鳴る美優樹に、「でも、ノックはしたし……」と言い返す雪人。ノックに対しての返事を聞かなかったくせに、この男はなにを言っているんでしょうか? 美優樹の怒りは高まる一方ですが、そこにトドメの言葉が降り注ぎました。
「俺たち兄妹なんだから、そんなに気にすることない――」
兄妹だから良いというものではありませんし、デリカシーがないという以前の問題です。けれど、このシーンで重要なのは、もっと別のことです。即ち雪人は、美優樹に女としての色気を感じなくなっていたのです。兄妹なんだから、美優樹は妹なんだから裸を見ても気にすることはない。美優樹が気付いていたのかは知りませんが、雪人がこの様な認識をし始めたというのは、このシナリオにとっては結構重要なポイントなのです。
心からの謝罪もなく、デリカシーのない発言を続ける雪人に美優樹の平手打ちが飛びます。しかし、雪人はなにも平手打ちすることないじゃないかと、自身の行動や言動が、平手打ちに値しないものだと思っていました。いくら何でも、美優樹に対する扱いが酷すぎやしないでしょうか? けど、雪人にとってはこれが普通なんです。だって二人は兄妹なんだから。

千毬ルートの序盤で、雪人は千毬が着替えている部屋に居座るという行動をやってのけ、聡里に驚かれていました。千毬にしろ雪人にせよ、裸を見ること、見られることに抵抗がなかったんですね。それは二人が長い月日を共に過ごした義兄妹だったからで、今の雪人の美優樹に対する認識や行動は、あのとき千毬に見せたものに近いものがあると思うんです。それは雪人の考える兄妹像としては普通のことだったのかも知れませんが、それを美優樹に押しつけていることを彼は気付いていません。だから、美優樹にひっぱたかれた理由も彼は理解できないんです。
それでも美優樹を怒らせてしまったことに変わりはありませんから、雪人は一応謝るのですけど、美優樹の機嫌は当然のごとく悪いままでした。とはいえ、美優樹は我慢強い娘ですし、いつまでも怒りを引きずっているわけにも行きません。雪人も状況を打開しようと、学校の校門で仲間たちと合流したときに、今日も病院へ行こうと美優樹を誘おうとするのですが、彼女は慌ててその口を塞ぎます。何故なら、真結希の存在は律佳より他言無用と念を押されていたからです。美優樹は慌てて親善大使としての仕事があるといって嘘をつき、皆もそれに納得するのですが、あやかだけは少なからず不審を抱いた模様。
「ほら、昨日の幸人、ミータのことで落ち込んでたじゃない。なのに、今日は普通な感じでしょ」
確かのその通りです。雪人はミータの名前を一言も出さなくなり、それどころか意識の中からも除外していました。今、彼の頭の中にあるのは真結希のことだけ。しかし、その存在を知らないあやかには、察することが出来ません。
「ミータのことだから別にいいんだけど……幸人の入れ込みようが凄かったから、なんか違和感あるのよねぇ……」
ミータのことだから別にいいというのは、なにもあやかの強がりというわけではありません。確かに彼女とミータは友達でしたが、あやかはそれでもミータのことをロボットであると認識していましたし、雪人とは考え方が違うのです。故にミータへの入れ込みが凄かった彼を強く意識していたのでしょうけど、それがパッタリと止んだものだから、なにか引っかかるのも無理はないのでしょう。しかし、あやかは事情を知りませんし、深く考えることなくその思考を打ち切るのでした。

親善大使の仕事を休んで病院へと向かう雪人と美優樹。理由は明かせないけど休ませて欲しい、雪人の言い分は筋が通っていませんが、彼は教えられる部分は教えたのに何故分かってくれないんだと勝手なことを考えてます。これには美優樹もため息を吐くしかありませんが、理事長も雪人のことは分かっているのか、快く、というわけではないにせよ許可を出してくれます。連絡事項は覚えられないからと、全部美優樹に丸投げして、話が終わるや否や部屋を飛び出す雪人。その姿に、流石の理事長も不信感を抱きます。病院に、メディカルセンターに何かあるのではないか、と。
理事長から疑惑の念を受けていることも知らず、雪人と美優樹はメディカルセンターに到着しました。予め律佳から正面玄関を使うなといわれていたので、指示された別の入口から入りますが、特に受付を介すこともなくノーチェックで済みました。特別病棟には人っ子一人おらず、美優樹は真結希の存在は病院内でも秘密なのではないかと思うようになります。雪人にとってはにわかに信じられない話でしたが、誰とも会うことがない特別病棟を歩きながら、否定することが出来なくなってしまいます。
昨日に続いて真結希と会いますが、なんと彼女は僅かではあるものの腕を動かせるまでに回復していました。たった1日でどうやって? 疑問はありますが、律佳の言葉を信じるなら後は真結希の気持ち次第ということでしたが、昨日まで指先しか動かせなかったのに、いきなり腕を、1センチとはいえ動かせるようになったというのは大したものです。本人曰く、特訓したそうなのですが……単純な雪人は詳しい事情は分からないままに、素直にを評価するものの、美優樹の方はそれほど単純ではないから、驚きが隠せないといった感じでした。
ミータが1年半の間、真結希に体の使い方を教えていてくれたからだと言いますが、雪人が知りたいのは正にそれでした。一体、真結希とミータはどういう関係なのか? 繰り返すようですが雪人は馬鹿ですから、ミータの説明した実験の内容を話半分も覚えていませんでしたが、それでも真結希のことなど口にしていないことは知っています。

「ミータちゃんは、私のことを知りません」
真結希が告げた、意外な事実。真結希自身は機能停止状態のミータを何度も見たことがありますが、その逆はありません。ミータが活動していると言うことは、真結希が眠りについていることを意味しますが、律佳はその状態の真結希を特にミータと引き合わせることはしなかったようで、当然のごとく眠っている真結希は動いているミータを見たことはないのです。故にミータは真結希のことを知らなかったわけで、彼女の登校が遅かったりすることがあったのは、真結希の活動時間だったからなんですね。
ほとんど丸一日、外泊したら二日間、ミータが外にいる間、真結希はずっと眠っています。本当に眠りについているわけではなく、神経としては活動しているのと同じなので、気持ちとしてはとても疲れるそうなのだけど……それは真結希にとって、幸せな時間でした。ミータという機械を通じて、病室の天井しか知らなかった真結希は色々なところへ行けたのだから。
ここまで説明されても、雪人は結論の部分を理解することが出来ません。つまり、ミータと真結希はどういう関係なのか? いい加減、最低限の知性を身につけてくれと頭を抱えたくなりますが、彼はこの知能で15年間育ってきたわけですから、今更変えようがないのかも知れません。いや、真結希はたった1日で指先から腕を動かすまで成長したのだし、単に雪人の努力が足りないだけでしょう。というか、そもそも彼は努力しているのだろうか。なにもしていないように私は思うのだけど。
「なんていうのかな、夢……なのかな」
ミータが活動している間、彼女と真結希の意識は重なっている感じだと言います。
「私という意識はないんですけど……ミータちゃんが体験していることを、夢に見ているような感じで」
夢を見たあとに、体がぼんやりと夢の体験を覚えている感覚。
「ミータちゃんが見聞きし、感じたことを、私はミータちゃんの中で体験している……これでわかっていただけるといいんですが」
真結希なりに気を遣ったのでしょう。雪人にも分かるように、かなり簡単な説明を心がけたんだと思います。真結希はなにせミータの使用者ですから、詳しい原理なども律佳から説明は受けているはずです。けれど、それを雪人は理解することが出来ないだろうと、そう思ったんでしょうね。

しかし、雪人にはまだ理解力が足りませんでした。彼がない知恵絞って辿り着けた答えはは、真結希がミータを動かしていたのかというもので、もうどうしようもない感じでした。更に言えば、彼はそうして辿り着いた結論に納得出来ない様子。まあ、ミータはミータじゃなかったと言われているようなものですから、彼女のことが好きだった雪人としては認めたくない事実なのは分かります。でも、それはミータとの思い出を守りたいがあまり、目の前にいる真結希を否定しているのと変わりありません。
真結希はそんな雪人の心情を察したのか、ミータは起動にこそ自分の脳波パターンが必要だったけれど、彼女は彼女としての意志や人格を持っていたと教えてくれます。これによって雪人は自分の考えを改め、真結希に対して酷い考えを抱いてしまったことを恥じるのですが、結局のところ彼はミータに対する未練があるんですね。あやかの言うとおり、雪人はミータに入れ込みすぎていたのです。
話すことは話したとして、今度は雪人と美優樹の話を聞きたがる真結希。ミータを介して色々な話をしたとは言え、ミータは特別過去のことを聞いては来ませんでしたし、雪人たちも話しませんでした。真結希にしてみれば、15年も離ればなれになっていた兄妹のことを知りたいと思うのは当然のことなんですが、雪人はどうしてそんなことを知りたがるのか、不思議ではあると、まったく理解していない様子。あまりこういうことは言いたくないんですが、雪人ってなにかしらの病気だったりするんじゃないでしょうか? ほら、あるじゃないですか、他人の情緒を理解できないという奴が。雪人って基本的に行間を読まないよね。人の心情を忖度出来ないのもそうだけど、相手の気持ちを考えたり、汲み取ったりするという、人として持って生まれるべきものが欠落しているとしか思えない。美優樹ルートの時もあやかルートの時も、特に酷かったのは千毬ルートですが、あやかはともかくとしても、皆どうして雪人なんか惚れるんだろうね。

雪人の昔話に真結希は楽しそうに笑います。彼女はずっと、自分の兄妹とはどんな人達なんだろうと想像していたと言います。何年も、ずっと。
自分たちが兄妹と分かったのはついこの前じゃないかと美優樹は言いますが、真結希は家族がいること自体は、随分前に聞かされていたらしい。なにせ真結希は全身麻痺で、今でこそ普通に喋ってはいますが、つい数年前までは会話も出来なかったと考えるのが自然です。現に真結希自身、かつては会話や食事が出来なかったことを振り返っています。災害で身元不明になった子供なので見舞客も来ませんし、知り合いと呼べるのは主治医の律佳と、世話をしてくれる看護師だけ。
「無理矢理生かされているだけ、なんのために生きてるんだろう? なんて思ったりもして、だけど自殺しようにも体が動かないから、なにも出来ない」
真結希は間違いなく、死にたい気持ちを抱えていたと思います。何年も何年も、本当は殺してくれと叫びたかったんじゃないでしょうか? でも、彼女にはそれをすることすら許されていなくて……私はふと、とある小説を思い出しましたけど、この作品とは関係ないので伏せておきます。真結希はこれまで、絶望の中を生かされ続けていたのです。当人の意思とは関係なく、機械に繋がれて不本意な生を甘受しなければならなかった。心も殺して、なにも考えようにして、そうでもしなければ真結希の精神は崩壊していたことでしょう。
しかし、そんな真結希の心を救ったのが律佳でした。真結希に家族がいることを告げて、離ればなれになった君を探してくれている家族のために生きるんだと、希望を与えたのです。その言葉に感銘を受けた真結希は、そんな人がいるなら会ってみたいと思うようになり、死にたいと良い気持ちは、生きたいという想いに変わりました。そしてミータによる実験が始まり、彼女は雪人と出会いました。
ミータはなんのつもりか、雪人のことを「お兄ちゃん」と呼び始め、それは真結希の心を強く揺さぶる単語でした。ずっと言いたかった言葉、それを先に言ったミータへ嫉妬したという真結希は、雪人に自分の中にある兄像を重ねていたと言います。正直、こんな奴が兄でいいのかと思うのですけど、イモウトノカタチのヒロインは総じて男の趣味が悪いか、男を見る目がないと考えた方がいいのかも。

真結希が雪人と美優樹を自分の兄妹であると知ったのは、律佳によって教えられたからでした。伝えるべきか否か、おそらく律佳は悩んでいたと思うのですが、そもそも家族の存在を真結希に教えてしまったのも彼女ですから、雪人と美優樹が付き合ってくれることに賭けたのかも知れません。事実を知った真結希は喜びましたし、前述のように雪人に憧れていた節があるので、素直に嬉しかったと言います。
「えへへ……お兄ちゃんに触っちゃいました」
自分の手で兄の体に触れる。たったそれだけのことに嬉しさをを感じている真結希に、雪人は彼女を疑っていた、つまり本当は妹ではないのではないか、妹を語る偽物か、あるいは何かの間違いなんじゃないかと思っていた自分を殴りたくなったと言います。まあ、これは美優樹にも言えることなんですけど、自分の妹が障害者であるとは、なかなか認めたくないでしょうからね。キツいようですが、人間心理としては当たり前のことなのかも知れません。
とはいえ、真結希の必死さに絆された雪人は彼女を疑うことを止めて、自身の妹として兄妹三人、仲良く暮らしていこうと言います。真結希はともかく、一応美優樹には瀬名家に義理の両親がいるはずなんですけど、そこら辺はどうなっているんでしょうね? まあ、美優樹のことですから身元が判明した段階で連絡はしているはずだけど、瀬名家の両親からすれば義理とは言え美優樹は大切な娘です。それも箱入りの。いつも通り勝手に話を進めている雪人だけど、そこら辺のことはどうしてるんだろうか。彼は施設育ちですから、顧みる義理の両親なんていないですけど、はてさて……
美優樹は雪人ほど簡単に割り切れなかったようですが、兄弟仲良くの流れに逆らえるはずもなく、流されるままに真結希を受け入れることにします。真結希はそれを察しているのか、美優樹に対しては結構ずけずけとしたものの言い方をするのだけど、これに関してはちょっとした訳があるんですよね。まあ、すぐに判明することですが。

真結希と打ち解けたことで、雪人と美優樹は足繁く彼女の元に通うようになります。七夕の日に笹を届けてあげたり、交流が深まっていくのだけど、そこで一つ問題が発生しました。律佳と話している最中、彼女はどこで雪人と美優樹が真結希の兄妹であると知ったのか、という部分に言及します。真結希は特別な患者であり、他言できない事情があった。そのため、家族であるはずの雪人や美優樹にも話すことは悩んだそうです。けど、真結希を家族という幻想にすがらせたのは、他でもない律佳です。彼女が家族の存在を告げることで真結希を生かそうとしていたのは明白ですが、一度それをしてしまった以上、見つかったものを隠すわけには行かないと思ったようです。あるいはこのとき、律佳が思い止まって雪人と美優樹の存在を秘匿すれば、真結希はあんなことにはならなかったはずなんですが、まさか律佳もああなるとは考えてもいなかったでしょうから、そこは仕方ないと思います。
それよりなにより、問題なのは律佳が雪人と美優樹の真実を、ミータの中にあった視聴覚データから知ったと言うことです。ミータはなにせ実験として稼働していたわけですから、彼女の見たもの聴いたものは全てデータとして収集され、研究に利用できようになっています。ミータ自身、そんなことを言っていたのを思い出しながら、雪人はとあることを思い至ります。即ち、ミータとの情事も記録され、解析されたのではないかと言うこと。その予想は当たり、律佳は少々驚いたと言うぐらいで、特に咎めたりはしませんでした。実の娘ならまだしも、処女があるわけでもないロボットですから、そこら辺は軽く考えているのでしょうか?
しかも、しかもです。真結希はミータの体験したことは全て夢として、ぼんやりとではありますが覚えていると言いました。つまり、あの情事を知っているのは律佳だけではない可能性があると言うことです。実の妹にそんなことを聞けるはずもない雪人ですが、態度からバレバレになってしまい、察した真結希が頬を赤くしたことで、彼女も知っていることを悟るのでした……

ミータとの情事を思い出したからではないでしょうが、雪人は彼女のことを夢に見ました。ミータに対する未練は雪人の中で非常に強く、彼はなにかを追い求めるように病院へ向かいます。真結希に会いに来たから、ではありません。確かに真結希もいるところですが、そこがミータを見届けた最期の場所だったからです。とはいえ、ミータはもういなくなりましたから会えるわけもありませんし、折角だからとついでのごとく真結希の病室へ向かう雪人。真結希が傷つくのを理解しつつも、彼の中では未だミータの存在が大きいのです。
しかし、そこで雪人が見たのは予想もしていなかった光景でした。壮絶な、そう、苛烈といっても過言ではない真結希のリハビリシーン。動くようになったとはいえ、真結希の身体は未だ完全な自由を得たわけではありません。固まった体が急に動くはずもなく、それを動かすために、真結希は毎日激しいリハビリを行っていたのでした。自分で食事一つ満足に取れない妹を見て、雪人は手伝おうとしますが、真結希は頑なに拒否します。プライド、ではないでしょう。その場に看護師がいないことからも分かるように、真結希は自分一人で食事を食べられるようにならなければ行けないと、そう考えていたのです。いえ、食事に限らず今後はあらゆることを自分で出来るようにと、見上げた努力です。でも、雪人にとってはそんな彼女の努力も、痛ましいだけの、同情しか誘わない姿でした。兄である以上は仕方がないことなのかも知れませんが、彼は自分の欠点もろくに直そうとしない男なので、理解していると言いながらも、家族の情で手助けをしてしまう。要は兄を気取りたかっただけなんですけど、それもまあ仕方ないことでしょう。家族であることには違いないんだし。
けれど、そんなことを言いながら雪人の本心は別の所にありました。真結希のため、家族の情、そうやって言い訳をしていた雪人は、なにを隠そうミータのことを思い出して、彼女を真結希と重ね合わせていただけだったのです。真結希の姿が、言葉が、重なるはずのないミータと重なり……また後で書きますが、雪人がどれだけ最低な男か、ここから更に彼の化けの皮がはがれていくことになります。

ところで真結希の登場で蚊帳の外に置かれている美優樹ですが、当人もそれを何となく意識し始めていました。真結希が意図的に、自分を差し置いて雪人との世界を構築しつつあること察しているのだけど、常識人としての理性的な部分がそれを否定する。けど、美優樹は大事なことを忘れいていました。今も時折茶化される、雪人への感情。かつて美優樹は雪人が幸人だと分かる前、彼に恋をし、失恋しました。気持ちは切り替えましたが、引きずっていないと言えば嘘になり、健在であると言っても嘘にはならなかったと思います。
つまり、美優樹は未だに雪人のことが好きなんです。兄としてではなく、異性として、雪人としての彼が好きだった気持ちが、残っている。にもかかわらず、美優樹は気付くことが出来ませんでした。真結希もまた、、同じ気持ちを抱いているかも知れないということに。
雪人の方はといえば、、自分が真結希に感じるものは、美優樹や千毬に対するそれと異なることを意識しつつありました。真結希に対しては、触れただけで胸が締め付けられるような、苦しいような感じがするというのに、美優樹に対しては、抱き合っても頭を撫でてあげたくなるぐらいでしかないと、そう思ったのです。なんでしょうか、このシナリオは美優樹に恨みでもあるのでしょうか? 私は美優樹にこれといった思い入れがあるわけでもないですけど、それにしたって扱いが酷すぎる。前述したように、美優樹は完全に妹と化していたのです。千毬と同じような、ただの妹に。
あまつさえ、美優樹にはなにも感じないとまで言い切った雪人に、美優樹は遂に怒りを爆発させます。再び頬をひっぱたかれ、しかし、家族であるが故にその気持ちが理解できない雪人。というか、この男は家族であることを逃げの口実にしているのではないだろうか。甘えている、と言えなくもないが。美優樹もいい加減、雪人なんて見限れば良いのにと思わなくもないんだけど、一度は惚れた弱みなのか、実家にも帰らず彼に付き合ってくれます。これは他のルートにも言えることなんですが、なんで美優樹はバッドエンド以外では実家に帰らないんでしょうね? 特にこのルートを最後までやると、美優樹もまた実の家族という枠組みに囚われすぎているのではないかと思うのだけど、そこら辺はどうなんだろうか。

順調にリハビリを続ける真結希は、遂に外出できるほどに回復しました。雪人と美優樹、二人と一緒に念願の外出をする真結希ですが、行く先はいつか雪人たちが林間学校で来たキャンプ場でした。夢の記憶としてではなく、実際に来られたことにはしゃぐ真結希ですが、雪人はミータとの思い出がある場所だけに、感傷に浸ってしまう。既にミータが機能を停止してから1週間、つまり、真結希と出会ってからもそれぐらいが過ぎているわけですが、雪人は未だにミータのことが忘れられず、真結希の中にミータの影を追い続けます。
真結希とミータ、繋がりはあるにせよ、全く違う両者をダブらせる雪人は、段々と惑乱し始めます。そして遂に、真結希の唇を奪ってしまいました。ずっと求めていたものがそこにあるような気がして、と彼は言いました。なくしたと思って、もう手に入らないと思って……ミータの面影がここに……
「お兄ちゃん……」
あるいはそれを待ち望んでいたであろう真結希に、
「ミー……真幸……」
全く違うものを欲していた雪人。彼がキスをしたのは、決して真結希ではありません。彼はミータにキスをしたのです。いなくなったミータを追い求めるあまり、彼は真結希の中にミータを幻視してしまい、兄でありながら妹の唇を奪うという間違いを犯してしまった。
それも、美優樹が隣にいるにもかかわらずです。そう、美優樹は手洗い等で離れいていたわけでもなく、雪人と真結希の側にいました。一緒にお弁当を食べて、兄妹水入らずの楽しい時間のはずだった。けど、それは、いつの間にか雪人と真結希の二人だけの世界、甘美な時間へと変わっていたのです。
「お兄さんは、ちょっと普通じゃないところもあるけど、こんなことまで……妹にまで手を出す人だなんて、思ってなかったのに……」
一度は惚れた相手だけに、ショックも大きかったのでしょう。なまじ、自分にはなんの感情も雪人は抱いていないことを、美優樹は知っているのですから。だがしかし、これは美優樹の見る目がないとも言えます。雪人はちょっと普通じゃないのではなく、元からおかしいんです。雪人は美優樹の弾劾を否定しようとしますが、キスをしたのは事実なのですから、否定できるはずもありません。彼がキスをした相手は真結希ではなくミータなのだけど、そんなこと言っても通じるわけはないし、言えるわけもありませんでした。ただ、このとき雪人がそれを正直に告げていれば、その後の展開は変わっていたかも知れません。
他人の気持ちが分からない雪人は、遂に自分自身の気持ちさえ分からなくなりました。雪人は後悔しました。ですが、その奥には目をそらせないほどの喜びがあったのでした……

どうやら文字数制限が来てしまったようです。なんとか2万文字以内に前半を収めるつもりだったのだけど、流石に最終シナリオだけあってボリュームが凄いですね。続きはまた次回、明日に持ち越すこととします。残り1回で終わるかどうかは分かりませんが、話の区切りも考えつつ書いていこうかなと思います。

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