世の中は選挙だけど、それについては別所で書きます。ちゃんと国民の義務は果たしてきたので、今は選挙特番見ながら夏コミの原稿を進行中。いい加減、夏コミも追い込みに入らないといけないし、正直言って例年よりもペースが遅い。理由は分かってるんだけど、予想以上にヨスガノソラ本が遅れてる。ゼロボンがてんでだめになってるのはともかく、ヨスガ本はもう完成してないとおかしいはずなのに。

まあ、今週のはじめにあったアニメ雑誌での情報公開や、昨日の公式サイト開設といった流れの速さに、私がついていけていないんでしょうね。思っていた以上にヨスガノソラのアニメ企画が大きかったということか、さすがスターチャイルドといったところでしょう。正直、私個人の手に負えるような状況ではなくなってきたけど、こうなったらやれるところまでやりますよ。一応、90年代からずっとスタチャっ子ですからね。とことん追いかけ続けたい。
ただ、以前も書いたと思うけど、ヨスガのアニメってなんかスタチャらしからぬ企画なんですよね。声優のキャスティングもそうだし、スターチャイルドというレコード会社が儲けることの出来る作品だとは、とても思えない。言ってしまえば、スタチャがアニメ化することで発生する旨みがないんですよ。もちろん、なんらかの思惑と売れるという確信があったからこそ企画とオファーをかけたんだろうけど、それがなんなのかが分からない。ヨスガは確かにヒットした作品ではあるし、大ヒットじゃないところがアニメ化のしやすさに繋がったのかもしれないけど……だからこそ、アニメ化すれば必ず売れるってほどでもないと思うんだよな。
スタチャがエロゲ作品をアニメ化した例は意外に少なく、TVアニメではD.C.シリーズとおとぼくぐらいしか例がありません。OVAを含めるなら最終試験くじらとかもあるけど、ヨスガノソラはスタチャが作るエロゲ原作のアニメとしては、シリーズで言えば3作品目ということになるかもしれない。アニメ化のオファーをしてきたのがスタチャの他にあったかは知らないけど、スタチャはヨスガノソラの中に、なにかを見出したとでもいうんでしょうか。森山敦が作品に惚れ込んだのか、それとも他の理由があるのか。
スタチャ声優を一切出さず、穹の声が堀江由衣になったりもせず、従来のスタチャを捨ててまでヨスガノソラをアニメ化しようとしているというのは、なんとも不思議な光景に見えてなりません。

話を変えて夏コミですけど、今年の夏も私はヨスガノソラでスペースとってます。昨年の冬コミは落ちたので、ちょうど1年になるんですかね。今年も暑い夏がやってくるというわけで、現在小説本を執筆中。詳しい内容はまた後日にでも書きますが、夏コミにヨスガサークルはどれぐらい来るんだろうか。なにせ冬コミはサークル数ゼロだったから、もしかしたら私以外はヨスガサークルがいないなんてことも十分あり得るだけに……CUFFSサークルなら冬にも1つあったんですけどね、これがSphereとなると、また事情が違ってくるらしい。
アニメ化すればヒットに関係なく、ある程度は増えると思うんだけどね。今年の夏に限って言えば、サークルはまだまだ少ないでしょう。アニメ化情報自体は5月の時点で行き渡ってるから、同人誌という意味では突発本とかアニメ化記念本が出ててもおかしくはない。それをすべて把握するのは難しいけど、まあ、なんとかやってみます。
それに大変という意味では、冬コミの方がよっぽど大変になるでしょうしね。というのも、夏コミと違って冬コミの申し込み締め切りは早いから、ヨスガノソラのアニメが放映を開始する前に締め切りとなってしまいます。つまり、その時点でヨスガノソラサークルが爆発的に増えるということはありないので、サークルカット上ではヨスガノソラサークルは少ないでしょう。しかし、実際に冬コミが開催されるのは12月ですし、そのときには既にヨスガノソラのアニメは始まっています。アニメが10月のはじめに放映開始したとして、冬コミの締切りは11月末ないし12月中旬、これだけの期間があれば同人誌の1冊や2冊を作ることは十分可能でしょう。
これがどういう事かというと、サークルカット上は別ジャンルだけど、実際はヨスガノソラの新刊を出しているサークルというのが普通に存在するわけで、それこそ蓋を開けてみないと分からない、なんてことになりかねないわけです。カタログに載ってる全サークルを調べ上げるのはこんなんだし、そもそもサークルHPの類を持っていないサイトだと、当日参加してみて、初めて新刊を見ることが出来るなんてことも、少なくはないですからね。私は、それが怖いです。

ヨスガノソラに限らず秋アニメの宿命みたいなものですが、このクールのアニメって冬コミが過ぎてしまうと、それでジャンルの勢いが止まってしまうことが多いんですよ。近辺に大きな同人イベントはありませんし、すぐに冬のアニメが始まってしまいますから。冬コミの次は夏コミだけど、夏コミまでジャンルが勢いを保てる保証がない。夏コミまでに冬アニメ、春アニメと放送が行われているわけですし、ヨスガノソラが2クールやるとは思えない現状を考えると、秋新番ではイマイチブームになりきらないような気がする。
よっぽど出来がよければ冬コミで爆発するんだろうけど、視聴環境が限られそうな感じだし、禁書の2期を始めとした強力な布陣の中で、ヨスガに手を出すサークルは果たしているのか。ギャルゲ・エロゲ枠で考えたとしても、ラブプラスはまだまだ強いしね。夏コミでABがどれぐらいの規模になっているのかも、参考になるかもしれない。

まあ、先の冬コミより目前の夏コミですよ。大体、冬コミの前にはドリパもあるし、基本的にSphereはドリパグッズの通販をしてくれないから、それについての対策もしないといけない。そもそも秋のドリパ東京は10月3日だから、もしかしたらまだアニメの放送は始まってないかもしれない。秋ドリパだけのグッズとか作ってきたらほんとやだな。広報が関西の出身だから、そこら辺に差をつけてくるかもしれない。割と多いんですよ、そういうのって。
アニメの情報については月末まで動かないと思うし、それより前にSphereの夏コミ情報だけど、今週はさすがに疲れた。情報がある限りヨスガを優先して書くけど、しばらくは原稿に集中したいものだ。
コンプエースでコミカライズ版ヨスガノソラを連載している、水風天さんのブログが更新されて、なんでも今月のヨスガノソラのコミカライズはお休みらしい。アニメ合わせと書いてるけど、つまりコミカライズは企画として連動しているということか。別に休載になることは構わないんだけど、もっと早く教えて欲しかった。いや、水風天がどうというより、普通に次号予告載ってるじゃないですか。それを予告なしに休載ってのはどうなんだろう。いや、予告はしたのか。ブログだけど。

ヨスガノソラのアニメは私が思っているより大きな企画なんでしょうか? スタチャと角川が関わっている時点で小さいはずもないんですが、某大手情報サイトに削除依頼が来た件は、私もハッキリ言って驚いてます。早売りの是非を問うつもりはないけど、情報そのものに削除依頼をだすってのはあまり例がないと思うし、そんなことをするほどヨスガノソラはビッグタイトルだとでも言うんでしょうか? 削除依頼を出したのがスタチャか雑誌社かは知らないけど、そうするだけの理由があったということですし。
どうにも信じられないなぁ。D.C.みたいな一大プロジェクトならまだしも納得いくけど、ヨスガがそれほどものだとはどうしても思えない。いや、別にヨスガを貶してるわけじゃないけど、実際に大ヒット作というわけでもないでしょう? FD出た時点でそれなりに売れた作品ではあるけど、情報の早出しに過剰反応するほどのものなのかねぇ。だって、作品的にシリーズ化出来るようなものじゃないし、ぶっちゃけ広げにくい内容ですよ。コンシューマーは出るだろうけど、音楽CDとかでバンバン稼げるようなものでもないんだし……なんか、ヨスガノソラのアニメは色々と意外というか、異色なことが起こってるのでちょっと戸惑い気味。
私は単に個人の日記書いてるだけだし、業界系情報サイトとか某大型電子掲示板の転載ブログとかではないけど、まあ、なにかしら来たら従いますよ。スタチャとやりあっていいことなんてなにもないしね。一応、雑誌のレビューとかも10日まで控えようかと思います。全雑誌チェック済みだけど、明日まで様子見ということで。私の情報公開基準は某大型掲示板で流れ始めたら、ってことにしてるけど、今回は流石に早すぎったってことなのかな。

コンプエースの休載の件は残念だけど、単行本告知漫画が1P載ってるらしい。アニメ化告知漫画ならわかるんだけど、単行本なんですね。まさか、もう2巻の告知をするのでしょうか? 話自体は溜まってますから、既に単行本作業を開始しててもおかしくはないんだけど、1巻出たのがつい最近だしねぇ。とはいえ、今更コミックス第1巻好評発売中とか、そんな内容になるとも思えない。告知と宣伝にほとんど違うはないけど、個人的に告知ってのはこれからやることに対して使うことが多い気がして。既にやってること、出ているもの、そういうのに告知って言葉は……いや、でも使うか。ラジオとかに来るゲストは普通に発売中のCDとか本を告知コーナーで宣伝してるし、私の言葉に対するイメージの問題だなこれは。
まあ、1ページでも漫画が載っているなら私は買いますけど、まさかここで休みを挟んでくるとは。前回単行本作業のために休載した際は、穹がハルにキスしたところで次に続きましたが、今回は穹が自慰している真っ最中ですから。事情があるにせよ、アニメ合わせなんて読者には関係ない話だし、ちょっと微妙な気分。いい所で前回が終わっているだけにね。
コンプエースが休載ってことは、今月はもうメガミマガジンと娘Typeだけですか。角川での扱いが思いのほか小さいから、重視すべきはメガマガなのかな。スタチャ作品を学研が押すというのも、まあ、分からなくはない話です。もう少し角川も取り上げてくれよと思わなくもないけど。

某所で話題になってた抱き枕の件は触れたほうがいいのかな? いや、ヨスガノソラの同人抱き枕にトレスの指摘があって、検証の結果ほぼ間違いなくトレスしてることが判明したらしい。私もヨスガノソラではないけど、抱き枕企画中だからあんま偉そうなこと言えないけど、そういえばあの抱き枕ってこの日記に書いたことあったかな。イマイチ思い出せないけど、金の持ち合わせもなかったし、公式でもない抱き枕を買うのもどうかと思ったから買いませんでした。まあ、抱き枕がどうというより、この場合はトレス作品であることが問題になってるわけだから、事情も異なるんだろうけどね。大体、同人抱き枕がダメとか言い出したら、CUBEで原画やってるカントクの顔が青ざめてしまうよ。
Sphereがどう動くのかは知らないけど、これを契機に同人活動に厳しいルールとかができたらやだなぁ。私は絵描きじゃないけど、だからといって呑気に構えているわけにもいかない。今日のスタッフ日記では特に触れてなかったし、かたひとマンも触れなくなったけど、ヨスガノソラのキービジュアルポスター抱えてCUFFSに行ったみたいだから、なんかしらの話はしたと思われる。さて、どうなることやら。

私のサークル&くろのとくろえさんで作っている抱き枕も、少しだけ問題が発生しましてね。詳しく書くのもどうかと思うので今は省くけど、なんというか同人活動ってホント大変だ。ヨスガノソラはともかく、ロクゼロはジャンルとしてもそれなりだから、たまにこういう事件が起こるんだよ。まあ、今のところなんの動きもないから、何事もなければそれでいいんですけどね。まさか、公式企画と勘違いされるとは……マジなんだろうか、あれは。
CUFFSのHPが更新されて、夏コミの参加情報が公開されました。SphereとCUBEからもリンク貼られてますので、好きなブランドのページから飛んでみてください。雨ばかりでジメッとした今日この頃に、☆画野朗さんの清涼感あふれる夏のイラストが輝いてます。このプニプニした感じがたまりませんね。事前通販は10日後を予定しているみたいですが、グッズに付いては今のところ3種類しか公開されておらず、その中にヨスガグッズはありません。
CUFFS/Sphere/CUBE C78セット
3ブランド合同のグッズセット。
新作『Cafe Sourire』『your diary(仮)』や、『夏ノ雨』などのグッズを詰め込みました。
【内容】
・小冊子 ・お風呂ポスター ・テレカ他

伊東ひなこ抱き枕カバー
『夏ノ雨』のおっとりヒロイン、伊東ひなこの描き下ろし抱き枕カバー。
【仕様】
・500mm×1600mm
・2WAYトリコット(A&J社製)
・同デザインのテレホンカード付

篠岡美沙&ねね抱き枕カバーセット
『夏ノ雨』のおっちょこちょいな先生、篠岡美沙の描き下ろし抱き枕カバー。ねねのミニ抱き枕もセットで!
【仕様】
・美沙 500mm×1600mm
・ねね 450mm×1200mm
・2WAYトリコット(A&J社製)
・同デザインのテレホンカード付

現在公開されてるのはこ3種ですけど、気になるのはグッズセットにヨスガノソラの名前がないこと。Sphere含めた3社共同とは書いてあるけど、明確にヨスガノソラのグッズが入っていると書かれているわけではないから、あるいは小冊子にちょちょこっと絵が載るだけかもしれない。まあ、それでも買いますけど。
夏ノ雨の抱き枕カバーに関しては……桜井朋美の抱き枕はいつ出るんですかね? あの娘が攻略対象だったら、私の夏ノ雨に対する評価も少しは違ってたのかもしれないけど、それにしても相変わらず公式の抱き枕って色気というか、エロや露出が少ないですね。理香子と翠は結構エロかった気がするんだけど、今回はやや控えめ。ねねのミニ抱き枕は裏面が気になりますね。さすがに幼女だけあって生足限定でパンチラすらしてないけど、裏面では思い切って、なんてことになってたりはしないだろうか?w というか、セットで販売ってことは通常よりも値段が高くなるのかな。篠岡美沙の人気がどの程度かは知らないけど、ねねと揃って在庫が余るなんて事態にならなきゃいいけど。沢山売って、朋美抱き枕に繋げて欲しいものです。
主な販売物としてこれらが挙げられてるってことは、今年の夏コミはこの3つがメインということでしょうね。新作抱き枕を出すことは知ってましたけど、やはり夏ノ雨だったか。ヨスガノソラで抱き枕が出ていないキャラは初佳とやひろ、それに委員長だけど、前者2人は鈴平の担当キャラだから新規絵を描いてもらいにくいし、後者はなにせハッシーですから、そんなすぐに用意できるとも思えなかったから。

一応、ページには『ヨスガノソラ』の新作グッズを用意していきますと書かれてはいるけど、描き下ろしグッズがあるのかは不明。鈴平との契約がどうなってるのかは知らないけど、アニメの原作キービジュアルがハッシーのみで描かれているところを見ると、新規絵はまず望めそうにないと思う。今年はHOOKでしか仕事しないと本人も言ってるし、グッズ作るにしてもさくらビットマップを優先させると思う。
となればハッシーが描くしかないんだけど、ハッシーはハッシーで自分の夏コミ原稿もあるはずだし、筆が速い方でもないですからね。新作といっても過去絵の使い回しかもしれないし、それこそ前々から作ると言っていたミニアクレリーフかもしれない。だから、早いところ詳細な情報が欲しいんだけど……
まあ、ヨスガノソラの新作グッズは控えめかもなぁ。CUFFSとCUBEの新作をプッシュしていく必要があるわけだし、グッズ作るにしても夏ノ雨の方が作り易いでしょう。ぬいぐるみとかも秋ドリパだし、むしろヨスガ関係は秋ドリパをメインに考えていたほうがいいかもしれませんね。描き下ろしテレカの1枚ぐらいはあってもおかしくないけど、それ以上を望むのはちょっと難しいかも。VFBの再販と、新作グッズがいくつあるか。少なければ少ないで金銭的負担が減るから喜ばしくもあるんだけど、それはそれで寂しい話だよねw

本当はアニメ雑誌のレビューを書こうかと思ったんだけど、ニュータイプはなにせネタを広げるだけの記事でもなかったし、画像とスタッフ情報だけだったから、書くとすればアニメディアかな。まだ、アニメージュとコンプティークの確認を済ませていないんですが、かたひとマンにはTwitterでもいいから、どの雑誌に情報が載ってるのか教えて欲しいや。
一応、全部校正しているそうだけど、よくそんな余裕があったなぁ。まあ、特集とかじゃなくて小さ記事だからかな。いや、雑誌編集部ってのは常に時間的余裕が無いところだから、校正したという相手を如何に諦めさせて作業をすすめるか、という考えを持っていまして。アニメ雑誌なんて特に余裕もへったくれもないところだから、ちょっと驚きました。それだけかたひとマンのヨスガにかける思い入れが強いってことですかね。
残りの2誌に関しては、とりあえず立ち読みしてヨスガの情報が載ってたら買うことにしよう。
春日野穹bot→URL:http://twitter.com/sora_k_bot

ヨスガノソラ
●AT-Xほかで10月放送スタート
©Sphere/奥木染町内会

■STAFF 原作/Sphere
監督/高橋丈夫
シリーズ構成/荒川稔久
キャラクターデザイン/神本兼利
音響監督/岩浪美和
音楽/三輪学、Bruno Wen-li
音楽制作/スターチャイルドレコード
アニメーション制作/feel
製作/奥木染町内会

■CAST
春日野悠/下野紘
春日野穹/田口宏子
天女目瑛/阪田佳代
依媛奈緒/いのくちゆか
渚一葉/小野涼子
乃木坂初佳/岡嶋妙
伊福部やひろ/田中涼子
倉永梢/峰岸由香里
中里亮平/中國卓郎


※画像転載禁止(誰もしないだろうけど)

さて、まずはなにから書いていいのか。AT-Xほかというのは要するにAT-Xで先行放送して、その後U局でも放送しますよ、ということではないかと。珍しく聞こえるかもしれないけど、CSで先行放送する作品は割と例があって、一騎当千シリーズとかが前例かな。あれの最新作はAT-Xで先行放送した後、2週間ぐらい遅れてU局での放送を開始しました。おそらくヨスガノソラのアニメもこの形態なのだと思います。CSでも放送すると思ってたけど、AT-Xがメインなのはやっぱり内容に問題があるからでしょうか? 近親相姦もそうですが、もしかすれば奈緒の逆レイプとか、ハルと穹の情事など、およそ地上波では放送不可能な部分までやってしまうのかもしれない。というのも、AT-X先行の作品って、萌えエロ系が多いんですよ。一騎当千もそうだし、ファイト一発!充電ちゃん!!とかも。だから、AT-Xと地上波での放送には多少の開きがあると思っておいたほうがいいと思う。

次にスタッフですが、監督の高橋丈夫さんは有名所ではラノベ原作の狼の香辛料シリーズの監督をなさっており、最近ではなにかと話題のエロアニメ、あきそらも作っています。だから、田舎っぽい雰囲気にもエロにも定評のある人で、個人的には良い人選じゃないかなと。
シリーズ構成の荒川稔久さんは主に特撮の脚本で活躍されている方で、あの小山高生主催の企画集団ぶらざあのっぽの創立メンバーでもあるベテラン脚本家です。特撮のイメージが強いので意外に思われてる方も多いかもしれませんが、前述の狼と香辛料では高橋監督とタッグを組んでいましたし、過去には鋼鉄天使くるみりぜるまいんなど、萌えアニメも少なからず手がけています。私はこの人の脚本が結構好きなので、普通に信頼できますね。正直、こんなベテランが書いてくれるとは思いませんでした。
キャラクターデザインの神本兼利さんは……最近だと大正野球娘のキャラデザとかしていましたっけ。エロゲ原作ではデモンベインの作監とか、つい先日まで放送してたkiss×sisにも関わってましたっけ。ヨスガノソラのアニメがどんな絵柄なのかは画像見ればなんとなくわかると思いますが、それほど違和感もないかな。ハッシーの絵を再現するのは難しいけど、コミカライズよりは原作寄りでしょう。
音響監督の岩浪美和さんもベテランで、1年にいくつもの作品で仕事をされているので、特別代表作を上げる必要もないと思います。参加した作品すべてが名作というわけではないにしろ、とにかく数が多いからね。あんまりスタチャアニメのイメージはなかったんですが、どうやらかなめもとかスレイヤーズも担当していたらしい。てか、今年だけで既に4つの作品に参加してるのか。相変わらず凄いなぁ。
音楽の三輪学さんは作曲家です。アニメやゲームをメインに活躍されてる方で、実は別名義のManackでヨスガノソラ原作BGMを手がけています。つまり、音楽に関しては原作と同じ人を起用しているわけです。この人は他にもリトルバスターズとかプリズム・アークとか色々なエロゲを担当していますが、プリズム・アークがアニメ化した際も音楽に関わっていたので、今回も同じような形で起用されたのでしょう。つまり、音楽面に関しては気にすることはなにもありません。新規楽曲を作るのか、原作のアレンジで来るかは知りませんが、原作の雰囲気にあった楽曲が奏でられると思います。

そして、音楽制作はスターチャイルド、アニメーション制作はfeelというわけなんですが、これにはかなりびっくりしました。ニュータイプにはfeelしか書かれていなかったけど、アニメディアを見るまでもなくスタチャが絡んでるに決まってるじゃないですか。ほとんどガンジスの元請け制作をしている会社なんだし、スタチャじゃないわけがない。
担当作品は有名所なら、D.C.シリーズでしょうか? 他にもネギま!?とか、乙女はお姉さまに恋してるとか、前述のkiss×sisもそうですね。とにかくスタチャ作品を全般に制作している、キングレコード色の強いところです。
だからこそ驚いているというか、スタチャなのにどうしてこのキャストなんでしょう? スタチャといえばキャスト変更が基本みたいなところで、乙女はお姉さまに恋してるでの事件なんて、まだ記憶にも新しいと思います。スタチャ声優のゴリ押しが常だというのに、なにがどうしてこのキャストなんだろうか。よっぽど、Sphere広報のかたひとマンが頑張ってくれたのか、いや、おそらくはこれが事実でしょう。みんな、Twitterとかmixiとか、なんでもいいからかたひとマンにお礼を言いましょう。下手したら穹が堀江由衣とかになってたかもしれないんだよ? ほんと、よく頑張ってくれました。

キャストに関しては、様々な理由からハル以外に特筆することもないと思いますが、ハルの声優は下野紘さんですね。ハルに関しては穹の双子ということもあって中性的なイメージがあり、少年役もこなせる女性キャストの可能性も挙げられてましたが、私は下野さんの起用が正解だと思います。エロゲやギャルゲの主人公経験も豊富ですし、最近ではefが印象深いですかね? 同じく田口宏子さんとの主人公&ヒロインとなったわけだけど、私は下野さんが演じる少年役というのが凄い好きで。10代の少年演じさせたら、男性声優の中でもトップクラスだと思うんだよね。
まだ若手だからってのもあるんだろうけど、10代の少年が胸の中に抱えているものとか、そういうのを声で表現するのが本当に上手い。演じた役柄も多彩だし、ハルも問題なく演じきってくれるものと信じています。女性声優が良かった、という人もいるんだろうけど、私はハルの声は男の人が良かったし、白石涼子とかの少年声はどうも苦手なので、下野紘さんに決定して嬉しく感じます。この人に演じさせておけば間違いないという、安心感を与えてくれる。無難すぎると言われるかもしれないけど、安定感もある人だから。CMはきっとヒロインが担当するだろうから、下野さん演じるハルの声が聴けるのは当分先かな。

スタチャとはいえ、このキャストではイベントも組みづらいと思うんだけど、その辺りはどうするのかな? 俗に言うスタチャ声優は一人もいないし、後はOPEDを担当するアーティストか。出演していない声優に歌わせるとも思えないし、かといって出演声優に担当させる気もしない。となればアーティストを起用するはずだけど、ヨスガノソラのイメージに合う人がいるかどうか。榊原ゆいが無難なのかなぁ。まさか、理多やDucaに歌わせるとも思えんし。まあ、メジャーじゃない二人だからスタチャからデビューしても不思議はないんだけど、そうするとこの作品をアニメ化することでキングレコード的にどんな旨みがあるのかわからない。
声優も特にスタチャ色はないし、CDやイベントで盛り上げられるような作品でもない。そしてなにより意外だったのは、フロンティアワークス作品じゃないんですね。DVDとかもスタチャから出るんでしょ? てっきり横の繋がりでFWだと先入観を抱いていたけど、見事に予想が外れました。てか、どうりでドメインとか検索しても出てこないはずだよ。スタチャ作品なら、公式ページはスタチャのページ内に作られるわけだし、見つかるわけがなかったんだね。さすがにまだ公式HPは開設されてないみたいだけど、きっと近々オープンするのでしょう。
スターチャイルドというところは基本的に自分からアニメ化のオファーをかけることが多いんだけど、もしかしたらスタチャの誰かにヨスガノソラファンがいるのかも知れませんね。O月さんとかだったらどうしようw

まあ、今日のところはこんな感じですか。実は私、スターチャイルド大好きな人だから、結構テンション上ってます。下野紘さんや田口宏子さんをはじめとしたキャスト陣も好きだし、スタッフも良い人が揃っているから、メンツ的にはこれといった不安を覚えていません。
ただ、問題なのはスタチャ作品ということは、もしかすれば大ヒットの可能性も普通にあるわけで、それが不安といえば不安ですかね。スタチャにはブランド力が存在しますから。
しかし……夏コミのスタチャブースって混むんだよなぁ。先行グッズとか発売されたらどうしよう。どこまで出来てるのか知らないけど、早ければブースでPV流す可能性もありますし、ちょっと目が離せない展開になるかもしれません。
Sphereの公式ページのスタッフ日記が更新され、ビジュアルファンブックの再販と新グッズに付いての情報が公開されました。アニメ化に付いてはともかく、てっきり夏コミ関係の告知だと思っていたのでちょっと意外。
URL:http://www.cuffs-sphere.jp/staff/?p=957
Sphereは割と面白いグッズを作ってるブランドですけど、エロゲグッズで指輪というのも珍しい……VFBの再販含め、一つずつ順番に書いていきましょうか。

■1.ヨスガノソラ アニメ化情報について
これに関しては、特に書くことないかな。明後日になれば判ることですし、情報が流出でもしない限りは動きようがない。ただ、かたひとマンの口振りからして、今回も製作委員会に入っているのかな? 楽しいことを色々考えてるそうだけど、広報的に楽しいことがユーザー的に楽しいことと一致するのかは不明。難しいんだよね、こういうのは。作り手がやりたいことだけをやって許されるのは同人ぐらいなものだし、どんな人気タイトルでもユーザーの期待が裏切られ続けるとファンも離れていきますから。
角川やアニメイトが絡んでいるだろうからなんとも言えないけど、グッズ中心で売り出すような商業展開をしてきたら正直困るな。金銭的にそうだけど、アニメ関係のグッズは細かいのが多いから。買うのも大変だしね。まあ、アニメともなれば様々な企業の思惑が働いているんだと思いますが、ファンを置いてきぼりにしないようにして欲しいですね。身内だけで盛り上がってしまうのは一番良くない展開だし、かたひとマンは少し自分の趣味嗜好を全面に押し出してくるきらいがあるので……本人言わせれば十分に妥協、自重しているとか言いそうだけどw いや、あの人は良いキャラだと思いますよ。イベントで何度か話したことあるけど、基本的に悪い人間ではないし、よく考えていると思うもの。アニメ化に関しても、まあ、彼なら上手くやるんじゃないか、という期待がないわけでもないし。発表直後の対応はともかくとしてね。
問題はアニメ誌が手に入るであろう日に、私がめちゃくちゃ忙しいということか。当日はこことmixi、それにTwitterをフル回転させる予定ではあるけど、それもどこまでやれるものやら。いっそのこと仕事休みたいよ。

■2.グッズ的なお話
1/1 黒ウサぬいぐるみはやっぱり延期しましたか。調整が上手いこと行かず、と書いてますけど、元々原価が高いんですよね、あのぬいぐるみって。春のドリパでも必ず作るという認識を持っていたのは広報だけだったし、メールでのアンケートも芳しくなかったのかな。まあ、わざわざメールでグッズに対するアンケート答える人も、そんなにいないんじゃないかと。メールフォームとかがあるならまだしもね。システム的なアンケートを設置するんが一番手っ取り早いんだろうけど、不正投票という懸念もあるし、そこら辺は色々面倒んんでしょうね。
ただ、延期したとはいえ黒ウサぬいぐるみを作ること自体は変わらないようで、夏コミ後に通販申し込みを開始するらしいです。確か、ネット販売限定で、キャンセル分が出ればイベントにも持っていく可能性があるとか言ってたかな。秋ドリパは10月3日ですけど、その頃にはもうアニメもスタートしているのかしら。
そして、こっちは初耳なんですけど、ぬいぐるみと同時に広報が考えていたというアイテムがあるという。そんな前から? と思ったけど、簡単にサンプルが作れなかったとか、そういう理由かな。公開が遅れたのは。
『穹の指輪』とはまた凄いものを出してきたなと思うけど、ハルカナソラ蒼穹の果てにをプレイした人にはおなじみの、ハルがエストニアのノミの市で穹に買ってあげた、あの指輪です。
ちゃんと、Siunausというフィンランド語で祝福を意味する文字も彫り込まれており、意匠はシンプルながら純銀のシルバーアクセサリーということで、結構高くつきそうな気がします。大量生産ならぐっと価格も抑えることが出来ると思うけど……10000円は軽く超えちゃうんじゃないかな。装飾がほぼないとはいえ指輪だし。
VFBで3サイズすら公開されてないヨスガノソラだけど、なんとこの『穹の指輪』は、春日野穹の左手薬指のサイズに合わせて作製するらしい。そんなの本当に設定していたのかよと思うけど、きっとハッシー辺りが入念に考えていたのでしょう。そして、個別受注品として『自分の指のサイズに合わせた大きさ』を受け付ける予定だとか。つまり、買った人の指のサイズに合わせて作ってくれるらしい。エロゲやってるような独身男性が自分の指のサイズなんて知るわけないと思うけど、これは需要あるのかなぁ? まあ、作ってくれるというなら私は作ってもらうけど、あれはハルが穹にプレゼントしてあげた指輪であって、かたひとマンがスタッフ日記で言うところの、理想としては、穹への指輪が手元にあって、ペアリングで自分用も手元にあるといいね? という考えには賛同しかねる。この世に一つ、穹の指にはまっているからこそ、あの指輪には価値があると思うんだよ。ヨスガノソラスレでも言われてたけどさ。
私としてはむしろ、まあこれはヨスガノソラスレに書いたことだけど、ハルの指のサイズを教えて欲しいですね。仮にペアで作るのだとしても、それを持つ資格があるのはハルだけでしょう。『悠と穹のペアリング』とか、最高じゃないですか。二人のグッズって感じもするし、個別注文できるならハルの指のサイズでも作ってもらいたいね。

■3.『ヨスガノソラ ビジュアルファンブック』再販について
予想通りなので書くこともあまりないんですが、若干の変更が出たみたいです。まず、第一に価格の値上げ。これは元々VFBが数千冊刷ってなんとか採算の取れる仕様だったことから、極小再販だと現状価格では利益どころしか赤字にしかならないという理由から。
そこで3800円を4000円と200円アップに修正し、ほぼ原価での再販となるらしいです。この時点でメーカーとしての利益を度外視しているわけですから、Sphereもよく踏み切ったものだと思います。品質等、特に仕様に変更はないみたいですけど、無理な再販の代償として特典類は一切つかないらしい。ペーパーはともかく、店舗特典のクリア下敷きをもう一枚欲しいと思っていたからちょっと残念です。
特典なし、VFB本体のみの販売で夏コミグッズと一緒にオフィシャル通販で売るみたいです。一部PCゲーム取り扱い店舗でも売るみたいですけど、ソフマップとメディオ、それにげっちゅ屋辺りが名乗りでそうですね。同人誌扱いにして色々問題を起こしたとらのあなはどうするのか知らないけど……私は正直、この時期の再販は辞めたほうが良いと思うんですよね。
というのも、今回の再販理由をかたひとマンはこのように書いていて、
異常なまでに上がってしまっている市場価格を安定化させるためと、ユーザー様からだけではなく、ショップ様からも再販の希望が上がってきたことにより、ある程度数を見込める、という判断がなされたためです。

考えそのものはもっともだと思うし、私も転売屋が定価から3倍以上もの値をつけてヤフオク等に出品している姿は苦々しいと感じています。だから、基本的には再販は喜ばしいことだと思うんですよ。けれど、この時期に再版しても、あまり意味が無いのではないかと。
VFBを再版するとして、まあ、何部刷るのかは知りませんけど、この時点で購入するのは原作ファンじゃないですか? 秋になればアニメが放映されて、それによってファンが増える可能性がある。そのときVFBが求められたらどうすのか? また再販すればいいだけの話だけど、原価も高い商品だし簡単には出来ません。アニメ関係のグッズや書籍を売る必要もあるわけだし、結局はVFBがヤフオク等で高騰するという、今の状態が再現されるだけではないのかと。だって、絶対に転売屋も買うでしょ。アニメ放送開始後を見越して在庫を確保する目的で。
だから、私はVFBの再販はアニメ放送開始後、秋ドリパ合わせにするべきだと思っていたんだけど……まあ、Sphereが早まったのかどうかは、今後の流れ次第ですか。少なくとも今再版されたことで喜んでいる人もいるんだし、あまり批判できることでもないでしょう。

ぬいぐるみとか指輪とか、VFBの再販等の情報は出た今回のスタッフ日記だけど、肝心の夏コミに付いてはなにも触れられてませんね。先行通販受付をするにしても、そろそろグッズの公開を始めたほうがいいと思うんだけど。なんか、また抱き枕を作るらしいけど、ヨスガノソラは初佳とサブキャラ以外はほとんど出ちゃったからな。テレカはまあ出るにしても、他にどんな奇抜なグッズを出してくるのか想像も出来ません。
指輪は結構面白そうだけど、これまで作る作ると言っていたグッズの数々はどうなっているのか。それも気になります。
7月になってしまったわけだけど、結局先月中に夏コミで発行予定のヨスガノソラ本を完成させることが出来ませんでした。まあ、アニメ化で色々振り回されてテンション上がらなかったのもあるけど、ヨスガノソラ新刊を1冊に絞った分、少し内容を充実させようかなと収録する話を増やしたからでもあります。
出来る事なら10日売りのアニメ誌が発売される前に完成させたいんですけどねぇ。公開される情報によっては、テンションが下がるだけじゃ済まないと思うから。

先月の日記を振り返って、最初から最後までヨスガノソラのアニメ化に対する話題が多かったですね。さすがに毎日がそうだったわけでもないけど、5月の日記もほとんどがヨスガノソラに関することでしたからね。偏りがあると言われても、まあ、否定は出来ないでしょう。
私にとってヨスガノソラという作品はとても大きい存在です。過去に私がもっとも影響を受けた作品はHOOKの出世作であるOrange Pocketですけど、既にヨスガの存在はオレポケのそれを遥かに上回るものになっています。まさか、自分の中でオレポケや秋桜の空にを超える作品が現れるとは思ってなかったけど、現れてしまったのだから仕方ない。決して名作や傑作と評されるものではないのに、どうしてここまで自分を魅了するのか、本当に不思議に思いました。
私はエロゲを読み物のように読む人です。SQUEEZEの作品とかはともかくとして、エロゲを買う際の基準点は話が面白そうで、尚且つ自分の好みにあった絵や色合いをしているか、なんですよね。ヨスガノソラはそれをすべて満たしてくれた作品で、双子の兄妹という好みの設定に、橋本タカシ原画、さらにはクオリティの高いグラフィックと、私の求めていたものが全部あった。抽象的で分かりにくい言い方になるけど、ヨスガノソラは私に中でいらない色がどこにもない作品であり、足りない色もまるでない作品だったのです。

アニメ化に付いて話しましょうか。いよいよ7月になり、10日売りのアニメ誌でスタッフやキャスト等が発表されるといいます。私は当初、アニメ化に対してかなり否定的であり、この日記でも反対の意思を強く表明していたと思います。特に、6月11日の日記で書いた文章には大きな反響がありました。
私はヨスガノソラのアニメには、最低の作品として失敗することを望んでいます。それが一番、傷がつかないと思うから。歪んでるな、我ながら。

自分の日記を引用するのも妙な気分ですが、この記述はヨスガノソラのアニメ化を取り上げているサイト、同じようにアニメ化に否定的なところと比べても過激であり、否定的意見としては強烈さを通り越して毒吐きの部類に値しました。私としては何気なく書いたつもりだったんですが、他のブログやサイトでも取り出たされ、挙句に某大型電子掲示板では名指し批判もされたので、このままヨスガノソラアンチ扱いされるのはさすがに癪だったから、翌日の日記で記述の真意なるものを書きました。
あの文章はもっとも単純な二者択一で、アニメが最低の駄作として黒歴史になるのと、それなりの良作として賞賛され、「アニメは原作を超えた」とか、「アニメに比べると原作は糞」みたいに言われるのだとしたら、私は前者のほうがまだマシかなと思っているだけのことです。
私はエロゲ原作のアニメに無難な出来なんてものは存在しないと思っているし、原作を超えるアニメというものがあるとも思っていません。AIRやefのような、一般的に良作ないし名作と言われているものでも、それは同じことです。特に後者は原作と内容違うしね。

まあ、極端な意見ではあるにせよ、この考え自体は今もそれほど変わっていません。付け加えることがあるとすれば、人気になりすぎると個人では手に負えなくなるというのもあるんですが……ファンとしてもサークルとしても、その他あらゆる面で。
けど、そんな気持ちも結局は、大観衆の悲哀に集約できるんだと思う。それまで近くで応援してきたものが、急に手の届かないほど大きくなってしまい、自分は大きな会場にポツンと座る、ただの観客の一人でしかなくなっていた。自作の造語だけど、アイドルのファンとか声優ファンなんかをやったことある人は、少なからず共感してもらえるんじゃないかと思うこの気持。私がヨスガノソラのアニメ化に対して感じたのも、要するにこういった寂しさだったんじゃないかなと、そんな風に考えています。

いずれにせよ情報は今月中に出るとのことですし、早売りを考えれば一週間待つ必要もないでしょう。なんだかテンションの低い日記で月始めになってしまったけど、個人的に書いておきたいことだったので。5月、6月と、どうやらこんな日記をブックマークに入れている人が増えたみたいだから、自分の気持ち的なものを少しね、書いておきたかったんですよ。
他の人はどう思ってるんでしょうね? ヨスガノソラのアニメ化に付いて、某大型電子掲示板以外でも意見を訊いてみたいものです。
春日野穹bot→URL:http://twitter.com/sora_k_bot
今日発売のメガミマガジン2010年8月号、Vol.123 ヨスガノソラのアニメ情報が掲載されていました。同時購入で娘Typeも買ったんですが、何故かこちらにはなんの情報もなし。仮にも角川の美少女アニメ誌なのに、ニュータイプでの記事の小ささといい実は角川はあまり関わってないのだろうか。コミックスで発表したから、てっきり角川主導かと思ってたのに。

メガミマガジンは完全に記事として書いており、あらすじ的なものはほぼありませんでした。新作紹介の最初に載せているあたり、メガマガ的には押したい作品なのかもしれませんね。
以下、記事内容の引用になります。
不慮の事故で両親を亡くした春日野悠と穹の、双子の兄妹。2人は山間にある町で新たな生活を始めた……。2008年12月に発売された恋愛アドベンチャーゲーム『ヨスガノソラ』が、テレビアニメ化されることになったぞ。
悠と穹が移り住んだのは、小さなころに何度も遊びに来たことのある奥木染町(おくこぞめちょう)。この町にある、亡き祖父の家で2人は新生活を始めるのだった。そこで待っていたのは昔、一緒に遊んだ友達との再会。そしてその中で見つめ直す、兄妹としての互いへの思い……。新天地での日常を舞台にしながら、テーマである「人との繋がりの大切さ」がじっくり描かれていく。
まず注目してほしいヒロインが、悠の妹である春日野穹。家に引きこもりがちな彼女は、面倒なことを悠に押しつけることもしばしば。だが唯一の肉親として、兄を慕う気持ちは誰よりも強い。旧友たちとの出会いのなかでより一層強くなる、悠を大切に思う彼女の気持ちも、本作を紐解くうえで重要なポイントになるぞ。

キャストやスタッフについては相変わらずなにも書かれていませんでしたが、製作委員会の名前はどうやら奥木染町内会でいくみたいですね。特にひねりもないというか、ヨスガノソラは学園モノに見せかけて学園モノではないから、まあ、これが無難でしょう。
メガミマガジンはアニメディア以上にしっかりとした記事を書いてきましたが、人の繋がりがテーマであるという記述はアニメディアと同じですね。穹に注目を向けている辺り、ヒロインは普通に穹であると考えていいのかな。悠と穹の関係をメインに、他のヒロインのシナリオを交えていく感じかな……それだとコミカライズと同じだな。でも、コミカライズはあれで話をまとめるのが旨いからなぁ。あれを多少原作寄りにして、前半を瑛と渚さんの話に、後半を穹の話にすれば13話でも無理なく話が進められるかも。まさか、2クール26話ってことはないだろうし。
ちなみにアニメ誌等で使われているこの画像、やはりアニメ用に描き下ろされたキービジュアルみたいです。Sphereの広報であるかたひとマンはアニメ用原作版権と書いていますが、なかなかに大きいイラストらしく、B0出力にも耐えられるらしい。ポスター、いや、タペストリーかなにかで出してくれないかな~。キービジュアルだからポスターにはなると思うんだけど、横向きの画像だからね。タペストリーの方がいいと思うのですよ。

ヨスガノソラのアニメ化については、自分の中でまだ受け入れ切れない部分があるらしく、完全に諦めきれないみたいです。いよいよ明日から7月、各種情報が解禁となるわけだけど、気が重くって仕方ない。精神的にも相当きてるし、どんだけ私はヨスガノソラ好きなんだって話だよね。原作に対する思い入れが強ければ強いだけ、アニメに対する不安が積み重なってしまう。それこそ、アニメ化を楽しみにできる人が羨ましいぐらいに。
そういえば、昨日及び一昨日の日記にヨスガノソラSSを載せましたけど、あれは新作ではなく去年の夏コミで頒布した同人誌に収録されている話です。あれを書いたのも1年ぐらい前ですかね。今年の夏コミで出す本を書くにあたって読み返しているんだけど、私がヨスガノソラに求める恋愛観というか、そういうのが実に色濃くにじみ出ていると思う。私は二次創作を書く際、オリジナルキャラやオリジナル展開というのを作らないので、基本的に原作に登場するキャラと設定以外を使うことはありません。その中で、原作で語られていない部分や、設定されていない、されていたとしても公開していない部分を捏造することで、ひとつの話をこぎつけるわけです。発想力というよりは技術力ですが、オリキャラとかを作る人には無縁でしょうね。まあ、私はこうじゃないと二次創作書けないので。
本当はHPに入れる予定だったんですけど、昨日は借りてるサーバーで認証エラーが発生していて、FTPとかに繋げなかったんですよ。だから、日記を利用してSSを載せた場合どうなるか、というのの実験も兼ねて、2話ほど掲載してみたいというわけです。この日記に飛んでくる人の検索ワードに、ヨスガノソラSSというのが多かったのもあるけど。書いてる人少ないんだ。一人大層なものを書いている人がいるけど、あの人はなぁ……まあ、私には関係ないと思っておこう。

そうそう、日記のデザインを少し変更してみました。変更と言ってもヘッダの部分に画像を載せただけなんですが、色々試した結果この画像が一番合ってるかなって。推奨サイズの縦幅が意外に小さくてさ、日記全体のデザインに合う画像を見繕って加工するのに少し時間がかかった。結構良い感じに仕上がってると思うんですけど、やっぱりタペストリーの絵柄は綺麗だね。初期の穹ではテレカと同じぐらい好きかもしれない。
明日から7月、私にとっても、ヨスガノソラユーザーにとっても命運を分ける月になりそうだけど、道端に希望の欠片でも落ちていないものかな。
「えっ、ハル、出かけるの?」
 まだ十分に眠気を残した目覚めかけの朝。私は布団の中で寝返りを打ちながら、隣に寝ているハルの方へと向きを変える。
「昨日寝る前に言わなかった? 今日は街の方まで行くって」
「聞いていない」
「いや、確かに言ったよ」
「じゃあ、忘れた」
 布団の中で手を動かし、ハルの手を見つけだして握ってみる。眠いせいか思うように力が入らない。
「忘れたって……」
「ハルのせい。昨日、激しかったから」
「う……」
 ぐうの音も出ないのか、ハルは私に言われて押し黙ってしまう。朝の冷涼な空気は、全裸で布団にくるまる私たちには少し肌寒い。私はハルの身体を抱き寄せると、その鼻先に顔を近づける。
「遊びに行くの?」
 今日は休日だから、街まで出るとなれば特別な買い物でもない限り、遊びに行くのだろう。それはそれで構わないし、休日をどのように過ごそうとハルの勝手だが、なんで私を誘ってくれないのか。
 私の不満げな視線に気付いたのか、ハルがやや苦笑気味に口を開いた。
「亮平と一緒に行くんだけど、それでいいなら穹も一緒に――」
「なんかお土産買ってきて」
 にべもなく言う私。正直、ヒゲのことはそこまで嫌いではない。間違っても好きではないが、ハルが仲良くしている、ハルと仲良くしてくれている時点で、いい人なんだとは思う。けれど、だからといって私が好きになるかは別問題だった。
「判ったよ、なにか美味しいお菓子でも探してくるから、留守番よろしくな?」
 そう言われると、私も「わかった」と納得するしかなかった……
 こうして私の、ハルのいない休日が始まった。

 ハルがいないと、私はあらゆることに対してやる気を失い、面倒だと思う気持ちが大きくなる。普段から面倒くさがりではないか、と言われるかも知れないけど、ハルがいれば多少のことは頑張ろう気持ちになれるのは確かだ。逆にハルがいなければ、なにをするにも億劫に感じてしまう。
 朝食の仕度にしてもそうで、慌ただしく出ていったハルとは違い、私にはキチンとしたメニューを用意するだけの時間があったのだが、いざ食卓に並んでいるのは適当に焼いたトーストと、一杯の紅茶だけ。料理をするにも、一人分に手間を掛ける気が起きない。
 柚のマーマレードをトーストに塗りながら、私は小さく息をつく。一人だけの朝食というのは、思えば随分久しぶりかも知れない。いつもなら私の前にハルがいて、平日なら学校に行く前の何気ない会話を楽しみ、休日なら平穏な朝のひとときを楽しむだけの余裕があった。
「ハル、間に合ったのかな」
 私とハルが目を覚ました時点で、ヒゲとの待ち合わせ時刻まで二時間の余裕があった。それなのにハルが慌ただしく出て行ったというのは時間の使い方を間違えたからで、その、私のせいでもある。時間があるならと、昨日の夜の続きをしてしまったから……。でも、ハルだって「朝っぱらから、こんな」とか言いつつ結構乗り気だったので、お相子だろう。
 一人で食べる朝食は味気なく、私は食べ終わった食器を流しに漬けると、片付けもそこそこに自室へと戻った。淹れたての紅茶をすすり、さて、これからどうしようかと考える。とりあえずパソコンの電源を入れてみるが、ハルがサボっているせいで未だにネットには繋がっていない。ここは都会と違ってあまりネットを使用する人もいないから、業者を呼んだり、手続きが色々と面倒なのだそうだ。
 ハルもいないし、ネットも使えない。それだけで私はすることがなくなってしまう。本を開いてみたり、大して興味もそそらないテレビを付けてみたりしたけど、良く判らない番組ばかりだったのですぐに消してしまった。
「……ハル、どうしてるのかな」
 気付くと、私はハルの名前を呟いていた。ハルが出掛けてから、まだ一時間も経っていないはずなのに、私にとっては随分長い時間のように感じる。街まで行くとなれば、ハルが帰ってくるのは夕方か、もしかしたら夜になるかも知れない。朝早く出て行ったけど、それは電車の本数が少ないのと、ここから駅まで時間が掛かるからで、早めに出ても着くのはお昼前ぐらいなのだ。
「早く帰ってくればいいのに」
 私は早くも、暇を持て余しつつあった。

 カリカリと、鉛筆の音だけが室内に響く。結局、なにをしていいか良く判らなかった私は暇な時間を勉強に充てていた。今の学校は宿題も少なく、授業内容も都会にいた頃より簡単な方だ。けれど、だからといって勉強しなくても良いというわけではなく、現にハルは都会にいた頃と同じく、テスト期間になると頭を抱えている。
 ハルは決して、勉強が出来ない分けじゃないんだと思う。苦手意識は持っているんだろうけど、単純に勉強する暇がないのだ。毎日の家事を初めとして、ハルはこっちに来てからやることが多すぎる。私も手伝ってはいるけど、それでも全然足りないぐらいで、都会にいた頃は都会の便利さがそれを補ってくれていたけど、今はそれもない。
 こんな事情もあって、ハルが勉強をする時間というのは休みの日ぐらいしかない。でも、毎日の家事で疲れているハルからすれば、勉強をしなくてはいけないとわかっていても、比較して、たまの休みぐらい遊んでいたいと考えるのも、仕方がないことだと思う。
 それならそれで構わないし、普段からハルに迷惑を掛けている身としては、ハルにはもっと気を楽にして貰いたい。勉強は、ハルの分まで私が頑張って、後で教えてあげればいいのだから。
 勉強の手を休めて、ふと時計を確認するといつの間にかお昼を過ぎていた。「昼ご飯は適当に食べてくれ」なんてハルは言ってたけど、朝食と同じくなにかを作ろうという気が湧いてこない。もう一度紅茶を淹れて、後はお菓子でも摘んでいようか。さっき淹れたのは私の好みでは少し濃かった。勉強よりも、美味しくて香りと色の良い紅茶を淹れる方が、私にはずっと難しい。
 立ち上がって、ティーセットを手にキッチン兼食堂に向かう私。なにかお腹に溜まりそうな茶菓子はあっただろうかと、そんなことを考えながら歩いていたら……
『ごめんくださーい!』
 玄関の方から、元気の良い声が響いてきた。家の外、扉の前、誰かが訊ねてきたらしい。
「…………」
 訪問客への対応は、いつもハルがやっている。郵便屋と宅急便を除けば、この家を訪れてくるのはみんなハルの知り合いだし、それ以外にも電話とか、人と接する必要があるものは、私が人嫌いというのもあってかほとんどハルに任せきりだった。
 単なる訪問客なら、面倒くさいという理由で私は居留守を使ったかも知れない。それをしなかったのは響いてきた声に聞き覚えがあったからで、ハルの知り合いであると同時に、私の知り合いでもあったからだ。

「あっ、穹ちゃん! こんにちはー」
 玄関の扉を開けると、そこに瑛が立っていた。天女目瑛、ハルのクラスメイトで、近所の神社に住んでいる女の子だ。ハルの友達だけど、私も話す機会が多くて、ハルと一緒に家まで遊びに行ったこともある。
 瑛は普段着として神社の巫女服を着ているとハルが言っていて、私も何度かその姿を目にしたことがあるけど、今日は普通の私服だった。
「なにか、用?」
 自分でも愛想のない声だと思うだけに、なんだか申し訳ない気分になってくる。でも、瑛は浮かべた笑顔を崩さずに私の質問に答えてくれる。
「実は煮物を沢山作ったんだけど、私とひろ姉ちゃんだけじゃ食べきれないからお裾分けに来たんだよ」
 見れば、瑛の手にはタッパーの入った袋が握られていた。
「あ、ありがとう」
 断る理由はなかったから、私は瑛の厚意を素直に受けた。瑛は私に、というより、私とハルに気を使ってくれることが多く、それにいつも助けられているという自覚があった。
「穹ちゃん、一人? ハルくんは?」
 ハルが顔を見せないことに疑問を感じたのだろう。瑛がそのように訊ねてくる。
「ハルは出掛けた。……ヒゲと街の方まで」
「亮兄ちゃんと? へー、そうなんだ」
 瑛が少し驚いたところを見ると、彼女はハルが街まで行くことを知らなかったのだろう。瑛はハルとヒゲ、両方と仲が良いので少し意外だった。
「あの……よかったら、上がってく?」
「えっ、良いの?」
「うん、お茶ぐらい、出す」
 まさか、一人は退屈だからとは言えなかったが、瑛は嬉しそうに「それじゃあ、お邪魔するね!」と、私の申し出を受けてくれた。私のお昼がまだだったので、瑛の持ってきたくれた煮物をおかずに簡単な昼食を取り、なんてことない会話、学校のこと、家のこと、ハルのことなどを話す。
「ハルくんも亮平兄ちゃんも、遊びに行くなら私と穹ちゃんも誘ってくれればいいのに。それとも、男の子同士じゃないと行けない場所とかに行くのかな?」
「男の子同士じゃないと行けない場所?」
 そんなところがあるのかと思ったが、私は瑛が「私と穹ちゃんも」と、自然に私のことを含めて話してくることを嬉しく感じた。瑛の言う男の子同士でしか行けない場所とやらは良く判らないけど、確かに瑛が一緒ならあのヒゲにも我慢できると、そんな気がした。あくまで気がするだけだけど。
 昼食が終わると、瑛は進んで洗い物を行った。お客さんにそんなことをして貰うのはさすがに気が引けたから自分でやろうとしたら、「いいから、いいから。穹ちゃんは座ってていいよ」と、私が朝食のときに使った食器まで、きれいに洗って片付けてしまった。
「瑛、凄い……」
 私もハルも、洗い物は得意な方ではない。いや、そもそも得意な家事というのが存在せず、ハルはかろうじて掃除好きだけど、洗い物は範囲外で、時々洗い残しが目立つ。都会にいた頃は食洗機があったけど、こっちに来るときに処分してしまった。
「まあ、いつもやってるから、このぐらいはね」
 特に誇る風でもなく、瑛は物珍しそうな顔で紅茶をすすっている。あまり紅茶という飲み物に親しみがないらしく、私も瑛は紅茶よりも緑茶というイメージがあった。お茶菓子に菓子受けにあったおかきを出したら、キョトンとした眼をされた。アタリメか、いりこの方が良かっただろうか。まあ、紅茶を飲み慣れない瑛にはどれも珍しく思えるのだろう。
「でも、穹ちゃん、一人でお留守番なんて大変だねぇ」
「大変?」
「だって、ご飯とか用意したり、家のことを全部しなくちゃいけないし、私は慣れてるから良いけど、穹ちゃんにはまだまだ大変でしょ?」
 やっぱり、家事をしなくてはいけないのだろうか。退屈さは感じていたけど、大変だと思っていなかったのは私が家事をするつもりが一切なかったからだけど、瑛はそれを大変だから手間取っているのだと解釈したらしい。まあ、面倒くさいという気持ちもそれが大変だから感じるのであって、間違ってはいないはずだ。
「瑛は家事、得意なんだね」
「得意というか、嫌いじゃないよ。一人暮らしも、長いからね」
 そう、瑛はあの神社の裏にある家で一人暮らしをしている。以前は神主のお祖父さんが一緒だったそうだけど、その人が亡くなってからは、ずっと一人だったそうだ。境遇としては私と似ていなくはないけど、私にはハルがいて、一人ではなく二人だった。ハルは一人で立派に生きている瑛をどこか尊敬しているらしく、家事の先達として色々と相談を持ちかけたりすることもあるらしい。
「穹ちゃん、これからどうするの? なにか予定ある?」
「別に……なにも」
 洗濯物は溜まってないし、掃除は昨日の内に済ませたし、洗い物は瑛がやってくれた。夕飯の買い物は、今日はスーパーの販売車が来る日じゃないので、家にあるもので作るしかないだろう……あ、でもそうすると、
「夕ご飯、どうするんだろ」
 ハルが帰ってくるのは、早ければ夕方で、遅ければ夜といった感じだ。ハルは特に夕ご飯についてはなにも言ってなかったけど、遊び疲れて帰ってるであろうハルに仕度をさせるのは、さすがにないだろう。
「あー、もう少し煮物を持ってくれば良かったかな。けど、穹ちゃんはお昼と同じ物なんてイヤだよね」
「そんなことない。煮物、美味しかった」
 先ほど食べた煮物の味を思い出しながら、私は正直な言葉を口にする。あんな物が私にも作れたらとは思うけど、そんなに簡単なことではない。ハルは自分で悪戦苦闘しつつも料理のレパートリーを増やそうと頑張っている見たいだけど、ハルよりも料理が下手な私としては、一朝一夕でどうにかなる問題ではなかった。
「ハルくん、お料理頑張ってるみたいだね」
 何気ない瑛の言葉。そう言えば、以前、大雨で学校が休校になった日、ハルがちょっとした料理を作ったことがあった。いつも私たちが作る粗雑なそれとは違う一品は、瑛から習った、正確に言えば瑛から借りた料理の本を読んで覚えたものらしい。
「瑛、料理も凄い得意なの?」
 あんなに美味しい煮物が作れるんだから、苦手と言うことはないだろう。
「んー、凄い得意ってほどじゃないけど、お料理は好きだよ。やっぱり、自分で作って食べるご飯は美味しいから」
 笑う瑛の表情にまぶしいものを感じながら、私は頭の中で思考を巡らせる。今日、家にはハルがいなくて、いるのは私と瑛の二人きり。ハルは夜まで帰ってこないから、代わりに夕飯の仕度は私がしないといけない。だったら……
「瑛、これから時間、ある?」
「ふぇ? うん、暇だよ」
 元々、煮物のお裾分けついでに遊びに来るのが目的だったらしい。おかきを食べながら頷く瑛に、私は思い切って言葉を発する。
「私に……その、料理を教えてっ!」
 ハルが帰ってきたとき、そこにもう夕飯の仕度がしてあったら、ハルは喜んでくれるかも知れない。自分のためではなくて、ハルのため。好きな人のために料理をしたい、憶えたいと私は思っているのだけど、当然、そこまでは瑛にも話さない。
 瑛は私の頼みに目を丸くして、僅かに放心していたらしい。私がこんなことを言い出すとは思っていなかったのか、自分が頼まれるとは想像していなかったのか、いずれにせよ数秒で我に返った瑛は、思い切り首を縦に振った。
「あたしでいいなら、喜んでお手伝いするよ! でも、あたしなんかでいいの?」
「瑛以外に、頼める人いないから」
「そっか……それなら、決まりだね!」
 すっと右手を指しだしてきたので、私はそれをつかむ。瑛は握りしめた手をブンブンと振って、嬉しそうに微笑んでいた。

「さて、それじゃあ第一回あたしと穹ちゃんによるお料理教室の開催だよっ」
 お互いにエプロンを着けて、キッチンに立つ私たち。一応、料理をするための道具一式はこの家にだってある。あんまり使われていないせいか、瑛が軽く洗ったりしていた。
「それで穹ちゃん、ハルくんの好きなものってなにかな?」
「ハルの? えっと、カレーと……」
 言いかけて、私は瑛がハルの好きなものを訊ねてきたことに気付いた。瑛は笑顔を崩さず、私の方を見つめてくる。どうやら、心の中を悟られているらしい。どうにも、私はこの子にだけは隠し事をする自信がなかった。
「カレーと、ハンバーグ。けど、カレーは作れるから」
「それならハンバーグにチャレンジしてみようか? でもでも、ハルくんもやっぱり男の子っぽいメニューが好きなんだね」
「そうかも」
 薄く笑いながら、私は瑛に同意した。ハルはあれで子供っぽいところがあるから、都会にいたときも外食の際はファミレスを好んでいたし、格式張ったレストランよりも、和洋折衷の料理が楽しめるところが好きだった。
「ちなみに、穹ちゃんはどんなのが好き?」
「えっと……私は」
 ハルの好きな食べ物というのは、実は私の好きな食べ物でもある。双子だからか、味覚が似ているのだ。オムライスとかエビフライとか、そういうわかりやすい洋食が好きだった。
「都会の人って、洋食好きが多いのかな?」
「それは……私は確かに、和食をあんまり食べないけど」
 お刺身とかお寿司とか、生物が苦手なのだ。唐揚げにすれば食べられるけど、刺身の意味がないじゃないかとハルは呆れる。
 ガサゴソと冷蔵庫の中をのぞき込みながら、瑛が中から色々と食材を出していく。作ると言っても材料がないと始まらないわけだけど、その点にどうやら心配はいらないらしい。お肉や卵、タマネギといったものを冷蔵庫から取り出し、ふと、なにかを探すように辺りを見回したが、食パンが入った袋に目を止め、「これで大丈夫かな」と呟きながら、それを手に取った。食パンなんてなにに使うのだろうか? 主食なら、お米がまだあるのに。
「穹ちゃんは、ハンバーグ作ったことある?」
「ない。けど、大体の作り方ならわかると思う」
「ふむふむ、どんな感じかな?」
 どんな感じもなにも、タマネギをみじん切りにしてひき肉と混ぜて、こねて形を作ったら焼けばいいだけだ。
「うーん……大まかに言えば、まあ、そんな感じだけど」
 困ったような顔をしながら、瑛が首を傾かせる。どうやら、私の想像以上にハンバーグ作りとは難しいらしい。そう言えば、テーブルの上に並んだ食材は、意外なほど多かった。
「まずは食材の紹介だからだね。まずはお肉だけど、これは冷蔵庫にあった合い挽き肉を使おうか。グラムは……四〇〇グラムだね」
「合い挽き肉?」
「牛肉と豚肉の挽肉のことだよ」
「ハンバーグって、牛肉だけじゃないんだ」
「本当は牛肉だけの方が良いんだろうけど、牛さんは高いから。テレビとかでも、牛肉100パーセントハンバーグとか、宣伝してたりするでしょ?」
 そういえば、都会にいた頃もファミレスなんかでそうした広告をみたことがあった。なんで牛肉を使っていることを宣伝しているのかわからなかったけど、そんな理由があったとは知らなかった。
「それと、タマネギが二個に卵が一個。後は……作りながら説明するよ」
 瑛はそう言うと、タマネギの一つを手に取った。まずは、皮むきからだった。タマネギという連中はその気になればどこまでも剥けてしまうので、どこからどこまでが皮なのかがわかりづらい。瑛曰く、「茶色のが皮で、白いのが中身だよ」とのことだ。先の青っぽい部分は切ってしまうらしい。
 剥き終わったタマネギをまな板の上に置いて、包丁で上下を切った後、半分に切る。切るというよりは割るという感じだけど、後はこれをみじん切りにするんだろうか?
「先に、芯を取るんだよ」
「芯?」
「そう、タマネギには下の方が芯があって……ここだね、ここを三角に切っちゃおうか」 手慣れた手つきで瑛はタマネギの芯抜きをして、今度は私のほうに包丁を渡す。
「あ、芯を取るとタマネギって崩れやすくなるから注意してね」
 言われたとおり、恐る恐る芯を取る私。瑛のように綺麗には取れなかったけど、なんとか出来た。
「みじん切りの場合だと、始めに取らないで刻み終わった後に取るって人も多いんだけどね、崩れやすくなるから。私は細かく刻むと混ざっちゃう気がして先に取るんだけど、その辺りは穹ちゃんの好きな方でいいと思うよ」
「うん……わかった」
 トントントントンとリズミカルな音を立てながら、私たちはタマネギを刻んでいく。刻む前に少しだけタマネギを水に漬けたけど、こうすることで切る際に涙が出るのを防げるらしい。確かに、目に染みてこない。
「でも、なんでタマネギを切ると目に染みるんだろうねー?」
「それはアリルプロピオンがあるから」
「ありる……?」
「アリル化合物。タマネギを切ると、中に含まれている硫化アリルが気化して、それで目や鼻の粘膜が刺激される。だから、涙が出る」
「へぇー、そうなんだー。穹ちゃん物知りだね!」
 対処法は知っていても、その原因がなんであるかは知らなかったらしい。瑛らしいと言えば、瑛らしいけど。
「次は刻んだタマネギを炒めるんだけど、フライパンはホーロー? それともステンレス?」
「えっ……さぁ」
 フライパンって、鉄じゃないの?
「んっしょと、えーっと、これは……ステンレスだね。じゃあ、サラダ油を軽く引こうか」
 熱したフライパンに油を引いて、刻んだタマネギを炒めていく。自分でやらなくちゃ、ということで私が木べらを使って手探りにやってみる。
「どれぐらい炒めればいいの?」
「テレビとかではよくあめ色とか、黄金色が良いなんて言われてるけど、私はちょっと茶色になるぐらい、きつね色で止めてるかな? 美味しいそうだしね!」
「きつね色、きつね色……」
 炒め終わったタマネギはとりあえずフライパンに放置して、今度は合い挽き肉をボールに移す。早速タマネギを移してこねるのかと思ったら、「違うよ、穹ちゃん」と、瑛は卵を手にしながら止めてくる。
「卵を割って、お肉に混ぜないと」
「卵?」
「そう、穹ちゃんが割ってみる?」
 私だって卵ぐらい割れる。ボールの縁でカカッと音を立てながら卵を割り、瑛の指示で中身をボールへと入れる。
「ハンバーグのときは全卵、卵と黄身を両方使うんだよ。こうすると、次に入れるタマネギとお肉が旨くまとまって、〈繋ぎ〉の効果が出るの」
「繋ぎ……」
「卵を入れたら、フライパンの中にあるタマネギだね。穹ちゃん、ドバッと入れちゃっていいよ」
 木べらを使いつつ、ボールの中にタマネギを入れる。瑛は調味料が置いてあるところから塩とコショウの瓶を持って来る。味付けをするようだ。
「ハルくんって、ハンバーグにはなにをかけて食べる人?」
「ん……普通にソース、かな。かけないときもあるけど」
 ハル曰く、「ソースを食べている分けじゃない」とのことで、私がソースをびちゃびちゃかけているときなどに苦言を呈す。
「なら、味付けは少し濃い方が良いね。塩コショウ、コショウは黒コショウを使うのがいいよ」
 塩とブラックペッパーを振りながら、瑛が解説していく。特に分量などはなく、味付けというのは好みの問題だから決まりはないそうだ。下味を濃くすることで、ソースなどをかけない人も十分に味わえる仕上がりになるらしい。
「後は生地をこねるだけなんだけど……その前に用意するものがあるね。穹ちゃん、このお家ってフードプロセッサーとか、おろし金ってある?」
「フードプロセッサーならあるけど」
 都会にいた頃、通販で買ったハンディタイプのがあった。買うだけ買ったのにほとんど使わず、それでも処分しなかったのは特に邪魔になる大きさでもなかったからだ。
「じゃあ、これに千切った食パンを入れようか」
「食パン? なんで?」
「これも繋ぎだよ。本当はパン粉がいいんだけど、なかったから」
 千切った食パンをフードプロセッサーに入れて、スイッチを押す。食パンがパン粉になるまで数秒、すぐにサラサラになった。瑛は生地をこねながら、作った生パン粉を加えていく。
「さっきの卵はお肉とタマネギを繋ぐためで、このパン粉は生地全体を繋ぐためのものだよ。穹ちゃんもやってみる?」
 生地をこねることに対抗を感じなかった分けじゃないけど、なんでも瑛に任せていては意味がない。生地は思っていた以上に柔らかいけど、不思議と手にベタついてこない。これがパン粉の効果らしい。
「型を整える際は、俵型がいい感じだね。こんな風に両手で……」
「こ、こう?」
「そう、そんな感じ! 穹ちゃん、上手だよ」
 褒められると、少しくすぐったくなる。瑛のと違って少しいびつだけど、はじめてにしては上出来だろう。
「型を整えたら、生地を寝かそうか? すぐに焼くことも出来るけど、生地を寝かせることで焼いたときに型くずれしにくくなるから」
 その間なにをしてようかと瑛が訊ねてきたから、私は近くにあったティーセットに目をやって、
「お茶、飲む? 紅茶だけど」
「そうだね、じゃあ、ご馳走になろうかな。けど……」
 珍しく、瑛が少し言いにくそうに言葉を漏らした。
「お茶菓子は、違うのがいいかな」

 生地を寝かせている時間、私たちは紅茶を飲みながら過ごしている。瑛は私が出したアタリメを、やはり不思議そうに見つめながら食べている。
「穹ちゃんさ、前にも訊いたと思うけど、二人暮らしはどう? 大変じゃない?」
「慣れてきた、かな。まだ手探りな部分も多いけど……それに、大変なのは瑛だって」
「あたしは、長いから」
 一言で切り捨てる瑛の顔は、笑っているけどつかみ所がないというか、妙な深みを持っていた。まるで、それ以上は踏み込んではいけないような、目には見えない心の壁。私がそれを感じ取れたのは、私も同じようなものを持っていたからで……
「長いだけが理由じゃないけど、昔から家事とかはしてきたから」
 今でこそ一人暮らしをしている瑛も、昔は一緒に暮らしていた人がいて、神社の神主だったおじいさんが保護者だったらしい。私とハルの祖父母と同年代の高齢者だったため、手伝う意味も兼ねて自然に家事を憶えていったようだ。
「寂しくは、ないの?」
 いつか、瑛に訊かれたことを訊ね返してみる。質問に、瑛は目を開いて答えた。
「寂しくはないかな。悲しいこと、寂しいこと、そういう気持ちを忘れる必要はないけど、それをずっと抱え込んだままなのは、ね」
「瑛……」
「あはー、でも、穹ちゃんとハルくんを見ていると、たまに羨ましいなとは思うよ。楽しいそうだなぁ、ラブラブだなぁって」
 ハルの名前が出てきたことで、私はもう一つの質問をするべきかどうか考え始める。前々から一度訊いてみたかった、確認しておきたかったこと。けれど、それを投げかけてもいいのか、投げかけることで今の瑛との関係が壊れないか、私にはその心配があった。
 だけど……
「瑛って、その」
 穏やかな瑛の表情を見ていると、口から言葉が滑り落ちてしまう。
「ハルのこと、好きなの?」
 思い切って、私は自分の抱いていた疑問を瑛にぶつけた。嫌いでないことは分かり切っているから、この場合の好きかどうかと言うのは、より深い意味での話だ。瑛の視線が私の視線と交錯し、私は目をそらしたくなる気分をグッと堪えた。
「……好きだよ、初恋の人だもん」
「――っ!?」
 やっぱり、そうなんだ。瑛は以前から私とハルに好意的で、気を使ってくれている。それはただの友達というレベルを超えており、私は瑛がハルに特別な好意を抱いているのではないかと、この子の態度や発言から感じ取っていた。ハルはあの通り鈍いからともかくとして、周囲でも気付いているの私ぐらいだと思う。
「私は……」
 瑛のことは嫌いじゃないし、どちらかと言えば好きな方だ。けれど、それはあくまで友人としてであって、瑛がハルの恋人になるのだとすれば、また話は違ってくる。
 いや、そうじゃない。最大の問題は、私が〝瑛にならハルを渡しても構わないかも〟と、心のどこかで思っていることだろう。明るくて、元気で、家事も出来て、私なんかより、女の子としてずっと魅力がある。仮にハルが瑛と付き合うことになったら、私はそれに反対できるだろうか? 〝あの人〟のときとは違い、あまり自信がなかった。
「大丈夫だよ、穹ちゃん」
 俯きながら悩む私の手に、瑛の手がそっと添えられた。
「あたしはハルくんが好きだけど、好きな人は他にも沢山いるから」
「えっ……?」
「亮兄ちゃんやカズちゃん、初佳さんやひろ姉ちゃん。あたしは、あたしの周りにいるみんなのことが好きなんだよ」
 およそ人嫌いとは無縁な人生を送ってきたであろう瑛の言葉に、嘘偽りは感じられない。
「でも、その好きは」
「確かに、ハルくんに対する好きと、他の人に対する好きは、少しだけ違うのかも知れない」
 けどね、穹ちゃん……と、瑛は言葉を続けていく。語りかけるように、穏やかな表情と口調で。
「ハルくんは穹ちゃんと一緒にいて幸せそうだし、穹ちゃんだってハルくんといて幸せなんでしょう? だったら、あたしもそれが一番嬉しいよ。だって私は――」
 穹ちゃんのことも、大好きだから。
 瑛の見せる優しさと温かさに、私は胸が熱くなるのを感じていた。
「人によっては、損な性格だって思われるのかも知れないし、言われたこともある。でも、あたしは自分のことを不幸だなんて感じたことは、一度もないから」
 悲しいこと、辛いことはいくらでもあった。けれど、それ以上に嬉しいとか楽しいとか、
幸せだなぁと感じられることも、いっぱいあったから。
「だから、結構幸せだよ、あたしは」
 瑛の言葉に、私は自分を当て嵌めて考えてみる。私も、他人から見れば十分に不幸な人生を歩んでいるだろう。小さい頃から病弱で、病院のベッドで過ごした時間が多く、やっと退院できたと思ったら、今度は事故で両親を失った。安楽な境遇とは言えないし、決して幸せとは呼べないだろう。
「でも、私にはハルがいる」
 瑛が先ほど言ったかけがえのない友人たちに囲まれているように、私にはハルがいて、ハルには私がいた。心に似た部分を持っている私と瑛の、それは明確な違いだった。
「私も、幸せなのかな」
 今までも、そしてこれからも、ハルが入り限り、私は幸せを失わずに済む。
 私は瑛の方に視線を、すべてを理解している少女へと向ける。瑛は私に手を重ねたまま、言葉を紡いでいった。
「それでいいんだよ、穹ちゃん」
 頷きながら、瑛は微笑む。それが心の底からの笑顔であることに、私は気付いた。
「ありがとう、瑛」

 話を終えて、私たちはハンバーグ作りの最終段階、焼く作業に入った。
 熱したフライパン、ステンレス製の場合は生地からでる油だけで焼けるため、特に油を引いたりはしないらしい。ここに成形した生地を入れ、フタをして焼き上げる。片面が焼けたらフライ返しでひっくり返して、両面をしっかりと焼く。好みでチーズを乗せたりするそうだけど、チーズがなかったのでそれはまた今度にしよう。
「そうだ、簡単なソースを作ろうか?」
 同量の中濃ソースとケチャップを混ぜて、ハンバーグからでた肉汁を加える。この手作りソースをかけても美味しいとのことで、実際に食べるときに試してみようと思う。
 添え物としては、なににしようか二人で考えて、じゃがいものバター焼きにした。ブロッコリーとかにんじんはあまり好きじゃなかったし、パスタがなかったので、パスタのケチャップ和えも作れなかったからだ。
「こんなものかなぁ。穹ちゃん、お皿の用意は出来た?」
 生地は全部で四つほど成形したから、その内の一つを試食として食べることにした。お皿に盛りつけたハンバーグ、瑛と二人で作ったそれは、いい匂いを立てていた。
「うんうん、ちゃんと火も通ってるし、いい感じだね!」
 ナイフで半分に切り分けて、火の通りを核にしたら、私たちはそれぞれフォークでハンバーグを食べてみる。
「美味しい……!」
 一口噛みしめただけで、口の中に肉汁が広がってきた。崩れにくく、それでいて柔らかいハンバーグは、ビックリするほど美味しい
「穹ちゃんが作ったんだよ、これは」
「で、でも、私はなにも……ほとんど瑛が」
「違うよ、穹ちゃんがやってみたい、作ってみたいと思ったから、ここまでの物が出来たんだよ」
 その気持ちが、大事なんだよ。
 瑛はそういいながら、もう一口、実に美味しそうにハンバーグを頬張った。

 残った三つの生地の内、二つは私とハルの夕飯用として、一つはラップに包んで瑛へと渡した。夕飯も一緒にどうかと誘ったけど、気を使ってくれたのか、断られてしまった。
「今日はありがとうね、穹ちゃん」
「? お礼を言うのは、私の方」
「ううん、誰かと一緒に料理をするのって凄く久しぶりだったから……本当に楽しかった。だから、ありがとう」
 家に帰る瑛を玄関の外まで見送り、その姿が見えなくなるまで私は立っていた。気恥ずかしさが頬を熱くし、赤くする。瑛も私も、随分と踏み込んだ部分まで話したような気がする。けれどそれは、お互いにそこまで言えるだけの関係になれたと、そういうことだろう。
 瑛は自分のことを幸せだと言った。私も、自分のことはそれほどまでに不幸ではないと思っている。重要なのはその点であり、今日一日で私が瑛から料理と共に学んだことだった。

 瑛が帰り、しばらくしたらハルが帰ってきた。時刻は夕方と夜の間ぐらい、思っていたより少し早い。
「ハルっ!」
 私は足取りをはずませて玄関まで駆けると、靴を脱ぎかけていたハルに向かって抱きついた。
「わっ、ちょっと、穹」
 驚きながら、ハルは私のことをしっかりと抱き留めてくれる。手にはなにやら白い箱が握られており、どうやらお土産のケーキらしい。
「ハル、ご飯できてるけど、それとも先にお風呂に入る?」
「へっ? あぁ、それじゃあお風呂に……って、ご飯ができてる?」
 既に夕飯の仕度ができていることに、ハルは心底驚いたらしい。私が自分で用意したと知ると、喜んだり感動したり、色々と忙しそうだった。
 そんなハルを見つめながら、私は思う。

 なるほど、私も結構幸せじゃないか、と。
 

「なぁ、悠の初恋って、どんなだった?」
 ある日の学校、昼休みも中頃に差し掛かった午後の時間。いつにもなく寡黙で、どこか鬱屈そうな表情をしていた亮平が、急にこんなことを訊ねてきた。
「は? なんだって?」
「だから、初恋だよ、初恋。お前だって、今までに初恋の一つや二つしてきただろ?」
 僕の言葉に身を乗り出して応じる亮平。というか、初めての恋で初恋なんだから、一つより多かったらおかしいだろ。
「初恋ねぇ……」
「相手はどんな人だった? やっぱ、定番中の定番、幼稚園の先生とか?」
 何故、亮平がいきなりこんな話を始めたのか疑問に思いつつも、僕は自身の初恋というものを考えてみる。亮平に出した例は、確かに男にとっては基本中の基本、誰でも通る流れなのかも知れないが、僕の場合は少し異なる。
「僕、幼稚園の先生、男の人だったんだよね」
「なにぃっ!? じゃあ、お前は幼稚園児が綺麗なお姉さん先生に憧れる、あのときめきと興奮を知らないのか」
「ときめきはともかく、園児が興奮しちゃ不味いだろ……」
 大体、幼稚園の先生が男性であっても、僕はそれを残念に思ったことはない。その先生はスポーツがそれなりに出来るさわやかな人で、鉄棒で逆上がりを格好良く決める姿を見ては、幼心に憧れたものだ。
「じゃあ、お前はどんな人が初恋の相手だったんだよ? 世の中の定番が当て嵌まらないってことは、別にいるんだろ?」
「別って、そんな突然言われても」
「まさか、次にありがちな母親とか言うんじゃないだろうな?」
 さすがにそれはない。いや、好きか嫌いかで言われれば好きだったけど、母親は僕が物心付く頃には仕事に復帰しており、そういった対象としてみることもなかったのだ。
 でも、そうすると、僕の初恋の相手は誰になるのだろうか?
「あれ……」
 冷静になって考えてみると、パッと思い浮かばない。記憶の糸をたぐり寄せたり、想い出の扉を開けたりしても、そこに初恋の想い出というものが、存在していない。
「おいおい、忘れちまったのか? 仕方ない奴だな」
 亮平が茶化しつつも、本当に呆れたような声を出してきたので、僕は内心焦り気味になっていた。こんな話題で焦るのもおかしい気はするけど、考えずにはいられない。
 都会にいた頃は、あまりそういうことを考えたことがなかった。僕も小さい頃はあまり社交的じゃなかったというか、外で元気いっぱいに遊ぶなんてことをしだしたのは、それこそ夏休みにこの奧木染へ遊びに来るようになってからだろう。それまでの僕といえば、外で遊ぶにしろ家の中で遊ぶにしろ、特別友達を必要としなかったというか、要するに遊び相手として身近な、身近すぎる存在が常に傍へいたから気にならなかったのだ。
 とすると、僕の初恋の想い出とやらは奧木染にあるのだろうか? 確かに僕はここで様々な人と出会い、その幾人かとは今も交流がある。代表的なのは近くに住んでいるあの人であり、もう一人は……
「さすがにない、かなぁ?」
 僕の視線は、近くで立ち話をしている女子へと向けられていた。
「悠、瑛の方なんか見て、どうしたんだ?」
「え、いや、そういえば天女目も昔からの知り合いだったなって」
 天女目瑛。僕のクラスメイトで、隣席に座っている女子。僕はあまり憶えていないのだけど、昔、一緒に遊んだことがあるらしい。
「瑛か……確かに可愛い奴だとは思うが、なんというか、マニアックだな?」
「マニアックって、その言い草はさすがに酷いぞ」
「だって、瑛だろ? 小さい頃のあいつって、女の子というより男の子っぽかったしなぁ。いつも、男に混じって遊んでたし」
 むしろ、そういう女子に恋心を抱く男子は割と多いんじゃないかと思ったけど、それは言わないことにした。
 天女目のことは可愛いと思う。小柄だが良く動き、ころころと変わる表情と、そこから見せる笑顔には魅力がある。でも、それは再会してからの印象であって、昔に出会ったときの印象ではないはずだ。そう考えると、僕は天女目に恋をしていたことは、ないのだと思う。
 そういった意味では、あの人、彼女のことも別に――
「そうだ、なら、穹ちゃんはどうだ?」
「へっ?」
「穹ちゃんの初恋相手って、どんな奴なんだろうな。悠、お前、知ってるか?」
 穹、それは僕の双子の妹の名前だ。両親を亡くした僕にとっては唯一の肉親であり、かけがえのない大切な家族。
 そんな穹の、初恋……?
「さぁ、考えたこともないよ」
 言いながら、僕は自分の言葉に違和感を憶えていた。本当に、そうだろうか。
「あんだけ可愛いんだから、やっぱ、告白とかも結構されてたんじゃねーの?」
 なにか、ずっと前にも同じようなことを訊かれたような、奇妙な感覚。
「けど、穹はあのとおり人見知りだし、あんまり想像できないなぁ」
 そう、これは既視感などではなく、確かな記憶。あのときも僕は、こんな風に答えをはぐらかしながら、話を流そうとしていた。まるで、その答えに辿り着くのを、拒んでいるかのように。
 不思議な感情が、そこにはあった。

 ハルくんが、こっちを見ていた。亮兄ちゃんと話しながら、少しの間だけど、あたしの方を見つめていた。
「初恋だなんて、男の人ってどうしてああいう話で盛り上がれるのかしら?」
 やや呆れたように、カズちゃんが言う。
「でもでも、初恋の想い出は誰だってあるものだよ。カズちゃんだって、あるんでしょ?」
「えっ、私は、その……瑛の方こそ、どうなのよ」
「あたし? あたしはねぇー」
 言いかけて、あたしは思わず困ったような顔を作ってしまった。思い出せなかった分けじゃなく、あたしは今でもその想い出をしっかりと憶えている。だけど、それは……
「ずっと小さい頃に、神社の裏山で一緒にセミ採りをした男の子かな、あたしの初恋は」
「セミ採りって、あなた、小さい頃は近所の男の子たちに混じって、いくらでもそういう遊びをしていたじゃない」
「うん、そうだよ。だけどね、何事にもあるんだよ。特別な想い出って」
 その子はセミ採りどころか、野山で遊ぶという経験がほとんどなくて、あたしの見せるもの、歩く場所、すべてに驚いては、目を輝かせてくれた。あたしも、きっと珍しかったのだろう。カズちゃんの言う〝近所の男の子たち〟とはまるで違う反応を見せる彼と、彼が見せた屈託のない笑顔に、あたしは心惹かれたのだ。
 けれど、この想い出はあたしだけの想い出になってしまったらしい。残念だな、とは思うけど、まるきり全部忘れられてしまったわけでもないから、辛くはない。
「……そういえばセミ採りって、前に話してた春日野くんと会ったときの話も、確か」
「カズちゃん、あたし、お手洗い行ってくるよ。そろそろ、お昼休み終わりそうだから」
「えっ? ちょ、ちょっと、瑛!」
 カズちゃんが声を上げるけど、聞かなかったことにして教室を出る。一瞬、ハルくんの方に目を向けてみたけど、亮兄ちゃんと話すのに夢中で、あたしの視線には気付かなかったようだ。
「あぶない、あぶない」
 さすが、カズちゃんは鋭いな。隠しておくつもりだったのに、あっさりばれちゃった。何故か、カズちゃんはあたしのこういう話に敏感で、厳しい意見が多い。理由は良く分からないけど、色々心配してくれているんだと思う。
 けれど、それにしても……
「初恋かぁ」
 亮兄ちゃんの初恋とやらはともかく、ハルくんの初恋には興味があった。あたしに想い出があるように、ハルくんにだってなにかしらあるはずだ。今は忘れていたり、思い出すことが出来なくても、失われることはきっとない、はずだ。
 そんなことを考えながら女子トイレの前まで来ると、そこであたしは意外な人物に遭遇した。
「あれ、穹ちゃん?」
「ん……瑛」
 ハルくんの双子の妹で、別のクラスにいる穹ちゃんだった。色素の薄い髪に、初雪みたいに真っ白な肌。綺麗とか可愛いとか、そういう単純な言葉では言い表せない、亮兄ちゃんが言うところの〝美少女〟という表現が、凄く似合っている子だ。
「あ! ねえ、穹ちゃん。一つ訊きたいことがあるんだけど」
 あたしは折角会ったのもなにかの縁と、思い切って穹ちゃんに尋ねてみることにした。
「なに……?」
 唐突に言われて、怪訝そうな表情を作る穹ちゃん。トイレの前で立ち話をすることに、抵抗があるのかも知れない。
「あのね、ハルくんの初恋について、穹ちゃんはなにか知ってる?」

 午後の授業が、あまり身に入らなかった。別に昼寝をしてたとか、亮平や天女目たちとのお喋りに熱中していたとか、そういうわけじゃない。昼休みに亮平から言われたことを考えていたのだ。しかし、考えれば考えるだけこんがらがって、容易に答えが出てくる気配はなかった。
 この歳にもなって初恋の想い出について悩むなんて思っても見なかったけど、これだけ考えても思い出せないと言うことは、まさか、僕は恋というものをしたことがないんだろうか? いや、そんなはずはない。都会にいた頃だって、可愛いなとか、綺麗だなと思える女の子に出会ったことはあるし、まるきり縁や機会がなかったわけじゃない。けれど、それは全部最近の出来事だから、それは恋愛であっても初恋ではないはずだ。
「いや、僕のことはどうでも良いんだよ」
 僕は昔の想い出とか、そういうものにあまり執着がない。今を生きるのと、明日に目を向けるので精一杯なんて言えばちょっと格好いい気もするけど、単純に思い出すのが嫌なのだ。昔のことというのは即ち両親が生きていた頃のことであり、それを普通に振り返り、思い返すことが出来るほど、僕にはまだ割り切りが出来てない。
 だけど、穹のことは別だった。亮平に穹の初恋について尋ねられたとき、僕が動揺したのは事実だった。
「なんだかなぁ」
 呟きながら、僕は教科書やノートをカバンに詰めて、帰り支度を始める。天女目はなにか用事があるとかで先に帰り、亮平も今日は農作業の手伝いに駆り出される羽目になったらしい。僕も隣のクラスまで穹を迎えに行って、さっさと帰ることにしよう。
「…………」
 ふと、自分に視線を向けられていることに気付いて辺りを見回すと、渚さんがなんとも言えない複雑な表情を浮かべながら、僕を見つめ、いや、見つめていると言うよりは観察しているような感じだった。
「渚さん、どうしたの?」
「へっ!? あ、いえ、その……」
 焦ったように声を出す渚さん。反応からして、僕を見ていたことに間違いはなさそうだ。渚さんはやや躊躇った風に口を噤んでいたが、やがて、意を決したように僕に訊ねてくる。
「昼休みの話なんですけど」
「……初恋がどうとかいう話?」
「はい、それです」
 参ったな、聴かれていたのか。天女目と話していたから聴いてないと思ったんだけど、まあ、亮平があれだけ大声を出していれば、興味がなくても耳に入ってしまうだろう。
「あの話がどうかしたの?」
 不思議なのは、どうして渚さんがあの話をするのかということだ。興味がなくても耳に入るとはいっても、聞き流せばいいだけの話であり、こうして話題に持ち出す必要はないはずだけど……
「結局、春日野くんの初恋の相手って、誰なんですか?」
「はっ!?」
 突然そんなことを言われて、僕は言葉に詰まってしまった。何故、渚さんがそのようなことを訊いてくるのか、それも僕の初恋についてだなんて……まさか!? いや、そんなはずはない。これはなにかの間違い、もしくは罠に違いない。だけど、渚さんが冗談やからかいでこんなことを言うとは思えず、僕は混乱して――
「あ、瑛ってことはないですよね?」
「……なるほど」
 どうやら、質問の意図はそこにあるらしい。おそらく渚さんは、僕があの話をしているときに天女目の方を見ていたのに気付いていて、それが気になったというところだろう。渚さんは天女目に対して過保護な一面があることは、付き合いの浅い僕でも知っている。
「実は、良く分からないんだよね。あんまり昔のことって憶えてなくて」
「そう、なんですか?」
「天女目とも昔からの知り合いだったよなぁって考えてたんだけど、それは単に幼友達って感じだから」
 遊んだ回数にしたところで、そんなに多いわけではないのだ。記憶に残っている以上は印象が薄いわけではないけど、当時はそれほど特別な感情は抱いていなかったと、思う。あんまり自信はないけど。
「渚さんは、どうなの?」
「えっ……?」
「いや、ほら、初恋の想い出とか」
 失礼なことを訊いている気もしたけど、先に訊ねてきたのは渚さんなのだから問題はないだろう。
「ありますよ、私にも」
 それは、どこか昔を懐かしむような声だった。渚さんは窓際まで歩くと、窓に手を突きながら外の光景を見ている。グラウンドでは体育会系の部活動が行われており、活発そうな声が響いている。
「自慢ではありませんが、私は名家の生まれで、名士の娘です」
 声に混じる僅かな自嘲は、渚さんの言葉が自慢などではないことを物語っていた。僕に背を見せている彼女の瞳は、どんな色をしているのだろう。
「子供の頃、私には友達が一人もいませんでした」
 それほど意外な発言でも、ないように思えた。亮平が以前言っていた、昔の渚さんはお嬢様と言うことで近寄りがたい雰囲気があったという。
「幼稚園のときの話です。私が、当時はまだいた友達と遊んでいる最中に、転んで足をすりむいたんです。大した怪我じゃなかったけど、それでも血が出て、私は泣きながら家に帰りました」
 家に帰って手当を受け、夜にはケロリとしていたそうだが、事件はむしろその後だった。一緒に遊んでいた子供の親が、謝罪をしに来たというのだ。それも、一家総出で。
「子供が遊んでいる最中に起こったことで、それも私が勝手に転んだだけだから謝罪する必要はない。そう言って、母は相手の親を宥めました。事実、相手の子供にはなんの責任もないんです」
 にもかかわらず、泣きじゃくる子供の頭を無理やり下げさせ、必死で謝罪する親の姿に、幼いながらも渚さんは違和感を憶えたらしい。まるで、自分の方がなにか悪いことをしてしまったかのような、そんな気がしたのだ。
「それからも、同じようなことが起こる度に、同じような謝罪が繰り返されました。私が怪我をしようものなら、それこそ土下座をする勢いで謝罪をして、お詫びの菓子折を持参した人もいましたね」
 名士であり街に多大な影響力を持つ渚さんのお父さんから不興を買いたくない。謝罪の主な理由はこれであったが、幼い渚さんや、周囲の子供たちにそんな理由が判るはずもない。
「そんなことが続いて、私が小学校に上がる頃には、私の周りに友達と呼べる存在は一人も居なくなっていました」
 皆が皆、腫れ物を扱うかのように渚さんに接し、避けるようになっていった。名家の生まれのお嬢様である、それだけで、渚さんは近寄りがたい、付き合いづらい人間となってしまったのだ。
「私は孤独でした。自分の生まれを恨めしく思ったこともあります。けど、小学校の高学年になったときです」
 高学年になってはじめてクラスが一緒になったクラスメイトが、渚さんに手を差し伸べたのだ。満面の笑みを浮かべながら、一人周囲の輪から外れている渚さんに向かって、「一緒に遊ぼうよ!」と声を掛けてくれたそうだ。
「熱心に差し出された手を握りかしたとき、私はその人のことが好きになりました。そして、あのとき抱いた想いは、私の中で今日まで生き続けています」
 その人が誰であるかは、さすがに言うつもりはないらしく、僕も訊くつもりはなかった。むしろ、僕なんかにここまで話してくれたことが不思議なほどだ。
「つまらない話をしてしまいましたね。でも、私にとっては貴重な、宝物みたいな想い出なんです。きっとこれからも、ずっと大切にしていけるだけの」
 振り返った渚さんの表情は、とても温かみのあるものだった。
「素敵な話だと思うよ、本当に」
 僕の口調に実を感じたのか、渚さんは満足したように笑った。そう、誰にだって初恋というものがあり、それに見合った想い出がある。渚さんにあるように、亮平や、天女目にだってあるのだろう。
 そしてそれは、僕や穹にしたところで、例外ではないのだ……


 一日の授業が終わり、私は教室の前にポツンと立っていた。いつもならすぐに迎えに来てくれるはずのハルが、今日は何故か遅い。クラスメイトにでも捕まったのか、それとも掃除当番なのか。覗きに行こうかと思ったけど、やっぱり止めてこのまま待つことにする。
「初恋……か」
 頭の中に、昼休みに瑛が言った言葉が浮かんでくる。瑛の話では、ハルがそんな話を誰かとしてたらしく、気になったから私に質問をしたらしい。本人に訊けばいいのに、と思わないでもなかったけど、私はその思いがけない質問に対し、ちゃんとした答えを出すことが出来なかった。
 ハルの初恋、それについて私が一度も考えたことはなかった、という表現には嘘がある。正確に言えば、「考えたくなかった」のだ。気になりはしたし、関心もあったけど、それを知るのが私はとても怖かった。もし、ハルの初恋の相手が〝あの人〟だったりしたら、私はきっと立ち直れなくなるから。
「それと、私の初恋」
 質問に対して言葉を詰まらせた私に、瑛は違う質問をぶつけてきた。
「じゃあじゃあ、穹ちゃんの初恋ってどんなの?」
 あのとき、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴らなければ、私は押し黙ったまま、あの場に立ち尽くしていたかも知れない。ハルの初恋について答えられなかった私は、それ以上に自分の初恋についての答えを、持ち合わせていなかったのだ。瑛は単なる興味本位で訊いたんだろうけど、私にはその興味がない。きっとハルなんかは単純だから、「初恋の想い出は誰にでもある」とか思ってそうだけど、私は違う。 
「想い出なんて、ないもん」
 好きな相手というのは、今も昔もハルだけど、じゃあ、私はハルに恋をしたのかと言われると、疑問が浮かんでしまう。ハルは私にとっての唯一の恋愛対象であり、ハル以外にそういった感情を抱いたことがないのは確かなのに、ハルが初恋の相手であることに自信が持てずにいる。
「ハルは、どうなんだろう」
 初恋というものは、私にとって未知の領域だけど、ハルは違う。ハルは私なんかと違って、ちゃんとした想い出を持っているはずだ。それはもしかしたら、〝あの人〟との想い出なのかも知れないし、全然違う、私の知らない人との想い出かも知れない。
 あまり嬉しくもない考えに行き当たり、私がやや憮然とした表情をしていると、ハルが教室から出てくるのが見えた。こちらに顔を向け、軽く手を振ってくる。
「ハル!」
 声が弾み、身体が軽くなっていくのを感じる。我ながら単純だと思うけど、その逆であるよりはずっといい。さっきまでの考えを振り払うと、私はハルの方へと歩き出した。

 渚さんと話し込んでいたせいか、家に帰るのがいつもより若干遅れてしまった。迎えに行くのが遅くなったことに対し、穹は特になにも言わなかったけれど、それ以上に口数が少ないのが気になった。いや、元々穹は多弁な方ではないけど、帰り道でも僕の方をチラチラ見てはなにか言いたそうにしているといった感じで、まあ、それに関しては僕も似たようなもんだったと思うが。
「クラスでなにかあったのかな」
 別のクラスであるからして、僕は普段穹が教室でどのような感じなのかを知らない。成績からいって僕よりは真面目に授業を受けているはずだけど、他のこと、例えばクラスメイトとの関係や付き合いなどはどうだろうか? 友達が出来たという報告はないし、そもそも本人に作る気があるのか、それすらも判らない。登下校はいつも僕と一緒だし、昼休みもほとんど一緒に昼ご飯を食べている。これでは友達の出来ようもないだろう。前々から心配しているのだが、穹自身は現状に満足とはいかないまでも不満はないようで、僕としては口の挟みようもなかった。クラスで孤立とか、そういうことにならなければいいのだが……
 帰宅早々、穹のことばかり考え始めた自分に、僕は苦笑めいた感情を覚える。結局、自分のことより穹のことなのだ。今日亮平の奴に言われたことも、関心や興味は自分よりも穹の方に向いていた。
「昔も、同じようなことがあったっけ」
 あれは、そう、まだ両親が存命中の話だ。穹が退院して幾月か過ぎ、買い付け先から帰国した父親が、僕にこのようなこと尋ねてきた。
 穹に、恋人はいないのかと。
 冗談などではなく、父親としては年頃の娘の恋愛模様ないし事情なりを心配していたのだろう。穹の可愛らしい容姿は両親の自慢でもあったし、無理からぬことだ。しかし、本人に直接尋ねるだけの勇気はなかったのか、質問されたのは僕だった。
 意外すぎる質問に、僕が意表を突かれたのは言うまでもない。真剣に訊ねてくる父親の顔を、僕は直視できなかった。動揺しきった自分の表情を、悟られる気がして。
「まさか、そんな相手いるわけないよ」
 本人でもないくせにきっぱりと断言してしまった僕は、慌てて付け加える。
「穹は家に籠もりがちだし、友達らしい友達もいないみたいだから、恋人だなんてそんな……あるわけないさ」
 我ながら酷いことを言っていると思ったが、それは嘘ではなく事実だった。当時、都会にいたころも、穹は積極的に友人付き合いをするようなことはなく、暇さえあれば一日中パソコンと向かい合っているような生活を送っていたのだ。
 息子の断言、その裏に存在する、本人さえも気付いていない大きな深みを理解せずに、父親は自分の懸念を口にする。お前はそう言うが、穹だって好きな奴の一人や二人いてもおかしくはないだろう。逆に、穹のことを好きだと言って告白してくる奴がいるかも知れないし、穹だってその気になるのではないか。
「考えすぎだよ、本当に。なにも心配するようなことはないし、僕が保証するよ」
 思い返してみると、あのときの僕はどこか不機嫌だった。父親の言葉を流して、ごまかして、それ以上その話題を続けることから逃げ出したのだ。どうしてそんなことをしたのか、あのときは判らなかった。でも、今は違う。穹に関する間の恋だのといった話題に触れたくなかった、考えたくなかったかつての自分。その気持ちが、今なら判る。
「昔から、僕は情けなくて格好悪かったってことかな……」
 自嘲気味に言いながら、記憶の書棚から今度は別の本を取り出してみる。
 初恋やらの記憶は持ち合わせていない僕だが、恋愛と名の付く想い出は皆無ではなかった。世の中には物好きという者がいるらしく、こんな僕でも告白の類を受けたことがあるのだ。あるときは昔ながらの恋文で、またあるときは呼び出された場所での口頭で、いずれにせよ僕にもそういう機会があった。
 比較的仲が良かったクラスの女子から告白されたとき、僕の心は揺れ動いた。相手の真剣さと、強い想いは、恋愛に鈍感な僕にさえ、しっかりと伝わってくるものだった。どう答えるべきか、〝どうすれば相手を傷つけずに断れるのか〟を考えている自分が、そこにいた。結果的に言えば、今の僕の暮らしを考えると告白を受け入れなかったことは正解なのだけど、当時の僕はそんな未来は知らないし、想像もしていなかったはずだ。それなのに、何故……?
 不思議なことに、告白を受けたときに僕が考えていたのは、穹のことだった。無意識か、それとも意識下か、僕の頭に穹の顔が、悲しそうに僕を見つめる表情が思い浮かび、一瞬にして僕は持ちうるはずの選択肢の数々を消失してしまった。
「ごめん……」
 紡ぎ出せた言葉の、情けないことときたら。相手は訊ねる、どうして、自分が嫌いなのかと。そうじゃなかったから否定すると、今度は他に誰か好きな人が、付き合っている人がいるのかと訊かれた。
「そういうわけじゃないんだけど……ね」
 表現は難しいと思った。僕自身、自分の感情を良く理解できていなかったというのもあるし、理解できたところで、説明できることでもなかっただろう。
「放っておけない人がいて、今は、その人のことを大事にしてあげたいんだ」
 丁度、穹が退院して間もないと言うこともあったのだろう。言葉は自然と僕の口から流れ出て、相手を納得させるだけの実があったらしい。「そっか」と、寂しそうな声を出して、相手は僕の謝絶を受け止めてくれた。
 あのとき言った〝今〟は、意外なほど長く、現在進行形で続いている。大事だと思う気持ちは、大切という気持ちも飛び越え、僕の中で大きく変化していった……

 僕は過去という名の回想録を、記憶の書棚にそっと戻した。久々に思い返してみて、感傷や感慨がなかったわけではないけど、それに浸っている暇はなかった。というのも、部屋の外から僕を呼ぶ声が響いてきたのだ。
『ハル、中にいる……よね?』
 控えめな、そしてどこか遠慮がちな声。僕はゆっくりとした動作で、部屋のふすまを開けてみる。
「あっ、その、入っていい?」
 制服から私服へと着替えた穹がそこに立っていた。表情を僅かに緊張させてはいるものの、その瞳はしっかりと僕を見つめてくる。同年代の少年らが見れば、愛らしさに息を呑むことだろう。
「うん、いいよ」
 穹に対して閉ざす扉を、僕は持ち合わせてなどいなかった。

 家に帰ると、さっさと部屋に行ってしまったハルと違い、私はキッチン兼食堂で紅茶を入れていた。今日のハルは、どことなく話しかけづらい雰囲気だった。まあ、ハルからすれば私も同じような空気を出していたかも知れないけど、要するにお互い余所余所しいのだ。
 話したいこと、訊きたいこと、聞いて欲しいことに、言ってしまいたいこと。それらは二人とも持っているはずなのに、言葉として紡ぐことが出来ないのは、まだお互いに考えが纏まっていないからだろうか?
「ハルも、悩んでるのかな」
 深刻な悩みではないにしろ、私が瑛の言葉に心を波打たせたように、ハルも思うところがあったのかも知れない。ハルも都会にいた頃は、私よりずっと充実した毎日を送っていたはずだから、愛だの恋だのといった奇怪に遭遇することも、多かったはずだ。ハルは隠しているみたいだけど、そういった噂を耳にしなかった分けじゃないし、〝橋渡しを頼まれたこと〟も、私にはあるのだから。
 煎れ立ての紅茶を持って、私は自分の部屋へと帰る。制服をベッドの上に脱ぎ捨てて、ふと、着替える前に姿見の方へと向かう。
 小さな身体が、そこに映し出されていた。
 下着姿になると、制服のときよりも、華奢な身体がハッキリと露わになる。ハルとは違う、小さいままの私の身体。
 私が復学をして間もない頃、クラスの女子がハルについて色々と訊いてきたことがある。当時、ハルは復学したばかりの私を心配して、今と同じように毎日教室まで迎えに着てくれていた。私に対する物珍しさと、双子と言うことで顔がよく似ていたことへの興味。
 彼女はいるのか、どんな女がタイプなのか、そういった質問の数々を、私は煩わしげに聞き流してきた。彼女なんていないことは知っていたし、いるわけがないとも思っていたけど、それを断言したくもなかった。ハルの面子を守って、というわけでもなく、どこまでも自分本位な理由から。
 あるとき、ハルが同学年の女子から告白を受けて、これをあっさり断ったという話を聞いた。ハルは私にそんなことを一言も言わなかったので驚いたけど、狭い学校の中、それも同学年の恋愛に関する噂は伝播しやすい。
 ハルは身持ちが堅いと言うことで有名だったらしい。私が復学するずっと前から、人付き合いは決して悪くなかったけど、肝心なイベント、クリスマスとかその辺りには誰からの誘いも受けなかったという。
 恋愛や性愛に、ハルが無関心であったとは思えない。ハルは極端な人間ではなかったから、人並みに情愛や情欲は持っていたはずだ。それなのに、どうして――
「私が、いるから?」
 思い上がりというわけではなかっただろう。現に、私とハルの周囲にはそういった声もあり、「春日野は妹の世話を焼くのに大忙し」などと評されることもあった。ハル自身、自覚があったのかそうした声に反論せず、残り僅かとなる都会での生活を、私と一緒に過ごしていった……
 制服から私服に着替えて、すっかり冷めてしまった紅茶に口を付ける。記憶の海をたゆたっている時間が、思いのほか長かったらしい。琥珀色に煎れた紅茶も、風味が消えては美味しくない。
「もう一度煎れて、ハルにも持って行こう」
 口実であるにせよ、私はハルの顔が無性に見たくなっていた。


 紅茶を煎れてきてくれた穹を部屋へと招き入れ、僕らは畳の上に座布団を敷いて腰を下ろした。椅子やベッドなどというものは僕の部屋には存在せず、家具や調度品も最低限のものしかない。いつか亮平が遊びに来たとき、その質素さに驚いていた。僕としては、これぐらいサッパリとしている方が、片付けも楽で良いと思うのだけど。
 琥珀色の液体を身体に流し込むと、なんとなく気分が落ち着いてくる。隣に座っている穹に目を向けながら、僕は口を開いた。
「なぁ、穹……」
「ねぇ、ハル……」
 重ねられた言葉に、僕らは目を丸くして見つめ合う。
「ハルからで、いいよ」
 穹は薄く笑うと、琥珀色の紅茶を再び口に含んだ。僕は一呼吸置いて、再び穹に向かって語りかける。
「今日、クラスで初恋についての話題になってさ」
「うん、知ってる。瑛から聞いた」
「そ、そうなんだ。えっと、それじゃあ」
 訊くなら、今しかない。この機会を逃したら、もう二度と訊くことが出来ないような、そんな錯覚に捕らわれる。僕は、意を決した。
「穹の初恋って、どんなのだった……?」
 質問を受けても動じなかったのは、穹がある程度僕の質問を予期していたからだろうか? 目をつむり紅茶を飲んでいた穹は、やがて静かな動作でカップを置くと、僕の方に視線を向けてきた。透き通るような、その瞳で。
「私にはそう言うの、ないから」
 言葉は、ハッキリとした断言だった。
「ないって、そんな」
「嘘じゃない。私には、恋をしている暇なんてなかった」
 それは入院生活が長かったからとか、そういう意味だろうか? 困惑する僕に対して、穹は首を横に振る。
「違う。入院してたからとか、そういうことじゃない。私は、自分で恋がしたいとも思わなかった」
「それは、どうして?」
「……ハルが、いたから」
 穹の導き出した答えに、僕は息を呑んだ。穹はスッと身体の向きを変え、僕の顔に自分の顔を、上目遣いに近づけてくる。
「私には最初からハルがいた。ハルが私の目の前にいて、いつも、どんなときでも私に笑顔を見せてくれたから」
 だから、他にはなにもいらなかった。
 その述懐は穹の心からの本音であって、そこに嘘偽りなど存在しない。穹は本心から、僕にそう言っているのだ。なら、僕はそれを素直に受け入れるべきだろう。
「ハルは、どう? 答えは……でた?」
 訊きたいことは、お互いに同じだったようだ。穹がやや緊張した面持ちをしているのは、僕の答えにある種の覚悟をしているかも知れない。どんな答えでも受け入れようとする想いと、それが出来るか判らないという気持ち。
「僕は……」
 今日一日、色々なことを考えてきた。かつて、僕には幾多の出会いがあり、幾人かの人が目の前に現れた。気持ちや想いの程度差はあれ、その人たちが僕を好いてくれたことに違いはない。
 けれど、僕の瞳にその人たちは映らなかった。何故なら、僕の瞳はずっと、穹だけが映っていたのだから。穹のことだけを考え、穹のことだけを想い、それは僕にとっての当たり前のことだった。
 だから、僕たちは――
「穹……好きだよ」
 言うと、僕はごく自然な動作で穹の身体を抱きしめた。穹は驚いたようだが、キュッと僕の背中に手を回してきた。
「私も、ハルが好き」
 穹も頷き、僕らは互いの想いを確かめ合った。

 初恋というものが僕らにあったのだとすれば、それはずっと昔に経験したことであり、相手など最初から決まり切っていたのだ。考えても判らなかったのは当然で、探しても見つかるわけがなかった。
 それを知り得たこと、実感できたことだけで僕は満足であり、そして……
 幸せだった。


春日野穹bot→URL:http://twitter.com/sora_k_bot
表紙の影響か、結構売れてるみたいですね。巻頭のカラーページにヨスガノソラのアニメ化について載ってたけど、情報量としてはアニメ誌のそれと大差ありませんでした。ただ、記事としての文章がニュータイプより微妙だと感じてしまった。言いたいことというか、書きたいことは判るんだけど、なんかずれているというか、仮にもコミカライズやってるところがこれでいいの? という感じ。
一応、以下が引用になるけど、
のどかな田舎風景のもと紡がれる「縁」の物語
不慮の事故により両親を亡くした主人公・春日野悠は、妹の穹を連れてかつて祖父の暮らしていた奥木染へと移り住む。幼少のころ遊んでくれたお姉さん・奈緒との再会や、新しい友人たちとの出会い。優しく流れていく時間は、しだいに彼らの心に変化をもたらしていく……

感動的なストーリーが人気を博したAVGが今秋TVアニメに。今後の続報に乞うご期待!

なんかもう、私がなにか言うまでもなく突っ込みどころ満載な文章なんだけど、ヨスガに感動モノとしての、所謂泣きゲー要素なんてあったかしら。てっきり穹をはじめとしたヒロインの可愛らしさ、ハッシー原画が凄く受けた作品と認識してるんだけど。私はヨスガノソラのシナリオ好きだけど、それでも多くの感動を呼んだ名作がこの秋、ついにアニメで登場! なんて書かれると、違和感を感じずにはいられない。

まあ、それはともかくとしてコミカライズの第10話。重要なイベントをほとんど消化してしまったあとで、どのように穹ルートへ入るのかと思っていましたが、予想通りオリジナル展開で事を運び始めました。
夏休みはまだ続いていて、隣町のアーケード街に出かけたハルとその友人たち。なんの罰ゲームか、ハルが女装の刑にあっており、よりにもよってミニスカートを履いている。ハルの手足はやっぱり細めだなぁと思いつつ、ミニスカ履くぐらいだから毛もほとんど生えてないんでしょうね。ハルはよっぽど嫌なのか泣いてしまっていたけど、その可愛らしい姿に女性陣と亮平は絶賛。奈緒が盛り上がり、渚さんが顔を赤らめるのは判るんだけど、委員長が目を輝かせているのは意外だった。委員長はなんていうか、ハルにカッコ良さを求めていると思ったから。
「うぅ…なんで僕が…」
奈緒に可愛いと絶賛されるハルだけど、その反応はさらに嫌だと涙を流す。亮平に至っては食べちゃいたいぐらいと発言し、「亮平…ちょっと近づかかないでくれる?」と涙目のハル。

「ほんと…かわいい」

「似合ってるよ、ハル」

呟く穹の表情は、どこか余裕と優越感に満ちたもの。底の知れない笑みには違和感があり、可愛らしさ以上に感じるものがある。
「穹…」
穹の言葉に頬をかくハル。このときの穹の衣装はツインテールに黒スカート、銀十字のアクセサリーが付いた原作ではおなじみの私服だけど、実はコミカライズでは今回が初出になります。正確にはコミックスの描き下ろしで既に描かれてるけど、本編では初めて。前回、奈緒シナリオのバスの下りがあったけど、原作ではこの至福を着ているはずのシーンも、コミカライズではいつもの白一色の私服だったから、こんな風に縦ブチ抜きで穹の私服の全体像が描かれるのはいいもんですね。
「じゃあ次は私のセレクトで」
背景文字によるとゴスロリらしい服装をハルに差し出す穹。どこらへんがゴスロリなの? とかは言ってはいけません。
「いや、もういいって!!」
拒むハルだけど奈緒に捕まってしまい、虚しい叫び声だけが響くのだった。

「あの時は笑ったなー」
所変わって奥木染。どうやら改装だったらしい服屋での下りを、ハルが現像した写真を見ながら思い出し笑いをする亮平。その場には奈緒の姿もあり、口ぶりから察するに、となmり街へと出かけたのはちょっと前のことらしい。
「あれ? 女装写真が入ってない…」
「入れるわけないでしょ」
残念がる奈緒に、穹ちゃんも喜んでいたのにという亮平。
「そういえば、穹ちゃんは?」
「あ、ああ、家だよ…」
穹のことに触れられ、ハルの表情が微妙妙に変化する。歯切れも悪くなり、それ以上話したくないのかその場を後にしてしまう。
「…街に行ったとき思ったんだけどさ」
帰るハルの後ろ姿を見ながら、亮平が奈央に対して呟きます。
「穹ちゃん、悠のこと本当に好きなんだな」
「いまさら何言ってるのよ」
「まぁ、あの様子を見ればな」
街へ遊びに行ったときなにがあったのか、穹のハルへの思いを強く感じさせるような、そんな出来事があったのでしょうか? 原作にないイベントだけに想像するしかないけど、委員長シナリオにおけるデートシーンの穹とか、その辺りかな。せっかくのオリジナル展開なんだし、その部分をしっかり描いても良かった気がする。最初の罰ゲームシーンだけじゃ、イマイチ伝わりづらいし。
「はるちゃんのこと、大事に思ってるのよ」
「悠のヤツは、どう思ってるのかね」
穹はハルのことが好き、これに関しては亮平でなくても、例えば渚さんや委員長であっても気づいていることでしょう。しかし、それはあくまで兄妹としてであり、穹のハルに対する気持ちは度を越したブラコンのようなものだと思われているに違いありません。ブラコンやシスコンがどれぐらい珍しいのかは知りませんが、穹の感情の爆発を直接叩きつけられた奈緒でさえ、その深みに気づくことは出来ませんでした。これはハルと穹の境遇が関係していると思われ、原作の奈緒も言っていましたが、穹の言動は両親を失い、最後の家族となったハルを捕られまいとするため、そのように周囲は解釈していたのでしょう。親もおらず、頼れるものはハルだけ。そりゃあ、ブラコンにもなるさと、そんな感じで。
けれど、穹がハルに抱いていたのは、妹が兄に対して抱く親愛以上のものがあって、ハルはそれに気づきかけていたのです。

「なんか…入りづらいな…」
最近…穹の態度が変わってきた気がする。呟くハルの表情は重く、自宅に入るのさえためらってしまうほどだった。
「なんとなく…決まづいんだよな」
奈緒との関係を清算させてからなにがあったのか、キス以上にハルが困惑するような出来事が、二人の間で繰り広げられていたということでしょうか? 流れとしては判るんだけど、今回は少し唐突感のある展開が多かったかも。
「ただいまー」
恐る恐る家に入るハルだけど、それを聞きつけた穹がすぐさまドタドタと走ってきます。

「ハルッ。ハル! どこ行ってたの!?」

まさに血相を変えて、という表現がふさわしい穹の態度。怒ってはいないにせよ、その勢いにハルは焦ります。
「いや…みんなに写真渡しに…」
「そう…なんだ。もう…ひとこと言ってよね」
「あ…うん…」
穹に行き先も告げずに黙ってだけてしまう辺り、ハルは穹と会話することにかなりの気まずさを、一方的ではあるにせよ感じているのかもしれません。
「お昼ごはん作ったから、早く食べてね」
「……」
穹が自分から料理をすることは、原作でもあったことです。あれは朝食だったけど、普段は面倒くさがりで自分からなにをしようともしない穹が、積極的に家のことを手伝ってくれる。喜んでもいいはずのことに、ハルはなぜだか困惑が隠せない。
「おいしい?」
「う、うん」
「ハルの好きな物ばかりだから、たくさん食べてね」
数日前からの違和感。
「ほら、こっちも」
「いいから」
「むぐっ」
無理矢理、穹にスプーンを突っ込まれるハル。積極さを通り越した、強引さ。
「ふふっ」
満面の笑みを浮かべている穹。
どこか…甘えるような、すがるような、正直どう接していいのか戸惑っていると、ハルは妹の変化に動揺しています。
穹は珍しく、というより原作・コミカライズ通して初めて髪を一つ縛りにして洗い物をし始める。
「ねぇハル、午後なんだけどいっしょに…」
「え!? あ…えっと…」
穹がなにを言おうとしたのか、ハルと一緒にどこかへ行きたかったのか、それともなにかしたかったのか、それはわかりません。
「そうだ!! 天女目にも写真を渡さないと」
「そんなの、いつでも…」
ハルの行動は、明らかに穹の言葉を遮る目的で発せられたもの。
「いや、早めに渡しときたいしさ。今から行ってくるよ」
「あっ、ハル!」
バタンと扉が閉まり、逃げるように家を出て行ってしまうハル。穹には、そんなハルを止めることができませんでした。

「あ…」

ぎりっと、歯ぎしりをする穹。先程まで満面の笑みを見せていたはずなのに、それが吹き飛んでしまうほどきつく強烈な表情をみせている。怒りと苛立、思い通りに行かないことへの不満。穹がここまでの表情を見せるとは、正直思いませんでした。
「ハル…」
真っ暗な画面に、ただ名前を呟くふき出しだけが映る。まるで心が闇に紛れたような、そんな穹の心境や深みを映し出しているようで、寒気を覚えた。

瑛に写真を渡すといった手前、ハルは叉依姫神社を訪れていました。
「逃げてる…よな。どう見ても…」
自分が穹から逃げたことに、ハルは自覚を持っていました。兄が妹から逃げるなんて、普通であればあり得ないこと。だけどハルは穹と一番近くにいるせいか、穹が見せ始めた危険性を、ある種の違和感として肌で感じ始めていたのでしょう。それは6話におけるキスもそうだし、この数日間でもっと色々なことがあったのかもしれません。
ハルは神社の境内で、猫の師匠を見つけます。相変わらず堂々とした姿に、腰をかがめて話しかけてみることに。
「気楽でいいねぇ。悩みなんかないんだろ?」
師匠がなにかを悩んでいるかはともかく、少なくともハルには悩みごとがあります。
「なにやってるの?」
「天女目…」
「いらっしゃい、ハル君」
瑛もまた笑顔を浮かべているが、それは穹の浮かべていたものと、まったく異なるもの。この前の写真を渡そうと思って、と立ち上がるハルに、瑛は感謝の言葉を示します。

「……女装の写真はないの?」

「ないよ!!」

そのまま帰らず、縁側にてお茶を頂くハル。今日も暑いねぇなんて、平凡なことを呟きながらお茶を飲むハルに、瑛はなにかを感じたのでしょう。
「……何か悩み?」
瑛の鋭い指摘に、ハルの表情が固まります。
「何か言いたそうな顔してるよ」
「天女目…」
「あたしでよければ、相談にのるけど」
「ありがと」
人の心を読むのが上手い瑛に見透かされ、ハルはポツリポツリと自分の悩みを打ち明けます。
「穹のことなんだけどさ」
「穹ちゃん?」
「なんか最近、様子がおかしいんだ。家のこと手伝ってくれるのはうれしいけど…妙に僕にかまってくるし……どうしたんだろうなって…」
普通であれば考えすぎ、悩みであるとさえ思われないようなハルの悩み。家のことを手伝ってもらっているのだからそれでいいじゃないか、贅沢な奴だと、そんなことを言われてもおかしくはない。
「……そうだね、あたしに言えるのは」
瑛は穹の気持ちにどこまで気づいているのか、それが許されることではないと分かっているからなのか、悩みを打ち明けるハルに対し、僅かながら悲痛な表情を見せます。おそらく瑛はハルよりも早く、穹の心の中や感情を読み取っていたのでしょう。

「穹ちゃんのことをちゃんと見てあげて」

「そうなった理由が何かあるはずだよ。ちゃんとそばで見てあげて」

「どんな形であれ、穹ちゃんにはハル君が必要なんだよ」

この時点で、瑛はさり気なくですが、穹が兄以外の形としてハルを必要としていることに言及しています。けれど、ハルはそこまで気づくことができません。
「ありがと。少し気が楽になったよ」
「そう? 良かった」
「天女目は何でもお見通しな気がするなぁ」
ハルもまた、何気なくですが瑛という少女の本質を理解し始めていました。それは瑛が少々深く春日野兄妹と関わっているからでしょうが、渚さんでも気づけなかった瑛の本質にハルが気づいたのは、ハルが穹の内心に気づけなかったのと同じ理由なのでしょう。要するに距離感と関係性。近ければ近いほど、見えにくくなるものもある。
「それより! 早く帰ってあげないと」
「あっ、う、うん」
半ば強引にハルを送り出す瑛。手を振って見送りますが、ふいに師匠の様子がおかしいことに気づきます。
「どうしたの師匠?」
動物は、特に猫はとても敏感な生き物だといいます。このときの師匠がなにを感じていたのかは分かりませんが、ざわめく木々の音に身を任せながら、じっと空を眺めている。何かが起こりそうな、そんな予感を覚えていたのかもしれません。

ハルのいない春日野家では、親戚からの電話を穹が受けていました。原作ではハルが応対するはずの電話。穹は不安そうに見つめているだけだったのに、コミカライズではまるで違いました。
『あの話は考えてくれた?』
「考えてません」
『でも、二人だけで暮らしていくのも大変でしょう?』
「問題ありません」
原作で、ハルと穹が両親の初盆のため都会へと戻った際、穹は援助の手を差し伸べようとする親戚の言葉を、半狂乱に近い形で嫌がり、振り払ったといいます。それとはまた違ったコミカライズにおける穹のキツさと固さ。自室に戻った穹は、電話での親戚の言葉を思い返します。

――穹ちゃんはそうでも…悠くんはどうかしら? もっと私たちを頼ってくれてもいいのよ

確かに、ハルの気持ちがどうであれ、穹が自分の感情を押し通していることに変わりはありません。そんなことは穹だって分かっていますが、ベッドでうずくまる穹はそれでも相手の好意を否定します。
「頼ったら…離ればなれになっちゃうじゃない」
コミカライズだけ読んでいるとこの発言も納得がいきそうなものですが、実は原作だと少し事情が変わります。頑ななハルと穹に対して、親戚は妥協案として二人が元々住んでいたマンションで一緒に暮らしてもいいとさえ言うのですが、穹はそれすらも拒否したのです。まるで、ハルとの二人きりの生活を邪魔されたくないとでも言いたげに。

「ハル…ハル」

ハルの名前を呟きながら、右手を自分のスカートの中へと入れる穹。

「んっ」

「ハルは私のこと迷惑なんかじゃないよね?」

頬を赤らめ、切なそうに、穹はハルへの思いを叫ぶ。

「私はこんなに…愛しているのに」

「ハルのためなら…何だってしてあげられるのに…」

「好きだよ、ハル。ずっと…いっしょにいて…」

穹がハルのことを愛していると言葉にするのは、原作でもなかなかありません。特にこのシーンでそこまで言うとは思ってなかっただけに、少々驚きました。直接的というか、ストレートですよね。
ハルがいないからこそいえた言葉であり、出来た行為。けれど、穹は多分気づいていない。

――ソ…ラ?

部屋の外に、茫然自失となったハルがいることに。

――穹が…僕のことを? 兄としてではなくて?

――そんな…そんな…

冷や汗を流すハルは、原作と違って愕然としているイメージが強いです。これは原作とコミカライズにおける認識度の差であり、原作でのハルはキスをされた際に穹が自分を想っていることを強く認識してしまい、そこから穹のことを避け始めるのですが、コミカライズでは今まさに、この瞬間に穹の想いに気づいたのです。だからこそ原作のように興奮するわけでもなく、ハルは衝撃と驚きに打ちのめされたのです。
そんな事実を前にしてハルはどう動くのか、ということろで次回に続く。


まあ、感想としては大きく分けて二つですね。
水風天は流石だね! というのがまず最初に来ると思う。やっぱりエロ漫画も描いてる人はちがうというか、これってコミックスでは右手首の先が見えたりしないんですかね?w 下着は脱いでいないんだから、そこを描写しても大丈夫だと思うんだけど、コミックスで加筆修正とかされたら最高だよね。いや、もしかしたら予め描いてあるかもしれないし。原作と違って短いし、特に下着とか指使いが見えたわけでもないのに、何故だか凄くエロイ。足か、白い足のせいなのか。
原作と違って角度がなく、ほぼ真正面から自慰をする穹を描いた、というのも大きいのかな。この切なそうな表情がたまりません。
後もう一つは、やはり穹が徐々に病みつつあるということでしょうか? ハルに対してでさえ、直接ではないにしろ激しい怒りや苛立ちを見せる穹。歯ぎしりをするなんて、原作だとちょっと考えられませんよね。ハルがそんな穹に戸惑い、若干引き気味なのは、上に書いた通り穹の気持ちを人気ししきれてないからだと思います。この時点でハルが穹を避けているのは本能的なものですし、原作のそれと理由は大きく違う。故にコミカライズのハルがこの先どうするのか、それには結構興味が有ります。突き放すのか、受け入れるのか、それとも逃げ出してしまうのか。
例えば次回も穹の自慰が続いていて、それに言いようのない興奮をハルが感じ始めるとか、そういう流れも悪くはないと思うんですよ。ハルが一線を越えるには、明確に穹へ欲情する必要がありますから。今の時点では、引き気味ということもあってそれが薄いよね。おそらくは次回のラストで一線は越えてしまうんだろうけど、それをどこまで描くことが出来るのか。水風天に技術があるといっても、雑誌としての規制もあるだろうし、あまり期待しない方はいいのかな。アニメがTVアニメになった時点で、動作的なエロとは無縁になってしまったし、コミカライズには頑張って欲しいんだけど……あぁ、ヨスガもエロアニメとかにならないかな。TVアニメってネタとしてのエロには寛容なのに、割とマジなエロは避ける傾向にある気がするし。
まあ、コミカライズは次回が山場だと思います。ハルと穹はどうなるのか、出来ればぼかすことなく描ききって欲しいです。
ロックマンゼロ コレクションが面白すぎて、欠片も原稿が進まない……イージーシナリオモードの凄まじい仕様に気分爽快。これで負けろっていう方が無茶だろうというチートっぷり。まだクリアしてないので詳細はまたの機会に書くけど、これを封印しろというのが無茶ってもんだ。寝ることを忘れてしまう楽しさがある。

さて、連日にわたってヨスガノソラ関連の日記ばかり書いてきましたけど、公式ページにて発表もされたことだし、アニメ化に関して言えば7月まで動きはないと考えた方がいいのかな。個人的な情報収集は続けますけど、横の繋がりから仕入れた情報を公開するわけにもいかないし、当面は様子見ですかね。それぞれの業界に片足ずつ突っ込んでるから、結構動きにく立場でもあるんですよ私。
ヨスガノソラスレでも早速聖地巡礼へ出かけた人が幾人もいるようで、私も行きたいなー、行きたかったなー、と思っているところです。なんの準備もなしに行けるところじゃないし、それに今日は色々忙しかったからね。なんとしても21時には家でラジオ聴いてないといけなかったから、遠出をするのはちょっと難しかった。誰か私に聖地の写真と隠れないかなーw 渚さんの家までモデルが有るとは思いませんでしたし、やっぱり一度いかないとダメですね。春日野医院や伊福部商店はないらしいけど……
そろそろ梅雨入りですし、雨が降る前にとは思うんだけど、今日明日と忙しいから来週かなぁ。でも、そうすると梅雨入りしてそうだし、いっそ梅雨明けにすべきだろうか? なんでも現地では高速道路の建設が行われるとかで、これがハッシーの言っていた大きな工事という奴でしょう。確かに、高速道路が出来るとなれば大きく景観は変わりますね。もう工事が開始しているのかはしりませんが、出来る事なら風景がガラリと変わる前に行きたいものです。
ただ、聖地巡礼本を作るのかと言われると、どうしようか迷ってます。商業誌としてそういう本が出ていることから、別に出したっていいと思うんだけど、悲恋堂からツッコミが入りまして。
「野山や道端、公共施設や寺社仏閣ならともかく、民家は不味いでしょう」
言われてみればその通りで、HPで公開するぐらいならまだしも、民家を載せるのはちょっとあれだよね。同人誌とはいえ、人様の家なわけだし。まあ、そこら辺は良く考えてみますけど、とりあえず聖地巡礼にいった人は私に画像とかくれると嬉しいなw

公式等に動きがない限り、しばらくヨスガについて書くこともないだろうから、ここらで私のアニメ化に対するスタンス的なものを書いておきます。昨日の日記の最後に書いた一文が何故か波紋を呼んでいるようですが、まあ、あれは私の本心です。ただ、なんの説明もせずにあの一文だけ載せると、確かに感じは悪いよね。アニメ化を楽しみにして、期待している人というのも、いなくはないんだから。
あの文章はもっとも単純な二者択一で、アニメが最低の駄作として黒歴史になるのと、それなりの良作として賞賛され、「アニメは原作を超えた」とか、「アニメに比べると原作は糞」みたいに言われるのだとしたら、私は前者のほうがまだマシかなと思っているだけのことです。
私はエロゲ原作のアニメに無難な出来なんてものは存在しないと思っているし、原作を超えるアニメというものがあるとも思っていません。AIRやefのような、一般的に良作ないし名作と言われているものでも、それは同じことです。特に後者は原作と内容違うしね。

TVアニメ化に対して、自分がまだ受け入れきれていない部分があるのは認めます。前述のような発想はファンとして歪んでいるんだろうし、本来であれば不安を抑えて応援をすべきなのではないかとも思う。けれど、私はやはり怖いよ。駄作となることは怖くもなんともない。良作を飛び越え、名作や傑作となることが、なによりも怖いんだ。世界はもっと、小さい方が好ましい。
ここからは個人的エゴイズムな意見になるけど、大観衆の悲哀ですよ。極小規模で成り立っていた世界が広がり、自分がその世界でたいしたことのない存在であると実感するのが、たまらなく嫌だ。人は常に自分が特別でありたいと思うし、そうなるための努力すら時にするのですよ。特別な存在ってのは、ある日突然なるものじゃない。自分自身の手で、力づくでつかみとるものなのさ。
さすがアニメディアは格が違いました。アニメージュに記事がなかった時点で、角川の雑誌以外は情報ないのかなと思ったんですが、やはり三大アニメ誌はアニメディアが一番ですね。まさか、ここまで記事らしい記事を書いてくれるとは思いませんでした。
画像の見やすさではコンプティークだけど、作品情報としてはこっちの方が断然いいですね。

アニメ誌も粗方で終わったので、雑誌情報は月末までお預けですね。今回はアニメディア2010年7月号の情報はもちろん、全体の総括をしてみます。そんなわけで、アニメディアに書いてあったあらすじ&作品情報を以下に引用すると、
人気PCゲームアニメ化決定!!

突然の事故で両親を失い、都会から奥木染に引っ越してきた主人公の春日野悠。そこは幼少のころ避暑に訪れていた土地でもあり、幼なじみや顔なじみに助けてもらいながら、なんとか双子の妹・穹との生活を始める。時間の流れから切り離されたような小さな町で、物語は静かに幕を開ける……。

人気PCゲーム『ヨスガノソラ』がTVアニメ化決定。片田舎の小さな町を舞台に、人のつながりと心の触れ合いが丁寧に描かれた原作のテーマは、アニメにも引き継がれるとのこと。引きこもりの妹、天然ボケっぽい巫女、お嬢様、ドジなメイドさんなどなど、いろいろなタイプの個性的なヒロインたちとのドラマがどのように描かれるのか、楽しみなところだ。

アニメディアは御丁寧にも画像に載っているキャラの名前を紹介してくれているんだけど、あらすじはともかくとして、その次の作品紹介を読んでなにか感じませんか? どこかおかしい、と思った人もいると思います。
引きこもりの妹、天然ボケっぽい巫女、お嬢様、ドジなメイドさんと順番に作品のヒロインが紹介されていて、その形容の仕方は決して間違っていないんだけど……あれ? 水泳部の先輩ないしメガネっ娘の先輩がいないよ? 一応ヒロインの一人にして、穹シナリオでも結構重要なキャラである、依媛奈緒の記述が一切ないw
よく見るとキャラ紹介のところにも、他の面々は亮平を除いてなにかしらの肩書きがあるのに、奈緒だけなにもなくて、しかも一番最後。まあ、最後なのは立ち位置がそうさせたんだろうけど、これはどういうことなのか。まるで奈緒がヒロインじゃないみたいじゃないですか。近所のおねえさんぐらいの記述をしても、別に良かったんじゃ……不人気だから敢えて書かなかったんですかねぇ? それともこの記事を書いたであろうライターがメガネっ娘嫌いだったか。あぁ、ありそうな話だ。
あらすじに関しては少し荒いですけど、作品内容を知らない人には分かりやすいんじゃないですかね? 昨日取り上げたコンプティークの場合、原作を知っている人間にはとてもまとまった綺麗な文章に見えるけど、原作の知識がない人にはこれぐらいが丁度いいのかもしれない。PCゲームであることが明記されてるけど、そういえばニュータイプは美少女ゲームという記述で、コンプティークにはゲーム原作であることさえ書いてなかったな。ふむ、こうして比べてみると雑誌の違いってのはあるもんですな。

アニメディアの記事で注目すべきは、もちろん奈緒がはぶられていることもそうなんですけど、やはりここは人のつながりと心の触れ合いが丁寧に描かれた原作のテーマは、アニメにも引き継がれると明記されたことでしょうか。この記述だけで穹シナリオに結びつけるのは無理があるけど、少なくとも原作の根幹や根本といった部分は崩れないと考えていいのではないかと。原作に忠実な内容で作るとは書かれていないけど、まるきりオリジナルというわけではないらしい。
そしてもう一つ、左上隅に注目してみましょう。そう、STAFF&CAST欄です。スタッフとして原作のSphereが書かれているのは当然として、キャストの方は……まあ、未定ですよね。そりゃあ、今の段階でキャストまで発表されるとは思ってませんけど、未定という言葉が重くのしかかってくる。声優変更が確定したわけではないけど、公式サイドがキャストを維持する上でなんの役にも立たないことが露呈してしまったから、不安しかない。月末のコンプエースや娘Typeとかで、キャストまで発表されるかな。いや、先に制作会社とかスタッフの情報を公開するか。キャストはその後だね。

さて、連日アニメ誌の特集をやってみたわけですが、結構面白いもんですね。雑誌ごとの色が出ているというか、私は元々アニメディアを買っていた人間だから、少し贔屓目で見てしまうかもしれない。でも、それにしたってニュータイプの記事はなんとかならなかったのか。自社作品に近いというのに、アニメディアより扱いが小さいなんて。まあ、アニメディアはあれで萌え系作品に優しいからね。今回のピンナップもほとんどがそっち系の作品だったし。
アニメージュになんの情報もなかったことから、後はコンプエース他を待つしかないですね。放映開始を10月と仮定して、もう4ヵ月ないのか。本格的な情報解禁は来月か再来月か、私はヨスガノソラのアニメには、最低の作品として失敗することを望んでいます。それが一番、傷がつかないと思うから。歪んでるな、我ながら。
春日野穹bot→URL:http://twitter.com/sora_k_bot
コンプティーク2010年7月号ヨスガノソラのTVアニメ化に関する記事が載っていました。ニュータイプより扱いが大きいのは、やはり元増刊号であるコンプエースにてコミカライズが連載しているからでしょうか。記事の方も、コミカライズのキャッチコピーと同じものが使われています。簡易あらすじは、原作寄りですかね。いずれにせよ、ニュータイプの記事よりは分かりやすいと思います。画像のサイズもこっちの方が全然大きいですし。

以下、あらすじ的なものが書いてあるので引用してみます。
穏やかなときが流れる場所で
大切な“想い”が胸をかすめる――


事故で両親をなくした春日野悠は、妹を連れて幼少期に訪れていた田舎の祖父の家に住み始める。緩やかに流れる時間のなかで悠の心は徐々に変化し、やがて自分にとって大切な存在に気付いていく……。

なんでしょうか、ニュータイプよりもはるかに簡潔だというのに、こっちの方がよっぽど分かりやすいというか、分かっているなと思えるのはなぜだろう。さすがに、田舎での癒しと恋はなかったということか。短くまとめられており、それでいて文章が綺麗ですね。
大きい画像を見て再確認したんだけど、やっぱりこのキービジュアルはハッシーが一人で描いたものみたいです。鈴平ひろの名前がないというのもそうだけど、渚さんとかダメイドの目の感じとかが、現在のハッシー絵だもの。鈴平との契約がどうなってるのかはしらないけど、こうなるとアニメに積極的な関わりはしてこないのかな。鈴平アニメは転けるというジンクスがあるのでとても残念、もといガッカリ、じゃなかった、鈴平ファンは頑張ってください。
コンプティークだからか、コミカライズの宣伝もちゃんとされてますね。扱いも結構いいですし、ニュータイプを買うよりかはコンプティーク買った方が良いんじゃないでしょうか? ニュータイプの記事は、速報以上のものではなかったと思う。

公式HPは準備中とのことで、ヨスガで取得されそうなドメインは前々から調べています。近日公開ではなく準備中ということは、公開まで当分かかるのかな? アニメ化に関してはSphereの動きがかなり鈍いですけど、こうしてアニメ誌やゲーム誌で紹介が始まってるんだから、いい加減TOPページに告知バナーでも載せたらどうなんだろう。コミックスの早売りは無視するとしても正式な発売日から既に10日以上、その間に公式がやったのはなんの記念かも分からない壁紙の配布と、ハッシーが連続でスタッフ日記を更新しただけです。原画家であるハッシーがスタッフ日記でアニメ化に触れることはなんの問題もないけど、広報を始めとしたその他スタッフはなにをやっているのかと。ハッシーを隠れ蓑にしているとはいわないけど、何故アニメ化に関する一文も載せないのか。詳細は明かせないにしても、アニメ化しますという一言ぐらいは書けないのかと。そんなだから、ヨスガノソラスレとかでSphereは逃げているなんて言われるんですよ。嘆かわしい話です。
まあ、10日売りの雑誌が出るのに合わせて、公式でもなにかしらの発表があるのかな? 実は、地味にコミカライズのコミックス発売したよバナーが設置されてるけど、あれに気づいている人はさて何人いるのか。ただ、公式サイトが存在しない以上、バナーなんて設置しても意味ないから、求められるのは文章なり画像なり、とにかく正式な形でアニメ化について告知して欲しい。他でもない原作の公式サイトなんだから。なんだったら、今アニメ誌やゲーム誌に載せている画像でもいいんですよ。あれに一文添えるだけでいい。

雑誌類の出費が急に増えてますね。特にコンプエースは880円と、今日の私の昼飯より高いですよ。金がないわけじゃないけど、無尽蔵のあるわけでもないんだから少し控えないとな。夏コミの印刷費もあるわけだし。一応、今月に限っては各誌でどのように取り扱われているのか調べる意味も兼ねて、片っ端から買ってますけどアニメージュとアニメディアはまだ手元にない。これに関しては身内が立ち読みに行くそうだから、ついでに記事が載っているかどうか調べてきて貰います。コンプティークに関しては、公式サイトに記事があるとの記述があったのでね。縛られていて立ち読み出来なかったし、まあ、仕方ないなと即買いをしたわけです。
しかし、コンプティークの記事はアニメ化の文字が小さすぎて、あたかもコミカライズの宣伝記事って感じがするな。いや、今の段階ではその側面が強いのかも知れないが。ニュータイプとの違いが大きく出ていて、個人的には損な買い物じゃありませんでした。案外、アニメ誌よりもコンプティークの方が特集とか組んでくれるかも知れませんね。
今秋にTVアニメ化が決定したヨスガノソラですけど、昨日の日記は随分と反響を呼んでるみたいです。ただの雑誌記事紹介なのにおかしいなと思ったら、なんかどこかの大手ブログで紹介されたみたい。アキバBlogのときも思ったけど、大手というのは凄いですね。ちょっと前に7万ヒット行ったばかりだと思ったのに。それともヨスガノソラという作品が凄いのか。

昨日の日記というか記事を読み返していて気づいたんですが、あらすじに穹が双子の妹であることがちゃんと記述されてますね。あまりにも自然というか、当たり前すぎて気づくの遅れたんですけど、アニメの宣伝記事で双子の妹であることが明記されているのは大きいかもしれない。
まあ、昨今の世情とでもいうんですか? 去年のエロゲ販売規制騒動や、東京都議会による非実在青少年問題なんかも含めて、実妹等の近親相姦やその他性表現には風当たりが強いですからね。アニメの穹が双子の妹ならぬ義理の妹になっても不思議じゃなかっただけに、このように明確な形で書かれたことには安堵のようなものを覚えます。ハルと穹が双子の兄妹じゃないなんて現実、私はとてもじゃないけど受け入れられそうにないから。
双子の妹と明言され、尚且つキービジュアルがあのような構図である以上、アニメもまた穹ルート、穹シナリオを元に制作をするんでしょうか? 世間では穹ルートは絶対無理、出来るわけがないなんて言われてるけど、果たしてその通りなのか。角川系列のアニメが、まさかCSやBSのみで放送なんてことはあり得ないだろうし、最低でもU局での放送だ思うんだけど、AT-X以外で近親相姦というジャンルは描写可能かどうか。私の個人的な意見だと、絶対に不可能というほどのものではない気がする。前例はともかくとして、近親相姦にしろ逆レイプにしろ、TV放送時の直接描写を避ければあるいは……要するに映像としての直接的な表現を排除すれば良いんだから、それで事足りるかもしれない。
そもそもヨスガノソラが近親相姦をメインに扱った作品であることは分かりきっていることなんだし、それを承知した上で企画立てたんでしょ? まさか、内容も知らずに人気みたいだからアニメ化しようと思いました、なんてことはさすがにないだろうし。まあ、テーマ性に惹かれました、なんて理由でアニメ化するとも思えないけどさ。

しかし、ヨスガノソラという作品に癒しはあるんですかね? いや、昨日の記事に書いてあったキャッチコピーみたいのが、田舎での癒しと恋!じゃないですか。私は癒し系作品ってのは、てっきりARIAとかスケブみたいな作品のことをいうと思ってたんだけど、田舎=癒しという結びつけはあまりにも安直ではないかと。そもそも、ヨスガノソラには癒し系キャラなんていないし。
ただ、このキャッチコピーに関しては、 原作の公式ページにも似たような文章が書いてあるので、一概に記事を書いた人を非難できる問題でもないんだけどね。公式の物語-Story-をちょっと引用してみますと、
都市部から遠く離れた片田舎、奥木染(おくこぞめ)。
春日野 悠(かすがの はるか)は、妹の穹(そら)を連れてその町に向かっていた。
そこは幼少の頃の夏休みに何度も訪れ、ひと夏を過ごした祖父の家があり懐かしい場所であった。

不慮の事故により両親を亡くし拠り所を失ったふたりは、今は誰も住んでいない祖父の家に引っ越し、そこで暮らしていくことを決める。
不慣れな家事に悪戦苦闘し、普段から引きこもりでなにもできない穹の面倒を見ながら、悠は大変な毎日を過ごしていく。
そんな悠を、昔遊んでくれた近所のお姉さん・依媛 奈緒(よりひめ なお)や、転校初日からなにかと絡んでくる中里 亮平(なかざと りょうへい)、神社の巫女兼管理人をしている天女目 瑛(あまつめ あきら)、その友達の渚 一葉(みぎわ かずは)らが、温かく迎えてくれる。

小さい頃から、あまり変わってないように感じた町並みや人。
懐かしい想い出や、静かな環境が悠を癒していった。
そんな中、徐々に変化が訪れる。
幼少の頃交わしたふたりだけの秘密の約束とその後。
なくしてしまった大事な物の行方。
そして、この場所を選んだ本当の理由。

想い出として心に刻まれた時から、もう始まっていた未来。
今まで傷つき、不器用な行き方しかできなかった相手と、悠はどう向き合うのか。

日差しが強まる初夏の空の下、物語が動き始める。

公式のあらすじを見る限り、ハルは奥木染で癒されたみたいです。まあ、本人が癒されたと言っているんだから、例えユーザーに現実がどう写っていようと癒されてるんでしょう。穹が不便な田舎なのも、手探りで生きるような毎日なのも、それなりに楽しいと言っているように、ハルもまた新生活を楽しんでいるんだろうか。穹はハルと一緒なら本当にどこでもいいと思っているわけだけど、ハルもまた同じような感情を抱いているのか。……無くしたくないよ……穹まで………という発言は、追いつめられた上での精神的動揺から発してしまったものであるし、本編のどこをどう見ても典型的な苦労人にしか見えないのですけど……苦労人であればこそ、田舎のちょっとしたことに癒しを感じるとか? ふむ、これは穹シナリオにおける委員長との対比に近いものがあるな。

面白そうなので、明日の日記はちょっとハルについての考察を行おうと思います。といっても、私は極端なほどにハル贔屓だから、否定的なことは何一つ書かないかもしれないけど。私はハルが好きだし、欠点よりも良いところを上げたいじゃない。ハルにしろ穹にしろ、まだ子供なんだから。欠点を論うより先に、2人の良いところをもっと理解してあげたい。
ヨスガノソラの舞台、聖地となる場所
春日野穹bot→URL:http://twitter.com/sora_k_bot
Sphereの公式ページが更新されて、ハッシーがスタッフ日記で音録りについて書いています。まさか、音まで現地のものを使用しているとは思いませんでしたが、それをハッシーがわざわざ録音してきたというのにもビックリです。如何にヨスガノソラがハッシー原画の作品とはいえ、原画家がここまで作品に深く関わっているということはあまりありませんから。ハッシーにとってヨスガノソラは、意外なほど思い入れの強い作品なのかも知れませんね。

公開された環境音に付いては特に書くことないんですけど、先週明らかになったヨスガノソラの舞台ないし、ヨスガノソラの聖地判明しました。いやー、苦労しましたよ。ネット上にあふれる日本の寺社仏閣の画像を片っ端から調べて、該当するものを探しまわったんですから。ちなみにWikipediaには存在しませんでした。名前だけはあるけどね。実際に赴いたわけじゃないから完全な情報ではないんだけど、おそらく叉依姫神社の元となったのは、樺崎八幡宮に違いありません。(URL:http://kaguraden.blog11.fc2.com/blog-entry-371.html
栃木県は足利市、樺崎町にある八幡宮の一つで、画像を見た限りではここにまず間違いないかと。つまり、穂見が足利で、奥木染が樺崎町なんですかね? Googleのストリートビューもないような場所なので、周囲の景観等がどのような感じなのかは分からないのですが、なるほど確かに周囲はなにもないような気がするw
学校まで現地のそれをモデルにしているかはしらないけど、神社の近くに駄菓子屋ぐらいはあるかもね。Googleマップを見る限り、比較的近い場所に小さな商店があるんだけど、これが伊福部商店のモデルだったり……?
うーん、気になるなぁ。横浜から足利には3時間もあればいけるはずだけど、往復で6時間か。行こうと思えば行けない距離じゃないのが……やばいな、場所が判明した途端、聖地巡礼本を出したくなってきたw ただ、聖地巡礼ってあんまり良い行為じゃないし、このあたりは特に観光地ってわけでもなさそうだしなぁ。まあ、寺社仏閣巡りが趣味なんですとか言えばありなんだろうか。

山はともかく、神社の近くに湖らしきものはありませんから、山の頂上にある湖のモデルは別にあると考えた方がいいんでしょうね。というか、アレに関しては鳥居のそれからして芦ノ湖で問題ないと思います。Google Earthで確認したんですが、神社の裏手は確かに大きな山になってるんだけど、湖に関しては発見出来なかったので。あ、ちなみに今回の画像はGoogle Earthで見たイメージ画像です。
でも、仮に聖地巡礼に行くんだとしたら早くした方がいいよね。ハッシーの言う大規模な工事がいつから行われてるのかはしらないけど、現在現地では周辺史跡の発掘調査が開始されているらしく、地面掘り返して色々探してるみたいなんですよ。ハッシーの言う工事がこれとは限らないんだけど、神社周辺を中心に調査、作業、発掘が行われてるから、確かに景観はガラリと変わるかもしれない。世界遺産暫定登録、つまり世界遺産の暫定リストに載るよう運動中らしいから、神社が壊されたりとか、そういうのはまずないと思うんだけどさ。周辺の緑というか、自然が綺麗なうちに行きたいじゃない。ハッシーが撮ってきたという2000枚くらいある写真のうち、同じ光景はどれぐらい残っているのか。それを確認するためにも、やはり一度赴く必要がありそうだ。
観光地でない以上、日帰りの強行軍で行った方が良さそうだけど、そういえばハルカナソラで出てきた隣町のショッピングモールってどこなんですかね? 足利の近くならばコムファーストとかあしかがハーヴェストプレースがありますけど……イタリアンレストランが存在するのは、あしかがハーヴェストプレースなんですよね。しかも、ここには回転寿司のお店も存在するんですよ。
URL:http://harvest-place.com/index.html
服屋も雑貨屋も存在するこのショッピングモールがあるのは、樺崎町と比較的近い大月町というところらしいから、隣町という表現にも問題はありませんし、ここで間違いないのではないかなーと。画像や写真が少ないので断定は出来ないんですけどね。それに、ネットカフェはありませんから。

なんだって急に聖地やら舞台やらの情報を公開したのかというと、まあ、ヨスガノソラスレで同じくたどり着いた人がいるらしくて。もう伏せて置く理由もなさそうだから、私も持てる限りの情報を公開してみようと思います。私もいつか聖地巡礼に旅立つ予定だけど、比較的現地に近い人とかいたら是非情報をお願いしたいですねw こういうのはやっぱり地元の人が強いですし、そういえば中学時代からの友人に栃木出身がいたな。栃木のどこ出身かはしらないけど、ちょっと尋ねてみようかしら。
プリンセスラバーが18禁アニメとしてOVA化されるそうですね。最近だとこれって結構珍しいんじゃないでしょうか? それこそ、下級生2以来じゃないかな。逆に18禁アニメとして発売されたものがテレビアニメになる例は、それこそまじかるカナンぐらいしか記憶にないけど、今の時代にこういった商業戦略をしてくるとは思わなかった。確かに抜きゲとしての要素もあったエロゲだけど、黒田和也は15美少女漂流記もあるのに大丈夫なんですかね。聞いたこともないレーベルから出るみたいだけど。

しかし、これはちょっと面白いですね。前例がないわけではないから、それほど不思議ではないし、私はエロゲはエロアニメになるべきだという考えを持っているから、むしろ喜ばしいことなのかも知れません。プリラバに対する思い入れというのはあまりないけど、多分買うんじゃないかと思います。私、エロゲとエロアニメは欲しいと思った瞬間に購入が確定しているんで。まあ、黒田和也が作監やるなら大丈夫なクオリティでしょう。15美少女漂流記はともかくとして、そらのいろ、みずのいろなんかはエロアニメ史に残るであろう作品になったしね。
既に一般アニメとしてある程度の知名度を得たものを再アニメ化するというのは、もちろん版権の問題はあるのでしょうが、宣伝するにしても商業戦略としてこれ以上のものはないでしょう。プリラバがどれほどの実績を挙げていたのかは知りませんが、結構いい線行くんじゃないかと。さすがにキャストはエロゲのそれに戻るか、新たにキャスティングがなされるんだと思いますが、こういうのは要するにエロければいいわけですから。上手い具合にエロい声を出せれば、それほど問題はありません。大体、プリラバは原作、アニメ、CS版とすべてキャスティングが変わっている作品だし、今更18禁版でキャスト陣が変わったところで、大して気にする人もいないんじゃないかな。

さて、プリンセスラバーが18禁アニメとしてOVA化されることに、これといった問題はありません。私が気になっているのは、ブランドとしてRicottaと近い位置にあるSphereのこと。つまり、ヨスガノソラでも同様の商法を期待していいのかと、それについて考えています。
ヨスガノソラはまず間違いなくTVアニメ化されるんだと思いますが、プリラバが一般作としてアニメを放映した後、このように18禁として再アニメ化するというのなら、同じことをヨスガがやっても構わないんじゃないでしょうか? どうせ、地上波で明確な近親相姦なんて出来るわけもないんだし、折角だから18禁アニメとしてしっかり作ってもらいたいのですよ。元々、私は18禁でのアニメ化を希望していましたしね。
ヨスガノソラは双子の兄妹による近親相姦という、言い訳のしようもない背徳的な関係が受けた作品だから、これを表現するにはやはり18禁が媒体として一番適していると思うんですよ。描写をぼかしながら、だましだまし一般アニメとして作ることも、それは不可能じゃないんだろうけど、やるべきところはしっかりとやってほしい、描いて欲しいというのが原作ユーザーとしての希望なわけで。奈緒の逆レイプもそうですけど、これにしたって穹ルートを描くからには避けては通れない道ですしね。コミカライズだってしっかり描きました。
そういった一般作では出来ないエロとしての部分を、18禁アニメとして保管することが出来るというなら、原作ファンとしてはこれ以上に嬉しいことはない。私はヨスガノソラのシナリオは結構好きだけど、全体的な意見としてはシナリオよりキャラが上回るわけで、やっぱりハルと穹のイチャエロは重要だと思うんですよ。シナリオが高く評価された作品ならば、あえてエロを排除しても問題はないんでしょうけど、ヨスガノソラの場合はそうもいっていられませんからね。他のヒロインならともかく、穹は特に。

まあ、ヨスガノソラに関しては未だどんな媒体でアニメ化されるかも分かってないし、アニメ化後の展開を今から考えるなんて気が早いというレベルですらないんだろうけど、ちょっと期待感というか、希望の湧くニュースだったので。下級生2のアニメは一般も18禁もクオリティの低いものでしたが、プリラバは場面写真を見る限りそうでもない。ヨスガがプリラバと同じ道を歩むとは限らないにせよ、私はこの際だからエロアニメとして18禁OVAが出ることにも期待しておきます。
Piaキャロ2だって最初は18禁としてアニメ化された作品だし、権利問題さえ複雑でなければヨスガにだって出来ないことはないと思うんだけど、果たしてどうなることやら。面白くなってきました。
ハッピーバースデイ、倉永梢
委員長、お誕生日おめでとう!
今日、6月1日はヨスガノソラの委員長こと、倉永梢の誕生日です。いや、めでたいですね。何歳になったのかはもちろん分かりませんが、これからの1年が委員長にとってのいい年であることを祈りましょう。アニメはともかく、コミカライズに関してはそろそろ出番だと思いますし、委員長が活躍することだってきっとあるはず。

委員長こと倉永梢というキャラは二人存在します。
いきなりなにを言ってるんだと言われそうだけど、委員長にはこういう表現が良く似合う。つまりは、ルートにおけるキャラの違いという奴で、ヨスガノソラの穹シナリオとハルカナソラの蒼穹の果てにに登場した委員長と、ハルカナソラの堅物な委員長だって恋をするのですに登場した委員長は姿形など基本的なことは一緒だけど、中身は極端なほど大きく違いますよね。そういった意味から、私は委員長は二人存在しているという表現を使ってみました。
どちらの委員長もそれぞれ魅力を持ったキャラですが、それに付いては追々加筆しようと思います。まあ、私はどちらかと言えばヨスガノソラにおける委員長が好きですけど。

今はともかく、委員長お誕生日おめでとう! この言葉を叫びます!
水風天のブログを読む限り、コミカライズ版ヨスガノソラ穹ルートで確定したと考えていいみたいです。まあ、ここまで来て穹ルートじゃありませんでしたなんて言われても困るんだけど、これで一応は安心出来ますかね。結末自体がわかったわけじゃないからまだ懸念は残っているけど、連載初期にあった不安とかそういうのはもうないです。話数を重ねるごとにクオリティが上がってきたコミカライズですし、もう大丈夫でしょう。

4-Leavesから、1/6スケール ヨスガノソラ 春日野穹-すくみず-が発売されました。本当は25日発売だったはずが31日に延期され、延期されたと思ったらは昨日今日には販売が開始していたという、なんだか不思議な感じ。実質2~3日の延期だったわけだけど、なんの意味があったんだろうか? 私はソフマップ横浜店で1個予約していたので、それを引き取りに。横浜店は明確に新作フィギュアのコーナーがあるわけではないので、欲しいものがある場合は基本的に予約が必須となります。値段の方は内金合わせるとほぼ6000円に近かったけど、まあ、こんなもんですかね。メガハウスの奴がいくらだったかは忘れたけど同じような値段だったと思うし。
私はフィギュアは箱から出さない人なのでメガハウスのブリリアントステージの横にでも置いておこうかと思いますが、フィギュアの独特な質感を楽しめないと言うのは少し損かも知れませんね。もう1個買えばいいだけの話なんだけど、さすがに金持ないし置き場もない……そういや、あかべぇそふとつぅの新作置き場がないをまだ買ってないな。あれの特装版にもフィギュアが付いてくるけど、初回版ばかり売れて特装版は余りまくってるみたいですね。ヤルセナイザーの超合金が付くならまだしも、ヒロインのフィギュアじゃねぇ。ペーパークラフトもクオリティ低いし。

話がそれましたけど、ヨスガノソラもアニメ化するぐらいだから、今後他社からフィギュアが出ることもあるでしょう。これまでのフィギュアの特徴は、みんなゲームイメージ以外の素材を使用していることで、例えばタキ・コーポレーションが出した非常に残念なフィギュアはヨスガノソラのアソビット特典だった描き下ろしテレカの絵柄ですし、メガハウスが出したのはソフマップ特典だったスティックポスターの絵柄、そして、コトブキヤのは昨年の春頃やったグッズ通販のマイクロファイバータオルに使われたものです。
他に使えそうな絵柄があるかといえば、原作から引っ張るなら例えばヨスガノソラの特典アートブックに収録され、後にVFBの特典クリア下敷きにも採用された、ハッシー描き下ろしの制服姿でスカートをたくし上げる穹なんてのがありますね。上から見下ろすという構図がフィギュア的に良いのかはともかく、あれはエロイですからね。どこかうまい具合に再現出来るところはないんだろうか。
個人的にはもうひとつ、スク水という点でかぶるんだけど、春グッズのカレンダーに収録され、昨年の冬のグッズ通販の際もデータとして再録された、スクール水着でプール掃除をする穹をフィギュア化してもらいたいですね。あの突き出された尻がたまらない。ポーズ的に再現出来るか分からないけど、デッキブラシを支えにすればなんとかなるんじゃないだろうか。無垢なのに扇情的というか、単なるエロさを通り越した魅力があの絵にはある。瑛もいるじゃないかって? いや、瑛はおまけだよ、うん。

さすがに夏コミのゴスロリ浴衣はどうしようもないと思うし、あれを再現出来る原型師がいる気がしないけど、私としては前述の2つに期待ですかね。フィギュア化するにしても、フィギュアに適した素材、題材というのがあるわけだし、穹の描き下ろしであればなんでもいいというわけにもいかないでしょう。しかし、考えてみれば描き下ろしには私服が存在しませんね。今のところ2種類ある私服だけど、そのどちらもテレカとかにはなって……いや、抱き枕にはなってるか。となれば、ツインテール時の私服の方だけか、特に描き下ろしとかがないのは。
アニメ化すれば自然にグッズも増えるわけで、そうしたものに対する出費も今から準備しておかないといけませんね。そういや、夏コミ合わせで作るはずだったグッズが関西の方でやる販売会の方に前倒しで出るみたいな話を聞いてるけど、Sphereはどうしてそういう重要な情報を公式のスタッフ日記で書かないんだろう。
Sphereのスタッフ日記が更新されて、ハッシーこと橋本タカシが日記を更新していました。手堅いというか、あれだよね、ハッシーにアニメ化のことを触れられたらなにも言えないw まあ、発表から一週間経って段々とファンも落ち着きを取り戻してきたのか、冷静にこの事態について考える余裕ができたみたいです。以前にも書いたとおり、私は物事に対する不安と期待は同居できるものと考えているから、それまで不安だった人が一転して、意を決してアニメに期待をよせるというのは、不思議じゃないと思ってます。
(URL:http://60741.diarynote.jp/201006051448069437/ 6月5日の日記に舞台の詳細載せました)

私自身は初志貫徹するのかと問われれば、貫徹したところで止められないものへ必死になるつもりはないといったところでしょうか。私の中に欠片の期待もないからといって、別にアニメ化が中止になるわけでもないし、否定を続けたところでそれは同じでしょう。情報が少ない現状では期待を寄せるにしてもなにをどうすればいいのか分からないし、私もまた事態を見守る一人になるだけの話です。
ハッシーが触れた話で特筆する点があるとすれば、やはり今後の情報がアニメ誌等で公開されていくと明言しているところでしょうか? コミックスの帯見れば分かりますが、コンプエースで情報を公開していくとは書いてあっても、アニメ誌云々という記述はありません。まあ、アニメ化するんだからアニメ誌で取り上げられるのは当然だろうけど、公算としてはTVアニメ化の可能性が強まったのかなーと思う。色々調べる中で、例えば少年エースで連載中のそらのおとしもののアニメ化が発表された際、該当月のエースの表紙にはアニメ化企画進行中と書かれていました。特にTVアニメともOVAとも書かれていませんでしたが、結果としてそらのおとしものはTVアニメ化されてますから、ヨスガノソラにしたところでどちらの確率が高いかは言うまでもないでしょう。
手のひらを返すわけじゃないけど、決まったものは決まったものとして受け入れ、ファンとしての自分のあるべき姿を探した方がいいのかも知れないね。特に私はサイト運営者でもあるし。あくまで原作ファンであることを盾にアニメを否定することは可能だけど、まだどんなものかも分からない内から批判をすることに、それほどの意味もないと思うから。第一報へのリアクションや反応を続けるには、日にちが経ちすぎたからね。

後、ハッシーはコミックスの描き下ろしの件にも触れてたけど、やっぱりドリパのテレカとシチュエーションが繋がっていたんですね。意識下なのか、無意識なのか、良い瑛でした。ちなみに私も4-Leavesの穹フィギュアはとってきましたが、これに関しては次回にでも触れます。今はそれよりもなによりも、ハッシーによって明らかにされたヨスガノソラの舞台について。
ハッシーがMAPなどを作っていることから、ハッシーに馴染みある場所なんだとは思っていましたが、なるほど自分の田舎だったんですね。写真として記録してある風景を元に、フィクションを織り交ぜつつ背景を起こしてもらった……大きな工事が合ったとかで、今現在もヨスガノソラのような風景が広がっているとは限りませんが、ハッシーの撮った写真の中には、確かにあの光景が広がっています。
叉依姫神社の資料が来たことは、同人作家として参考になるのはもちろん、個人的にもかなり嬉しいですね。写真があるということは、この神社も実際に存在しているもので、日本のどこかにあるということです。聖地巡礼というわけではないけど、ここがどこの神社なのかというのは結構気になります。以前に片っ端から寺社仏閣の画像を調べまくったことがあるんですけど、そのときはどうにも見つけることが出来なかったので、また再チャレンジしようかな。あるいは、誰か地元ないしこの場所を知っている人がビビビっときて、ここがどこなのかを教えてくれるかも知れない。

先週からこっち色々な重圧のおかげで精神が荒んでたんだけど、なんとか荒廃する寸前で持ち直すことが出来そうです。私もまた考えすぎていたのかも知れません。考えすぎは身体に毒だと、私が好きな話の台詞にもありますしね。精神論と前向きが売りなんだから、不安はあれど精々ひたむきに頑張っていきますよ。心の底からアニメ化おめでとうとはいえないけど、受け入れるのもまた、ファンの勤めだと思うから。
さて、それじゃあ私もにょめSSを書く作業に戻ります。ちょっとしたシリーズ物を企画していまして、まあ、執筆が上手く進めば近々公開します。上手く進めばだけど。

春日野穹bot→URL:http://twitter.com/sora_k_bot
最初に書いておくと、今月号こと7月号にアニメ化の続報や発表はありません。扉絵の上隅にコミックスが発売されていることにプラスして、重大発表もあるぞ! という情報を載せているに過ぎず、アニメ化という文字の欠片も存在しませんでした。正直、拍子抜けしたというか、これなら早めに手に入れる必要もなかったかな。私の勝手でそうしたのだから文句をいう筋でもないが、ちょっと拍子抜けしたのは事実です。でも、コミックスが21日頃に出たから勘違いしがちだけど、本来は同時発売なんだよね。

扉絵はこの作品では珍しく、話の中の1シーンにそのままタイトル等をつけたもの。1枚絵ですが、今までは扉のみ別に描き下ろしていたからちょっと新鮮。バスの中で床に座り込んでいるハルを穹が見下ろしながら、
「戻ろう、私たちの街へ」
と、言葉を投げかけています。その冷たく輝いた瞳にハルは射抜かれますが、同時に穹がなにを言っているのか理解することが出来ず、困惑します。
「帰るって…もうあそこに僕らの家は…」
「どこかに借りればいい」
そんなにすぐ出来るわけがないと、あくまでハルは現実的な意見を口にします。確かに、今の生活は家賃だけは掛かってないですからね。大変なようで、田舎ぐらしは結構家計に貢献しているんですよ。

「とにかく、この街から出るの!!」

ここにいちゃダメなの……と、声を低くする穹に、ハルはどうしてそこまでするのかがわかりません。
「ハルがどこかへ行っちゃいそうだった。私を置いてどこかへ」
「そんなわけないだろ!?」
「だって、いつもあの女の肩を持つじゃない」
あの日みたいに私からハルを奪っていくんだ、そう呟く穹の脳裏にはかつて奈緒がハルを犯した、その光景が蘇ります。奈緒によってハルは色々なものを奪われたはずですが、穹にとってはまさにハルそのものを奪い取られたといっても良かったのでしょう。奈緒は当時のハルを傷つけましたが、それと同時に穹も傷つけていたのです。

「…ひとりは嫌だよ」

「いっしょにここを出て暮らそう。二人だけで」

ハルの首に腕を回しながら、その身体を抱きしめる穹。ハルにとって奈緒との一件は、時折思い出すだけの、忌まわしい過去に過ぎなかったのかも知れませんが、穹にとっては現実の脅威として存在していたわけで、ハルはそれに気づくことが出来なかった。あのことを穹が知っていた、その事実を知らなかったハルには無理からぬことですが、それでもハルは自分を責めます。

――僕は、こんなにも穹を傷つけてたのか……

奈緒に責任転嫁して、自分は悪くないと言い張ることも出来たはずです。いえ、ハルは被害者であると考えている穹にしてみれば、ハルに罪はないのです。ただ、奈緒のことを庇うハルの姿が気に入らない、見ていたくないだけで。
その頃、もう一人の当事者である奈緒といえば、雨の中を傘もささずに穹を探しています。ハルも穹を探している最中、雨に降られましたから、奈緒が傘を差してないのはおかしくもなんともありません。
――もう二度とハルの前に現れないで!!
穹からぶつけられた言葉は、奈緒にとって心を抉り出されるほどの痛烈さを持っていました。奈緒にしてみれば、自分の両親やハルの祖父母を除けば、自分にあの件を持ち出してくるのはハルだけだろうと思っていたのでしょう。そして、コミカライズにおける奈緒のこれまでの態度を見るに、奈緒はハルならば許してくれる、すべてをなかったことにして関係をやり直せると思い込んで、いや、そう信じたかっただけなのかも知れません。
けれど、そんな奈緒の想いを穹は許さなかった。言ってしまえば図々しい、身勝手すぎる想い。奈緒はまったく予想だにしなかった相手から、それを否定されて、断罪されたのです。許しては貰えないだろう、穹に会ってなにを言えばいいのかわからない。それでも奈緒は、雨の中を探し続けます。
そんな奈緒の横を、一台のバスが横切ります。何気なく覗きみて、驚きに見開いた瞳へ映るのは、ハルのことを抱きしめる穹の姿。車内で二人がなにを話しているのか、どのような状況なのか、奈緒にはまったくわかりません。
「穹ちゃん…はるちゃんも…」
自分が引き起こしてしまった事態に、奈緒はその場に立ち尽くすことしか出来ませんでした。

「この街を出ればもう大丈夫」

車内では、穹がハルと自分自身に言い聞かせるように言葉を紡いでいます。

「全部あの女が悪いの。ハルを傷つけて、振り回して」

「だから、あの女のいない所へ行くの。誰も邪魔できない所へ…」

穹の言葉に、ハルは無感動な表情を見せました。ハルは穹に対してだけ、よくこの表情を見せています。穹の想いがハルに感銘を与えなかったわけはありませんが、それでもハルはこの選択を止めなければなりません。

「穹、よく聞いて」

穹の両肩をつかみ、ハルは真剣な色合いを表情に浮かべます。

「穹は奈緒ちゃんが悪いって言うけど、僕だって悪いんだ」

「ハルは悪くない!! 全部あの女が…」

「そうやって僕だけ責任を取らせてくれないの?」

「!! それは…」

奈緒も苦しんでいた。ずっと苦しんできた。そしてそれは僕のせいだと、知ろうともしなかった自分に罪があるとハルは言います。ハッキリいうと奈緒が暴走の末に自爆しただけですから、ただの自業自得だし、ハルの祖父母だって、ハルや穹を気遣って事を荒立てなかったんでしょうから、ハルが知っておかなくてはいけない理由はないはずです。だから、ハルが責任を感じる理由がよく分からないんですが、そこに言及すると話が進まないのでこの際、無視しちゃいましょう。
ハルは奈緒のことを詫びると同時に、穹まで傷つけていたことを謝ります。

「……ハルは馬鹿だ。一人で全部抱え込んで…わかってた…こんなことをしてもハルを困らせるだけだって」

判っていても、身体が勝手に動くときもある。穹にはそれでも、守らなければいけないものがあったから。

「私…間違ってたの? ハルを守る方法」

「いいよ……ありがとう」

「私…どうすればいい?」

「穹の好きにすればいいよ」

「そんなこと言われても…」

穹の好きにすればいい、何気ないハルの言葉ですが、これは実際原作にも似たような台詞があります。というより、この流れ自体が原作の奈緒シナリオにおけるバスのシーンとほぼ同じです。ただし、若干言葉が違うとともに、原作ではなかった台詞が付け加えられています。

「まずは戻ろう? 奥木染に。このまま逃げ出したって行く場所なんてないんだ」

「二人でいられるように、この街に来たんだから」

ハルの好きにすればいい、この言葉は原作の回想シーンにおいて、両親を失って今後に悲観していたハルへ、穹が投げかけた言葉です。これによって穹まで失いたくないことを実感したハルは、穹を連れて奥木染に行くことを決めます。
3話のレビューで書いたと思いますが、コミカライズに置いてこの穹の台詞は登場しません。何故なら、ハルが奥木染に行くことを決めた理由が、原作とまるで違うからです。両親の葬式後、泣いている穹を見たハル。「ずっと、ずっと一緒にいてよ、ハル…」と、泣きながらしがみついてきた穹の姿に、ハルは奥木染行きを決めるのです。そもそもの理由が穹であり、穹と離れたくないという理由がハルの中にもあったにせよ、ハルは穹とずっと一緒にいるために、奥木染を選んだのです。
だからこそでしょうか、奈緒シナリオの流れをほぼ再現しているというのに、展開されているのはハルと穹の話です。バスを降りて奥木染に戻るのも、なにもかもが奈緒シナリオと同じなのに、そこに描かれているのは穹シナリオでしかなかった。
他のシナリオを吸収した上で穹へと繋げる手法は、既に5~6話の時点で一度やっていますが、アレは話を大幅に変えた上での瑛シナリオだったから……そう考えると、今回はまるで違和感がないなぁ。元々、ハルにとって奈緒とのことが過去でしかないってのもあるんだろうけど、この違和感の無さは凄いと思った。

「はるちゃんたち、どこまで行ったんだろう」
雨も止み、夜もふけたであろうバス停のベンチに奈緒がいました。もう帰ってこないのかも知れないと思いつつ、ハルとの関係が危うかったことは奈緒にも判っていた。判っていた上で、自分が過去の出来事を忘れようとしていたことを奈緒は認めます。

「そうすれば、はるちゃんと普通に話せると思ったから」

あの日帰ってきてくれて、本当に嬉しかったから……呟く奈緒ですが、彼女の間違いはハルのことばかり考えるあまり、穹のことをちっとも考えていなかったことです。口では色々言うし、実際に気にも掛けていたんでしょうが、穹の心情や感情、気持ちを理解することが奈緒には出来なかった。ハルのことだけで頭がいっぱいだったといえばそれまでなんでしょうが、だからこそ奈緒は手痛い逆撃を被ったのです。奈緒はもう少し、穹のことを考えてあげるべきだった。

「はるちゃん…穹ちゃん…」

「奈緒ちゃん…?」

後悔やらなにやらで途方にくれる奈緒の前に、ハルと穹が現れました。とっくに家にでも帰ったものと考えていたのか、奈緒がそこへいたことにハルはなんだか意外そう。そして時間を決めて落ち会う約束をしていたことを思い出したのかハルは謝りますが、奈緒はそれを謝絶します。ハルを見つめる穹の表情は悲痛であり、まだ心の整理は付いていないのか、なにも言葉を発しません。対する奈緒も、穹を相手になにを言えばいいのか判断がつかず、言葉をどもらせます。

「奈緒ちゃん、ごめん!!」

見かねたハルが、先手を打って奈緒に謝りました。驚く奈緒ですが、ハルは今まで奈緒のことを知ろうともしなかったことを詫び、頭を下げます。そんなハルの姿に、穹は少なからず複雑そうな表情を見せる。

「ごめんなさい。今まで酷いこと言いすぎた。ごめんなさい」

けれど、ハルにだけ頭を下げさせておくわけにもいかず、穹も奈緒に謝罪しました。春日野兄妹二人から謝罪され、自分こそ謝罪する側だと思っていた奈緒は動揺します。

「ハルは…頼りないところがあるから…」

「たまに…奈緒ちゃんが助けてくれると嬉しいかも……」

頬を赤らめながら言った穹の言葉に、奈緒は許されたと感じたんでしょう。涙を流してハルに抱きつきますが、その姿から穹は視線を外します。照れから来るはずの頬の赤みは消え失せ、浮かべる表情は重く、心の底から奈緒を許しているようには見えません。多分、これは推測ですけど、穹は奈緒を許したのではなくて、ハルに対して妥協したんじゃないでしょうか? 穹はハルの説得に応じたというより、ハルの中で自分が奈緒より上の存在であることを確認することができたから、おとなしく従ったんだと思います。原作の奈緒ルートだと、車内でハルは逆レイプ関係なしに昔から奈緒が好きだったという妄言、失礼、自分の気持ちを穹に理解させるわけだけど、コミカライズは奈緒ルートではありませんから、当然のごとくそんな台詞はありません。
瑛ではないですが、どんなときでも自分のことを一番に考えていてくれている、それを穹は実感したんでしょうね。自分からハルを奪うかに見えた奈緒が、これといった驚異ではなくなった。理解したからこそ、穹は奈緒との関係修復を行ったんです。けれど、この場合、奈緒を許したというよりは、ハルのして欲しいことをしてあげただけですから、感動している奈緒を見る穹の視線が冷めているは当然だし、浮かない表情をするのは当たり前なのかも知れない。
実際に原作においても、穹が完全に奈緒と和解するのはハルカナソラの終盤です。正直、あのシーンほどいらないシーンもないというか、奈緒が不人気だからって無理矢理とってつけたかのような強引なシーンだったんだけど、まあそんな個人的な感想はどうでもいいとして、穹と奈緒というのは原作でもそのときまで微妙な関係を続けており、ヨスガノソラ内においては完全に対抗心をあらわにしています。過去の精算をしたからといって、穹の中ではなにも解決していないんです。それは原作もコミカライズも同じことであり、奈緒という過去は過去として、穹にはつかみたい今があるのだから。

日が変わり、スーパータカノで買い物をするハルと穹。お菓子ばかり入れている穹をハルは注意し、穹は「ケチ」と呟く。
「はるちゃん、穹ちゃん」
そこに買い物袋を下げた奈緒がやってきて、スーパータカノの日だから来ていると思ったと話ます。そのためにわざわざ出てきたのかと思わなくもないけど、奈緒にしてみればおいそれと春日野家を訪ねることも出来ないでしょうから、まあ外で会うしかないのかも。
「こんにちは、穹ちゃん」
「ん…」
「えっと…その…」
まだ上手く話せないのか、穹の前で口ごもる奈緒。穹はそんな奈緒を無言で見つめながら、不意に支線をハルへと向けます。
「ハル」
「うん?」
「今度ビシソワーズ飲みたい」
「ええ!? 僕、作れないし」
フランス料理と見せかけて実はアメリカ料理のじゃがいもスープ、私は冷水スープ嫌いなんで食べませんけど、確かにハルがそんな凝ったもの作れたら凄いや。あれって結構手間かかるんですよ、私は作らないけど。
「だったら、奈緒ちゃんに教えてもらえばいい」
思いがけない穹の言葉に奈緒は驚き、感動します。ハルも穹の気遣いに安堵を覚え、奈緒への態度を改めたことに感謝しました。しかし……

「ありがとう、穹」
「別にお礼を言われるようなことしていない」

ハルの感謝の言葉に、穹の態度はそっけない。穹にとって、既に奈緒への関心は尽きたということなのか。

「……奈緒ちゃんと同じことしたら、私も好きになってもらえるのかな」

「? 何か言った?」

「…何でもない」

想いをため込む穹。その行き着く先は……というところで次回に続く。


奈緒シナリオが僅か2話で終わったのはいいとして、ハルが最後の穹の言葉を聞き取れていなかったというラストには驚きました。原作では穹のこの言葉が引き金となって、ハルは穹の気持ちに気づき始めます。ですが、原作はその過程として海に遊びに行ったりしますが、コミカライズだとそのイベントは奈緒シナリオに入る直前に済ませています。さらに、ハルが穹の気持ちに確信を抱くキスに関しても第6話で済ませているという、よく考えたらコミカライズで重要なイベントを逆転させてますね。
後残っているものといえば両親の初盆で都会に帰ることぐらいですが……そこから先は果たしてどうなるのやら。イベントらしいイベントは残ってないし、ここは委員長を交えたオリジナルストーリーでも展開するんでしょうか。いや、オリジナルになどしなくともハルカナソラの委員長シナリオから持ってくればなんとかなるかも知れない。コミックスの1巻が6話収録だったから、残り3話分まで2巻に収録されるはずですが、さすがに3話じゃ完結は出来ないでしょう。1~2話プラスして2巻を通常より厚みのあるものにするってことも出来ますが、それでも全2巻というのは寂しすぎる。アニメ化も控えているんですから。

半分アニメ化の情報を求めて早く手に入れたというかなんというかだけど、まさか一欠片の情報も得られないとは思っていませんでした。せめてアニメ化決定の一文ぐらいあると思ったんですがね……この調子じゃメガミマガジンにもなにもないんだろうな。来月の10日売りアニメ誌に載っているか否か。どちらにせよ、今日はコミックスの正式な発売日ですし、公式が触れる可能性もなくはないでしょう。自社の作品のコミックスが出たのですから宣伝するのが普通ですし、アニメ化とは書けなくとも、帯について触れないわけにはいかない。もっとも、言葉を選ばなければ即叩きに合いそうですが。
Sphereが動かなければ今月はもうネタもないでしょうが、コンプエースで情報を公開していくというぐらいだから、やはり来月号なんですかね。6月末、遠いなぁ。

< 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11