いつまで続けるイモウトノカタチ日記ということで、ネタがある限りは書き切ってしまおうかなと思っていたりします。後に引きずるとろくなことが無 さそうだし、公式サイトがそうであるように、既にこの作品は一区切り付いてますからね。世間的にも粗方の感想は出尽くしたようですし、某所は延々 と不満を言い合うだけの流れになってしまったので……まあ、それも無理のないことなんでしょうけど。私もとっくに結論は出してるんだけど、そこへ 辿り着くまでの過程がまだ書き足りないから、もうしばらくはイモウトノカタチをやり込もうかと思います。

そんなわけで、今日はイモウトノカタチの主人公、美馬雪人と、ヨスガノソラの主人公、春日野悠の対比について書きます。予め断っておくと、私はハルのことは大好き だけど、雪人のことは大嫌いなので、公平な物の書き方は出来ないでしょう。まあ、別にハルだって完全無欠の主人公というわけじゃなかったけど、キャラクターとしての魅力に圧倒的な差があるというか、主人公としての在りようがね、雪人とは根本的な部分から違うんですよ。前作の主人公と言うことで比較されがちだけど、ここらで少しまとめてみた方が良いかなと思いまして。
では、まず最初に美馬雪人のキャラクター紹介から観てみましょうか? 彼のプロフィールは、以下のような形になります。
美馬雪人
故郷の災害で両親を失い、妹とも生き別れてしまった天涯孤独の少年。幼い頃施設に預けられて、以降アルバイトで学費を稼ぎながら学校に通う。

常に物事を前向きに考える楽天家だが、真っ直ぐな性格で、思い立ったら一直線に進む傾向がある。

困った人を放っておけない優しさの持ち主でもあり、世話焼きなところがあってか、施設では同じ境遇を持つ子供たちのお兄さん的存在として慕われていた。田舎育ちでやや天然気味なところもあるが、本人に自覚はない。

行方不明の妹を探す旅に出るためにコツコツとお金を貯めていたが、災害で失われた過去の記録が一般公開されることを知って、故郷の街―白鳥環境特区―へ向かうことになる。
なんというか、物は書きようって感じがひしひしと伝わってくる文章ですね。ツッコミどころしかないような紹介文ですが、そもそも雪人って何のバイトしてたんでしょうか。携帯もろくに使えないような奴だけど、近未来に新聞配達があるとは思えないし、あやかルートの反応を見るに接客業かな。あの性格でよく雇って貰えたというか、働くことが出来たなと言う疑問は残りますけど……自分の都合を押し通したり、人の気持ちが分からないことを真っ直ぐな性格で、思い立ったら一直線と表現するのもなんだかねぇ。天然気味とか言うけど、美優樹ルートやればそれが嘘っぱちであることは分かりきってるし、そもそも彼の優しさって何でしょうね?

さて、続いてはヨスガノソラの主人公であるハルの紹介文。こちらはちょっと短めですね。
春日野悠
苦労人で、両親と死別したときから、ずっと苦労の連続。しかし、本人は苦笑しながらも、けなげに頑張っている。

わけあって祖父の田舎に引っ越してきたが、そこは幼少の頃、避暑に来ていた場所でもあり、顔なじみの奈緒に助けてもらいながら、なんとか穹との二人暮らしをしている。

都会の便利な環境に慣れきっており、勝手の違いに戸惑い、苦労している。

意外とまめな性格だが、家事全般が全然ダメで、穹も何もしないために、家はいつもてんやわんやである。

穹と同じく、色白で線が細い顔つきなので、繊細な少年の様に見える。

穹のわがまま振りには手を焼いているが、残された家族を大事にしたいと甲斐甲斐しく面倒を見ている。
ハルに関しては、概ねその通りと言った内容ですね。少なくとも嘘は書かれてないし、ハルがまめな性格であることとか、穹の面倒を甲斐甲斐しく見ているところなんかは、体験版の時点で分かることです。家事にしたって苦手ではあるにせよ、率先してやろうとする努力家ですし、その後の上達を考えれば頑張っている方でしょう。雪人のそれと違って深い部分までは記載されてませんが、ハルというキャラを端的に示すなら、上記の文章だけでも問題はないと思います。安定感のある、エロゲにはややありがちな人物像ですかね。ただ、ハルにはこれプラス抜群の容姿があるわけですから、その時点で雪人とは差が付いています。それではまあ、二人の登場人物紹介を書いたことだし、対比の方を初めて行きますか。

相貌と容姿
昨今は最初からイケメン設定である主人公も少なくないですが、ハルはまさしく美形、美少年と形容されるキャラクターです。本人は双子の妹、穹のことを強く意識していたので、自分に対する容姿の評価は気に留めないことが多かったようですが、その容貌が優れていることに変わりはありません。典型的なイケメン主人公と言えるでしょう。
対する雪人は、残念なことに視覚的な面からして美形だという確信が持てないキャラです。作中の登場人物、例えばヒロインなどからは格好いいと言われることもありますが、容姿を面と向かって褒められたこと、例えばハルのように美少年だとか、イケメンだとか言われたことはなく、CGなどで観られる顔貌は、あまり個性的とは言えません。視覚的な面から、と書きましたけど、ハルはハッシー&鈴平の黄金コンビによって書かれていたのに比べ、雪人は画風の違う三人の原画家によって描かれたキャラなので、ハッキリ言うと描き手によって全然見た目が違います。ハッシー、武藤、こだまさわが描いた雪人を比べてみると、同じキャラという気が全然してきませんよね。それぞれに特徴がありすぎて、特にこだまさわの雪人はショタと見紛う別人と化しており、ハルと違って見た目の統一性が出来ていないのです。雪人が中身に反して、外見的に無個性なのは、おそらく原画家陣による描きやすさを優先してのことなんだろうけど、見事に失敗してますよね。だから、相貌の面から雪人を評価することは難しいと思います。

ただ、雪人は子供の頃に野山を駆け回っていたという野生児的な設定があるにもかかわらず、顔立ちそのものは柔和であり、田舎者という感じがしません。性格や言動に見た目が一致しないといいますか、あの容姿からああいった発言や行動をしているのだと考えると、なんというかぶん殴りたくなりますよね。

生い立ちと境遇
登場人物紹介に苦労人と書かれているハルですが、単純に悲惨な境遇というなら雪人の方が上回るかも知れません。まあ、個人の不憫さに強弱や上下を付けることが間違っているのかも知れませんが、震災で両親を失い、妹とも生き別れ、施設暮らしのバイト三昧という雪人は、彼という人格に目を瞑るなら十分同情に値するものでしょう。そういえば、どうして両親は失った、つまり死んだと明記されているのに、妹は生き別れたと、生きていることが前提なんですかね? 普通なら、妹含めた家族と生き別れたと表記するのが自然に思えますが……まあ、本筋と違うので別に良いか。
ただ、雪人はそのいい加減な、もとい前向きな性格からあまり辛さを感じさせませんし、何より災害から15年という月日が過ぎています。物心付く前、あるいは記憶を操作されている可能性もあることから、本人の自覚や意識がとても薄いんですね。故に同じ被災者でありながら、静香などとは考え方が違い、配慮や思いやりが足りないなどと注意されてしまうのです。
一方、ハルはどうでしょうか? 彼の場合、両親を亡くしたのはつい最近の話であり、奥木染に引っ越したのは、葬儀やその後の諸々で疲れ果てたからです。負った傷は深く、癒えることはない。しかし、自発的に引っ越しを選んだことから、田舎生活には積極的な面があり、不器用ながらも家事を行うなど、積極性もあります。この辺り、突発的に鵠見市に行ったものの、あらゆる事が無計画だった雪人とは違いますね。勿論、最初から彼が長期滞在するつもりだったとは思えませんが、彼の鵠見市における生活が成り立っているのは、偏に理事長のおかげですからね……衣食住と補償して貰って、学校にも通えているのだから結構な身分です。災害孤児への補償と言ってしまえば、それまでなんでしょうが。

日常生活
雪人は生き別れの妹を探すという目的を持って鵠見市にやってきました。彼の日常はそれが基準であり、学園生活とかは実のところ二の次だったりするんだよね。単純に引っ越してきた、つまり生活環境を変えただけのハルとは事情が異なります。ただ、そのことで雪人が苦労をしているのかと言えば話は別で、前述の通り彼は衣食住を補償して貰ってますし、生活のための努力というのはあまりしてません。お金は出るし、食事は学食や寮で作って貰えるし、学生寮とはいえ住むところも安定してる。日々の生活というものにあくせくする必要がないんですね。この辺り、家事だなんだと一杯一杯のハルに比べて、いくらかの余裕があります。
ヨスガノソラとイモウトノカタチはそれぞれ共通点があって、学校というものが舞台装置としてはそれほど機能していません。後者は学園ラブコメを謳っているけど、学校が舞台に話が展開するというのはあまりなく、どちらかと言えば寮の方が多いんじゃないか? という気もします。一方、ヨスガノソラはルートごとに差異はあるも、穂見学園が物語の中心となることはありませんよね。この様に二つの作品は、学校生活をメインにしているわけじゃないから、そこから積み重ねる日常というものがあまりなかったりする。
話は逸れましたが、雪人はこうしてみると平々凡々な学生をやっている気もしますね。特殊な環境ではあるけど、ハルほど現実に苦労しておらず、環境としては恵まれていると言ってもいいでしょう。ハルが奥木染で受けられる恩恵なんて些細なものだし、この差は結構大きい。

妹との関係
これはそもそも比較できないと思うんだよね。最初から双子の妹がいるハルに対して、雪人はその妹を探しに来たわけだから。けどまあ、基本的に穹のことを考えて行動しているハルと違い、雪人は自分の都合で妹さえも振り回す男だし、兄としてどちらがまともかというのは、考えるまでもないでしょう。そもそも、雪人が持つ兄貴像というのは、一般的なそれから外れてますしね。
大体、雪人は義妹である千毬に断りもなく鵠見市に来るぐらいですから、兄としての優しさなんてものは持っていないような気がするんだよ。真結希はともかくとしても、美優樹は友人関係の延長線、もしくはそこからのシフトで成立した兄妹仲だし。そういや、美優樹ルートって二人が兄妹であることが発覚した時点で終わるから、兄としての雪人は真結希ルートでしか見られないんだよね。そして、そのシナリオにおいて雪人がどんな兄貴だったのかと言えば……まったく、しょうもない奴です。
イモウトノカタチが酷評される理由の大部分は、主人公の雪人にあると見て間違いないですが、考えてみれば兄としての雪人は最後のルートでしか存在しないんだよね。千毬ルートもあれで関係性が曖昧だし、ユーザーは雪人がキャラとしてもっとも最悪なときに、兄である彼も見なくてはいけない訳か。そりゃ、好かれないわけだよ。ハルだって兄として間違いを犯すことは少なくなかったけど、穹ルートではちゃんと彼女を大切にしているし、しっかりと兄をやっていますからね。雪人は千毬という義妹がいたにしては、真っ当な兄妹観というものを何故築けなかったのだろう。
妹の方はどうかといえば、穹はハルにベタ惚れだからともかくとして、美優樹はなにせ兄妹であると知ったのが終盤ないし中盤だし、真結希に至っては兄妹だなんて思ったことはなかったですからね。この時点で、雪人と美優樹、そして真結希には、ハルと穹のような兄妹関係を望むことは出来ないのです。もっとも、穹は双子であることを意識しても、兄妹という順列には否定的でしたから、特典CDを除けばハルのことをお兄ちゃんと呼んだことはないんですが……まあ、それだけに重みが違うよね。雪人たちはなんて言うか、軽いんだよ。美優樹のお兄さんも、真結希のお兄ちゃんも取って付けたようなものだし、ミータとか意味分からないじゃないですか。千毬は年季があるから自然だけど、なんか雪人たちのそれは重みがない。重くないにも関わらずシリアスな流れに持って行こうとするから違和感が出る。要は、関係性が固まらないうちに兄妹としての話をやろうとしたのが間違っていたんじゃないだろうか。美優樹が瀬名を捨てて神志那になった経緯とかも含めて、駆け足過ぎたんだよ。

主人公として
ハルのことをヘタレだという人がいます。同じように雪人のことをクズだという人もいます。私は前者には否定的ですが、後者には肯定的で、雪人が非難される最大の要因は、やはり瀕死の真結希を病院から連れ出したことでしょうか? これに関して、ハルだって湖で穹を殺そうとしたじゃないかという反論があるわけですが、あれとは全然状況が違います。先にハルと穹のことを書きますと、まずあのシーンは穹が自殺しようとしたところにハルが現れ、水の中という恐怖空間に惑乱したハルが、穹を助けるつもりが諦めてしまい、一緒に死のうとした、つまり心中を図ったのです。結果として穹がハルの、助けてと言う声に応じたことで事無きを得るのだけど、そこには双方の意思が介在しています。
じゃあ、雪人はどうだったのか? 彼が高熱で瀕死の真結希を連れ出した理由は、そもそも行方不明のミータを探すという、真結希にはさして関係のない事情でした。直前まで真結希はミータのことをかなり疎んでいたから、当然ながら彼女はミータのことが好きじゃありません。にもかかわらず、雪人は真結希とミータの板挟みになった状況で、二人のどちらかを選ぶことが出来ず、真結希は置いていけないけどミータを探したいという自己の都合を最大限に優先し、その結果真結希を連れ出すのです。真結希が一緒に連れて行ってと言ったような気がしたと、自分に都合の言い訳をしながら、今にも死にそうな真結希を抱えて雪の街を歩く。彼女の本心はともかくとしても、雪人の行動には決して真結希の意思が入っているわけじゃない。だからこそ、彼の自分勝手な行動は叩かれるし、瀕死の妹が本当に死んでしまったらどうするつもりだったんだと、激しく非難されるわけです。つまるところ、雪人の行動は一方的すぎるんですよ。ハルと穹の場合、まず最初に穹が自らの死を選び、次にハルが二人の終わりを望んだ。しかし、雪人は彼だけにしか通用しない理屈や理由で真結希や美優樹を振り回し、その結果があれですからね。私は雪人を天然じゃなくて人格破綻者だと思っているけど、彼のああいった行動は本当に救いようがないと思う。ハルだって自分自身の力だけで這い上がれたわけじゃないけど、雪人は本当に自分じゃ何もしてませんからね。真結希とミータの件だって、二人がいつの間にか和解しただけだし、彼の都合の良いように話が進んで、偶然幸せを掴んでしまったといっても過言ではありません。性格が楽天家で前向きだから、先々の苦労とか不安とか、そういうのを一切感じさせないのもあるけど、ああいう支離滅裂の行動をした挙げ句に、自称モラリストになるわけですから、雪人というのは全くどうした……主人公としてのまとまりに欠ける男です。

何故、急にハルとの対比を行ったのかと言えば、単純に心の狭い私がハルが雪人の下に見られることに耐えきれなかったからです。いや、いくら何でもハルが雪人より劣るって事はあり得ないでしょ。容姿も性格も、妹に対する接し方も、何一つ雪人が勝っている部分なんてないと思うんだが。確かにハルはヘタレなところもあるかも知れないが、それは年頃の少年として等身大と言って良いものだし、少なくとも馬鹿ではないし、常識だってありますよ。ハルは都会人で、もっと言えば一般人や普通人なんです。それが妹と関係を結んだことで徐々に堕落してしまうのであって、雪人のように最初から箍が外れているわけじゃありません。
無論、どちらが上か下かなんてのは詮無きことなんでしょうが、主人公としてここまで違う二人、ハルは雪人にないものを沢山持っているし、雪人はハルが持っていたものを沢山なくしている。それは主人公として、兄として重要な物だったのだけど、雪人はどうしてかそれを全然別なもので補おうとしたから、結果としてキャラが破綻したんでしょう。とにかく雪人にげんなりした人は、ヨスガをやると良いですよ。きっとハルを見直すはずだから。

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