神のみこと神のみぞ知るセカイも最終巻ということで、今回はすべての店舗特典を押さえました。今後、画集やらパーフェクトブック的なものが出るとは限らないし、手に入れておかないと不味い気がして。店舗特典は天理を除く宿主たちのカラーイラストで、最後を飾るに相応しい面々ですね。特典が付く店舗数の問題からか、かのんだけはSSS特典という形になってますが、天理だけ作者自らサイン入りのペーパーを郵送してくれるらしい。サイズにもよるけど、同じようなイラストカードとして印刷するのもありかもしれませんね。

ちなみに限定ペーパーの情報が出る前に、天理は裏表紙ではないかという話もありましたけど、裏表紙は女神の宿主全員でした。まさしく、作品のラストを飾るべき少女たちでしょう。ただ、この裏表紙、一つだけ気になることがあって……うん、これはこの感想の最後に書きます。

そんな訳で最終巻ですが……まあ、加筆10Pがあるといったところで、話の内容がガラリと変わるわけではありません。作者はブログかツイッターで、結構ニュアンスの違いが出たみたいな、受ける印象の差について触れていましたけど、確かにその点は理解出来ました。加筆、あるいは修正されたのはなにも最終回だけではありませんが、やっぱり目立つのは最終回と、その前辺りでしょうか。
まだ本誌と照らし合わせてないので、具体的に10P分がどのように振り分けられているのか、明確に書くことは出来ませんが、私が気付いた箇所に基づき、今回の加筆修正について書いていこうかなと。思えば、最終回が掲載された当所、コミックスでの加筆修正は最終回未登場キャラに当てられる可能性が高いみたいなことを書いた気がします。攻略ヒロインもそうですが、白鳥家の皆さんとか、リューネとか、終盤までガッツリ出番がありながら、最終回に登場しなかったキャラというのは結構いますし、加筆は描ききれなかったキャラの出番に当てられると考えるのは別段不思議なことではなかったでしょう。
しかし、結論から言えば最終回の登場人物に変化はありません。攻略ヒロインは数が多いので仕方ないにしても、白鳥家のその後が描かれることもなければ、逆襲のリューネなんてことにもならず、うららや香織といった過去篇の重要キャラクラーが再登場することもありませんでした。二人とも本当に過去篇限定のキャラクターみたいな扱いで、成長した姿を見てみたかった身としては残念でなりません。うららは勿論ですが、香織なんて色々な意味で今現在なにしてるか気になるじゃないですか。てっきり、リューネのバディとして、ズタボロのリューネを適当に看病してる姿でも描かれるかと思ったのだけど……
まあ、リューネ自身はカバーの見返しで生存が確認されたからいいんだけどさ。ここしか場所がなかったんだ、という感じの描かれ方だけど、フライドチキンをパクついて血肉を補給しているようです。あれだけの激闘を繰り広げながら、「あー、しぬかとおもったー」で済んでしまう辺り、エルシィよりもよっぽどラスボスっぽいですね。羽衣も復活してますし、罪に問われるとかそういうことはないみたい。

それでまあ、最終回の加筆についてなのだけど、かのんは結局セリフ付きでは登場しませんでしたね。あくまでモニター越し、アイドル活動頑張ってますよ的な描かれ方で、中川かのんという少女のスタンスというか、立ち位置のようなものが垣間見えてくる気がします。もっとも、かのんの場合は再告白したとはいえ、明確に桂馬から振られている身ですから、最初から覚悟があったというか、気持ちの切り替えは難しくなかったのかもしれません。失恋でアイドル稼業を投げやりにするようなタイプではないし、敢えて心情には踏み込まず、台詞なしで描いた方が映えると考えたのかもしれない。
月夜と栞のシーンも取り立てて変化はなく、この二人の関係性は連載時に完成されたと考えて良さそうです。月夜は栞にべったりしすぎにも見えるけど、元々誰かに依存することがなかった娘であることを考えれば、これぐらいは可愛いものといえるでしょう。あしらうというか、熱中しすぎて聞こえてない栞と合わせれば、程よく吊り合いも取れていますし。
歩美と結のシーンですが、ここには分かりやすいシーンの加筆と修正がありました。歩美は帰還後の桂馬とのやりとりについて、以下の様な台詞で触れています。

「普通はもー少し愛想よくするもんでしょ!! 助けてもらって何よあの態度!! あの悪人!!」

一応、帰還後にありがとうという感謝の言葉を掛けている桂馬ですが、その後のやりとりは決して明るいものではなかったようです。本誌掲載時よりも手厳しい歩美の言葉通りだとすれば、桂馬はかなり冷淡に宿主たちを突き放した可能性が高く、結構酷い振り方をしているのかもしれない。歩美が直情的というのはあるのだろうけど、少なくとも桂馬が愛想の一つも見せず、宿主たちを労ったりしなかったのは事実らしい。最終回掲載直後はページの都合で描かれていないだけで、桂馬はちゃんと宿主たちにちゃんと説明したはずだみたいな意見もありましたけど、ここを読む限り、そういう感じではなさそうです。
一方で、結の台詞も加筆されており、彼女は笑顔を見せつつも、「歩美はわかっていないなー!!」と、不満タラタラの歩美に自分の考えを話し始めます。

「桂馬くんがボクらと仲良くしないのは…ボクらが好きだからさ!!」

「つまり!! ボクにもチャンスがあるってこと!!」


この台詞、本誌掲載時は「こんなすごい恋、もう二度とないかも知れないじゃないか!!」というものでした。次いで桂馬を諦めないと結は言うのですが、コミックスではそれが上記の台詞に差し替わった形になります。本誌掲載時の台詞のままだと、結はあたかも桂馬以外との恋も考えているかのような発言でしたが、コミックスではあくまで桂馬一筋、自分にもまだチャンスはあると張り切っています。
楽観的というか、前向きな考えに歩美は本誌と同じく「おいおい」とツッコミを入れますが、結のこうした思考というか、結論自体は別段おかしくありません。というより、ある意味では真実の一端を掴んでいるのではと思います。
結に限らず、女神の宿主というのはただ一人を除いて、桂馬から攻略と再攻略をされた相手になります。桂馬と恋愛をして、彼を愛し、愛された。彼女たちは自分が桂馬から愛されたという自覚があるはずで、結は桂馬から貰った愛情、向けられた好意は本物であるという確信があるのでしょう。嘘っぱちの気持ちで女神の翼が出るはずはないし、結には結なりの根拠があります。現に、手紙の中でも桂馬は結の在り方を好きだと言ってますし、決して拡大解釈ではないはずです。
結は正しいと思うことに全力で立ち向かえる人です。だからこそ、彼女は自分の想いも桂馬の気持ちも正しいものであるとして、諦めずに進むことが出来る。実に結らしい、素敵な結末だと思いました。
でも、歩美はそこまで前向きにはなれない。ここは本誌から変わってないけど、なにせ相手が相手です。幼馴染で親友に対しての遠慮、しがらみ。女神篇でも一度は身を引いたし、桂馬の手紙にもあったように、歩美は本当にいい子なのでしょう。だから、自分の気持よりも相手の気持を優先させてしまう。ある意味で戦う勇気がないとも言えるのだけど、それは決して彼女が弱いからじゃない。ここでのギブアップも、歩美らしい決断だったと言えるでしょう。

桂馬とちひろの邂逅シーン。本誌掲載時は、ちひろと遭遇した桂馬が頬を赤らめて、そんな彼に対してちひろがお茶に誘うという、シンプルな内容でした。このときの桂馬の表情はとても純朴であり、それを持って桂馬は普通の恋する男の子になったという見解を示す人が多かったように思います。駆け魂狩りや、それ以上の役目から解放されたことで、落とし神じゃなくなったことで、桂馬は平凡な恋する男子高校生になった。確かに、あの表情を見せられればそう思わずにはいられないし、あれは明らかにちひろのことを意識している顔でした。
しかし、最終巻の加筆修正でそうした純朴な表情はすべて描き直されていました。恋する少年、普通の男の子はどこに消えたのか、桂馬はとても冷静で、ちひろに対する視線や表情はクールそのもの。冷淡とは言わないまでも口調は酷く淡々としており、どこか突き放した感じさえ見受けられます。
ちひろの台詞も加筆されており、彼女は桂馬に告白の真意を問いただします。当たり前の話、女神篇での手痛い経験があるちひろとしては、桂馬の告白を馬鹿正直に信じられるはずもないし、何の疑問もなく受け入れることなど出来ないのでしょう。桂馬が本当に恋する少年だったなら、不器用にもここでなにかしらのフォローをするはずです。自分が本気であることを、難しくても伝えるのが普通だと思う。
けれど、桂馬はそんなちひろの問いかけにどこまでも淡々としていました。

「あれ、なんなのさ…何考えてんのあんた?」

「何も考えてない」

「だから、ボクもどーなるかわからん!!」

「なんだそりゃ!!」


ここで桂馬が頬を赤らめて、照れ隠しのように上記の台詞を言ったなら、微笑ましいシーンか、あるいはギャグシーンにでもなったんだろうけど、桂馬はぶっきらぼうというよりは無感情にも等しいほど表情の変化を見せません。好きな人を前にしているはずなのに、まるでそれが伝わってこない。これでもまだ桂馬が普通の、純朴な、等身大の男の子になったんだと言う人がいるのなら、それは流石に無理があると思います。
作者がどうしてこのような加筆と修正を加えたのか、桂馬の台詞からも分かるように、先が見えないことを強調したかったのではないでしょうか? 後にあるディアナの台詞にも繋がる話ですが、桂馬が連載時のまま、頬を赤らめた恋する少年でいると、結局は何だかんだ言ってちひろと付き合う未来が想像に難しくありません。でも、そうすると結末が決まっているようなものであり、それを否定したディアナの考えと矛盾します。
結が言ったようにチャンスはまだあるはずで、それは他の宿主たちもそうだし、彼女たち以外の攻略ヒロイン、あるいはこれから登場する誰かかもしれない。ディアナの言った「私たちは決められた結末のために生きているのではない」とはそういうことであり、だからこそ、桂馬は恋する少年ではいられなかったのではないか? 彼は作品の今後に、可能性を残さなければならなかったから。結と、そしてディアナが示した可能性。桂馬には主人公として、それを守る義務があったのでしょう。
そうなってくると、ちひろは確かにお茶へと誘ったけど、「とりあえず、どこかで腰を落ち着けて詳しい話を聞かせてもらおうか」以上の意味はないような気もします。少なくとも、今の時点では。

天理とディアナのページにも、加筆がなされていました。本誌掲載時にはやけに物分かりがいいと言われていたディアナですが、最終巻の加筆によって桂馬への怒りを露わにしていました。考えて見れば、ディアナの性格からして怒らない方が不自然であり、この加筆はまあ予想出来ていました。予め天理から説明があって納得していたのかと思いきや、全然そんなことはなかったんですね。

「納得行きません!! 天理は10年もこの時を待っていたのに……!!」

ディアナの発言は天理ファンの共通見解みたいなものであり、まさにファンの気持ちを代弁していると思います。まあ、これが天理に対するフォローというわけじゃないんだろうけど、10年間にも渡る想いと献身が報われなかったことに対して、不満が渦巻いていたことは否定出来ない。
でも、天理にはわかっていたことだった。桂馬が予め手紙に全部書いていたから、桂馬がちひろのところへ帰りたがっていたのに気付いていたから。

――天理、最後に確認しておく。

――ぼくとお前とのエンディングはない。


すべてが終わった今だからこそ、天理は桂馬が手紙に書き記した言葉の理由がわかる。

――ボクらはすべてが終わったら、別々のルートを歩いて行くんだ。

かつて言われた言葉。当時は意味が分からなくても、今ならわかる。わかってしまう。

「桂馬くんはずっと苦しんでいたんだよ…だから…」

「終わって…よかったよ……」


以前、天理にはまともに告白する機会すら与えられなかったと書きました。
しかし、真実は違いました。天理は桂馬に、告白したくてもすることが出来なかったのです。自分がそれを選択すれば、桂馬を苦しめてしまうと彼女は理解していたから。10年に渡る想い、献身、あるいは天理が泣いてすがれば、桂馬はこれを突き放すことが出来なかったかもしれない。それだけ大きな借りが、天理に対してはある。
だけど天理は、自分の気持で桂馬を縛りたくはなかった、苦しめたくなかった。故に彼女は気持ちを封印して、違う結末を夢見ることで、僅かな望みを繋いだのです。
天理は結を始めとした宿主と違って、桂馬に攻略されたことがありません。一度だけキスはしてますが、あれは完全にお芝居だと分かり切っていたことですし、だからこそ、天理は結のように前向きになることが出来ない。恐らく彼女は、桂馬から愛されている、好意を向けられているという実感がなかったのかもしれない。頼られている、という自覚はあったかもしれないけど、事実として桂馬は天理を愛さなかったわけですからね。
そう考えると、天理は本当に残酷なルートを歩いていたように感じます。天理の生き様や考え方は、まさしく女神といえるだけの慈愛に満ちたものだったけど、それは彼女が報われることのない、ただ一人、想い人の幸せだけを祈るものだった……
ディアナの言葉は天理に対する励ましであり、有り体に言えば「諦めるな!」と言ってくれているわけですが、ディアナ自身の気持ちはどうなったのか、それは不明のままでした。天理に対する仕打ちを考えれば愛想を尽かしてもおかしくはないけど、惚れた弱みという言葉が似合いそうな女神ですし、未練はあるような気がするんだよね。なので、天理への励ましであると同時に、自分に対しての言葉だったのかもしれないと、そう思うことがある。

だからこそ、「私たちには未来があるのです!!」と、ディアナは自分と天理の未来について、二人分の想いを空に羽ばたかせることが出来たのかもしれない。

ハクアに関しても、一応の加筆がありました。メインキャラ、ヒロインの一角だったことを考えると本当に小さい扱いですが、ハクアは相変わらずエルシィのことを思い出せないようです。なにかに気付いた表情はしてましたが、それが記憶の復活に繋がるのかは不明ですし、まあ、ハクアとしてはこれが無難な幕引きなのかなと思います。余韻も、そう悪くないものではないし。
ただ、エルシィに関しては……「ごめんね、ハクア…」と、心のなかで謝ってるんですよね。ここは結構重要な加筆で、エルシィが駆け魂レーダーを持っていたことを考えると、桂木えりとは歴史改変によって生まれた存在ではないことが伺えます。元々存在したエルシィという悪魔を桂木えりという人間の転生体に置き換えて、関係各所の記憶を書き換えた、といったところか。麻里さんがお腹を痛めて産んだ娘ってわけではなさそう。
でも、それ以上に重要なのはエルシィがハクアに、面と向かってではないにせよ謝罪してしまったことです。最終回一話前が掲載された後、エルシィの決断とエンディングに対してある種の非難が起こりました。親友のハクアはどうしたんだ、と。
私も書いたと思いますが、エルシィは人間になることでハクアを、如いては地獄との繋がりを断ち切っているんですね。幾らなんでも親友に対して非情すぎやしないか、それでいいのかエルシィと、そんな感じです。しかも、ハクアは桂馬に恋していたこともあり、エルシィの記憶を失ったことで、そうした恋心も消えてしまった可能性が高い。結局、告白することもなく、気持ちを伝えることも出来ず、この仕打はあんまりだという嘆きがあって当然のことでしょう。
そうしたエルシィの行いについて、こんなフォローというか、擁護がありました。曰く、エルシィはポンコツだからハクアのことまで深く考えていなかったと。それはそれでどうなんだという意見ですが、エルシィが謝罪したことによって、この可能性は消えました。エルシィはこうなることを分かった上で、エルシィとして生き続けるのではなく、桂木えりとして生まれ変わることを選んだんです。だから、彼女はどこまでも確信犯なんですね。
エルシィはハクアの桂馬に対する気持ちに感づいていたこともあり、それを考えるとかなり酷いことをしてしまったんだけど、そこはまあ、エルシィの私欲だからしょうがない。親友ハクアとの関係や、彼女の抱えていた気持ちよりも、自分が桂馬の実妹になることのほうが大事だったとしか言い様がない。謝って許されるのかは分かりませんけど。

ざっちと読んで、ざっと書いた限りではこんな感じですね。エルシィの行いに対するフォローが弱いにように感じましたけど、後は概ね理解しています。満足したか、納得したのかと言われると悩みどころですが、これ以上なにが出来たのかと言われると、今はまだなにも思い浮かばないので。女神のその後とか、解き明かされなかった謎についてはブログでの解説を待つことにして、次の日記ではちょっとした考察に入ろうと思います。
ところで、最初に書いた裏表紙の件なんですが……宿主たちがそれぞれ英単語を並べてるんですよね。
歩美:See、栞:You、かのん:in、月夜:Another Time、天理:Another、結:Routeとなり、繋げてみるとSee You in Another Time Another Routeになります。
私はそれほど英語に強い方ではありませんが、要するにまた別のルートで会おうねということであり、個別ルート、個別エンディングの暗示なのではないかと、そんな期待を一瞬抱いたりしました。まあ、実際はまた次の作品でお目に掛かりましょうとか、そんな意味なのだろうけど。帯ではドクロ室長が、「ご愛読ありがとうございました! 若木先生の次回作にご期待ください」と言ってるからね。

神のみの企画はまだ幾つか進行中ということですが、コミックスの帯に書かれているのは既存の情報、発売中の関連商品についてが全てであり、新規情報のようなものはありませんでした。コミックスにはあとがきもありませんでしたし、本編の加筆のみに尽力したのが伺えます。今後神のみがどうなるのか、果たして本当にすべてが終わったのかはまだ分かりませんが、一つ言えることがあるとすれば、私の中ではまだまだ続いていると言うことです。こうしてコミックスを読むことで、それを再認識しました。
けどまあ、とりあえず、神のみぞ知るセカイ最終巻、26巻の感想はここまで。天理とディアナに、そして女神と宿主に史上最高の祝福を。

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