イモウトノカタチ感想レビューも遂に最終回です。神志那真幸&ミータ編4回目ということで、復活したミータと、彼女への想いを取り戻す雪人の話でしたっけね。そんな二人を知って半狂乱になる真結希など、要するに三角関係が勃発しつつあるわけだけど、私はもうどうでもいいかなって。
なんというか、この感想レビューのために真結希編をやり直してみたわけだけど、もう本当に辛いのよ。主に雪人の言動とか、吐き気を覚えながら読んでいた感じで。まあ、このシナリオがどんな決着を迎えたのか、早速続きを書いてみましょう。

「ミータちゃんを守るなら、私のこともまもってくれるよね?」
「あ、ああ……もちろん」
雪人はやっと、自分が置かれている状況を理解しました。何もかもが既に遅く、取り返しの付かない状態になって初めて、彼は自分の周囲というものを認識することが出来たんです。故に彼は、真結希の言葉に頷かざるを得なかった。キスまでならまだしも、彼は真結希の処女まで奪っていた。真結希が自分に向ける異常なまでの愛情を、彼は馬鹿なりに知っていたから、断ることが出来なかった。
でも、そんな事情を知らない律佳や美優樹は反対します。真結希は、まともな日常生活などを遅れる体ではないのです。薬や専用の機器はいらないにしても、必ず誰かの世話にならなければ、生きていけない体なのです。なのに、真結希は一人で出来る、自分のことは自分ですると言って聞きません。
「真結希の世話が俺がします。俺がちゃんと面倒見ます」
馬鹿野郎とは、神志那幸人にこそふさわしい言葉です。彼にはここで、二つほど選択肢がありました。一つは真結希を説得すること。彼女を病院のベッドに縛り付けてでも、自分ところへは来させないということも出来ました。そしてもう一つは、ミータを律佳に返却すること。真結希が必死になっているのは、雪人の元にミータが居るからです。ならばミータを返せば、真結希がセンターの外に出る必要がなくなります。
「わかってるよ。だけど、ミータが放っておけないのと同じで、真幸だって放っておけないだろう」
にもかかわらず、彼は選べなかった。選ぶことが出来なかった。いつか律佳は、ミータのことをさして、彼女はロボットであり、誰かの身代わりなどではないと言いました。制作者として、弁えるべきところは弁える。それは正しい姿にして、当然の行動です。けど雪人は、そんなロボットの身代わりとして真結希を求めた。ミータの代わりに口付けをして、ミータの代わりに抱いて、そうした彼の愚かな行いのツケが、ここに来て一気に降りかかってきたのです。
「理屈ではわかっていたって、どうにもならない気持ちだってあるんだ……」
私が神志那幸人を、美馬雪人という人間を見限ったのは、この瞬間でした。理屈ではわかったって、どうにもならない気持ち……それは一体、誰の気持ちなんでしょうか? ミータを守りたいのも、真結希を放っておけないのも、結局は全てお前の気持ちではないか。雪人という個人の、身勝手な気持ちと都合を、いつものように最優先しただけ。自分がミータと真結希と一緒にいたいから、結局のところ彼は、それだけの男でした。思考回路が、人としての感情が、腐り落ちてるんです。どうして雪人の個人的な気持ちや都合に、ミータはともかく真結希までもが巻き込まれなければ行けないんだ! そして何故、そんな身勝手な男の気持ちが尊重されなければ行けない! それが作品の都合だというなら、私はそんな作品を認めるわけには行かない。美馬雪人を、許すわけにはいかないのです。

結局、雪人にはミータと真結希、どちらか一人を選ぶことが出来ませんでした。私は別に、どちらを選ぶべきだとか、どちらを選ぶのが正しいなどとは言いません。けれど、雪人はそれよりも先にすることがあったはずです。例えば同じ頭を下げるにしても、「自分をしばらくセンターに置いて欲しい」など、そうしたお願いをすることも出来たはずです。真結希を寮に連れて行くよりもずっと安全だし、ミータに異常がないか調べることも出来る。普通に考えれば、今の雪人に出来る最善の選択肢はそれしかないはずだった。なのに彼はそれを選ばなかった。考えることさえしなかった。
真結希はミータが帰るなら、自分も諦めると言ってるんです。ならば雪人がすることは、ミータを説得して病院に連れてくることであり、付き添えないにしても機体チェック等が終わるまでセンター内で待機しておくことでしょう。にもかかわらず、雪人はミータを渡そうとしなかった。真結希を連れて行こうとした。すべては自分の我欲のため……雪人という男にとって重要なのは、結局のところ自分が満足しているかどうかなんです。彼にとって重要なのはそれが自分のためになるかどうかであって、相手のことなど一欠片だって考えちゃいないんです。このクズ野郎の行動は結果論から見れば上手くまとまってますが、それは彼の努力や頑張りによって導き出されたわけじゃありません。だってこいつは、他人のためには何もしていないんだから。
どうして、何故こんな奴が主人公なんでしょうか? 鈍感なんて可愛いものじゃありません。こいつは本当に人の気持ちがわかってないんです。ひたすら自分の都合だけを優先させて、ヒロイン達を苦しめて……何故こんな奴に惚れるのか? どうして、こんな奴とヒロインの恋愛を見なければならないのか? 誰が一体何のために、美馬雪人ないし神志那幸人なんていう奴を作ったのか。誰か、私に教えてくださいよ。

真結希を寮につれて戻った雪人は、真結希を誰にも見つからないようにするという約束事を早々に破って、仲間たちに真結希のことを紹介します。あくまで知り合いの入院患者、清宮真結希としてですが。そもそも寮なんていう場所で、真結希の存在秘匿できるわけもないんですよ。
ここに来て、ミータは初めて真結希と接触します。まさか、自分に真結希という中身があったことなど知る由もないミータですが、彼女の存在になにかしら感じ取るものがあったようです。ミータにしてはピリピリした口調で、真結希に対する警戒心を露わにします。けれど、真結希の方は余裕がある。気持ちを分かち合える、半身だったなどと綺麗事を言ってはいましたけど、二人の関係は一方的なものに違いないのです。ミータの知らない事実を、彼女の役割を知っている。その時点で、真結希はミータを格下に見ることが出来たし、所詮は自分のために使われていた機械と、見下すことも出来た。
「神志那真幸と言います。お兄ちゃんの妹ですよ、ミータちゃん」
「そうですか、もう一人の妹ですね。見つかったですか、良かったです」
「はい、ミータちゃんのおかげで。いろんな意味で、ありがとうございました」

真結希にとって、ミータとは一番厄介な、復活などして欲しくない存在でした。かつて自分のために稼働していた機械、既に役目を終えて、お払い箱となった彼女に、真結希は一度ならず後ろめたい気持ちを抱えていた。彼女が築き上げた、募らせた雪人への想い、通じ合った心を、自分が奪い取ったのだから、気にもするでしょう。しかし、それもこれも、ミータが居なくなったからこその感情だったのです。ミータが生き返った今となっては、もはや彼女は自分で手に入れた雪人を奪い去る存在でしかない。故に、真結希にとってミータは敵なのです。恋のライバルとか、そんな単純なものじゃない。嫉妬の炎で半狂乱になるほど、認められない存在だったのです。

けれど、そんな真結希の余裕は徐々にではあるが崩れていくことになります。口ではなんと言っても、真結希は病人であり、体が不自由なことに違いありません。それに引き替えミータは高性能マシンであり、しかも介護ロボット。ミータは雪人へのアピールも兼ねて、真結希の世話をし始めます。見下していたはずの相手に、甲斐甲斐しく世話をされることがどれほど屈辱的なことであるか。一人では未だに食事すら出来ない真結希は、一番世話になりたくない相手の有能さに助けられているのです。真結希からすれば、ミータは何も知らない、自分の存在があってこそのロボットだという認識がありました。だって、ミータは真結希のために作られた機械なんです。起動キーは真結希が眠りにつくためだし、神経網も雪人も、本来なら全部真結希が貰うはずのものだった。それが何故、復活して自分から雪人を奪おうというのか?
真結希のこれまでの行動は、明らかに追い詰められた人間のしていることです。処女を捧げた時点で、あるいはキスをしたその瞬間から、真結希は雪人を手に入れているはずだった。美優樹など敵ではなく、倫理や道徳など端から気にしていない。なのにここに来て障害が、ミータという雪人の心を掴んで離さない存在が復活してしまった。真結希は雪人が自分を通してミータを見ていたことを知っていた。キスもセックスも、ミータに大してしたものだと言うことを理解していた。自分はミータの身代わりでしかないことを熟知していたから、彼女が復活した今、なりふり構っていられなくなったのでした。
そして真結希は、あろう事か雪人を誘惑しました。客人である彼女にあてがわれたのは客間でしたが、個室で一人部屋なのをいいことに、雪人に携帯で連絡を取り、テレビ電話で自分が自慰行為をしている姿を見せつけたのです。その扇情的な光景と誘惑に、雪人は熱病患者のようにふらふらと自室を出て……また真結希と関係を結んでしまった。

しかし、二度目のセックスをしても、雪人の心をミータから引き剥がすことは出来なかった。真結希は確実に体を武器にしたわけですが、それを持ってしても雪人が自分だけに心と気持ちを傾けてくれないことを、より強く認識してしまいました。彼女のミータに対する嫉妬は、自分のために存在していたはずの機械に対する憎悪は、限界を迎えました。
「なにも知らないのはあなたの方じゃない! 目的もなくただ生きているだけのくせに!」
話は前後して、寮に来た次の日。ミータの手助けがなければ人生ゲームのルーレットすら回すことが出来ない真結希が、ミータに対して言った言葉です。人生ゲームというのが全く皮肉というかなんというか、真結希は自分の歩く道すら、一人では動かすことも出来なかった。このとき暴れる真結希を押さえつけようとしたミータが、ものの弾みから真結希と口付けをしてしまいます。わざわざCGとして用意されていますが、これは後々になって、ちょっとした意味を持ってきます。
真結希とミータの不仲は、要するに雪人を巡っての三角関係です。ミータは真結希の琴なんて知ったことじゃないので、関係ないと言えばないんですが、真結希の方はそういうわけにもいきません。驚くべきことに雪人は未だ、真結希とミータの関係を理解していないことが発覚するんですが、こいつはもういいよ。
結局、雪人は真結希にミータを見ていただけでした。それを自分で認めていますし、真結希とセックスしたときも、真結希なのかミータなのかわからない状態だったと言います。もっとも、これに関しては真結希の計算もありましたから、一概に雪人だけを責めるわけにはいきません。雪人がどんなに酷い奴でも、これは真結希にも責任があるんです。しかし……

「二股かけます、って言えたら楽になるのかなぁ……」
雪人の中に浮かんだ答えは、人として、男として最低最悪のものでした。彼は常識からこの考えを却下するかと思いきや、美優樹が許してくれそうにないという理由でダメだと思ったのです。じゃあ、なにか? 美優樹が何も言わなければ、嬉々として二股をするというのか?
「考えるのはやめよう」
行き詰まった雪人は、遂に考えることすら放棄してしまいます。結局彼は、選ぶことが出来ないんです。彼は彼の都合だけで、真結希も美優樹も、そしてミータも大切にしており、手放したくないと思っていた。でも、これは美優樹も含めてのことだけど、相手は自分だけを選んで欲しかった。真結希とミータの関係を危惧するのも、結局は自分が不仲である二人を見たくないからです。だって自分は二人とも好きだから、大切だから。ミータと別れて、美優樹と真結希と穏やかに暮らす……喪失感を感じる度に真結希を抱くというのを無視すれば、一番現実的な選択肢を彼は考えるわけですが、ミータが戻ってきた今となっては、それもこれも無意味となりました。
だからでしょうか? 雪人はそうした自分の行いに対して、明確な報いを受けました。真結希が倒れたのです。体温計の表示が振り切れるほどの高熱で、一体どうして生きていられるんだと言ってもおかしくない状況。にもかかわらず、連日の異常気象で外は洪水となっており、救急車は出動できない状態だった。律佳は真結希は肉体的な疾患ではないので、異常高熱など出すはずがないと言いますが、真結希は現実に高熱にうなされて、何故死んでいないのかという窮地に立たされています。受け入れ体勢は整えるという律佳ですが、彼女がいるセンターに真結希を届けることが、出来ないのです。すべては雪人が真結希を連れ出したから。体温計でも測れないような高熱、仮に下がったとしても、確実に脳をやられているでしょう。馬鹿な雪人でも、それぐらいは理解できました。そうすれば例え全身麻痺は治っても、今度は脳障害による一生治らない後遺症を抱えることになるでしょう。

そうした絶望的な状況下において、最初に決断を下したのは意外にもミータでした。彼女はなんと、洪水状態である街中を、自分が真結希をセンターまで運ぶと言いだしたのです。確かにミータはロボットであり、災害時にも動けるように設計がされています。200キロの荷重にも24時間耐えるボディ、水中でも48時間の稼働が補償されているという彼女ならば、真結希をセンターまで送り届けることも可能でしょう。でも、雪人はミータだけにそんな危険な真似はさせられないと、自分も着いていこうとしました。しかし、ミータはそんな雪人をハッキリ邪魔だと拒絶し、一人、防水ベッドに収納した真結希を背中に背負ってセンターへと向かうのでした。そのときのミータは必死そのものであり、感動的なシーンなのか知りませんけど、私は失笑しか出来なかったなぁ……このイモウトノカタチって言う作品はさ、制作側が笑わせたいだろうシーンで笑えず、泣かせたいシーンで泣けないことが本当に多くて、そういったどれもが滑稽なものに見えるんだよね。要は滑っているし、全体的に寒いんだよ。
ただ、ミータの気持ちは理解できないでもありません。彼女にしてみれば、自分が機能停止をしている間に、雪人を真結希に寝取られたわけですから、彼女に対する感情が複雑化するのは当たり前です。やはり雪人は人間の方がいいのか、自分ではダメなのかと悩み、真結希への不快感に繋げるのも当然でしょう。しかし、それでも彼女は介護ロボだったし、雪人が愛する真結希を見捨てるわけには行かなかった。ボロボロな体はセンターに行けばメンテナンスをして貰えるでしょうが、その先に待っているのは再度の機能停止。それは、雪人との別れを意味していました。でも、分かっていてもミータは動くことを止めなかった。分かっていてもどうにもならないなどと宣った雪人と違い、彼女には彼女の使命があったから……

一方、寮に取り残された雪人が気が気でなく、やはり自分もミータたちを追い掛けようとして、美優樹にいさめられます。
けれど、雪人が美優樹の言うことなど聞くはずもなく、「なんでだよ!」と怒鳴り声を上げます。
「お兄さんの家族は、真幸とミータさんだけなの!?」
「――!?」

言ったいつからミータまで家族になったんだと思わなくはないけど、美優樹の叫びは完全に正しい。雪人は今まで蔑ろにしてきた美優樹の気持ちを、その一端をやっと理解するに至ったのです。その後律佳から連絡があり、真結希がICUに入ったことと、ミータのメンテナンスが開始されたことを知る雪人と美優樹。真結希は検査結果次第では手術が必要であり、予断を許さない状況だった。水が引き次第来るようにと言われた雪人ですが、翌日になっても雨は止まず、彼は再度病院に向かう決断をします。
昨日の今日で、もう美優樹の言葉を忘れてしまったのか? 当然怒る美優樹ですが、なんと雪人は美優樹も一緒に連れて行くことで、その状況を打破しようとします。わざわざ水着に着替えさせて、泳いでいこうと。外では市の職員がゴムボートに乗って外出を控えるように警告を出していたのに、すべては自分のため、自分の満足感のために美優樹を危険な目に遭わせた。付き合う美優樹も、賛同する周囲もどこか頭がおかしいんじゃないだろうか。
なんとかメディカルセンターに辿り着いた二人ですが、意外にも律佳は二人が来てくれて助かったと言います。しかし、それには深刻な理由があり、真結希の病気が再発していたからに他なりませんでした。全くの予断を許さない状況で、治る確率すらない。そもそも、再発すること自体あり得ないはずだった。真結希が瀕死であることに打ちのめされる雪人ですが、そこに追い打ちを掛けるような事件が発生します。ミータが、姿を消したのです。

律佳によってメンテナンスを受けていたミータは、システムに手を加えられた形跡があったと言います。以前とは異なるシステムが組み込まれており、それは制御装置の類いだという。特殊なナノマシンの制御装置に似た構造をしていたそうだけど、そんな難しい話は馬鹿な雪人に分かりません。
それよりも何よりも、雪人はここに来て二つの選択肢を迫られます。即ち、ミータを探しに行くか、真結希の側にいてやるか。ミータはメンテナンスを終了しており、元気かどうかと言われれば元気であり、一方の真結希は瀕死と言っていい状態です。どちらを選ぶかなんて、考えるまでもなかった。そして雨は……雪へと変わりました。
夜になって、雪人の都合のいい独白が始まります。自分はミータも真幸も大切であり、二人と一緒にいるためならすべてを賭けても良いと思っているとか、そんなことを。でも、実際に真結希の為に頑張ったのはミータであり、雪人の暴走を制したのは美優樹です。この男が、一体今まで何をしてきたというのか。正直、文字に起こすのも吐き気がするような雪人の身勝手な言い分が、瀕死で意識のない、言葉を返すことも出来ない真結希に浴びせかけます。何故ミータがいなくなったのか理解できない雪人は、やがてミータが追っ手に攫われたんじゃないかと思うようになり、助けに行かなければと妄想を広げ始めます。
しかし、それは今ここで苦しんでいる真結希を見捨てていくことに他なりません。けど、それならそれでいいんです。薄情ですが、雪人は真結希ではなくミータを選んだと言うことですから。二人との関係に対する、一つの結果に他なりません。
でも、真結希は混濁する意識の中で雪人が行ってしまうことを感じ取ったのでしょう。どちらも選べないと苦悩し続ける彼の手を僅かな柄に掴み、おそらく「行かないで」と思ったに違いありません。なのに雪人は、神志那幸人で美馬雪人でも、もうどちらでもいいですが、イモウトノカタチという作品の主人公は、作中において最低最悪の行動に出たのです。

真結希に繋げられたチューブを抜いて、背負って、病室を出て、病院を出たとき……雪人というクズ野郎は一体なにを思っていたのだろうか? 瀕死の妹を雪の中連れ出して。洪水の中、美優樹を自分のためだけに連れ出したのは、もはや次元が違うんですよ? ミータを探しに行きたい、でも真結希を見捨てていけない、だから真結希も連れて行こうなんて発想、常人には理解できないし、雪人はそれによって妹が死ぬかも知れないという事実からも目を背けたんです。じゃないと、自分の都合で動くことが出来ないから。
雪人の最悪なところは自分が正しいことをしていないという認識があるところです。認識があるのに彼はそれを改めず、身勝手な解釈のままに瀕死の妹を振り回し、彼女が嫌っていたミータを探すという行動を続けている。それは誰のためか? 真結希のためでもなければ、ミータのためでもない。雪人は最初から最後まで、自分のためにしか行動してないんです。
そんな雪人の前に、美優樹が現れました。彼女は雪人が家族をバラバラにしようとした事実を非難しますが、雪人はそんなことした覚えはないと言い出します。この後に及んで、こいつは何を言っているんだろうか。美優樹も諦めたのでしょう、彼女は仕方なく、ミータと真結希のことを引き合いに出しつつ、自分も雪人のことが好きだったという真実を話します。そして自分が欲しくても手に入れられなかった雪人を全力で手に入れてしまった真結希と、そんな真結希さえも裏切った雪人。美優樹はすべてを知っていたんです。彼がミータを失った喪失感から真結希を抱いたことも、分かっていたんです。
「そんなあやふやな気持ちで真幸と触れあって、そしたら真幸が傷つくとは思わなかったの?」
「真幸を愛したくせに、ミータさんが帰ってきたからってミータさんにも好きだって言って、それで真幸が傷つくとは思わなかったの!?」
「ミータさんがいたのに、真幸と関係して、ミータさんが傷つくとは思わなかったの!!」

美優樹の心そこからの叫びは、しかし、雪人に伝わりませんでした。
「思ったよ!」
という怒声で逆ギレをする雪人。結局彼は思うだけで何もしてこなかった男です。分かっていても、理解できても、彼はそれに対して自分から何かをしようとはしなかった。だから、美優樹の正論以外の何物でもない弾劾に、彼は逆ギレという一番みっともない真似しか出来ないのです。雪人が性根の底から腐っていることがもっとも現れているシーンですね。

けれど、結局は美優樹も神志那の血なのか、真結希とミータとの関係を認めてしまいます。彼女のもまた家族というものに固執していて、認める以外に選択肢はなかった。上記の弾劾も、今まで抱え込んでいた鬱憤晴らしに他ならないし、それが美優樹という少女の限界でもありました。いいからさっさと実家に帰れよと思わないではないけど、雪人が美優樹に対して恋愛感情を抱かないことや、彼が真結希とミータに二股を掛けて傷つけている現実にも納得してしまった美優樹に、もはや掛ける言葉などあるはずもありません……
瀕死の真結希を抱えた雪人と美優樹がミータを探し始め、意外とすぐに彼女を見つけることが出来ました。記念モニュメントがある、慰霊祭が行われた場所にミータはいました。一緒に帰ろうという雪人に、ミータはそれまでの『お兄ちゃん』『ユキト』に改めた上で拒絶します。何故なら、真結希の変調の原因が自分にあるから。もっと具体的に言うなら、真結希の体内で全身麻痺の原因を作っていたナノマシンが、ミータとの接触で再活性化してしまったから……故にミータは、真結希の前から姿を消したのです。正義のロボットだと思っていた自分が、一人の女の子を死に至らしめている悪のロボットだった。故に、自分はあのまま死んでいれば良かった。
あくまで笑顔を崩さずに自嘲するミータに異を唱えたのは、意外なことに真結希本人でした。例え自分の身体を蝕む機械がミータのものだったとしても、それは自分のことだからと。真結希は自分の病状を、当たり前かも知れませんが知っていました。彼女の病気は感染症といってもウイルス性のものではなく、体内に侵入したナノマシンの暴走と、それによる全身麻痺でした。おそらく律佳が何らかの手段で体内のナノマシンを抑制したものが、ミータとの接触で活性化したのでしょう。でも、そんなことはもはや関係ありません。
ここにきて、雪人の気持ちを感じ取ったという真結希は、ミータの存在を受け入れました。正直、高熱で冷静な判断が出来なくなったのではないかと心配しますが、彼女は見んな好きでいいんだと、今まで嫉妬や憎悪の対象でしかなかった美優樹やミータへの考えを改めました。雪人以外を拒絶しなくてもいいのだと、変な着地点ですけど、とにかく真結希は二股関係を受け入れたんですね。愛は分かち合えると、それを教えてくれたのはミータだと言って、彼女を受け入れます。

真結希はミータに真実を、彼女が何者であったのかを教えます。それによってミータもすべてを理解し、そしたら奇跡が起きました。かなり投げやりな表現ですけど、だって、それ意外に書きようがないんです。ミータの中にあるナノマシンの制御装置ですか? あれが作動したのか何か知りませんけど、それによって真結希のナノマシンの暴走は収まり、なんとビックリ病気は完治してしまいました。
そして話は数ヵ月後に飛んで、すっかり元気になった真結希は学園に入学して、白鳥寮にも住むようになりましたとさ! おしまい!
……結局、真結希とミータの三角関係はどうなんたんだって? そんなんあれですよ、EDテーマ後を見れば分かりますけど、結局選べなかった雪人が二股をすることで終わりましたよ。雪人が部屋に来ないから、朝から二人で押しかけてセックスですって。ははは、セックス狂いかよ。しかも、数ヵ月後の雪人は、そんな二人の影響もあって、立派なモラリストに変貌したそうで。いや、なんといいますか、全員洪水で洗い流された方が良かったんじゃないですかね? と、大真面目にそう思います。

イモウトノカタチはこれにて全ルートクリアしましたが、実はまだアフターエピソードがあったり、投げっぱなしで終わった伏線の件があるので、しばらくこの作品に関する日記は続けます。ただ、個別のルートについてもう書くことはないでしょう、最後はなんて言うか、なおざりになってしまいましたが、それほど私がこの作品に失望を覚えたと言うことで一つ。全体の評価は明日にでもしますけど、期待した作品、スフィアの完全新作という意味では、完全に裏切られましたね。なんというか……色々と辛いです。

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