Moon Flag

2009年10月8日 読書


     Ⅰ

――お久しぶりです。すっかり、ご無沙汰になってしまいました。元気にしてますか?
 全然連絡がないので、ちょっと心配しています。地球はいま、大変そうですね。月の人も、戦争が始まりそうだって、みんなそわそわしています。
 若い人の間では、軍隊に入るのがトレンドみたいです。これは冗談で言うのではないのですよ? 大学を卒業して兵隊になった同級生が何人もいるの。美大卒の兵隊なんて、なんか、全時代的でいやな感じです。カイくんもそう思うでしょう? 卒業式で、マシンガンを抱えて記念撮影している人がいたけど、そういうのに限って、芸術の才能はサッパリなんでしょう。
 フフッ、きっとそうです♪

 あたしはなんだか暗たんたる気分だわ。月の人たちはきっとすごく怖がりなんだと思います。地球を長く離れすぎて、地球の人たちのこと全然わからなくなってるのです。
 あたしにしたって、もう一年も月に住んでいて、多分もう地球では住めなくなってるから。カイくんも知ってると思うけど、月の六分の一の重力で暮らしていると、筋肉とか、心拍機能とかがどんどん弱くなって、地球の重力に耐えられない体になってしまいます。どんどん頭でっかちな人間になっていくしね。
 だから、地球に住む人々がみんな凶暴な野蛮人みたいに見えてしまうのでしょう。キトラの人はみんな、地球人がナイフを持って襲ってくると思っていて、本気でおびえているのですよ? ニュースによると、たくさんの宇宙戦艦が作られているみたいです。
 あたしは、なんだか悲しくなってしまいす。

 いきなり暗い話でごめんね。あたしは今、大学を卒業して、小さなデザイン事務所でアルバイトをしています。大学の講師の人がやっているオフィスで、毎日、広告のチラシとかを作っているのだけど、日々勉強って感じで、なかなか充実してると思う。うん。
 昔言った、椅子のデザイナーになるっていう夢も、まだ捨てていませんよ。うん、いつか、誰からも愛されるような、素敵なイスが作れたらなぁと、夢のまた夢の話です。

 カイくんは、元気にしていますか? あたしはずいぶん見当違いなこともあるけど、一応元気です。後半年で、月は火星に旅立ちます。でも、月と地球の距離が、火星と地球の距離になっても、あたしはカイくんを友達だと思っているのですよ。

 さよなら、またメールします。桐華より――


     Ⅱ


「楓少尉、入ります」
「楓? 何でお前がここに?」
 僕を見ると、楓は嬉しそうに、軍服を着る自分を誇るように口を開く。
「去年の暴動騒ぎ以来だもんなー。お前、卒業式にも来なかったし。俺もここに入所したのよ! しかも特務部隊配属! 演習が半分終わって、この度少尉になったわけよ」
 僕は、四月から月改修公社極東本部に勤務していた。父のコネクションを期待されたのだろう、所長室秘書官という異例の好待遇で迎えられた。
「月本君も知っての通りだが、月改修公社は更なる民衆の暴動から地球と月のシステムラインを守るため、自衛軍を組織する事になった。楓くんは、軍の方で働いてもらっているんだ。まだ新人研修中だがね」
  所長の言葉に、頼木中尉もうなずく。
「国連軍はありゃ官僚組織ですからね。動きは遅いわ、やることはトンチンカンだわ」
「改修公社軍は元国連軍の士官と、改修公社の特務職員によって指揮して貰ってる。君たちの一刻も早い結束が、この混乱を早期に収拾することになるだろう」
「まっかせてくださいよ! 地球の平和は私が守ります!」
 楓が明るい口調で叫ぶ。そこに人を殺す軍人になったという印象は受けない。
「やれやれ、この少尉殿、ずっと妙に張り切ってて、疲れるの何のって」
 本当に疲れたような声を出しながら、頼木中尉は所長に向き直る。

「それより所長、こりゃいよいよ戦争になりますね」

「戦争? この日本でですか?」

 僕は思わず声を張り上げる。

「改修公社の管轄外は、日本でも外国みたいなもんさ……この国の半分は、すぐにでもレジスタンスになっちまうよ。巧妙に群衆を組織化する奴が五万と居るんだ。外国スパイの陰もチラホラと見えている」
 僕のあずかり知らぬところで、事態はどんどんと悪い方向へ進んでいる。取り返しの付かない方向へと。
「国連は、途上国の反感を恐れて弱腰だからね。無知蒙昧の跳梁許すものだ。去年の暴動騒ぎは、むしろ僥倖だったよ。公社は、改修作戦前に私軍を組織することが出来た」
「しかし、この事が内乱を助長させる可能性は?」
 改修公社を恨んでいる人間は多い。その公社が自衛のためとはいえ、軍を組織すればその反感は計り知れない物になる。
「向こうさんが攻めてくるんだぜ? ここに戦車が入ってきたら、国連の警備だけで何が出来るよ」
 楓の口調は、心底意外そうで、不思議そうだった。
「内乱の助長ならば、むしろ月政府の方が心配だな。月の政治家は、どうも酷い恐がりのようで困る。地球の衛星軌道に軍艦を並べて、地球人を威嚇するつもりらしい」
「そんなことをしたら、地球に残った人の反感を、ますます煽るだけなのに……」
「彼らが恐れているように、月にだって乗り込まれかねん。月本君には近々私の代わりに月に行って貰うことになる。電話では要領をえんことが多くてね。君の父上は改修計画の強力な推進者だ。作戦前の火種は彼が一番憂いてるだろう。それに、首相補佐官のコネクションで君に会って貰いたい人物が何人か居るのでね」
「父に、混乱の収拾をと?」
「そして、改修作戦の計画通りの実行をだ。月には、一刻も早く火星に行って貰わねばならない。地球の環境と生活を管理し守っていくのは我々改修公社だ。いつまでも彼らに空から見下ろされるのは迷惑だ。それに、月が地球の空から消えない限り、人々はいつまでもを夢を見る」

 みんな、月に行きたがる。

「だから、自分から地球を壊すような真似をする」
 所長と、それに続く頼木中尉の言葉には重みと現実味があった。
「そうだ。月が在ろうと無かろうと、地球の人々に残された光はいよいよ少ない。私たちは彼らを導いていかなければならないのだよ」
 改修公社は、その為の組織なのだから。所長の目はそう告げている。それは、支配者の瞳であった。

Moon Flag

2009年10月7日 読書

     Ⅲ

「よお、全然学校に来ないくせに、こんなときだけ来るんだな」

 久しぶりに顔を出した大学の講堂は、卒業を間近に控えているとはいえ、閑散としていた。

 僕はすぐに友人の楓と会った。

「お前が授業を休んでいる間に、ここの連中はみんなレジスタンスになっちまってるよ」
「レジスタンス?」
「こないだのテロ事件からこっち、誰もかれも反国連、月改修計画凍結のシュプレヒコールさ。朝からアジテーターが演説してたよ。『一部掌管専有断固反対! 改修計画は地球人民を見捨てる悪魔の計画だ!』今日は労働者を連れてデモンストレーションだって、皆出てったよ」
「楓は行かなかったのか?」
 行くわけがないと分かってはいるが、クラスメイトも少なからず出向いているようだ。
「ばかげてるよ、着いてったのはろくな就職口がない落ちこぼればっかさ。連中は自分が月に行けなかったもんだから、移民した奴らを死ぬほど恨んでるんだ。口では綺麗事言ってるけど、結局インテリの逆恨みほど見苦しいものはないよ」
 やれやれといった感じに楓は首を振る。
「本音は月なんて宇宙の彼方まで飛んでっちまえばいいって考えてるやつらさ」

 テロ事件以来、僕はすっかり犠牲に疎くなっているようだった。

 僕は自分でも気づかないうちに、深い混乱に足を取られてるのかもしれない。

 頼木中尉は、憎しみと対立を止めることは出来ないといった。キトラがこのニュースを知ったら、彼女はどうするのだろう?
「国連も改修公社も、地球の失業者や労働者たちと和解しようなんて考えちゃいない。デモにいった連中が少しでも暴動を起こせば、力ずくで押さえつけようとするよ」
「そんなの誰でも知ってるさ。改修計画に不満がある奴らは、一辺この世界がムチャクチャになればいいと思ってるんだぜ?」
 何を今更と言った感じに楓は言う。確かに今更の話だ。だが……
「悪いけど、失礼する」
「お、おい! お前も行く気かよ?」
「冗談、デモの連中は武器を持ってる。どこかに連中を組織化しようとしている奴がいるんだ。市民が暴動を起こせば、軍隊は必ず武力を使う、それをやめさせる」
「バカじゃないのか? 出来るわけないだろ。ぶっ殺されるぞ?」
 キトラは必ずそこにいるという確信があった。あの少女は必ず、月改修公社に行く。
 彼女みたいな子が、浮っついたインテリや、憎しみにわれを忘れた人々に引きずられていくのは、何としても止めなければならない。


     Ⅳ

「改修公社までお願いします」

 僕は大学を出るとタクシーを拾った。

 郊外の大学から都心に向かう道は酷く渋滞していた。各地で労働者や学生のデモ隊がバリケードを組んでいたからだ。二週間あまりのうちに、東京はまったく別の街になってしまったみたいだった。

 月改修公社極東本部前広場で、デモ隊と国連軍がにらみ合っていた。暴徒化した群衆の中には、銃器で武装した者もいて、これでは衝突は避けられそうもない。僕の気づかないところで、一体どれぐらいの憎悪が膨らんでしまっていたのだろう?

 そして、激しい銃撃音が響く。

 手遅れだ。僕が本部前の広場に辿り着いたとき目にしたのは、とても見ていられない地獄だった。国連軍の自動小銃が、容赦なく民衆をなぎ払っていた。暴徒化した労働者と学生が塊のようになって必死に抵抗を続ける。

 軍の装備は彼らが初めから同じ人間じゃないかのように瞬く間に群集を駆逐していった。

 次々と倒れていく、人、人、人――

 塊が四散する。武装した労働者たちが旧式の銃で必死に応戦しているが、彼らも正規軍の火力の前に次々と倒れていく。
「所長も頼木中尉も何を考えているんだ!」
 僕は思わず声に出して叫んだ。しかし、その声はこの広場に響くことはない。抵抗を続ける一部の人を除いて、群集は一斉に逃走を始めていた。
「こんな暴動を扇動する連中だって、みんなどうかしてる!」

 僕は人波の中で、キトラを探した。

「キトラ!」
「……月本、さん?」
 銃声や爆撃が鳴り響く中、僕はやっとの思いでキトラを探し出した。キトラは怪我をして動けないようだった。

「大丈夫か?」

 そのときまた、一段と大きい音が聞こえた。国連軍の戦車砲の音のようだった。

「何でこんなところに着たんだ? みんなどうかしてる!」

「私も、私の両親も、一五〇年も苦しんできたのよ? 改修公社が消えなければ、私たちは幸せにはなれないわ。それはあなたにはわからないことなのよ! 何百年経ったってわからないわ!」

 少女を支えると、僕の手の平に温かい血の感触があった。弾は少女の体を貫通していた。

 大地にこぼれ落ちる血は、彼女の命そのものみたいに見えた。僕は少女を抱きしめたまま、けたたましい喧騒のなかで、一人、世界から遠く遠く離れていくような、奇妙な感覚に襲われていた。地球も、月も、僕には関係のない宇宙が寂しく回っていた。

 僕は、生まれたての子どものように、何もわからず、ただ立っていた。僕は泣くことさえ許されていなかった。

 僕は……とても一人だった。

Moon Flag

2009年10月6日 読書

     Ⅰ

――大ニュースです! あたしの水族館で、もうすぐクジラの赤ちゃんが生まれるのです。お父さんは、もう三〇歳になるおじいちゃんクジラです。名前は一四号。実は、名前がないの。お相手は、三歳の若いお母さんの一九号。出産が近づいたお母さんクジラというのは、それは、それは見ものなんですよ? 水面におなかを出してぷかぷか浮かんだり、ひっくり返って、勢い良く潮をプシューって噴出したり。それは、それは、リラックスして出産の準備をしているのです。
 だらしなく、ふにゃふにゃしたクジラというのは、見ていて飽きる事がありません。あたしは、ちょくちょく仕事をサボって、クジラの水槽の前でボーっと見惚れています。あんまりだらしなくて、おしっこなんてものすごいから、それはかなり辟易なのだけど。
 新しい命が生まれるというのは、本当に当たり前のことだけど、凄くドキドキするのです。カイくんは、月の水族館にクジラ居ることのほうが驚きでしょうか? 月にだってクジラは居るのですよ?

 ……カイくんが、助けた女の子のお話は、何だかあたしにはしんどかったです。その子にとっては、あたしなんか一〇〇回でも殺したくなるような、いやな女なんでしょうね。
 地球のことを考えると、そんなことやらなにやらで、とても落ち込む事があります。結局、あたしたちはとても恵まれていて、ある意味ではとても思い上がっているのでしょう。

 でも、そんなふうに落ち込んで見せるのもなんだかね。

 あたしは月へ来たのだし、毎日精一杯楽しく生きようって思って、立ち直っています。その子がテロリストになったように、あたしは、あたしの問題に、一生懸命になるしかないんじゃないかな? なんてね♪ あまりなにも考えてないだけかも。人間の抱えているものなんて、どんな人でも大差ないのかもって思うのが、あたしの哲学です。
 カイくんは、ちょっと人の問題を抱え込みすぎるきらいがあるので、それがちょっと心配です。君が地球に残ったのも、そんな君の性格のせいなんじゃないのかなって、そう思うのです。違うかな?

 またメールします。なんか、ちょっとお説教みたいになっちゃって、焦りすぎの桐華からでした。リラックス、リラックス。




 桐華は僕の幼なじみで、親同士が親しかったこともあって、小さな頃からよく色々な話をした。彼女は半年前に月に移民して、月の都キトラに住んでいる。今は、彼女とは時々こうしてボイスメールを使って話をする。


     Ⅱ

 綺麗な日の光が、レースのカーテン越しに室内へと入ってくる。
 広いリビングと、フローリングの床に反射するその光は、リビングに入ってきたパジャマ姿の少女を照らした。

 その少女に僕は挨拶をする。

「おはよう」

 東京の月改修公社のテロ事件で、僕が助けた少女の傷は、回復に向かっていた。少女は立ち上がり、物珍しそうに家中を歩き回り、食事をし、そして良く眠る。

 ただ、彼女は一言も口をきかなかった。


「朝食を食べながらでいいんだけど、少し話しをしてもいいかな?」
 僕は向かいの席に座る少女を見る。少女は少しばかり反応してこちらを見たが、特に関心を示そうとはしない。
「中国の昔話に母親の遺言で、西の砂漠に生き仏を探しにいく貧乏な青年の話がある」
 カキン、とフォークを置く音がする。少女が、手に持ったフォークを置いたのだ。
「お釈迦様に会ってお前が幸せになる方法を教えてもらいなさいと母親は言うんだ。母親の死後、青年は西の方に向かって旅に出る」
 少女は朝食に手を付けることもなく、僕のほうを黙ってみていた。その視線からは何の感情も読み取れない。
「旅の途中で、青年はものを喋らない少女に出会う。そして彼女の母親に頼まれる『もし仏様に会ったら、この子に声を戻す方法を、いっしょに聞いてくれないかね?』と。僕は何を話してるんだろうな? それからも、いろんな人や、生き物の頼みごとを背負い込みながら、中国の青年は旅を続けるんだ。蛇とか木樵とか、そういったもののね」

 少女の瞳に戸惑いの色が映る。

 なぜ、僕がこんな話をしているのか分からないからだろう。

「……ようやく青年は西の砂漠で生き仏を見つけて、少女の声のことを話すんだけど、生き仏はこういうんだ。『彼女のことを本当に愛するものが現れたら、少女の口は自然と開くだろう』って」

 沈黙を続けていた少女が口を挟んだ。

「面白くないわ。その男が女の子を愛し、めでたし、めでたし、二人は幸せに暮らしました」

「二人は幸せに暮らしました、か……この話の良いところはね、青年は少女の母親や、ヘビや木こりの願い事はちゃんと仏様に伝えるんだけど、ついつい自分の願い事、どうやって幸せになればいいかってことが、聞き忘れちゃうところなんだ」
 少女は不満そうで、不思議そうな表情を僕に向けている。
「でも中国の青年は、少女の声に気づくことで、幸せを手に入れる。まあ普通の、ささやかな幸せだけどね。幸せになるのに答えなんか必要なかったんだ。旅をして、旅を成し遂げることで青年は誰よりも救われ、このお話にはそういう種類の教訓が含まれているんだ」
「あなたは、いつも唐突に昔話を始めたりするの?」
「君みたいな娘と話すのに、慣れていないんだ……自分のことをずいぶんなやつだとも思うしね。そして、君とこうして朝食を食べているのが、嬉しくもある」
 何はともあれ、少女が話をしてくれることが、僕には嬉しかった。

「あなたは、一人でこの家に住んでるの?」

 少女が身の緊張をほぐすように質問する。

「父も母も、月へ行ってしまってね。一年前から一人暮らしだ」
「ふーん……」
 少女は興味を示すように反応する。
「一人暮らしを続けてると、何故かみんな、スパゲッティの味に凝り始める。口に合うといいんだけど」
「ありがとう。こんな美味しいものを食べたのは生まれて初めてよ」
 少女はスパゲッティをすくい、一口食べる。
「……あなたには感謝してるわよ? でも、ここに長く居る気はないわ」

 暫く沈黙が続いたが、食事が終わると、少女がまた口を開いた。

「あなたの名前を教えてくれる?」

「カイ、月本カイ」

「……素敵な名前だと思う」

「カイ少年は、雪の女王のソリに乗って雪原をすべり出しました。少年は恐ろしくなって聖書の言葉を思い出そうとしましたが、何故か浮かんでくるのは、九九の暗算表ばかりでした。カイは何千回も九九を唱えたまま、雪の女王の住む氷の城に閉じ込められてしまいました」

「それはなに?」

「雪の女王、昔の物語だ」

 少女は、少し呆れたような声を出した。

「何だか間抜けだわ。あなたは昔の物語が好きなのね。そんな話、月でやればいいのよ」
 今度は僕から少女に質問を投げかけた。

「君の名前を、まだ知らない」

「キトラ」

「月の都……君のご両親は、月の人なの?」

「父も母も、月になんか行ったことはないわ。父は軌道エレベーターの建築現場で二〇年働いて、墜落事故で死んだ」

 お母さんは? と、聞くことは出来なかった。聞いてはいけないような気がした。

「でも、君の名前は素敵だと思う。きっと君のご両親は、月に行きたかったんだ」

 月に行ける権利がありながら、それを放棄した僕なのだが。

「ねぇ、あなたは悪い人じゃないと思う。きっともの凄く良い人なんだと思うの。でも、あたしはこの家に長く居るつもりはないわ」

Moon Flag

2009年10月5日 読書

     Ⅳ

 僕が四月から勤める月改修公社は、月を火星に送るために設立された国連の外部組織だ。月への人類の移民と、物資輸送のためのハイパーハイウェイの管理を主業務とする。しかし、この組織は実質的に地球環境の管理と人口統制の全権を有していて、こと地球上の問題に関しては国連を凌ぐ発言権を持っている。

 僕は、月改修公社の所長室を尋ねていた。勤務は四月からだが、その前の挨拶と言う奴だ。所長室にはデスクに中年の男性と、その傍に迷彩服を着た軍人がいた。軍人は肩からライフル銃を提げていた。
「お父さんは元気かね?」
 月改修公社、新井所長はそう訊ねてきた。四十代の後半でこの地位についた割には、穏やかな雰囲気を持っている人だ。
「えぇ、いつも電話で、議会の分からず屋たちの愚痴を聞かされますよ」
 父は、月のキトラ政府の首相補佐官で、月改修計画の推進者の一人だ。

 ……父は、僕が地球に残ることを望んではいない。

「お父さんには、君を責任もって預かると私からも伝えておこう。君も知っているように、人類は今、かつてない大きな岐路に立っている。月を火星に送る改修計画は何としてでも成功させなければならない。火星のテラフォーミングは人類を救うための最後に残された方法だからね。そして、第二の地球が我々を迎えてくれるまでこの星を守っていくのは、君のようなここに残る優秀な若者たちだよ」
 新井所長は、デスク越しに僕をジッと見つめる。その視線に僕は少し気押される。
「少し、怖くなりますね。僕にそんな力があるのか」
「弱気は困るねぇ。しかし、月の改修計画完了の後は、地球の管理はこの改修公社が負うことになる。産業の育成、人口統制、内乱、宗教、飢餓、疫病、我々の責務はいよいよ重いものになる。君はこの星でお父さんの志を継がなければならない」
「所長は、地球の再生についてどうお考えなのでしょうか?」
「……私は、人はまた豊かな農耕と採取の生活に戻るべきだと考えている。科学と資本主義は、確かに人の英知と暮らしを良くしたのかもしれない。しかし結局のところとめどない上昇は全ての人を救い上げてはくれないんだよ。その結果が、現在のこの地球だ。人はあまりにも多く、物はあまりにも少ない。緩やかに人口を減少させ、この星が受け入れられる数の人々が、自らを養えるだけのものを作り、自然を愛で、芸術を愛し、生きる。我々改修公社の科学は、これからそれをスムーズに移行させるために機能するだろう。それが、ここに残る我々の義務だろうと思う」
 所長はそこで言葉を切った。
「僕もそう在りたいと思います……ところで、そちらの軍人は?」
 僕は所長の言葉に賛同すると、僕らの会話を黙って聴いていた軍人の方に目を向ける。年のころは二十代後半といったところか、その軍人は僕らの会話に何の興味も示してはないようだった。
「そうそう、中尉の紹介が遅れたね。この施設の警備をしてもらっている国連軍の」
「頼木です。よろしく」
「あ、月本カイです」
 所長の言葉に割り込んで軍人が名乗る。そして不躾にこう質問、いや、確認をしてきた。
「ところで、君の血液型はA型だろ?」
「……A型ですが、それが?」
「A型は、物事をきちんと整理して考えようとする傾向がある。考えすぎは体に毒だよ」
「はぁ?」
 何て失礼な奴なんだ。
「あぁ、でも、俺はAB型だから、きっと気が合うと思うよ?」
「は、はぁ」
 つかみ所のない、奇妙な男だ。
「仲良くしてくれよ。これからの地球には君たちのような若者が必要になる」
「はい、それが父の望でも――」

 突然だった、所長の言葉に僕が応えたとき、聴いたこともないような爆発音が耳に響いた。

 そして流れる非常警報音。全ては一瞬のことだった。

「何事だ!」
 所長が立ち上がりデスクの通信装置にスイッチを入れる。
「恐らく改修公社に反対する奴らの暴動でしょう。あいつら最近動きが活発ですからなぁ……国連軍でも手のつけようのない」
 まるで他人事のように頼木中尉は答える。この事態にまったく動じていないようだ。しかし、それは所長も同じようで、冷静に指示を出す。
「改修計画をよく思わない連中は山ほどいるからな……後は頼む」
「任されましょう! すぐに収拾して見せますよ。あー、月本君と言ったっけ。君も来なさい」
「は、僕もですか?」
「お坊ちゃん育ちは、こういうのも見ておいたほうがいいってね……怖いかい?」
「行きますよ!」
 やや憮然としながら僕は答える。中尉の人を試すかのような物言いに、僕はついつい反発してしまった。


     Ⅴ

「あいにくエレベーターは止めちまったもんでね。階段を下りたことはあるかい?」
 頼木中尉がどこか楽しそうに言う。今改修公社ではでは改修計画に反対する人々と、中尉のように施設の警備をする軍人が戦闘を行っているのと言うのに、何故この人はこんな口調で、こんな表情が出来るんだろう?
「子ども扱いしないでください」
「ははっ、すまない、すまない。あー、君はどうもあんまり普通の世界に慣れていないような気がしたもんでね」
 からかっているのか、それとも本当にそう見えるのだろうか?
 既に激しい銃撃戦が始まり、機関銃の銃声が僕の耳にも届く。身近で聞くのは初めてのはずなのに、不思議と恐怖はない。
「頼木さん」
「なんだい?」
 頼木中尉は、辺りを見回しながら面倒くさそうに答える。
「地球の貧しい人たちが、豊かな人々を憎む気持ちは分かります。でも、月へ行く豊かな人々は、この地球を貧しい人たちに返して、火星へ行こうとしてるんでしょう? 彼らが改修計画に反対する気持ちがわかりません。中尉も所長の理想を聞いたでしょう? これから彼らの世界になるというのに」
 中尉は辺りを見回しながら、口を開く。
「どんな理想を掲げられたって、奴らの恨みは消えやしないさ。二〇〇億の人々は、自分らが置き去りにされたと思ってる。金持ちどもが自分だけ地獄から逃げ出してしまったと。
 理屈じゃないんだ。話をして分かり合えるような問題じゃない」
「僕は自分なりに考えて、この世界を理解しようとしているつもりですし、地球に残る貧しい人たちの気持ちだってわかろうと努力しています。こんなテロまがいのことは馬鹿げてます。それを力で押さえつけるのも、憎しみを広げるだけです。ちゃんと話し合って、」
「あーあ、だから学生さんは」
 中尉は完全にこちらを馬鹿にしていた。口調が、目線が、それを物語っている。
「馬鹿にしないでください!」
「君は! 自分がこの世界を変えられると思っているかい?」
 中尉の人を馬鹿にした口調に思わず声を張り上げるが、中尉も口調を強くした。
「……そうありたいと思っています」
「誰だって、自分は世界を変えられる、救えるんだって考える。そして、実際世界は変えられるんだ。でも、違う。何百年もかかる。そのために俺らのような軍隊が、で、給料が貰える」
「ちゃかさないでください!」
「自分が正しいことをしていると思ったら、妥協はするな。負けたら、正義も何もないからな……」
 頼木中尉は不意に真剣な顔になった。その声は、どこか疲れたような声は、僕の胸に響いてくる。

 銃声が爆発音に変ってきた頃、頼木中尉と僕は、ドアの前に立っていた。
「さあ、ここからテストだ。このドアは、非常用の脱出口になっていて、ここから施設の外に直通で出られる……帰るかい?」
「いやですよ……中尉は?」
「こととなれば人殺しだよ? やっこさんは武器を持ち出して襲ってきたんだ。そうでもしなきゃもう収まりが付かないだろう?」
「あなたは――」

 おどけるような顔の中尉に、僕が言葉を発しようとした時、
「っ! 危ない!」

 中尉が僕を押しのけた。僕が後ろを見ると、一人の少女が銃を片手に立っていた。

「月は私たちのもの。悪魔は月と地球から去れ!」

 銃声。初めて、目の前で聴く音。

 少女が銃を構えるより早く、中尉のライフルが少女の肩を貫いた。

 中尉は物も言わず倒れた少女の前に駆け寄り銃口を心臓に下ろす。

「ちょっ、ちょっと待って中尉! まだ子どもじゃないですか!」
 何でこんな子どもがテロリストまがいのことをやってるんだ!
「気を失ってるじゃないですか。殺すことはない! この子は悪意ばかりに洗脳されて、何も分かってないんです!」
「これが改修計画の現実なんだよ。わかる? こんな子供だって、俺らを殺したいぐらいに憎んでる。地球の再生だとか、火星の田園だとかは、こいつらの苦しみには何の救いにもなりゃしないんだ」
 頼木中尉の銃は、少女の肩を掠っただけのようだった。少女はショックで気を失っている。中尉はそれを確認するとこちらに顔を向ける。
「月本くん」
「はい」
「未来の地球の担い手として、君に命令する。この娘を連れて、脱出口から外に出なさい。君も男なら、姫君を守る義務があるからね」
「はい! わかりました」
「階段を下りて地下通路を抜けると駅に出る。この娘がテロリストだと割れないように慎重に外に出るんだ……月の改修計画は、君が思っているようなものじゃない。このどうしようもない世界の終わりに、誰かが思いついた、浮っついた夢みたいなもんさ」
 頼木中尉の言葉には、言い様のない重みと、寂しさが含まれていた。
 僕は少女を抱え、扉の前に立つ。中尉がキーコードを入力するとドアのロックが外れ、扉がゆっくりと開く。
「中尉……ありがとうございます」
「ところでさ、聞いてなかったんだけど、君は何で地球に残ったんだ? お父さんは月のお偉いさんなんだろう?」
「それは――」

 頼木中尉が言ったとおり、脱出口は地下に繋がっていて暗い扉を開くとそこは地下鉄のホームだった。僕は少女を背負ったまま改札を出て、タクシーに乗り、鎌倉の我が家へと向かった。住民の大半が月に旅立った無人の街に。
 一二月の冷たい空気のせいで、タクシーの中でもしばらく少女の小刻みな息遣いが、車内にきしろ、不確かな形をつむいでいた。

――月は私たちの物、月は私たちの物。月を奪い人たち、皆、死んでしまえばいいのに

 少女のそんな声が、聴こえるようだった。

Moon Flag

2009年10月4日 読書
 氷の城で、僕は君を待っている。

 積み木遊びにも飽きてしまった。

 氷の城で、君を待っている。

 もう永い時間が過ぎた。僕は吹雪の中で、凍え、うずくまっていた。

 それは軽蔑の言葉であっても構わない。今僕を、ここから連れ出して欲しいと願う。

 幼い頃の夢を、僕には幼馴染の女の子がいた。少女はいつも屋根伝いに僕の部屋の窓を叩いた。でも僕には少女の遊びが、一つとして理解できなかった。

 十三歳の冬、街に雪の女王がやってきたとき、僕は彼女の理知の力に、目を奪われ、それを喜んで迎えた。

 そして僕は、永い旅に出る。

 飢えや貧しさ、悲しみ、孤独、喜び、幸せ、全ての謎の答えを探すため、氷の城で僕は待っている。

 本当は誰も信じない。僕が欲しいのは、真理の正しさ。凍結湖に散らばった、このパズルピースを紡ぎ合わせるための永遠の、一つの、答えの地図だけだ。

 僕は優しさを信じない。

 今、吹雪の間の扉を開いた君のことも、何もかも忘れてしまった。

 世界はとても小さくて、僕はまだ幼く、目が覚める前のことを、僕は少女と遊んでいたような気がする。夢の中では二人は手を繋ぎ、世界を駆け、笑っていたような気がする。

 心の奥に深い悩みが紛れ込んでいる。

 見てはいけないものを、考えてはいけないものを、何故、夢の中の僕はあんなに楽しそうなのだろう?
 
 何故、僕は少女に向かって笑っているのだろう? 

 分からない。僕は何も思い出せない。





   Moon Flag



――あたしの通う水族館は、とてもとても小さくて、外から見ると、ちょっと何をやっているか分からない秘密の研究所みたいな具合に、無愛想で、とても小さいのです。
 あたしはバスに三〇分も揺られて、これはこのキトラでは、ものすごーく、遠いところなんだって、カイくんには想像して欲しいのだけど、街はずれのその秘密研究所に通っています。それでも、ここでのアルバイトはとても楽しくて、あたしは毎日驚きの連続なのです。
 水族館のアルバイトって、何をしてるか分かりますか? なんて、毎日お魚さんたちにご飯をあげたり、水槽の温度を点検したり、お客さんたちに、「このクラゲは地球のなんとか海岸に住んでいました」って具合にもっともらしく解説したり、そんなことばかりしているのですけどね。

 でも、海には何てたくさんの生き物が住んでいたんでしょう。これが驚きその一です。この小さな月の水族館は、地球の生き物たちが絶滅しないように大切に保存しておく、タイムカプセルでもあるのです。水族館の地下にはお魚たちの種を保存する、大きな、大きな倉庫があって、あたしは一度見せてもらった事があるのだけど、それは、それは不思議な景色でした。でも、この話はまた今度ね。
 大学にも勿論行ってますよ。ご心配なく。毎週のように転校生がやってきて、お祝いにもちょっぴりくたびれてしまうくらいです。
 最近は、よく地球のことを思い出してます。五月病なのかな? ま、あたしは年中五月病みたいなものだけど。
 何だか幸せの塊みたいな転校生たちを見ていると、ものすごーく疲れちゃったりするのが、正直な偽らざる気持ちなのです。

……カイくん、月へいらっしゃい。

 無愛想で殺風景な作りかけの月の都は、カイくんを彷彿と思い出させるものがあります。
 うん、この街は、君みたいな街なのです。
 そして君がいないと、あたしはちょっと退屈です。君のしかめ面と、素っ頓狂なお話は、人を安心させるものがあります。
 こんなことをいったら、カイくんはまた一晩眠れないことでしょう。

 キトラはとても良いところよ。

 月へいらっしゃい、カイくん。月へいらっしゃい――


     Ⅱ

 骨董品じみた、二〇世紀以来のレールトレインに揺られていると、車窓からの風景が、嘘みたいに美しく見える。誰もが、地球を捨てて宇宙へ旅立とうとする、こんな黄昏の街でさえ。
 西暦二二〇〇年。地球は人口爆発と環境汚染、相次ぐ疫病の流行によって、静かな終わりのときを迎えている。
 二一世紀の後半に頭打ちになった生産力は、高度資本主義と民主主義を急速に衰退させ、貧富の格差は一部の特権階級が数百億の貧困民を奴隷として使役する、歪な社会を作り出していた。富める者は、この星の残り少ない土地と恵みを独占し、貧しい人々は、永遠に続く飢えと労働の煉獄を生きる。

 これが、僕が生きるこの星の現在。


 月の改修計画について話そう。
 誰が思いついたのかは知らないけど、地球をこの絶望的状況から救い出す、夢のような計画の話を。
 一言で言ってしまえば、改修計画は月を地球の衛星軌道から、火星圏へ送る作戦だ。遠心力と核エネルギーで月をスピンオフさせ、巨大な宇宙船として、この荒れ果てた地球から脱出させる。月が人類と、その英知の全てを乗せ火星軌道に入れば、試算では数百年のうちにテラフォーミングが進行し、火星は数億の人が住める星になる。

……まったく夢のような話だ。

 もっとも、月に建造される人工都市で、自給自足できる人間の数は限られているから、二〇〇億の地球人口のうち、この宇宙船に乗り込めるのはほんの限られた人々だけだ。つまり、人類の科学と文明を代表する一部の先進国市民だけだ。三〇〇年たって火星に田園を作り上げた後、彼らは再び地球へ戻ってくる。地球を再生させる新しいテクノロジーと、第二の母星と、地球環境では生き永らえることの出来なかった数億種の動植物の種を持って。

……まったく夢のような話じゃないか。

 多くの幸運な人々はこの計画を、世界を救う唯一つの方法だと信じていた。それぐらい地球もそこの住む人々の心も疲弊し、荒廃しきっていた。もちろん僕だって信じていたと思う。月改修計画によって蘇る、未来の世界を。

 月での生活、そして月をスピンオフさせるためにエネルギー源として必要になる大量な水や資源は、ハイパーハイウェイと呼ばれる巨大な繊維のケーブルを使って地球から宇宙に運ばれる。ハイパーハイウェイはいくつかのジャンクションを経由しながら有線で月に接続している。最初のハイウェイは一〇〇年前に建造され、今や一三〇〇本を超えるケーブルが地球から月へ、そのエネルギーを絶えず輸送し続けている。
 レールトレインの車窓からどこか寂しげな海が見える。そして、海上を切り裂き、天空へと昇る無数のハイパーケーブルは僕にちょうど、へその緒のようなものを連想させる。海は無力な赤子に、外の世界で生きていく生命を与え、傷ついた母のように見える。

『まもなく、第二東京宇宙空港、第二東京宇宙空港。お降りの方はお忘れ物のないよう、お気をつけください。まもなく、第二東京宇宙空港、第二東京宇宙空港。お降りの方はお忘れ物のないようお気をつけください』


     Ⅲ

「月に行っても、絶対忘れないからね。キトラから手紙を書くから、元気でね! 私も頑張るからね!」
 月を火星に送る改修計画の開始を一年後に控え、僕の通う大学からも毎週のように同級生たちが月へ移民していく。彼女もその一人で、旅立つ者も、地球へ残る者も、こうして宇宙空港のロビーで別れの言葉を交わす。
「まったく、こう毎週だとやんなっちゃうよな。月本、お前もたまには学校顔だせよ」
 同級生の楓は、地球に残ることを決めた一人だ。彼のように特権階級の子弟で地球に残留するものは、軍や政府の要職につき、この星を管理する事になる。
「あーあ、俺も月に行っとけば良かったかな」
 楓は今更のように深いため息をつく。
「この間、宇宙酔いとカプセル食なんて最悪だって言ってなかったか?」
「地球に残った方が、面白いことがあると思ったんだよ……。でも現実は厳しいつーか、何つーか、来る日も来る日も就職活動よ。お前は良いよなぁ、親父さんのコネで改修公社には入れてさぁ。月改修公社っていったら、エリート中のエリートだぜ? 地球環境と全人類を監督する地球の支配者、自分がどれだけ恵まれているか自覚ないんじゃないの?」
「お前だって受験したんじゃなかったか?」
 僕の言葉に楓は呆れたような顔をする。
「ハッ、これだからまったくエリート坊ちゃんは……あそこ採用までにいくつ試験があるか知らないの? 二〇個だぜ、二〇個! フリーパスで入れるお前とは違うよ。くーっ、羨ましい! 俺も地球を動かすような仕事してみてぇ!」
「そうよ、月本君は選ばれた人なんだから。あなたのような人が、この星を少しでも良くしていかなければいけないわ」
 楓の言葉に、旅立つ同級生も同意を示すが、僕は顔を背ける。
「難しいね」
 そう一言だけ答えた。
「光栄な義務だぜ? 月人は月で、俺たちは地球で世界を立て直すのだ!」
 楓がいかにも学生らしい発言をしたところで、同級生が乗るシャトルの搭乗時間を告げるアナウンスが流れて来た。
「あぁ、私、もうそろそろ行かなきゃいけないから……じゃあね、あなたはとても良い力を持っているわ。自信を持って!」
 同級生は僕を見つめながら言う。その瞳は、どこまでも真剣だった。
「幸運を祈るよ」
 クラスメイトたちが、それぞれの夢と希望を持って月へ登り、あるいは故郷へ残る。
 僕は地球に残り、何がしたいんだろう?
 時折、そんな問が僕の胸を酷くざわつかせた。そこには、とても大切なものがあるような気がして、それを思い出すことが出来ない。
 それは僕のとても近くで、それはとても少しずつ、壊れていく。

お前にも判っているはずだ。世の中はいつもバラ色じゃぁない。それなりに厳しく、辛いことも待ってる。気を抜いていたらどん底まで落ち込んで、二度と這い上がれなくなる。それが人生だ。人生はどんなパンチよりも重くお前を打ちのめす。だが、どんなにキツイパンチだろうと、どれだけこっぴどくぶちのめされようと、休まず前に進み続けろ。ひたすら苦痛に耐え前に進むんだ。その先に勝利がある! 自分の価値を信じるなら、迷わず前に進め。決してパンチを恐れるな。人を指さし、自分の弱さをそいつらのせいにするな、それは卑怯者のやることだ! お前は卑怯者なんかじゃないんだ! この俺の息子だ!

ロッキー・ザ・ファイナル ロッキー・バルボア


私は自分の失敗を誰かのせいにはしたくない。自分の行いを、周囲の人や、親兄弟、環境のせいにして、自分はそれに流され、巻き込まれただけだなんて叫きたくはない。それは愚か者の言い訳だからだ。自らの過ちを悔いることの出来ない人間に、明日はないと思った。永遠と続く昨日と今日を過ごす中で、自分で道を切り開くことを忘れてしまった人がいて、私はそんな人間にだけはなりたくない、なってたまるかと誓った。
けれど、現実は厳しく、私がどんなに頑張っても失敗や問題から逃れることは出来ない。失った信頼や信用を取り戻すことが、どれだけ大変なことか。判っていたつもりだが、あるいは判っていたふりをしていただけなのか。自らの過ちに気付くのが、私は遅すぎた。色々思うところはあるが、どうやら問題解決の優先順位を見事に間違えていたようだ。今更どうしようもないことではあるし、時計の針は戻しようもないので、後は流れに逆らわず結末まで身をゆだねようと思う。私には流れを変える資格がないのだ。
私は押しつけがましい人間にもなりたくないし、恩着せがましい人間になろうとも思わない。自分が過去どれだけのことをしてきたからといって、それを持って今の失敗を覆せるとは思っていない。これだけのことをしてきたから、相手にもそれだけのことを望むというのは、人としてもっとも最低な行為であると私は思うからだ。

「私はパンを焼いてあげました。だから、あなたも私にパンを焼いてください。私は誕生日プレゼントをあげました。だから、あなたも私の誕生日にはプレゼントをください。私はこれだけの事をしてあげました。だから、あなたも私に同じだけの事をしてください。私はあなたを愛しています。だから、あなたも私を愛してください」

君が望む永遠 大空寺あゆ


好意というのは誰かのためにしてあげることであって、そこに打算や見返りを求めてはいけないのだ。それは単なる人の我が儘にしかならないし、そんなやることなすことすべてに裏があるような対人関係を私は望まない。
高潔な人間でありたいと思った。あいつのような人間にだけはなりたくないと思い、あいつのような人生だけは歩むまいと誓った。けれど気付いたとき、私が歩いていたのはあいつとほとんど変わらない道だった。私の中に蠢く劣等感は、同じような道しか選ぶことが出来なかったのだ。
自分の力で人生を切り開こうと思った。私は昨日を振り返りたくなかったし、今日で足踏みもしたくなかった。私は明日が欲しかった。バラ色の人生を求めていたわけでも、輝ける未来を強く望んでいたわけでもないが、不幸せになりたかったわけでもない。
私は思い上がっていたのだろうか。とある人が私のことを高慢な人間だと言った。あなたは礼節や礼儀を重んじ、形式を大事にしている割には、それ以上は不要であると言い切るかの如く、なにもしない。傲慢ではないにせよ、あなたは自分を優秀だと思い込んでいる節がある。たった一人の人間より優秀でありたいと望む心が肥大化して、他者を見くびり、侮り、見下すようになったと。つい最近言われた。
それはおそらく正しくて、自分が高慢ちきな人間であることは私も気付いている。私は根拠のない自信で自分を塗り固め、実績を10倍以上に考えることでしか自己を高めることの出来ない人間だから、常に自分を“お高く”みてしまうのだろう。現実のほど、自分がどれだけ矮小な存在か判っているくせに。

私の隣には天才がいた。どんなことにでも才能を開花させ、あらゆる物をそつなくこなすことが出来る、本物の天才だった。あるいは私や、周囲がそう思っていただけなのかも知れないが、天才は一度の挫折と数度の間違いで落ちぶれた。けれど、それを認めたのは天才本人と私だけだった。
私は先頃、自分が天才に一生敵わないことを知った。もう天才ではないのに、周囲がそれを認めない、肯定しようとしないのだ。天才が一番下の存在であることはあり得ない。天才には常に下の存在が必要で、その存在を見下すことでプライドを保つ必要があった。欠片ほど残った天才のプライドを守るために、私は下であり続けなければならなかったのだ。少なくとも、私がどれだけのことをしようとそれを認めてくれる人がいないことを、私は知った。
上であってはいけないのだ。事実や現実はともかく、私が天才の上に立ったとき、天才とその周囲に取り巻く、天才を信奉していた人々の幻想は終わる。認めたくないのに、認めざるを得ない。その夢がとっくに死んでいたのだという真実から、目を背けなくなる。
だからお前は、天才の上に立つことは許されない。お前が天才より優秀なわけはない。

お前に出来ることは皆、あの子にだって出来るんだ。

私の筆が折れた瞬間だった。

気に入らないなら、お前が消えてしまえばいい。お前は必要ない

私の心が砕けた瞬間だった。

あの子はお前なんかと違うんだ。頑張れば、やればどんなことだって出来るんだ

私の存在と行いのすべてが、否定された瞬間だった。

天才よ、私は貴女に同情する。憎悪もするが、同情する。貴女は夢を忘れられない、幻想を盲目的に見続ける人たちに囲まれて、自らの人生を閉ざしていく。私にはもう貴女に差し伸べる手がないし、連れ出すだけの気力もない。
天才よ、私は筆を持てなくなった。私はキーが打てなくなった。私が貴女に受ける劣等感は、永久に解消されることがないのだと改めて思い知ってしまった。消えるべき存在はどちらであるか、周囲の目は明らかだ。
天才よ、私は貴女のいる世界では異端者だ。貴女を否定すること、貴女を超えること、それは世界のルールに反する絶対悪なのだ。故に私は、この世界を出ることにした。

古巣が最近荒れていた。かつて仲違いした人たちが集まって、夢よもう一度と叫んだ。私は協力すると言った。けれど、ほどけた糸が再び絡み合うことはなかった。
主義と主張がぶつかった。信条と思想が争いになった。私にはなにも出来なかった。私には彼らが持っている主義も主張も、信条も思想も持ち合わせてはいないから。
矛先が私に向いてきた。間に立てと要求された。私はそれを断った。
相手は私にこういった。

裏切り者の恩知らず!

かくして私の今は否定され、これから先もなくなった。
こんな人生の、果たしてなにが楽しいのか。夢の終わり、精神死。ここ数日間は問題が重なりすぎていた。私にはどうすることも出来なくて、なにひとつ解決もしなかった。

私は自分が立ち直れることを知っている。私は自分が立ち直らなければいけないことを知っている。でも、今すぐは無理だから。少し時間が欲しいんだ。
だから私は旅に出る。誰も居ないその場所で、明日の自分に会うために。あるいは帰ってこないかも、そんなこともあり得るが、それでも私は生きていく。

自分に出来ることだけは、精一杯やるために。

最近はエロゲも色々な特典を作ることが多いというか、店舗特典としてドラマCDを複数枚制作することも珍しくない世の中になりました。初回版にはサントラが封入されてることも当たり前になってきましたし、まあ、ヨスガノソラや夏ノ雨にはないんだけどね。
今回はそんなエロゲの購入特典から、ソイネノソラをご紹介。これは初回限定版の予約特典になるんだったかな? 正式名称は、春日野穹 ピロトークCD「ソイネノソラ」ですか。これは正直、色々な意味でやられました。

ハッキリ言って内容を解説できないというか、文章に出来ないことを音声で見事に表現したとでもいいますか、文章媒体と音声媒体の違いをまざまざと見せつけられた、いや、聞かせられたというべきでしょうか。
内容に関しては、穹がハルと一緒に寝るシーンをひたすら流しているだけなんですけど、これは凄い。だって、音声じゃないとこれはできないもの。ハルにCVがないため会話や掛け合いではなく、一人語り風になっていますけど、それがまた堪らないよね。
私が以前書いたヨスガノソラSSに「お布団の中の一日」というのがあって、HPのほうで現在も公開している作品なんですが、あれにおいて私が行った実験の、ある種の答えがソイネノソラにはあると思うんですよ。あのSSは一つの空間だけで展開される一日の流れを、睡眠と食事だけに限定して書いてみるという極端すぎる内容だったんだけど、実際には起きているときの描写が大半で、寝ているときの描写はほとんどないんですよ。
というのも、文章において寝ていることを書くって言うのは不可能に近いことで、表現のしようがないことなんです。だって、寝てるんだよ? 寝言やいびきは掻くかも知れないし、寝返りの一つだって打つかも知れないけど、基本的に行動してないじゃないですか。動いてない存在、つまり静止している存在を描写するってのは、観察記録じゃないんだしなんの面白味もない。文章ではまずできないことです。
同じように映像媒体でも同じで、30分ないし1位時間、延々と寝続けている人を眺めて面白いですか? いや、中にはそういった趣味の方もいるでしょうし、ハルと穹が寝ているところなら私だって見たいけど、ほとんど映像事故じゃないですか。作品として成り立たない。
でも、それが音声媒体なら? ドラマCDやトークCDという、映像やストーリー性に捕らわれない媒体ならどうか……不可能は可能となり、出来なかったことが出来るようになります。
言ってしまえば、ソイネノソラは音声媒体でしか出来ない代物です。文章でも映像でも出来なかったことが、音声媒体だけが可能とした。私がSSでやりたかったこと、空間を限定してその一部分を極端なまでに切り取るという構想を、もっともシャープな形で実現していると思います。物書きとしてはしてやられたというか、こういうやり方を用いてこそ完成するものだったんだね。こういうのを文章で作れたら最高なんだけど、私の技術や技量ではまだまだ無理だな。

個人的に意外だったのが収録内容の長さです。1トラックしかないんですけど、それが27分もあるんですよ。精々、長くても10分ぐらいだろうと思っていただけに驚きました。白波遥さんお疲れ様ですとしか言い様がありませんけど、よくもまあこれだけ長い物を収録できたものだ。どういうやり方で録ったのかは判りませんけど、見事な物です。
ハルの声がない関係上、ひたすら穹が喋らなきゃいけないんだけど、それに対しての違和感がまるでないというか、会話じゃないけど会話になってるというか、容易に想像が出来る。寝るまでの流れと、眠った後の流れがとてもスムーズで、聞き物として聞きやすい。音声媒体はやっぱ凄いというか、とても真似できないね。
こういう企画を通して実際に作ってしまうところが凄いというか、羨ましい。音声媒体以外では、ギリギリ漫画に出来るかどうかだと思うし、物書きとしては憧れます。

単に布団の中でハルと穹が喋り、後は寝相とか寝息、寝言だけのCDだから、特にこれと言って書くべき事もないんだけど、印象的だたのは穹の「お兄ちゃん」発言でしょうか。穹としてはあくまでハルとは対等な関係だけど、ハルの方は自分にもっと妹らしくして欲しいんじゃないか、と考えた上での発言ですが……いや、可愛いよ? 可愛いけど違和感のほうが強いというか、私も穹にはハルと対等の関係でいて貰いたいし、お兄ちゃんとか兄さんとか、そういう世俗的な呼称は似合わないと思う。
後、穹が悪夢というか、両親の夢にうなされていましたね。無理もないというか、時々夢に見てしまうこともあるんでしょう。2人とも割り切れていないことは、ハルも言っていましたし。ただ、穹の場合はハルにすがりつくというか、ハルの存在を探して必死で求めているところがあるので、そこがなんというか健気で儚くて。穹のハルに対する執着や愛着は昔からあるものですが、両親の死がその感情を強めた事実は否定できない気がする。
けど、そういう小難しい話を抜きにしても穹は可愛いというか、可愛いとはこういうことだと私は言いたい。もう、終盤にかけてのデレデレっぷり、甘えっぷりが最高すぎる。寝ぼけているんだとしても、あまりの可愛さにこちらが恥ずかしくなってしまう。ほら、人って寝る直前のテンションとネタ後のテンションって普段とまるで違うじゃない? 身近にそういう人間を一人知ってるけど、穹は格別だね。

ソイネノソラは既に携帯他にデータを移したんだけど、いやー、よく眠れる。あれを穹の抱き枕の下に仕込んだりすると、最高に幸せな気分になれるよ。さすがにイヤホン装備で、電車の中でも聴くのはどうかと思うけど止められない、止まらない。
夏ノ雨との同時購入キャンペーンでダウンロードしたシステムボイスも、普段はパソコンにそんな物付けないのに、今では穹の声が聞こえることに言い様のない喜びを覚える始末。私はもうダメだ、ハルと穹のためならなんだって出来る気がする。
放置しっぱなしのHPに、ヨスガノソラコンテンツを作っている最中なんですが、ハルカナソラ日記も書き終わったことですし、急ピッチで作業を進めようと思います。この際だから、とことん拘ってみようかな。やりたいことは全部やる勢いで。

それじゃあ、夏ノ雨をインストールしてきます。感想書くかどうかはまだ判らないけど、のんびりプレイしていこうかな~とも思っているので。どのキャラから始めようかな、攻略ヒロインは4人だけなのか、それともサブキャラにもなにかあるのか……今から楽しみです。
長かったハルカナソラの感想日記も終わり、後はカラオケイベントとソイネノソラについて書くぐらいですか。といっても、後者はまだしも前者はダメイドが良いキャラしていたということぐらいしか、書くことがないのも事実。ソイネノソラについては明日の日記で書くにしても、個人的にはやっと終わったという気分です。

ハルカナソラを実際にプレイしながら書いてきた日記なので、予定したよりも時間が掛かってしまったというか、仕事から帰ってきたらひたすら書いていた気がします。原稿もやらずになにをやってるんだと思われそうですが、ちょっとハルカナソラをプレイする裏で色々ありまして、今現在原稿はすべてストップしています。サボってるというか、書けなくなって。特にロクゼロは当分進まないと思う。自分でもビックリするぐらい衝撃を受けてしまったので。我ながら柔弱だ……こういう事態はあまり想定していなかったというか、テンションの低下に歯止めが利かない。
まあ、それをも癒やしてくれたのがハルカナソラであり、春日野穹春日野悠なわけですけど……気分は最高だし、ヨスガノソラと合わせて何回でも繰り返しプレイが出来そうです。まさか、ここまでの威力があるとは思わなかった。嫌なこととか、面倒なこととか、全部忘れされてくれるというか、直前、直後にあった出来事をどうでもいいやと思えるぐらいにのめり込んでしまった。その出来事から逃げるつもりはないし、向き合っていかなきゃいけないというのも、ハルや穹に教えられたんだけどさ。
とりあえず、これで冬コミのネタには困りませんね。既に表紙作りは始めてるんですが、さすがに後2ヵ月の内に私の彩色技術が上がるわけもなく、画力なんて皆無だから夏コミより数段レベルが落ちてしまうかも。誰かにヘルプでも頼もうかしら。技術力を底上げするには時間が掛かりすぎる。

話が大幅にずれてしまいましたね、私が抱え込んでいる問題は機会があれば書くとしても、今はハルカナソラの話です。
感想は色々ありますけど、まずは短い時間でよくぞここまでやってくれたということでしょうか。FDの発表から完成まで、延期することなく発売できたのは本当に凄いと思います。ある程度売れた作品でないとFDなんて発売しないわけですし、予め予定があったというわけではないでしょう。ハッシーにしても、発表の早さと制作期間の短さには驚きや苦労があったようですし。私も1回ぐらいは延期するんじゃないかなと思っていたんですが、夏ノ雨との同時発売&キャンペーンを始めたり、どうにも作業用の人材が豊富らしい。夏ノ雨はまだプレイしてませんが、2作品同時に送り出すってのは相当なことです。とても、Gardenを作ったところの姉妹ブランドとは思えない……まあ、ヨスガノソラが売れなかったらブランド的にやばかったんじゃないかと言われてるぐらいですし、気合いの入れようが違ったのかな。
ボリューム的に不満はありません。初回特典もいいものばかりですし、この日記を書いている現在も特典のキャラソンを流しています。店舗特典に描き下ろしがなかったのは残念ですが、これはハッシーの作業量的にも無理があったんでしょう。仕方ないことです。それに例え描き下ろしがなくても買う人は買いますし、AKIBAゲームフェアに行った際、一人で初回版を30個も買った人に出会いました。転売するつもりなど一切ないようで、自宅に黒うさぬいぐるみを並べるんだと張り切っていましたね。上には上がいるというか、凄まじい限りだ。

内容的に踏み込んだ話をすると、私はやはり蒼穹の果てにが一番良かった。穹が好きだから、というのもあるけど他の2人のシナリオが微妙だったんですよ。個別感想のときにも書いたと思いますが、特に委員長シナリオは肩すかしを食らったというか、ちょっとキャラが変わりすぎてる気がするなと。委員長こと倉永梢というキャラは、ヨスガノソラにおいては穹シナリオに一番多く出番がありまして、いつだったか彼女についての考察もどきを書いたときにも触れましたが、彼女は穹シナリオの後半部分における穹と対になる存在だった思うんですよ。
少しばかり意地悪な見方になりますけど、穹ルートだけを見れば委員長は果たして春日野悠に恋をしていたのか? という疑問すら湧いてきます。委員長の恋心を否定したいわけじゃないんだけど、委員長の心の中には、おそらく彼女が理想とする王子様像見たいのがあって、それを都会への憧れと混ぜ込んでハルに重ねていただけではないのか。だから、委員長はハルに恋をしたのではなく、ハルを通して自分の理想や憧れを見ていただけじゃないのか。
この考えはあくまで個人的なものなので、決して正しいとは思いません。ただ委員長シナリオをやれば判るとおり、彼女は恋する乙女らしく妄想過剰で、それはおそらく穹シナリオにおいても少なからずあった要素だと思うんですよ。
自分の夢や理想を、砂糖水に溶かした恋心という絵の具で甘ったるい絵にしようとしていたら、描き上げる前に現実がキャンバスを引き裂いてしまった。委員長は特徴として、貼るが好きな割りにはハルの中身を見てこなかった子ですからね。ハルの周囲はよく見ているけど、肝心のハル自身をどれだけ見てきたのか、理解しようとしていたのか。
ハルが捨てたもの、逃げてきた世界に強い憧れを持つ委員長では、付き合えば付き合うだけ価値観の相違が発生するはずで、私には委員長シナリオが別れること前提のシナリオに見えてしまった。絶対長続きしないでしょ、あれは。デートに穹が着いてきた事からも判るけど、結局どちらがハルにはお似合いなのかが明確にされてしまった感じだし。いや、どう考えたって穹が着いてくる理由はなかったし、穹が言った「2人が別れたら返してもらう」という言葉は遠からず現実になるんじゃないだろうか。なにせ、ハルはともかく委員長は初恋ですし、熱病の一種である恋はいつか醒めます。委員長の理想や憧れと現実の存在であるハルにズレが生じたとき、2人の関係はどうなるのか。シナリオに安定感がまるでなかったというか、独り善がりな印象を受けてしまった。
故に私は一応でも決着を付けた穹シナリオでの委員長を高く評価しますし、そっちの方が好ましいと思うんです。まあ、これは個人の好みというものですけど。

穹シナリオについては書きまくったので今更書き足すこともないような気がしますが、委員長シナリオと合わせて思ったのは、相変わらず大人が出ませんねこのエロゲ。ヨスガについて書いたときも触れましたが、基本的にこの作品は大人という存在が登場しません。
委員長シナリオでは彼女の親が出てきますが、特に台詞があったわけでもなく、登場はしていません。穹シナリオでも、結局ハルと穹をエストニアに招待した人は誰だったのか? 男性か、それとも女性か、年齢はどれぐらいで、どんな容姿をしているのか。台詞の一言もなかったし、とことん大人という存在を描かない、排除したキャラ構成になっています。
そこにはいくつかの理由があるはずで、大人というのは子供にとって頼るべき存在なんです。悩みがあり、迷いがあり、そういったものを打ち明け、相談し、道を指し示してくれるのが人生の先達たる大人の役目で……一番身近なのは両親でしょう。その身近な存在がハルと穹にはいないわけで、2人は常に自分たちで決めなくてはいけないという立場に立たされています。これはある種、ヨスガノソラやハルカナソラのテーマにもなっていると思うんですけど、両親を失い、残された双子の兄妹が、自分たちの意思で物事を決め将来に向けて歩んでいく。それを強調するためにも、助けとなる大人の存在を出せなかった、出したくなかったんだと思います。
物わかりが良くて、頼りがいがあり、主人公を優しく、時には厳しく諭してくれる存在。そんな偽善的な大人は、この作品はいらないんですよ。ハルと穹にとって重要なのは2人で決めること、2人で一緒に歩いていくことなんですから。道しるべはあった方が便利だけど、絶対に必要なわけじゃないんです。渚さんの両親とか例外はあるにせよ、徹底された構成には好感が持てます。2人の話は2人が作っていかなければいけない、そして、ハルと穹にはそれが出来るんだから。

ヨスガノソラから続いてきたハルと穹の物語も、ひとまずは完結しました。今回、敢えて北欧での生活ではなく、北欧に行くまでの過程をシナリオにしたことを考えると、あるいは北欧編にも期待していいのかもしれません。ストーリー的な物は出し尽くしてしまいましたが、作れないことはないですしね。イチャラブに特化したFDというのも、それはそれで悪くないでしょう。
Sphereが今後どのような作品を出しいていくのかはまだ判りませんが、ヨスガノソラとハルカナソラ、そして春日野悠と春日野穹の存在は、貴重な財産だと思います。グッズ類の販売などもありますしね。ドリパにも結局出るみたいですし、私もそれに向けた準備を始めようと思います。
明日の日記はソイネノソラについてです。これが、ヨスガノソラ&ハルカナソラフィーバーの締めくくりになるのかな。システムボイスとかについても書く予定なので、今からUSBの出し入れと接続ミスをしてくることにします。
28日の日記を更新したんですけど、一つ気付いたことが。この日記って2万字書けると謳ってますが、実際には無理みたいです。28日の日記を2万字ギリギリで更新しようとしたら、「本文は2万字内でお願いします」というメッセージが出て、100字、200字と削ってもまだダメだったから、結局2000字も削ってしまいました。だからあの日記、実は18000字ほどです。


~貴方からのプレゼント、貴女への贈りもの~
到着した隣町は、土日と言うことも合ってか早い時間から結構な人がいたようです。ハルは意外に思いますが、穹はそんな中から目ざとくネカフェを発見。休憩するとき入ってみたいと言いますが、ハルはどうせならケーキを食べながらお茶をしたほうが良いと言います。ネットで足りない情報を探すよりも、せっかく一緒に来てるんだから自分を頼って欲しい。少し意地悪げにからかいますが、穹への効果は絶大でした。ハルに任せる、ハル以外には絶対言わないであろう言葉を投げかけ、投げかけられた方も穹へのエスコートを約束します。
腕を組みながらアーケードを歩く二人は、やはり人目に付くらしい。ハルは途中、ガラスに映った自分の姿を見て髪を直します。穹が言うにはこういうところはマメらしい。ハルの言い分としては、穹がバッチリ決めてるのに自分だけずぼらというわけにもいけないからだとか。一緒に並ぶと、目立つから。

「それはハルが? それとも私」

訊ねられ、ハルは迷うことなく穹だと断言します。

「ううん、違うよっ。ハルは自分がどれだけ格好いいか全然わかってないよ。それに、ハルがいてくれるから私も目立てる……」

近年のエロゲ主人公というのは、最初から女子に人気があるとか、結構モテるとか、そういう設定が予め備わっていることが多いです。ハルのようにイケメンだと明言される主人公も少なくはないですし、やっぱり男は顔というか容姿なんですね。当たり前の話ですが。けど、ハルのように直接ヒロインから格好いい、イケメンであることを肯定され、実際に幾度となく言われるタイプは珍しいかも。夏ノ雨のヒロインでさえイケメンなのは認めてましたから。
ヨスガの頃と比べても随分なプッシュですが、そもそも穹の双子なんだから格好良くないはずがない。格好良く、そして可愛い、それがハルの魅力です。

「私たちが一人ずつで居るより、二人ずつで居る方がもっとお互いの魅力を引き出せると思うよ」

穹の言葉は、ほとんどユーザーの総意みたいなものだと思う。春日野兄妹はどちらが掛けてもダメなんですよ。ハルがいるから穹が成り立ち、穹がいるからハルが映える。そういう魅力がこの二人にはあるし、それは大事にしていくべきものだと思います。
ハルも自信持ってお洒落を仕様という穹に、内心では亮平が着ていた甚平に興味があったことを漏らします。意外ですけど、それでも似合いそうだからハルは凄い。穹に怒られそうだからと断念してますが、確かに楽な格好ではあるよね。
都会にいた頃はハルも服を買いに行くことがあったと良い、なるほど確かに趣味ではあったようです。ハルの顔が生き生きしてきたことに穹は喜び、ハルもそれを認めます。
最初に向かったのはアクセサリーショップで、リボンやクロスをはじめ、小物類も取り扱っているらしい。穹は白と黒のリボンで迷い、どちらが良いかとハルに訊ねます。両方買って使い分けたらどうかとハルは提案しますが、穹はあくまでハルに選んで欲しいみたい。
ハルが選べば、それが一番のお気に入りになるから。
穹には白が似合う、そう思っているハルは白を選びますが、意外に白いリボンを付けている穹ってのは作中でも少ないんですよ。基本的には黒が多いし、白い衣服に黒は映えますから。ハルがレジに並び、さながらプレゼントのように穹へと渡します。基本的に春日野家の財布をにぎっているのハルで、穹には小遣いも渡していないそうです。お菓子や飲み物など、嗜好品ぐらいしか買ってあげてないし、少しぐらいは渡したほうが良いのかと悩み、渡したら渡したでなにに使うか判らないとハルは悩んでしまう。ハル自身、自分のためにお金を使うことが全くないから、どうしたほうが良いのか判らないんでしょうね。別にハルは物欲がないとか、極端に無欲なわけじゃないと思うんですよ。だけど、家の財布を握る立場として、金銭に関する強い自制心が働いてるというか、趣味にお金を使うことに抵抗があるんだと思う。今回も穹に諭されるまで、自分にも服を買おうという発想に結びつきませんでしたから。

穹に付き合って、ハルは三軒目の服屋へと入ります。穹がネットで検索していたブランドのコーナーがある店で、女性向けだけ合って華やかな店らしい。穹はハルを気遣って、外でコーヒーでも飲んでればいいと言いますが、ハルは構わないと言います。お互いに気を使ってるんですね。けれど、穹はなにを思ったか「ハル……もしかして女装に興味があるの?」と訊いてきて、ここぞとばかりに女装を勧めます。
穹は何着か手にとってフィッティングルームに向かい……都会っぽさを出そうとしたのか、それともこれが普通なのか知らないけど、別に試着室という表現で良かった気がする。横文字で洒落っ気は出てるけど、正直判りづらい。私がファッションというものに興味がないからだろうけど。
ゴス系を中心に試着している穹は、着る前、もしくは着た後の服をハルに見せ、どっちが似合うかと聞いてきます。試着室に首を突っ込むハルも大胆ですが、中では下着姿の穹も大胆。服も可愛いけど下着も可愛いと思いつつ、ハルは穹のために服を選びます。先ほど買ったリボンと組み合わせたら似合うであろう、純白に近い服を。

穹の服を買い、良い時間なので昼食を取ることにした二人。落ち着ける場所がいいとのことで、アーケード内にあるイタリアンを選びました。らっぱ寿司も目に入ったみたいですが、さすが回転寿司は人気があるのか長蛇の列だった模様。まあ、どちらにせよ穹はお刺身とか生の魚が嫌いですからね。寿司は食べないでしょう……委員長シナリオではなに食ってたんだろうか。ハルも引き気味だったし、ああいう部分の感性にズレがあるんだろうな。
入ったイタリアンレストランはチェーン店で、前に住んでいた所にもあったらしい。神田グリルとか、つばめグリルみたいな感じかな? あぁ、でもあれはイタリアンじゃなくて洋食屋チェーンか。私は困ったときには神田グリル行きます。
このレストランには都会にいた頃、ハルも何度か入ったことがあるみたいです。両親とではなく友達と。友達とファミレスやファーストフード以外の店に行く中高生ってのも、それはそれでなんかやだ。いや、実はイタリアンといいつつサイゼイリヤのことなんだろうか。でも、いくらあそこが内装凝ってるからって、ゲーム画面に映っている店内には相応の格式と品格が見受けられるし……こういうレストラン大好き。憧れる。
穹は恋人とでも入ったんじゃないかと気にしますが、ハルはからかいつつも否定します。ハルはあまり穹と外食したことがないようで、まあ、穹自身外出が好きじゃない面倒くさがり屋ですからね。都会にいた頃も、出来合いの弁当とかで済ませてたんでしょう。
メニューを見て、穹はキノコグラタンとアイスティーを頼み、ハルはBセットというまるで定食屋のメニューみたいなのを選ぶ。いや、普通にパスタとかでいいじゃん。スパゲッティで。さすがにサルティン・ボッカとかはないだろうけど、料理名をごまかされるのはちょっと微妙です。折角イタリアンに入ったというのに。
早く帰って、買った服を着てみたいという穹。服は逃げないよと苦笑するハルに、なによりも早くハルに見て貰いたいと語る穹。そこら辺の微妙な乙女心がハルには判らないんだけど、「まぁ、ハルだし、しょうがないかぁ」と穹は諦めます。反論できないハルに、食事が終わったらハルの服を観に行こうと穹は提案します。
不思議なのは運ばれてきた料理で、パンが美味しそうだからと穹は一口食べさせて貰います。ハルはそんな好意に気恥ずかしさを憶えながら、バジルソースの効いたパスタを食べるんですけど……ハルの頼んだBセットとは一体。パン+パスタって主食被ってない? いや、セットというぐらいだからミニパスタなんだろうか。メインに対する付け合わせで、そうね、メインはミラノ風カツレツなんか美味しそう。ただし、トマトソースがかかってないやつ。
穹のグラタンも食べさせて貰い、家でも作って欲しいなどの無茶を言われつつ、デザートのジェラートまで楽しんだのでした。ちなみに説明するまでもないけど、ジェラートとはイタリアの氷菓で、要するにアイスです。これがまた深みのある味なんだ。私は、シャーベットよりジェラートが好きです。
昼食休憩を一時間ほどした後は、ハルの服を見るために買い物を再開、ハル本人よりも穹のほうがデザインなどに拘ったりして、色々な服を試着したようです。この過程がすっ飛ばされるのは、ハルのCGを描く余裕がなかったからでしょうか。まあ、普通は主人公単体のCGなんて描きませんけど、私からすればハルは他のヒロインとも比較しても遜色ないキャラだと思っているので。
いくつか服を買って、穹に選んで貰ったTシャツを明日から着てみようと考えるハル。そうしている内に日も暮れて、はしゃぎ回っていた二人は人の流れに混ざりながら駅へと向かい、帰宅します。穹は疲れたのか帰りの電車で寝てしまいましたが、ハル曰く、彼が買ってあげた服を離そうとしなかったのが、いじらしくて可愛かったとか。

帰宅した奥木染、ハルと穹は偶然駅で出会った渚さんに車で家まで送って貰います。疲れ果てた穹は歩けそうもないし、かといって荷物があるのでおぶることも出来ない。そこにたまたま渚さんが通りかかって、ハルと穹はなんとか家に帰り着くことが出来たというわけです。
自分たちの関係を告白して以来、渚さんとはちゃんと話す機会がなかったハル。しかし、渚さんは嫌な顔一つせず、車内で眠る穹の顔を可愛いと言っていたそうです。二人が買った荷物を見て、今日は凄く楽しんでいたみたいですねと言ったり、笑顔に裏表が感じられない。ホントに二人は仲が良いという羨む渚さんに、苦労はあるけど昔からずっと一緒に居たからと答えるハル。渚さんにとって兄妹、彼女場合は姉妹ですが、その二人がずっと一緒に居られるというのは理想の形なんでしょうね。様々な理由から穹シナリオにおける渚さんと瑛の関係には進展がないわけだけど、やはり現状打破はしたいみたい。
渚さんは唐突に、ハルとメルアドの交換を行います。穹がさっさと家の中に引っ込んでしまったから良いようなものの、そうでなかったらどんな反応をしたのやら。ハルの周囲で携帯持っているのって、穹を除けばそれこそ渚さんぐらいですしね。

「今日みたいな事があったら、いつでも頼ってください」

渚さんの申し出は心嬉しく思うも、さすがに車を出して貰うなんて申し訳ない、ハルはそのように言いますが、渚さんは遠慮されて関わりが持てなくなるよりはずっと良いと考えているようです。瑛から言われたこと、自分は春日野兄妹とどうしたいのか? 瑛と違って、すぐに自分の気持ちを決められなかった渚さん。挙げ句に結論を保留として、傍観者になろうとしていた。常にハルと一定の距離を保ってきた彼女からすれば、ある意味で当然の選択だったのでしょう。でも、それじゃあ傍にいる意味がない。それに気付いた渚さんは、利用されてでもいい、助けることで自分が関わっていけるのならと、そう思い始めたそうです。そして、いつか二人の気持ちをちゃんと理解していきたいとも。
みんな強い、自分もそうなりたいから……ここでいうみんなとは、春日野兄妹や瑛、亮平などといった面子のこと。立ち直った委員長も含まれるんですかね。渚さんは穹に頭を下げ、これからも宜しお願いしますと言います。その畏まった態度に、却ってハルが慌てふためいてしまう。
渚さんは真面目すぎる、というハルの感想は決して間違っていない。本当はもっと単純に考えることも可能で、不快だと思ったり、傷ついたりしても構わなかったんです。現に、当初の委員長はそういう反応を見せましたから。渚さんは常識人で、真面目すぎるがために真剣に考えた。ハルとしては、恐縮しつつもその気持ちをありがたく受け取ります。答えはまだ見つかっていないけど、これから必ず見つけてみせる。その潔さは、ハルも見習うべき所だと感じます。
照れくさい雰囲気になりつつも、ハルは渚さんを見送って家の中へと入ります。穹は自室で完全にくたびれていて、着替えもせずにベッドで寝ています。穹は一緒に寝ようというのだけど、ハルはまだすることがあるので先に寝ててくれと言います。寝るまで傍に居てとせがむ穹に、了承するハル。今日の楽しかった出来事を思い返しながら、また一緒に行こうと約束する二人。穹は楽しかった気持ちを夢の中まで持っていきたいと、既に夢心地な口調で呟く。そんな穹に微笑みながら、彼女が安らかな寝息を立てるまで傍にいて我得るハルでした。

~北欧からの手紙~
翌日、さすがに疲れが残っていたのかハルより遅く起きた穹。既に昼食という時間でしたが、胃が目覚めていないのか熱いお茶をくれるように頼みます。ハルはお茶を出しつつも、洗濯機を動かしたり、昨日届いた郵便物をポストから取り出したりしてきました。大半肌入れとメールですが、手紙や請求書も混じっているので仕分けなくてはなりません。穹に手伝って貰いながら、作業を始めるハル。請求書には電話会社のものもあり、今月の携帯料金はまあ平凡なもの。けれど、来月は……と頭を抱えますが、穹は早くプラン変更するか家に光回線を引けば済むだけだと要求します。まあ、その通りだけど。
届いた手紙の中で、一際目に付く英文字の手紙。海外からのようですが、宛先には今は亡き父親の名前が書いてある。おそらくは仕事関係の人だろうけど、まだ両親が死んだことを割り切れていない春日野兄妹の表情が曇ります。とりあえず仕分けを優先して、それが済んだ後に開けることに。
開けた封筒には、手紙と飛行機のチケットが入っていました。当然英語のチケットですが、行き先ぐらいは読めたらしく、ヘルシンキ行きのビジネスクラスだそうです。ヘルシンキといえば北欧はフィンランドの首都ですね。ただ、差出人がフィンランド在住なのかどうかは判らない。差出人欄には国名が書いてあったそうですが名言はされず、後述しますがいくつかの疑問点からフィンランドと断定も出来ないので。
直筆の筆記体で書かれた手紙を読み解くのは難解で、判ったことと言えば飛行機のフライト予定が明明後日に迫っていることぐらい。しかし、ビジネスクラスか……あれは結構高いんだよね。航空会社にも寄るけど、長距離便ならファーストに遜色ないものになる気がする。
とりあえず手紙を解読しないことには始まらないので、穹がパソコンを使って調べることに。メモ帳に全文を打ちだすので、時間が掛かるみたいです。その間にハルは残りの手紙、主に両親宛の手紙に目を通します。悔やみの言葉を書いてくる人もいれば、残されたハルと穹を心配してくれる人、そして両親の店で家具を買い、愛用しているという人。両親の店が褒められることは、ハルにとっても誇らしいことですが、その賛辞を受け取る資格はもうないと感じています。ハルはそんな両親の店を継ぐことが出来ず、畳んでしまったから。
両親が死んでからのゴタゴタで心身共に疲労しきっていたハルは、重荷であった店を畳みました。けれど畳んでみれば、そこに待っていたのは解放感ではなくて喪失感、事情があったにせよ、店というのは両親が生きてきた証だった。後悔してもとき既に遅く、店から持ち帰った両親の私物を見て初めて、ハルは自分がしてしまったことに気付く。
でもそれは仕方がないことで、まだ学生のハルには店の経営なんて出来ないし、穹との今後の生活だって決まっていないじゃないか……そんな慰めにもならない言葉を聞きながら、両親が築き上げてきたものをもう一度自分が取り戻すことなど出来ることがないと、悲観に暮れます。両親への手紙は嬉しいけど、同時に自分の無力さを痛感し、ハルの気は重くなる。それでも返事を書くのが、ハルらしいんですけど。

時間が経ち、夕食時になって穹がハルを呼びに来ます。手紙の返事を書くことに頭を使っていたハルはどこかボーッとしていたらしく、一方の穹はもう少しで手紙の解読準備が終わるらしい。
夕食を済ませ、ハルは穹の部屋へ。いつかのように穹を膝の上に載せながら、手紙を打ち込む姿を見ます。打ち込み終わった手紙を翻訳サイトで翻訳し、まずは英語に変換します。そこから日本語に変換するという、文明の進歩にハルは率直に感心します。
翻訳が終わって手紙は、部分的に不正確な箇所があるものの、なんとか読める形になります。

“親愛なるか春日野夫妻の子供達へ…………”

手紙の始まりは、そんな挨拶からでした。

~二人、旅立ちのとき~
昼休みの終わり、ハルが学校の屋上からグラウンドを見下ろしています。暑い中、グラウンドで遊ぶ生徒を元気だなと思いつつ、ハルは自身の携帯へと転送して貰った昨日の手紙を開きます。
手紙の差出人は、やはり両親の仕事仲間から。両親が買い付けに行った際に知り合い、なにかと世話になったことで公私にわたる交友が生まれたらしい。海外のため、両親の不幸は同業者経由で少し遅れて知ったといい、手紙には悔やみの言葉や偲ぶ言葉が続いていく。
どうにもハルと穹の両親は、夏になり、子供達が夏休みに入ったら家族で旅行をしようと思っていたらしい。手紙の主も、春日野夫妻自慢の子供達と会える日を、楽しみにしていたようだ。そこで、両親を亡くして失意の中ではあろうが、気分転換にでも遊びに来てみないかと、手紙の主は提案します。夫妻が、両親が見せたがっていた国を、自分が見せてあげたいというのです。両親のこと、仕事のこと、さすがに一緒に仕事をしても良いというのは先走りな気もしますが、応援したいので一度会って話がしたいと、手紙にはそう書かれていました。

「ハルカ、ソラ……いつも君たちの両親が想いをはせて見上げていたと空と、同じ名前を持つ子供達と会える日を楽しみにしている」

手紙はそう締めくくられていたそうですが、ここで一つ疑問が。手紙の主は両親の訃報を知っていて、なのにどうして父親宛に手紙を出したのか? ハルの名前を知らない、というのならまだしも、上記の文面を読む限りは知っているようですし、両親宛にしたほうが判りやすいと思ったんでしょうかね。
遠い異国から届いた手紙に、ハルは戸惑います。昨晩穹から訊かれた、「………ハル……どうするの?」という問いにも即答を持って答えることが出来ませんでした。学校の図書室で、差出人が住んでいる国を調べます。国名を明確にしないのは、なにかに配慮しているのか、それとも描写不足などを突っ込まれないようにするためか。ヨーロッパのどこら辺にあるのか、時差が何時間で、通じる言葉はなにか……ハルの主観では綺麗な場所で、治安も良さそうとのこと。ヨーロッパに治安の良い国なんてあるのだろうかと、欧州に偏見を持っている私なんかは思いますが、日本と違って空や大地に、自然に深みがあるらしい。
興味は湧きますが、だからといって即決も出来ない。両親の店を畳んでしまった後ろめたさがハルにはあって、両親の話を聞けば聞くほど、自分の無力さを思い知ることになる。だから、自分は行くことが出来ない。
悩むハルの元へ、穹が現れます。ハルの微妙な心境を理解していたのでしょう、声を掛けますが、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴ったため、一旦分かれることに。

帰宅して、冷たい麦茶を口に含むハルですが、熱の籠もった室内の不快さは取り除いても、心の中の悩みまでは取り払ってくれません。穹はそんなハルを見て、遂に核心的な質問をします。

「ねぇハル……何を考えてるの?」

問いかけてはみたものの、手紙のことで悩んでいることは一目瞭然だったので、穹はハルから問い返されます。穹は、行ってみたいのかと。
どちらでもいいと答える穹に内心安堵しながら、ハルは学校もあるし今回は縁がなかったと思い諦めようと言い出しますが、穹はそれが本心でないことを見抜きます。ハルには別の理由があるということを。店を閉めてしまったことを未だにハルが気にしている、穹はそれを知っていました。そして、あの当時、泣いてばかりだった自分がどれだけ無知で、どれほどハルが苦しんでいたのかを、後になって悟ったことも。
ハルに全部責任を押しつけて、泣いていただけの自分。最終的にはハルを追いつめ、追い込み、苦しめてしまった。
悔いる穹に、自分はただ逃げ出しただけだと白状するハル。そんなことは穹だって気付いてますが、当時のハルには現実と向き合うだけの勇気も、力も残っていなかった。だから逃げ出した。親戚もいない、店もない、マンションからも遠く離れた田舎の地で、都合の良すぎる生活に安楽してしまった。穹以上に悔いるハルですが、穹は奥木染に来たことを後悔などしていないといいます。色々あったけど、今の自分たちがあるのは、ハルがここで自分と暮らそうと言ってくれたから。それだけでも、ハルは間違ってないし、穹も着いてきて良かったと思えるのです。

「ハル……全部自分の力不足だなんて思わないで」

無理やり続けていたところで、上手くいったとは限らない。今よりずっと、悲しいことになっていたかも知れない。だから、ハルが決めたことは間違っていない。

「ハルは責任をちゃんと取ったの。パパとママの代わりに、お店を閉めてあげることが出来たの」

それがハルの取るべき責任であって、ハルはそれを果たした。大体、手紙でもハルに文句を言う人など居ないし、親を失った子供を攻めたてるような奴は心が狭い以前に人として間違っています。
穹に慰められても、ハルの中にある申し訳ないという気持ちは消えません。だけど、自分に店をやっていく自信があるわけもない。それが当たり前だと穹は言います。私たちは何も知らない、経営にしろお客さんにしろ、仕事でどんな人と付き合ってきたのか、全然判っていなかったのだから。何も知らないのに、出来るはずがない。

「ハル、私は知りたい……パパとママが一生懸命やっていたお仕事のことを。もっと聞きたい……お客さんから、手紙をくれた人が知ってるパパとママのことを。それで、私もパパとママのお店を継いでみたいって思えるようになったら……それからはじめてもいいと思う」

決めることはいつだって出来る、ハルや穹の両親だって二人と同じ年齢のときから店を始めたわけもないんですから、まだ若い二人はこれからなんです。謝ることばかりじゃなくて、二人に出来ることを見つけていけばいい。時間は、たっぷりあるのだから。

少し話をずらしますが、ここまでの流れは後の北欧編も含めてあまり共感が出来なかった部分です。というのも、私には店を継ぐ、子が親の職業を継がなくてはいけないという考えが好きじゃない。もちろんハルは強制なんかされてないし、あくまで自由意思ではあるけど、そこには死別してしまった両親への懺悔の念もあるわけで。
ハルが他になりたい職業を持っていたのかは判りませんし、おそらくはないのでしょうけど、両親が生きていたとしたら進むべき道も違っていたんじゃないかと思う。今では想像でしかない未来像、将来像だけど、もっと道は大きく開けて、複数合ったはずです。
現にハルの父親は家具屋ですが、その父親、つまりハルの祖父は町医者です。職業的な繋がりは一切ありませんし、ハルの父親は自分で決めたであろう道を、親とは違う道を進んだわけです。それに、ハルが春日野医院を自由に使えたことから、ハルの父親はおそらく長男、兄弟姉妹もいないか、少なかったのではないかと思います。となれば、町医者と産婆の両親が死んだ後、医院を閉めたのもハルの父親だったはず。
ハルの祖父母がどういった形で亡くなったのかは知りませんが、ハルの父親もまた同じような経験をしたのではないでしょうか。そのとき、医者ではなく家具屋の道を選んだ自分をどう思ったのか、ハルのように悔やみ、後悔したのかは判りませんが、家具屋を辞めなかったのは事実です。状況的問題、年齢的差もあるにせよ、親の職業を、春日野医院を継がなかったことに代わりはないのですから。
だから、それも踏まえた上でハルはあまり気にしなくても良いんじゃないかなと思います。これはあくまで私の個人的意見だし、親の仕事を具体と思うハルの志を否定するわけではありません。今時、立派な考え持った息子さんじゃないですか。
逆に言えば、私の方こそ親の職業を継ぐつもりもなく、趣味と道楽で飯を食っている男です。故に、ハルのような純粋な考えを理解できないのかも知れない。もっとも、今からでは逆立ちしたって親の仕事は継げないんですけどね。継ぎたいとも思わないのは、嫌いだからじゃなくて向いてないから。こればっかりは、やる前から分かり切っている数少ないことなんですよね。

穹のおかげで視野が広がったハルは、新たなる大地へ、遙か先の空に旅立つことを決意します。いつも自分をいざなってくれる穹を、今度は自分は連れて行く番だと誓いながら。
ここで三回目、最後のエッチシーンとなるわけですが……遂に穹の部屋が解禁ですか。ありそうでなかったシチュエーション、制服のままというのもヨスガ以来ですが、ヨスガのときはフェラ止まりだったからな。あの後絶対にヤッたんだろうな。描かれなかったけど。
最後だけ合って高クオリティというか、穹がハルを苛め倒します。コズエノソラで穹が言っていたのは、こういうことだったのか。もはや説明するまでもないというか、とにかく見て、読んで、抜いて、ハルと穹を堪能してくださいとしか書きようがない。そういや夕暮れの室内っていう時間帯もはじめてだ。穹のベッドの上だから、窓から差し込む日の光が、ハルと穹を茜色に照らしてる。
しかし、いちいち表現が女の子的というか、仮にも男の主人公相手に愛液とか表現を使っちゃうエロゲは初めて見たかも知れない。確かにハルにはそれだけの魅力もあるが……いや、素晴らしい限りです。
私は男女の仲に限らず、人間性をSMで表現するのはあまり好きじゃないんですが、ハルと穹は互いが互いにSにもMにもなれるというか、どちらが主導を握っているのかで切り替えが凄く上手いと思う。まさに対等な関係。

翌日の昼休み、ハルはいつも以上に忙しなく動いています。調べ物が多いらしい。それでも昼食を楽しむ時間ぐらいはあるようで、いつもの面子で楽しく談笑。話の流れでその内、バーベキューでもしようということになり、特に瑛が熱望します。秋は栄養を溜めて、冬を乗り切るつもりらしい。ハルにも絶対参加するように諭し、あるいは瑛はハルと穹が旅立とうとしていることを知った上で、みんなとの繋がりを強くする約束を交わさせたのかも。帰るべき場所を作り、今後の予定を立て、ハルは瑛に心の中を見透かされているようだと感じていますが、その通り瑛はなんでもお見通しなんでしょうね。だからこそ、ハルも安心して旅立つことが出来る。
帰宅して、旅の仕度をするハル。両親の形見でもある旅行用の古いトランクに荷物を詰め、衣類を初めとした必要なもの、それにチケットとパスポートを入れます。突然の初海外ですが、パスポートだけは両親に言われたのか前々から持っていたみたい。両親との旅行はもう出来ないけど、ありがたく使わせて貰うことに。
一通りの仕度を終え、荷物のチェックも終えたとき、ハルはまだやっておかなければいけないことがあると、行動を起こします……

さらに翌日、出発の朝。良子に行く流れ出来ていると思い込んでいたのか、ハルは穹に東京へ行くとしかいっていなかったようです。なので穹は仕度に手間取りますが、ハルの用意した着替えのセンスや、何故だか醤油の瓶を入れていることに呆れます。旅先で醤油が恋しくなるかなと、日本人にありがちなことを思ったようです。実際に欧米に長く滞在すると恋しくなるから、気持ちはわからないでもない。

「ハルは旅行しない方がいい……家でお醤油飲んでればいい…」

ノートパソコンなど、ハルが荷物になるからと敢えて入れなかったものを取りに戻る穹。そんなとき、近所に住んでいる奈緒が現れます。ハルは旅立ちに際しての後始末というか、各種連絡についてを奈緒に頼んでいたようです。まあ、悪くない人選ですけど、予めみんなに伝えておけばいいじゃんと思わないでもない。ほとんど唐突に旅立つわけですし、事前連絡は、さすがに学校にはしているだろうけど、兄妹揃って姿を消したら心配するでしょう。ヨスガノソラでの委員長みたいに。
ここでなんですか、次いでのように穹と奈緒の再度の和解が執り行われるんですけど……このシーン必要合ったのかなぁ? ハルカナソラでは極端に奈緒の出番が少ないわけだけど、それに関しては中の人の都合でしょう。木村あやかさんもご結婚に出産と、色々ご事情がありますから。ただ、それを差し引いても奈緒というキャラの人気度はあまり高くないわけで、それが出番に影響しているのかなと思えなくもない。
穿った見方になるけど、あまりに奈緒の人気が低いから、いや、低いというより嫌われてるから、ここで穹に謝罪される、認めさせることで救済しようとしたのではないか? 穹も許しているんだし、もういいじゃないかみたいな。私は別に奈緒のことが嫌いじゃないけど、決して好きというわけでもないから扱いにはいつも困っています。そして、今回は制作サイドもそうだったんじゃないだろうか。
大体、ヨスガノソラの段階で一応なりとも和解したのに、今回更に穹が悪かったという方向で謝罪させるのはどうなんだろう……理由が理由だけに穹が大人げないとか、奈緒に辛く当たりすぎたという事はあり得ないと思うんだけどなぁ。少しひいき目入ってるかな。穹が奈緒に嫉妬していたのは事実だし、けれどだからといって奈緒の行いが良かったわけでもない。
ただ、これは個人的な意見だけど穹が奈緒ちゃんと呼んでいるのには違和感ある。毛嫌いというか、嫌悪していたときの印象が強いんだろうね。傍観者でいるわけにも行かないハルも謝っていたけど、まあ、ハルはある意味で被害者だし……本人の意識はともかくとして。委員長ほどに決着を付けるべき相手だったのか、そういう疑問が奈緒にはあった。取って付けたような、そういう印象がこのシーンにはある。もうちょっとやりようと言うか、話の運び方があったんじゃないかなって。こんな終盤にいきなり出てくるんじゃなくて。でも、そう考えると奈緒は序盤と終盤にチラリと出てくるだけだから、やはり中の人の都合もあったのかな。

~異国の大地、遙かな空~
日本から飛行機で十数時間、乗り継ぎなどを含めたことも考えると直行便ではなかったようですが、かなりの距離をハルと穹は旅しました。言葉の問題を初めとし、数々の苦労が二人にはあったけど、現地人は気が良いらしく色々教えてくれたらしい。なんとか手紙の主がいる近所までたどり着くことが出来ました。
しかし、そこは耕された畑ぐらいしかない農地で、舗装された道路もないような僻地。自然が溢れかえっているのは良いことですが、なにもないのもそれはそれで不安です。ハルは辺りを見てくると言いますが、穹はその内迎えが来るだろうからジッと待っていればいいと言います。まあ、見知らぬ異国の地ですから、少し焦ってせっかちになってしまうのも判る。

「綺麗だね……外国の絵本にある風景ってホントにあったんだね」

豊かな自然に身を預けていると、遠くから二頭立ての馬車がやってきます。白髪のじいさんが御者をしていて、藁が積まれた荷台は如何にもといった古風な作り。このじいさんが招待してくれた人物というわけではないようで、雇われ者か、それとも部下の農夫かなにかか。言葉が通じないせいもあるけど、あまり会話は弾まなかったみたい。愛想が悪いじいさんと思えなくもないけど、疲れて寝てしまった穹の寝顔を見て優しく微笑み、唐突に牧歌を歌い始めたことから気は良いみたい。では、どうして台詞がないのかというと、これについては考察があるので後で書きます。

到着した場所で、ハルと穹は子供ながらに丁寧なもてなしを受け、数日間のときを過ごします。その過程を幅にカットしたのは、あるいは別の機会に書いてくれるからだろうか。それとも海外での生活模様を書く自信がなかったのか。どのような家に滞在し、家人がどんな人であったのかも詳細は描かれません。ただ、穹が珍しくおかわりするほどに食事が美味しかったり、外国人の双子というのが珍しいのか、近所から人が尋ねてきたりもしたらしい。言葉は通じないけど、毎日色々な人と出会い、交流が出来た。
招待主自体は仕事の関係でちょっとした日本語ぐらいなら使えたらしく、両親の話も沢山聞けたらしい。商才のあった二人は仕事も旅も楽しめるだけの余裕を持っていたらしく、穹のうさぎのぬいぐるみも滞在先のノミの市で買ったらしい。ノミの市ってのは欧州だとそこら柔でやっている古物市、まあ、フリーマーケットみたいなもんです。穹が興味を持ち、お土産を見る意味で連れて行って貰います。
ノミの市が開催されているのは海側の小さな都市で、隣接するいくつかの国から色々なものが運び込まれているとか。使われている言語も様々で、色々なものと人種に溢れかえっているらしい。歴史があるみたいですね。ノミの市自体に。欧州の中でも有名とのことですが、ノミの市で一番有名なのはパリだから、それ以外って事になりますかね。北欧か、バルト三国か、まあそれについても後述します。のんびりとした雰囲気にハルはバザーみたいだなと言う感想を抱きますが、なるほどバザーという表現もあったか。
蚤の市でも、色白の東洋人ということも合ってか穹は目立ちます。写真を撮られたり、土産物を買っていかないかと言われたり、人気者ですね。食べ物も売っているみたいですけど、さすがに生物は保存が効かないので、お菓子とか、缶詰でも買って帰ろうと思うハル。穹は興味を引く露店の前を通ると、興味深く品物を見ていて、同行してくれた人が穹のセンスに感心していたそうです。同行者は即ち招待者とは別人で、部下かなにかなんでしょうか。二人を気軽に招待するぐらいだから、それなりに財のある御仁なんだと思うけど、なかなかどんな人物かが見えてこない。
穹の才能はこれから商売を始めていく上で、大いなる力になるとのことです。ハルはもう少し単純に、良い物がいっぱいあるからみんなにも見て貰いたいなと感じています。その考えに穹も同意し、あるいは両親もそう思ったからインテリアを売る仕事始めたんじゃないかと思います。

「何だか出来そうな気がしてきた……」

ここでの滞在は、穹に今までにない自信や勇気を与えたようです。ハルはまだピンと来ていないみたいですが、この旅が自分にとって凄くいい経験になるだろうとは確信しています。今まで両親が見てきた物を、自分は追っている。同じことが出来るかはともかく、二人の気持ちもなんとなく想像できるようになってきた。

「穹が母さんみたいに色々物を見つけてくれて、僕がそれを売る……って事も、不可能じゃなさそうだし」

そのためには、もっといっぱい勉強しなきゃいけないこともある。

「ハルがお店をやりたいって言うなら、私も手伝う。ハルが苦手なことは、私が手伝えるかも知れないし」

前向きな提案をする穹は、明らかに今までの彼女とは違います。それも良い感じに変わってきているのでしょうね。いつかお店を開きたいと思うならそれも良い、両親が伝えたかったことを自分たちが引き継ぐ。それも素敵じゃないかと語る穹。確かに一番親孝行かも知れませんね。

「ねぇハルっ……欲しい物が見つかったの」

そういうと、穹は一つの指輪を手に取ります。銀色の指輪は、内側に文字が彫ってあるそうです。Siunausという言葉は、ハル曰く滞在国の言葉じゃないらしい。露天商のおばあさんはハルと穹を指さして頷くので、二人に関係がある言葉なのでしょう。穹は左手の薬指に指輪を嵌めますが、偶然にもサイズは見事にピッタリでした。
買うことにしますが、露天商のおばあさんは英語がわからないらしくて交渉は難航。すると穹が……

「Kui palju maksab?」

と、ひとりでに交渉を始めます。どうやら言葉が喋れるみたい。驚いたハルは、少しでも喋れるなら最初から交渉したり、通訳したりしてくれと言いますが、穹はそれだと勉強にならないといいます。またここへ来るのだし、勉強するつもりで頑張ってと。穹は指輪に描かれた文字の意味もわかっているらしい。
意地悪な気もしますが、ハルは俄然やる気を出します。言葉の意味も知りたいし、穹とまたこの国へ、両親が旅した様々な国にも行ってみたい。少しずつだけ、やりたいことが形になっていく。

そして穹は、両親の後を追い続けるハルの心強いパートナーになってくれます。

二人でこれからも一緒に……指輪に約束を交わして、これからも、ずっと二人一緒にあり続ける事を誓い、それを守り続けようと。

穹がハルに指輪を見せて微笑む。ハルは心に誓いを立てると、穹の手に自分の手を重ねた。

穹は嬉しそうに頷き、ハルの手をギュッと握りしめるのでした。



蒼穹の果てにはこれにて完結です。攻略する箇所もないので振り返ることと感想に徹しましたが、如何だったでしょうか。とにかくこの言い知れぬ感動を味わうには、ヨスガノソラハルカナソラをプレイするしかありません。蒼穹の果てにだけで4万字、 ハルカナソラだけで5万字近く書いてきましたが、次の日記は総評みたいな感じにしようと思います。後は、カラオケとソイネノソラについですかね。

さて、ここで少し文字数があまったので蒼穹の果てにでハルと穹が滞在していた国についての考察を。ヨスガノソラスレでも意見が分かれていますが、おそらくはバルト三国のエストニアだと思います。フィンランドから船で1~2時間、お隣にある観光国です。
理由はいくつかありますが、少なくともフィンランドではないと思う。確かにチケットはヘルシンキでしたけど、それは日本からエストニアへの直行便がないからで、ハルも飛行機を乗り継いだと回想しています。フィンランドは直行便があるはずですし、偶然チケットが取れなかったという可能性はあるにせよ、行き先ではなかったんじゃないかなと。
次に、ハルと穹が行ったノミの市は滞在国で開催されているものです。ノミの市自体は欧州ならどこでもやっていますし、夏という時期にもあっています。ただ問題は、ノミの市は周辺地域からの品物が集まるのが特徴であり、作中でもそれは説明されていますよね。
ハルが穹に買ってあげた指輪に書かれた文字、Siunausは、フィンランド語で祝福を意味する単語です。フィンランド語辞典に載ってたからこれは確か。ハルはこの言葉を、「この国の言葉じゃないみたいだ」と言っています。フィンランドに滞在しているならそんなことは言わないでしょうし、おそらくエストニアのノミの市にフィンランドの品が流れてきたんでしょう。そういうことは、良くありますし。
決定的なのは、穹が指輪を買う際に発した言葉、「kui palju maksab?」です。文法はともかく、これはエストニア語で、「これはいくらですか?」とか、そういう意味の言葉です。Siunausが他国の言葉で、kui palju maksab?がその国の言葉なら、これはもう滞在先はエストニア語で決まりでしょう。ヘルンシンキは引っかけか、それとも経由便として名前が出てきただけだと思う。どうにも滞在国を明らかにしたくないみたいですし。

フィンランドは森と湖の国と言われるほどに自然が豊富ですが、エストニアだって同じようなものです。ハルと穹が馬車に乗った農地だって、エストニアの田舎道にはありがちな光景で、フィンランドの大差はありません。
ただ、エストニアだった場合、一つにして最大の疑問がありまして、エストニアって北欧ではないんですよ。バルト三国だから北ヨーロッパには含まれますけど、北欧諸国には入らないんです。フィンランドは入りますけど。
シナリオライターの勘違いか、それとも混しているのか、どちらにせよこの辺りの疑問がある限り、エストニアだという断定も出来ないんだよね。単に北欧という環境や響きの良さでチョイスしたのかも知れないけど、だったらフィンランドにすれば良かったわけで。なんでまたエストニアを選んだんだろう。観光地であるからして滞在先はフィンランドだけど、ノミの市自体はエストニアで開催されていたものに行ったのでは? という考えも出来なくはないけど、滞在国のノミの市であるとハルは明言してますし。
まあ、エストニアでほぼ確定していいと思いますけど、あの国って治安良かったかな……いや、欧州諸国の治安なんてどこも似たようなもんだし、フィンランドの辺りは確かによさげであるとは聞くけど。まあ、治安は日本に比べて悪いかマシかのどちらかだよね。

私も独自に色々調べていますが、ハルカナソラのプレイもひとまず休憩。クッキーを買いつつ、シルバーアクセサリーを眺めに、少し出掛けてくるとしましょうか。

ハルと穹、二入の人生に史上最高の祝福を!

春日野穹bot→URL:http://twitter.com/sora_k_bot
ヨスガノソラ コミックス1巻画像レビューページ
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コンプエース版ヨスガノソラ、早くも第2話が掲載されました。1ヵ月なんてあっという間ですね。ヨスガノソラのためだけに680円は高いんじゃないかと、私のけちくさい性根が叫んでいますが、確かにヨスガ以外に読む物がない雑誌なんだよな……先月は、なのはが少し良いかなと思ったんだけど、前言撤回、あれはダメだ。
早く映像コンテンツを復活させないと、紙媒体とゲーム媒体だけで人気を維持するのは不可能なんだから。

穹の転校初日から始まる2話目ですが、歓声に対し愛想の欠片もない表情を浮かべてる。考えてみれば、原作では穹のクラスって描かれたことないんだよね。担任も判らないし、どんなクラスなのかまるで情報がない。穹の視点に切り替わることは原作でもあるけど、教室内ではないから少し新鮮だった。
扉絵は穹、瑛、渚さん、そして初登場となる委員長の体操服+スク水、プール掃除の絵です。穹がホースを、瑛と渚さんがデッキブラシを持っていますね。原作でもそういやこんなイベントがあったなぁ。登校シーンが省かれたので、既に亮平たちと穹は顔を合わせている設定。亮平は前回出会った美少女が穹であることを知り、テンションが上がってます。
プール掃除には穹も参加してるけど、奈緒との一件以来、機嫌が悪いままのようです。まあ、ここら辺は原作と同じだね。委員長とハルの絡みもあるけど、委員長がハルに惚の字だというのを判りやすく書いてます。亮平にもからかわれてるし。
デッキブラシでプールの底をスイスイ滑る瑛は、勢い余ってハルに衝突。前回に引き続きエロ要因として69体勢になります。当然、瑛が上でハルが下。掃除仕掛けの場所ですっ転んだもんだから、ハルの体操服が汚れてしまう。責任を感じた瑛は丁寧にも洗濯をするといい、成り行きでハルは瑛の家に行くこととなります。その過程は穹も見ていたんですが、瑛とまだ仲が良いわけでもないので、面白くなさそうにしています。
駄菓子屋の前で待ち合わせたハルと瑛……なんだけど、学校から一緒に下校すれば良かったんじゃないだろうか。わざわざ体操服持って後から出向くというのもなんか不自然。まあ、それは良いとしても、瑛は折角だからと駄菓子屋伊福部商店の店主、やひろを紹介します。ハルは瑛の姉なのかと問いますが、問われたやひろははぐらかし、

「あんまり余計な気は回すんじゃねーぞ」

と、一言だけ忠告します。事情を知らないハルは当然困惑するわけだけど、なるほど、最初は瑛ルートから始めるみたいです。初佳以外は対になってるシナリオだし、考えてみれば2つのシナリオで4人のヒロインを片付けることが出来るんだよね。コンプエースという雑誌的に、亮平が深く関わる初佳シナリオはやりそうにないし、前半を瑛&渚さんシナリオ、後半を奈緒&委員長&穹シナリオにするのかな。
やひろとの対面を終えたハルは瑛の言え、神社へと上がります。巫女姿の瑛を可愛いなと思いつつ、飼い猫というか居候猫の師匠にも会います。ハルは興味を持ちますが、師匠のほうはそうでもないらしい。瑛曰く、気難しい性格をしているらしい。
一人暮らしだという瑛に、ハルはどうしてなのかと尋ねます。言いたくなければ構わないというハルに、瑛は気にせず自身の生い立ちを話していく……わけだけど、いや、まあ、いいか、後で書こう。春日野医院で生まれたことや、母親に捨てられたこと、神社の神主だった天女目老人の養女になったことなどを話す瑛。天女目老人亡き後、やひろが保護者になってくれたことも明かします。町の人たちのおかげで、自分はここにいることが出来る。
そんな風に語る瑛に、ハルは尋ねます。一人は、寂しくないのかと。瑛は笑って答えます。全然、と。友達はいてくれるし、ハルくんだって両親がいないのに頑張ってるじゃないと言う瑛に、ハルは「僕には……穹がいるから」と、無意識に穹の名前を口にします。

「私には家族はいないけど、、みんながいてくれる。だから身近な人やこれからの出会い、それにこの家も大切にしてきたいんだ」

そんな風に自分の考えを口にする瑛に、ハルも共感を覚えます。瑛はハルが微笑を浮かべたことに安心し、学校でつらそうな顔していたから心配していたといいます。まあ、それは穹との喧嘩が原因なんですけど、見抜かれたことに驚くハル。すると瑛は、急に動揺したようにお茶を淹れに言ってしまいます。なんか、余裕の塊みたいな瑛には珍しいですね。照れくさかったのかな?
もしかして元気づけようとしてくれたんじゃ、と思うハルですが、結論が出るより早く、神社に新たな訪問客が。「お姉ちゃん?」と、呟きながら現れたのは渚さん。瑛がおらず、ハルがいることに驚いた彼女は、ハルをキツイ視線で一睨みすると、踵を返して退散してしまいます。なにがなんだかサッパリ判らないハルは、渚さんの呟いたお姉ちゃんという単語が引っかかるのでした。

帰宅したハルは、先帰っていた穹がお菓子を食い散らかしている現状に頭を抱え、穹の部屋に行きます。とはいえ中には入らず、ふすま越しに注意をするだけ。どうやら穹は真元にご飯を食べず、お菓子だけ食っている模様。
くたびれたハルは、改めて穹に先日の喧嘩の件を詫びますが、相変わらず理由は判っていません。教えて欲しいと頼みますが、穹は無言を貫き通します。

「僕ら兄妹なんだから」

ハルの言葉は、穹の微妙な感情を指摘します。対等な双子であるとは言っても、兄妹であることには違いないし、この時点でのハルがこのような認識をしていても、おかしくはないです。ないのですが、殊更口に出して言うべき事なのだろうか……ふむ。ハルにとって自分は兄妹でしかない、穹がそのように再認識すると共に、2話は終わります。


なんていうか、書きたいことは色々あるんだけど、作画とかその辺りよりも構成が微妙だと思った。エロゲのシナリオをそのまま再現するわけにもいかないから、ある程度は削らなきゃいけないんだけど、削る場所を尽く間違えているというか。
1話において引っ越しのシーンを削ったのもそうですが、ハルと穹の関係や、穹の可愛い部分、可愛げがあるところの大半が削られてしまっている印象を受けます。これじゃあ、穹が単なる愛想の悪い妹でしかない。ハルと学校に通うことにこっそり喜びを覚えてみたり、別々のクラスだと知ってあからさまに落胆してしまうシーンが軒並みカットなんですよ。始終イライラしているというか、穹の可愛らしさが欠片も出ていない。これは憂慮すべき事態です。誰が構成担当してるのかは知りませんが、軌道修正をするべきかと。1話の時点では下着姿とかに騙されましたけど、よくよく見るとあんまり穹が優遇されていない……原作側は原稿のチェックしていないんですかね。穹との日常パートを削ることで、ハルと穹の間にある険悪ムードが全然消えない。これじゃあ、仲が悪いみたいじゃないかー。
作画に関しては……確か、今回から背景のアシスタントさんが入るはずなんですけど、前回と比べて誌面が白い気がするのは何故だろう。師匠のトーンも一部張ってないところがあったし、穹の部屋に関しても間取りというかベッドの位置取りが違うような。いや、それは別にいいかな。大した問題じゃない。
あんまりベタ使いませんよね。時間的都合もあるんだろうけど、線だけで勝負している感じがする。まあ、トーン張るのも労力いるからねぇ。作画に関してはこれといって文句もないし、穹が可愛ければそれで良いんだけど……話の展開がなぁ、酷いとはいわないけど、宜しくないというか、穹が可愛くない話運びになっている気がしてならない。瑛シナリオが終わるまで穹とはずっとこんな感じとか嫌ですよ。穹のイメージが悪くなるじゃないですか。
瑛シナリオにはいるなら入るで、奈緒を強力排除してハルと穹の間にとりあえず平穏を取り戻させ、奈緒が再登場したらぶり返すようにするとか、いくらでもやりようはあるじゃないですか。まさか、喧嘩を引きずったままになるとは思わなかったので、意外というか心外でした。さっさと仲直りして欲しいものです。680円払う意味がなくなるので。

インターバルといいますか、ハルカナソラ感想の合間に漫画版の感想を書いてみました。ハルカナソラの残りは今書いているので、もう少しだけ待って下さい。さすがに穹シナリオは長いというか、書きたいことが沢山あり過ぎて困りますね。しかし、コンプエースは本当に読むマンガが少ないというか、エクリップスも終わっちゃうし。歌いながら終わるとかどこのマクロス。ヨスガノソラは……アンケートにでも少し書こうかな。今のままで行くのは、ちょっと厳しい気がするし。原作が好きだから読んでいるのが今の私なわけだけど、漫画も単体で楽しめるぐらいにはなって欲しいですね。期待しています。
ハルカナソラ、春日野穹シナリオ-蒼穹の果てに-感想日記第2弾です。どうせ、HPにも長々としたコンテンツを作ると思いますし、今回も1万字程度にしておこうと思います。でも、今日で最後まで書く予定だから、あるいは2万字近くなるのかも知れない。


~クッキーのお味はいかが?~
どうやら穂見学園では男子と女子で授業が分かれることがあるらしい。体育の授業は当然として、技術は男子、家庭科は女子、一般的には普通なのかも知れないけど、私には少し新鮮でした。というのも、私が中学時代は男女ともに技術、家庭科の授業をやっていたんですよ。高校にはあいにく技術の授業はなかったんですが、それでも家庭科は小中高と全部やったな。私がそれなりに料理出来るのも、経験を積んでいるからかな。
まあ、私の話はどうでも良いとして、瑛や穹はクラス合同の調理実習があるとかで、材料を抱えて調理室へと行きました。材料は昨日の買い物の際に買っていたと良い、対するハルは女子からのお裾分けを期待する亮平と共に技術室へ。DVD入れとやらを作るらしいです。はんだごてとかじゃないんですね。
午前中の授業だったようで、女子はそのまま調理室で昼食らしく、久しぶりに男二人で飯を食うことになったハルと亮平。グランドの隅に陣取って、普段は出来ない男同士の会話をします。亮平は自分がまだハルと穹について完全に理解できていないことを白状しつつも、友達をやめるつもりはないことだけは明確に宣言します。男同士の友情を感じつつも、亮平の年上としての一面を見たハルは、その姿に兄貴っぽさを憶えます。ハルは兄妹がいると言っても双子ですから、年上に対する憧れがあるのではないかと自己分析。まあ、この時点ではともかく、ハルは穹を妹として、年下扱いすることもあったみたいですからね。対等な関係とはいえ、年上に憧れる気持ちも判らないではない。
気恥ずかしい話はやめにして、女子が来るのでも待とうという亮平。まあ、期待の程度差はあれ、瑛は普通にくれそうですからね。お約束的展開とシチュエーションを想像する亮平ですが、先にやってきたのは瑛ではありませんでした。

「えいっ! ハル、こんな所にいたの?」

妙にテンションの高い穹が、背中からハルに抱きついてきました。じゃれつく仕草は、別人のように明るく、はつらつとしたもの。いや、可愛いというレベルを一瞬で突破しました。実習で作った物が上手くできたので持ってきたと言うことですが、先ほどまでのローテンションぶりとは見違えるように、楽しそうにはしゃいでいます。ハルは驚きつつも、上手くできたことがよっぽど嬉しかったのだろうと思います。穹が笑うと僕も嬉しくなる、そんな風に考えるハルが最高に可愛いです。照れてはいるけど、きっとニヤニヤしていたに違いない。
調理実習はクッキーとのことですが、これは結構意外でした。いや、CG自体は公式にもありますし、前々からクッキーであると知っていたんですけど、調理実習で作った物というのはここで初めて知りましたから。昼食も一緒に済ますぐらいだから、もっと食事的なもの、ご飯やおかずになるものを作るかと思ったんだけど、クッキーなんだ。穂見学園は弁当の持参が強制ではなく、学食はないけど購買はあるから、みんながみんな弁当持参できているとは限りません。一部女子は、わざわざ調理室から購買まで買いに出掛けたのだろうか?
まあ、実につまらない、些細な疑問なので考えないことにしましょう。でも、どうだったかな。私も調理実習でケーキを焼いたことがありますよ。ほとんどの班がホール型のケーキを焼いているのに対し、私が主導してロールケーキを作りました。チョコレートクリームロール、巻くのが結構楽しかった記憶があります。

話を戻して、クッキーを持ってきた穹は、上手に焼けたのでハルに食べて貰いたいと言います。ハルはまだ弁当の途中だったので、当然弁当を片付けてから食べるよというのですが、穹は今すぐ食べて欲しいと言います。確かに、クッキーは焼きたてが一番美味しいですからね。冷めても美味しい奴は美味しいんですけど、風味に劣るんですよ。焼いた後の保存法には、私もよく気を使います。
とまあ、さすがに弁当食いながらクッキーはつまめないと思ったハルは、とりあえず弁当を先に食べようとするのですが、それに対する穹といえば、

「いらないんだ……」

「そうなんだ……ハルはクッキー嫌いだったんだ」

凄いです。新手の攻撃法が実践されました。しょげて見せたところに力業を敢行し、さすがのハルも受け入れざるを得ません。その仕草がまたいじらしいというか、可愛いなぁもう!

「ふふふっ、はーいハルっ、あーんして?」

半ば強引に押し切られる形で、ハルは食べさせて貰います。
そしてビックリ、これが凄い美味しかったらしい。舌の上でさくっと溶ける食感に、まだ温かく、ふんわりとしていたようです。クッキーの王道というか、焼きたてそのままの描写ですね。市販のクッキーではなかなか味わえませんよ。ハルは羨ましい奴だ。
穹はかなり頑張ったらしく、みんなの材料を全部使い切りつつも、上手に焼くことが出来たらしい。朝のパンもそうですけど、穹は材料消費が激しいですね。それでも最終的に上手く完成させることが出来るのは、穹のセンスがいいからなんでしょうけど。
また一つ料理を憶えたことが嬉しい穹は、弁当を食べるのを再開しようとするハルに、もっと食べてとクッキーを食べさせようとします。
時間にして何分経ったのか、穹が現れてから無言だった亮平が躊躇いつつも発言。ハルは折角だからと、亮平にもお裾分けするように言うのですが……

「誰?」

「ハル……変なこと言わないで。誰もいない」

丸無視もいいとこですが、ここは笑ったなぁ。巧みな動作で亮平を視界に入れない穹って、そこまで嫌いなのかw ハルはなにせ先ほど亮平に友情を感じたばかりですし、穹の反応はあまりに失礼と思ったのかお裾分けするように諭します。

「……ハル、今何か言った?」

ハルの言葉に、あろうことかつまんだ指先でクッキーを粉砕する穹。ま、まあ、焼きたてのクッキーは柔らかいからね。冷えて硬くなったのならともかく、焼きたてならば指先の力だけで粉々にすることも……いや、凄いことに変わりはないけど。ハルじゃなくてもビックリですよ。
穹の焼いたクッキーは4種類の味があって、ネットでレシピを調べたそうです。どれも美味しいことは美味しいのですが、クッキーばかり食べ続けるのも辛いです。そこでハルは飲み物がないので買いに行くことで時間を稼ごうと思い、亮平にアイコンタクト。先ほど友情を確かめ合っただけあって、亮平はハルの意図を察し、穹へ一緒に飲み物を買いに行こうと誘います。しかし、上手くいくわけもなく、「じゃあ、クッキー一掴みあげるから、私たちの飲み物も買ってきて」と逆に懐柔されてしまう。紅茶以外いらない、というのはハルも紅茶を飲むと言うことですけど、良い好みしてますね春日野兄妹は。コーヒーも飲むようですけど、やっぱり紅茶でしょう。
亮平という邪魔者がいなくなったことで、穹はこれでもかと言うぐらいハルにじゃれつきます。ハルは亮平を追いかけようとしますが、またもや指先で粉々となるクッキー!

「あ、これはちょっと失敗作だったかな」

ハラハラさせてくれるというか、決して怖くはないんだけど、ハルはかなり動揺しています。単にじゃれ合ってるだけならともかく、穹の積極性というか感情の発露に驚いてるのかも。一番苦労したというバニラ味のクッキーを、穹にほっぺたをプニプニされながら食べるハル。可愛い、この二人の可愛さは凄まじすぎる。
このイベント、白波遥がちゃんと演じ分けているというか、穹が明るくなったらこんな感じなんだろうな、という声を見事に出してるんですよ。役者はやっぱりこうでなくっちゃ。
一人で食べきれる量でもないから、ハルアは改めて穹へ一緒にお昼にしようと良い、なんとか落ち着くことが出来ました。切り返し様に穹にも食べさせてあげると、ハルの奴、いつのまにこんな高等テクを!?
ハルは若干、穹の心理を勘違いしているというか、確かに穹はクッキーが美味しく焼けたことも嬉しいんだけど、それをハルに食べて貰い、ハルが美味しいと言ってくれることに喜びを覚えているんですよ。ハルから食べさせて貰うと美味しいというのも、穹の心理的には凄く重要なことなんです。
クッキーよりも甘いいちゃつきを展開する二人ですが、ハルもなかなか独占欲が強いというか、可憐で儚げな穹の笑顔を自分だけに向けさせることは出来ないか、なんてことを考えたりしています。心配するなというか安心しろ、元からハルにしかその笑顔は見せてないから。
珍しく、ハルが穹に圧倒されています。苦笑しつつも、今日の穹には敵わないとぼやくハル。口移しでクッキーを食べさせて貰おうとしたら、フェイクで口元にかすめるようなキスをされたり、そのときのハルが、

べっ、別にキスしたかったとか、そういうわけじゃないんだからな

萌える、萌えるよ。主人公なのに、男の子なのに、なんでハルはこんなに萌えキャラなんだ!
穹じゃなくて認めてしまう可愛さだよ! ハルは不本意というか、格好いいといって欲しいんだろうけど、このときばかりは可愛さが上回った。
あまりのイチャラブっぷりに戻ってきた亮平が倒れ伏しますが、渚さんですら同情してしまう光景だったらしい。確かにまあ、これは強烈だよ。見ているこっちが恥ずかしくなってしまうもの。そんな亮平は素直にも紅茶を買ってきており、穹も仕方ないのでクッキーを上げます。4枚しか持って行かないところが亮平らしいというか、気を使っているつもりのようです。まあ、瑛からも貰えますからね。最初に委員長のを食べたのは、運がいいのか悪いのか。委員長的には最悪みたいだけど。
和やかだよね、無理に作っている空気という見方も出来るけど、ハルがいて穹が居て、友人という名の仲間たちに囲まれて、それまであった重苦しい雰囲気は一時的にも消えました。jハルはこの先も苦い思いをすることは沢山あるのでしょうが、今はそれも、クッキーの甘みが忘れさせてくれます。微笑ましい、そう表現できるだけの一幕でした。

~ヒキコモリ、なめないでよね~
同日の放課後、帰宅途中の穹の携帯が鳴り響きます。ハルは最初自分の携帯かと思ったようですが、この双子は着メロも同じなんでしょうか。それとも、着メロは設定していないのか。ハルは穹にメールが届いたことに驚きます。自分へのメールと、ネット以外には利用していないと思っていたそうです。まあ、その考え自体は間違ってないというか、穹にはメル友いないんですけどね。穹にも友達ぐらい居るし、とハルは思い直しますが、私は余り居ないと思うなぁ。入院していたときに知り合った人は皆無じゃないだろうけど、それほど深い繋がりが残っているかどうか。
メールをチェックした穹は、ハルに明日は買い物などをするかと訊ねてきます。昨日穹に買ってきて貰ったばかりですし、特にするつもりはないというハル。穹も欲しい物はポテチなどのお菓子ぐらいで、昼間のクッキーはあくまでハルに食べて貰いたいようです。当のハルは昼間に食べ過ぎて全然お腹が減っておらず、穹が家でもクッキーを作り出したらどうしようと、贅沢な悩みを抱えるのでした。そうなんだよね、新しい料理を実習とかで憶えると、家でもチャレンジしてみたくなっちゃう。私も家でケーキとかクッキー作りましたよ。そういや、最近は全然作らなくなったなぁ。

翌日になって、授業休みの合間に穹がハルの元を訪れます。亮平が居ないから堂々と入ってくるというのも、それはそれでどうなんだろう。なんでも英語の辞書を忘れた、というより重いので持ってこなかったらしい穹。置き勉とかしてないんですかね? どうやら毎日持って帰っているようですけど、私は高校時代はロッカーに突っ込んでたな。鍵付きだったから、盗まれることもなかったし。
穹は良いこと思い付いたと、教科書を貸し合えば持ってくるのが半分で済むと双子ならではの提案をします。穹が現代文、日本史、グラマーと、明らかに少ない数を担当し、残りがハルとのことですが……グラマーって、穂見学園では英語の授業がリーダーとグラマーに分けられてるのか。もしかしたらリスニングも? 田舎なのに進んでいるというか、私の母校は英語で一纏めにされていただけにビックリだ。それとも、世代差なのかなw
ハルはこんな非建設的な提案を当然拒否しますが、逆に瑛が乗っかろうとします。渚さんを誘いますが、同じクラスでは意味がありません。だったら穹とすればいいと、瑛は穹を見つめながらその手をひしと掴み、辺りには絶対運命黙示録的な空気が漂い……漂ったところを渚さんに叩かれました。反射的に、穹も叩いてしまった渚さん。謝りますが、実は大して痛くもないらしい。今後の貸し借りはともかく、とりあえず今は英語の辞書が必要ということで、ハルは貸そうとするわけですが、その直前に彼の携帯が鳴り響きます。電話を掛けてきたのは郵便局で、以前の住所から手紙などが転送されてきたらしい。引っ越しの経験がない私にはイマイチピンと来ないのですが、なんでも1年間は旧住所から新住所に手紙などを届けてくれるそうで。ハルの元に届くのは大半がダイレクトメールだけど、中には亡き両親宛のもあるとか。両親の不幸を知らない人もいて、ハルにとっては気の重い話でもあるようです。
郵便局員が直接届けてくれるらしいので、ハルは土曜日の午前中を指定します。あぁ、穂見学園は週休二日制なんですね。今はどこもそうか。

下校時間となり、なにかのお稽古ごとがある渚さんが一足先に帰り、ハルも教室まで迎えに来た穹が、何故か帰りを急いでいるので足早に帰宅。ぬくもった室内に、穹はエアコンが欲しいと漏らします。私の予想通り、春日野家は引っ越しの際に大半の便利家電を処分してしまったようです。テレビもありがちな液晶じゃないですし、でも、エアコンぐらいはあっても良いような気が。奥木染は冷涼な気候って感じもしませんし。秋や冬は違うのかな。
夜になって、食事の仕度が行われている春日野家に訪問客が。聞き覚えのない声にハルは戸惑いを憶えますが、逆に穹はスッと玄関に向かいます。穹だけで対応するのかと思いきや、ハルも着いてくるようにいいます。言われるがままに着いていくハルは、まさか穹の知り合いが訊ねてきたのかと動揺します。なにせ声は男のものですし、しかも夜訊ねてくるなんて……そんなことを考えつつも玄関のドアを開けます。
ハルの心配は杞憂に終わり、玄関の先にいたのは宅配会社のコウノトリ便でした。ペリカン便の分家かなにかでしょうか、春日野穹さん宛のお荷物が代引手数料込みで1638円だそうです。意外に安いですね。
当然の如くハルに払わせた穹は、そそくさと部屋に退散します。分けが分からぬハルは勢いで料金を払ったものの、穹がなにを購入したのか気になり部屋へと乗り込みます。ここでのやり取りがなかなか可愛らしいんだけど、昨日携帯で注文した物が、奥木染のような田舎でも翌日配送だなんて、特急お届け便は速さが違いますね。
ハルは穹にお小遣いを渡していなかったこともあって、それほど強くは叱りません。そりゃ、穹だって年頃の女の子だから、日用品以外にも欲しい物ぐらいあるでしょう。ハルは元々物欲が少ないのか、それとも自制心が強いのか、娯楽などにはあまり手を出していない印象を受けます。現に、春日野家にはゲーム機がないみたいですし。
なにを買ったのか、穹は食事が終わったら自分の部屋に来て欲しいとハルに頼みます。もしかしてなにかくれるのか、買い物はプレゼントだったのか、とりあえずハルはご飯の仕度に戻ることにします。そんなハルを見送りつつも穹は――

「…………フッ」

と、小さな微笑を漏らすのでした。

食事と後片付けを終え、穹の部屋へと訪れたハル。ハルが穹の部屋を訪れるのは、その逆に比べるとさして多くもないような気がします。見るとこまで見た間柄といっても、女の子の部屋ですからね。遠慮もあって、気軽には入れないのでしょう。
で、そんな穹の部屋と招き入れられたハルが見たものは……ひたすらパソコンでネットサーフィンをする穹の姿。ハルをノーパソの正面に座らせて、自身はその膝の上に腰掛けるという可愛らしい体勢です。双子でも、二人には体格差があるのでハルが穹を抱え込む感じ。微笑ましい光景だね。
穹は片腕でお気に入りのぬいぐるみ、初回版にも小さなレプリカが入っていた黒うさぎを抱き寄せながら、時折頭を撫でたりしています。どうにも母親から買って貰ったものらしく、肩身の品のようです。ハルは良いものを見せてくれるというので付き合ってるのですが、この状況で自分に椅子以外の役目や意味があるのかと疑問に思います。例しに訊いてみますが、穹は久しぶりのネットなので巡回が忙しいらしい。基本的にはファッションなど、洋服関連のサイトや掲示板を見るのが趣味のようです。アパレルって奴ですかね。ハル曰く、穹が好んで着ているゴシックロリータ、正確にはゴシック・アンド・ロリータを扱うお店のページや、それに類する物が主らしい。
ゴスロリ、ゴスロリですか……穹ってゴスロリ着てたっけ? いや、ゴスロリって例外はあれど基本的に黒じゃないですか。いや、白もあるよ、白ゴシックもあるにはあるけど、穹の服装のどこら辺がゴスなんだろうか。私には単なる白ロリにしか見えないというか、ゴス要素が見えてこない。いやまて、外出着の方はそうでもないか? 確かあれと似た感じの服を白ゴスロリとして見たことがある気も……ダメだ、ムックで良いから設定資料が欲しい。ロリータファッションは、以前現代日本文学を研究する過程で、物のついでに勉強したことがあります。身内がはまりまくっていたってのもあるんだけど、あれは良いサブカルチャーだと思う。勉強や研究が意外なほど楽しくできます。
話を戻して、眺めているだけのハルは困惑しつつも、核心的な質問を穹にぶつけます。

「あのさ……ウチって、いつネット回線引いたんだっけ?」

いつもは携帯でネットしているのに、今日はなんでパソコンなのか。回線がない以上、パソコンでネットは出来ないはずなのに、なんで今出来ているのか。

「で、パソコンにケーブルで携帯がつながってるんだけど、これっていつ買ったの?」

穹は膝に抱えていたぬいぐるみを抱きしめながら押し黙りますが、

「とっ……トイレ………」

形勢不利を悟ったのか、一時避難を決めた様子。当然の如くハルに阻止されますが、コウノトリ便の中身はパソコン用のネットケーブルだった模様です。携帯を使ってネットに接続するあれです。
部屋に誘われたことでなにかいかがわしい期待をハルはしてしまったようですが、彼の勝手な憤りはどうでも良いとして、携帯でパソコン繋ぐともなればパケット代が馬鹿になりません。確かに、電話料金の仕組みは判りづらいから、気がつけば莫大な料金を請求されることもあります。とはいえ、そもそもの原因はあれこれとごまかしつつ家にネット回線を引くことを怠ったハルにあるわけで、そこを指摘されるとなにも言えません。ハルとしては都会時代の、ネットひきこもりな穹に憂いを憶えてそのような処置をし取っていたのですが、どうにもネットジャンキーの禁断症状が出たらしい。強硬手段を執ったというわけです。
とはいっても、どうして今になってという疑問もあります。おそらくですが、穹にも精神的なゆとりが生まれたんじゃないでしょうか。色々あって奥木染に越してきて、最初の内は生活するだけで精一杯、嗜好品はともかくとして、贅沢や娯楽が制限された暮らしでした。対人関係における問題もありましたし、のんびりネットを楽しむ余裕がなかったんだと思います。自身とハルを取り巻く様々な問題が、一応の解決を見せたことで、穹にとっての期が熟したんじゃないかなと。
現に穹は、ハルと一緒に楽しむためにネットを導入したと言ってますし。発売前のカウントダウンで明かされていましたが、ハルの趣味はファッション、お洒落みたいです。さすが、今時の都会っ子だっただけに、ハルは洒落者というわけですね。私はファッション関係はまるで興味がないし、関心も向かないので全くと言っていいほど用語や種類を憶えません。ロリータみたいにサブカル研究の一環としてならともかく、一般的な服装はなぁ……親が昔アパレル関係の仕事をしていましたけど、親や知人に言わせるとセンスだけはあるらしい。センスがあるのに興味を持とうとしないから、一向に磨きが掛からないとかなんとか。私としては服装に金と時間を使うぐらいなら、もっと本に注ぎ込みますけどね。数少ない趣味ですから。
誰にだって趣味の一つや二つ合って、穹の趣味はネットです。数日でここまで用意してしまった行動力に呆れつつも、穹にだって趣味を楽しむ権利ぐらいあるとハルも思い直します。ましてや、自分と一緒に見たいというなら尚更です。
気を取り直して、穹が見せたがっていた服のページを見せて貰うハル。穹の行きつけのようですが、男物も扱っているらしい。あれですかね、MILKで言うところの、MILKBOYみたいな感じなんでしょうか。例えが安直というか、貧相な気がしないでもないけど。
ハルは服を選ぶセンスだけはあるらしく、早速お洒落シャツに目を付けます。最近は洋服も通販で普通に買えますが、服はお金が掛かる趣味ですからね。ハルは躊躇いますが、穹はハルもたまにはお洒落をするべきだと諭します。Tシャツを着てても格好いいのがハルだけど、そればかりでも嫌なのが正直なところ。
ズボンや靴、帽子などに目移りしていくハルですが、穹は一式購入することを勧めます。ハルに似合う帽子を薦め、ハルからもそのセンスを褒められます。なんでも穹曰く、亡くなった母親からコツのようなものを習ったそうです。穹がよく着ている服も、母親と一緒に選んだらしい。コツというのはハルも以前聞いたことがあるらしく、着た後のシルエットも考えてみるのが良いのだとか。これは少し、判る気がするな。私は服は組み合わせ重視だけど、服というパーツを組み合わせて、最終的にどんな形で完成されるのかは思い浮かべたりします。基本的だけど、なかなか見落としがちなことなんでしょうね。着るのは自分なんだから、自分で思い浮かべないと。
過去の想い出に浸るハルに、穹は黒うさぎのぬいぐるみも母親が選んでくれたものだと言います。ヨーロッパ土産だったらしく、何個かある候補の内、穹が選んだのがうさぎのぬいぐるみだったらしい。偶然か、感性の一致か、母親も同じ物が良いと思っていたらしく、穹は嬉しかったそうです。大事にしていることは知っていましたが、穹にとっては形見以上のものであることを認識し、自分にそういうものがないハルは、少しだけ羨ましく思います。
穹の気になっている服を訊ねるハルに、穹は欲しいと思っていた白い服を見せます。ハルのそれと大して変わらぬ値段でしたが、残念ながら完売していました。服屋にありがちな1回限りで売り切る店らしく、再入荷は見込めない。そこで穹は服屋のサイトを横断検索しながら、どこかに残っていないかと探し始めます。個人的に、オークションで落とすのは嫌らしい。まあ、着るものオークションで買うのはあまりいい気分じゃないかも。しかし、ハルのオークションの発想が、一般的な競売だったのが笑えた。ネットに縁がないと、そういう思考に結びつくんだ。
ハルが良いと言ってくれたものを新品で買いたい、穹はムキになって検索を続けます。30分ほど検索を続け、いい加減に足の痺れなどに参ってきたハルは、ネットではなく店舗で買うことを勧めます。すると、偶然にも隣町のアーケード街のショップに、小さなコーナーがあることが発覚。今度のお休みに行くことになりました。一緒に買い物へ行けることとなって、穹の表情に笑顔が戻ります。
そんな穹に安心しつつ、ハルは頃合いを見て部屋を抜け出し、ネットジャンキーな穹に付き合うことの大変さを思い知ります。

「ヒキコモリ……なめないでよね………」

注意したところでそう言い返されることは目に見えているので、ハルはとりあえず思いっきり趣味に走らせてみようと自身を納得させます。自分とのお出かけプランを楽しげに立てている穹を見ながら、あるいは穹の禁断の封印の一つを解いたのではと思いながら。

~かっ飛ばせホームラン! すっころべしりもち~
「さてと……」という台詞で繋ぐことが多いハルの学校生活。何時間目、何時限目かは判りませんが、次の授業は体育だそうです。穂見学園では男女別々の教室で着替えるそうなので、ハルと亮平は隣のクラスへ移動。ほとんどの学校では形骸化してるよね、着替えるときの移動って。高校時代は教室の目の前に女子用の更衣室があったにもかかわらず、誰も使っていなかった。なんのために存在していたんだろう。
隣のクラスから着替えのために穹が来るも、なんだか眠そう。ハルが言うには昨晩は遅くまでネットしていたとかで、きっと気付いたら明け方とかそんな感じだったに違いない。電話料金と穹の体調を気にするハルですが、穹は多分大丈夫だといいます。とにかく女子が着替える教室にいつまでも居られないので亮平と共に廊下へ出ますが、亮平は穹が夜更かししていたらしいことに興味を覚えます。
携帯を持っていない学生が多いように、ネットの普及率も奥木染ではまだまだ少ないらしい。ただ、ネットで夜更かしがイコールでゲームに結びつくぐらいは、亮平にも知識があるみたい。とはいえ、穹はネトゲをやらないので亮平の想像は外れてます。パズルとか、静かなのしかやらないらしい。なんか穹はパソコンに入っているゲームだけで満足してそうなタイプだよね。
男子の体育はソフトボールと言うことで、ハルと亮平は守備についています。こういう場合、大抵ピッチャーを務めるのは軟式、硬式、もしくはソフトボール部に所属しているクラスメイトとなるのですが、ハルのクラスも例外ではないのか、ピッチャーが優秀なためちっともボールが飛んできません。あまりにも暇なので女子の方を見ると、女子はバレーボールをやっていました。穹、瑛、渚さんのチームみたいですが、穹は対球技用の結界を張っているのか全くボールを寄せ付けない。まあ、私もこの世にある球技とはボールから逃げることだと思っていますけど。
気を聞かせたのか、棒立ち状態の穹に瑛がボールをトスしてパスします。穹は突然のことに慌てふためきますが、ボールを落とすことなく片手で返します。遅球だったためか、相手チームが受け損なって得点に。しかもマッチポイント。瑛と渚さんだけで、どんだけ点数を取ったんだ。
ハルは穹が役立っていることに対し、純粋に感心しています。確かに珍しいけど、ここは亮平の言うとおり素直に喜んでおいた方が良いかと思う。ハルとしては、もう少し活発に動いて貰いたいようです。
そんな話をしている矢先、遂にピッチャーが打たれてボールが飛んできます。話に夢中になって、それも女子の方を見ていたハルと亮平は反応に遅れました。それどころかボールを避けてしまい、ハルは慌ててボールを取りに行きます。ボールは女子のほうまで転がっていき、ハルは恥ずかしさを憶えつつもボールを取ってくれるようにお願いしますが……

「何やってんの?」

低い声で応対したのは、穹でした。ボールは穹の爪先に辺り、静止しています。ハルが穹を見ていたように、穹もハルを見ていたのか、女子の体操服を眺めていたと勘違いされます。不機嫌な穹ですが、他のクラスメイトには会話の声が聞こえるわけもなく、試合中ということもあって男子からはハルを急かす声が。
もたもたしているわけにもいかず、ハルは正直にさっき見ていたのは穹だと言います。すると、穹の顔が見る見る赤らんでいき、表情が緩みます。まったく、判りやすいですね。ボールを返してもらい、亮平へと投げ返すハル。

「ハル……ボール投げるときだけは格好いいね」

委員長シナリオで明確に描写されてましたが、ハルは都会っ子であってもやしっ子ではないらしく、スポーツもそれなりに出来るみたいです。勉強よりは身体を動かす方が好きなんでしょうか、委員長の視線では筋肉もあるとかないとか。やひろシナリオでも、線が細いと思っていたら意外と……なんてことを言われてましたね。ただ、これは委員長及びやひろの主観であって、ハル本人は運動が得意じゃないと言っていますし、上記の台詞から察するに穹もそれは知っているはずです。つまり、実力はともかくフォームは良いよねってこと。
攻守交代して、ハルは2番目の打席に立ちます。運動は出来ても、野球やソフトボールの経験があまりないから、ボールをちゃんと見て打つことすらままならない。多分、相手のピッチャーも野球系の部活なんでしょう。速球を持ってハルを仕留めに掛かります。
女子のほうも試合の決着が付いたのか、穹はハルの打席を遠目に見ています。手なんか振っちゃって、ハルは自分に頑張れと言ってくれているのだと確信します。運動が得意ではないのを知っているのに期待してくれる穹、好きな人前では良いところを見せたくなるのが男というものです。ハルは気合いを入れて次なる打球に望みます。けれど、寸前まで穹に見とれていたせいか、今度は見逃しのストライク、2ストライクです。ラスト一球にすべてが掛かると言うことで、ピッチャーが放ったアンダースロー気味の打球を見事に捉えます。
不安そうな顔をする穹の前で、それを振り切るかのような軽快なヒット。すかさずハルは一塁めがけて走ります。ボールは二塁を越え、センター当たりに落下中。ハルは意を決して二塁ベースに向かいますが、そこで事件発生。

「きゃぁぁぁっ!?」

穹の悲鳴が、グラウンドに響き渡ります。二塁ベースを踏む直前、ハルも慌てて悲鳴のした方に振り向く。そこには、なんと穹が仰向けに倒れています。もはや試合どころではなく、軽く呻き声すら上げる穹に慌ててハルは駆け寄ります。まさか自分が打ったボールが当たったのか? 走るのに夢中だったハルはボールが最終的にどこに落ちたのかをみていません。痛みに蹲る穹と、心配するハル。けれど、そんなハルとは対照的に普段通りの笑顔を見せる瑛。拾ったボールを手渡します。
自分が打ったボールが、よりにもよって穹に当たってしまった。項垂れるハルですが、瑛は穹に声を掛けます。

「穹ちゃん、大丈夫? おしり打ったみたいだけど」

おしりにボールが命中したのか? と訝しがるハルですが、瑛が言うには穹はボールを蹴ろうとして失敗しただけらしい。足下に転がってきたボールを蹴ろうとして、見事に空振りしりもちをついたみたい。ボールが当たっていなくてハルは安堵しますが、どうして穹がそんな行動に出たのかが判りません。念のため保健室へ、という流れになって、穹はハルが連れて行ってくれと言い出します。こうなったのは、ハルのせいらしい。
なんでも、穹はハルが打ったボールを蹴り飛ばして、ホームランにしたかったらしい。その子供っぽい発想にハルは呆れますが、それでも自分のことを思ってしてくれたに違いはありません。ハルは穹の頼みを聞いて、保健室へと連れて行きます。

到着した保健室に人の気配はなく、校医もいませんでした。会議に出席していてお昼まで戻らないとのメモが残されています。特にすりむいたりしたわけでもないので、患部、つまりおしりを冷やせばいいだけと考えたハルですが、勝手に湿布とかを使っていいのかと悩みます。保険委員の子を呼んできたほうが良いのかなと考えますが、穹は無視してベッドに寝ころびます。湿布は臭いから嫌らしい。判る、判るよその気持ち。
おしりを打って悲鳴を上げた割には元気そうで、ベッドの上で足をパタパタ。あくまで心配するハルは、だったら氷で冷やそうかと提案しますが、穹はそれもいらないという。しかし、先ほど悲鳴を上げられたことが効いたのか、ハルは簡易的な氷嚢を用意すると、渋る穹をうつぶせに寝かせておしりに押し当てます。
冷たいと抗議する穹は、あろうことか「……もう痛くないもん……」と言い切ります。驚くハルですが、穹はおしりを打って悲鳴を上げ、変に注目されてしまったから逃げたかったそうです。そりゃ、恥ずかしいよね。ハルは脱力感に苛まれますが、「もっ、元はといえば……ハルがホームラン打たないからじゃない!」と穹は怒ります。理不尽なようにも聞こえますが、ハルが穹にいい格好を見せたかったように、穹もハルの格好いいところが見たかったんでしょうね。ぷーっと頬を膨らませます。
なんともなかったならそれで良し、それじゃあグラウンドに戻ろうかとハルは言いますが、それを聞いた穹は「やっぱり…痛い……」とベッドに寝ころびます。まだ照れが残っているのか、確かにすぐ戻ってもみんなから心配されるだけだからね。今度は自分からおしりに氷嚢を乗せるように良い、ハルはそれに従います。ここでハルがいたずら心を働かせ、他に痛いところはないかと探すついでに、穹のおしりの上に置いた手を撫でるように動かします。ここでのハルと穹のやり取り、穹は可愛いんだけどハルが少し単調だった。「はぁ?」っという聞き返しを2回も使うんだもの。
穹は疲れたから授業が終わるまで保健室で休んでいくと良い、ハルにも付き添うように言います。兄妹だから問題ないという理論です。押し切られ、思わず「うん」と言ってしまうハル。相変わらず甘いというか、穹には弱い。
落ち着いたところで、穹はハルが先ほど自分のおしりを撫で回したことを非難します。ハルは弁解しますが、穹はエッチな目で見ていたと、疑いようのない事実を突き付ける。そんなこと言われると余計に意識してしまうのが男というもの。穹の身体は何度も見たから、どこが色っぽくて可愛いとか、ぷにぷにしたやわらかさも知っていると、羨ましすぎることを考え出すハル。先ほども、ふっくらとした臀部を撫でたといい、ブルマのふくらみや細い足、さらには股まで見たそうです! ハルにしか許されないこととはいえ、さすがに羨ましくなってきた。
穹からは想像しているのがバレバレだと言われ、エッチとも言われますが、ハルとしては否定のしようもありません。そこに不意打ちで穹がキスをしてきて、動揺する間もなくベッドに押し倒されます。馬乗りになった穹がキスを繰り返し、保健室でのプレイを敢行します。

ヨスガノソラは学園物でしたが、校内で事に及ぶことは意外に少なく、校舎内と限定すれば渚さんのときに一度あっただけです。なので、穹との保健室エッチはシチュエーション的には王道ですが、ここまでの流れ的には珍しいとも言えるでしょう。
ハルカナソラの穹シナリオに特徴があるとすれば、エッチの際は必ず穹から始めると言うことです。穹がハルを攻めて、イカして、その後ハルが穹を攻めたてる。こういうところも対等というか、ハルと穹の関係性が良く表れている。
保健室でのフェラという、いつ誰が来るかも判らない状況。先生が戻ってくるかも知れないし、クラスメイトが様子を見に来るかも知れない。もしかしたら別の怪我人、病人が入ってくる可能性だってある。ハルはそんなシチュに興奮し、それを感じ取った穹もハルへの愛撫を強めます。穹曰く、ハルのあそこはいつも可愛いらしい。見た感じ、モノは大きいというより長めのようですが、穹曰く口の中で更に大きくなるらしい。
エロいシーンを事細かに書いても仕方がないので、ここら辺は実際にプレイしてください。ちなみにハルはバックからでした。かなりエロいよコンチクショウ。
思えばヨスガのときは誰一人としてブルマーでのイベントがなかったから、穹が初めてなんですよね。いや、良いもの見せて貰った。

~土曜の朝は、デートに行こう~
穹と出掛ける約束をしていた土曜日、ハルは普段学校に行くときよりも早くに目覚めます。早く起きた分、おめかしに時間を使えるとか、なんか発想が乙女です。というか、おめかしという表現が既にあれだ。
朝はコーヒーとかにして、出先でなにか食べようかと考えながら、ハルはキッチン兼食堂に向かう。するとビックリ、そこには既に穹がいて、朝食の仕度をしているではありませんか。髪を綺麗に纏めて、うっすらと化粧までしている穹。朝から気合い十分です。
朝食を取りながら、穹はハルに本日の行動プランのようなものを話します。電車の発車時刻と、目的地への到着時刻、お店の開店時間に効率よく回るための地図も用意。いつの間にそんなスケジュールを立てたのかとハルは驚きますが、穹はハルが行きたいお店もプランに組み込むから教えて欲しいといいます。普段は自分が段取りをするだけに、ハルは違和感に気持ち悪さを憶えています。いや、確かにいつもの穹とは声からして明らかに違うけど、好き相手に気持ち悪いという感想はどうなんだ。さすがに失礼だろうw
それでも自分と出かけることが楽しそうな穹に、ハルも頑張って楽しい一日にしようと思います。急いで朝食を取り、早速準備開始です。

「ハルぅ、まだ行かないの?」

電車の時間に間に合わない、と文句をいう穹。こういう場合、男女どちらがもたつくことのほうが良いのか知りませんが、ハルの場合は理由が凄いです。窓に映る自分の姿を確認して、ギリギリまで髪の手直しをしているという……いや、本当にお洒落さんなんだね。
玄関の鍵を閉めて、さて行くかというところにやってきたのは郵便屋さん。ハルはすっかり忘れていたようですが、例の転送されてきた郵便物です。とりあえず時間もないから届いた手紙の束をポストに入れますが、ハルは英字で書かれた手紙に興味を覚えます。
郵便屋さんとのやり取りもあったためか時間は割とギリギリで、穹はハルが髪を弄っていたせいだと言います。なかなか決まらなかったと言い返すハルですが、そうなんだ、髪って決めるものなんだ。ダメだね、自身の外見に対して興味が持てないってのは。
早足で家から出ると、今度は瑛と出会します。仕事の途中か、自転車乗っている瑛に目を付けた穹は、駅まで乗せてくれるように頼みます。あっさり了承する瑛に、穹は荷台にちょこんと座ると、ハルに先に行っているからと宣言します。二人乗りとはいえ、自転車はさすがに速い、速い、ハルは折角セットした髪が乱れることに嘆きながらもダッシュで追いかけます。追いつくことは意外に容易で、というか瑛の自転車は道ばたで何故か停車中。訝しがるハルですが、瑛はハルを待っていたと言います。

「二人ともっ、じゃーんけーん!」

驚く二人に、瑛はジャンケンを要求し、勢いに飲まれた二人は思わずジャンケン。ハルが勝って、穹が負け。だから今度はハルを乗せてあげると瑛は言います。30回漕いだら、また交代だと。
ハルと穹のジャンケン&追い駆けっこが始まった! 穹は体力あるわけでもないのに朝から凄いハードですね。瑛の当てつけ、というわけではないでしょうが、瑛もなかなか厳しい仕打ちです。
穹が勝ち、ハルが勝ち、そんなことを繰り返しながらも駅の近くに辿り着き、最後のジャンケンには瑛も参加します。三人によるジャンケンの結果、ハルと穹が勝ったので二人で自転車に。機嫌が悪かった穹も、ヨスガの頃から期待していたハルが漕いでくれる自転車に乗るという願いを果たすことが出来て、若干気分が良くなります。もはや、瑛が負けたことすら彼女の計算ではないかと思えてくるハル。確かに、穹はハルと瑛が二人乗りをすることにも気を悪くしていたようですし、瑛がそれを察した可能性もなくはない。
自転車乗せて貰ったおかげで遅刻するようなこともなく、電車が来る10分前に駅へと到着します。追いついてきた瑛に礼を言いつつ、「今日は二人ともデートなんだね」と指摘を受けます。特に意識していなかったのか、それとも気恥ずかしかったのか、穹は乗せて貰ったお礼にお土産を買ってくると言いますが、瑛は笑ってそれを謝絶、用事を済ませたら渚さんとデートをするといってその場を立ち去りました。
改めて人からデートといわれると、二人とも強く意識してしまうようで、穹の顔は真っ赤になっています。「デート……ハルと……デート」と恥ずかしがる姿は絶品ですね。


さて、2万字を突破してもまだ書き上がらないので、次の日記に回そうと思います。さすがに後2万字もあれば書き上げることも出来るでしょうし、今週中にはなんとか終わらせたいと思います。それではまた次回、蒼穹の果てに完結編で。
いよいよ春日野穹シナリオについて書くときが来ました。発売日からやりこみまくって早数周。まだ全然足りません。この程度の深みでは春日野兄妹を、ハルと穹のすべてを理解するにはほど遠い。いっそ、一週間ぐらい休みを貰ってヨスガノソラハルカナソラを延々とプレイし続けたいぐらいです。むしろ一ヵ月ぐらい休みを取って奧木染に行ってきたい。


蒼穹の果てに

ヨスガノソラにおける穹ルートの続編というシナリオ。長さも、質も、他のショートシナリオとは比較にならないほどのクオリティと完成度を誇っています。今回は昨日の委員長シナリオとは趣向を変えて、一つ一つのイベントやパートを書きだしていこうと思います。その方が良いというか、じっくり書けますしね。長短はあると思いますが、全体的な流れが伝わるんじゃないかと思う。それでは、早速書いていきますか。

~下山、仲間たちとの再会~
湖畔で一夜明かしたハルと穹は、明け方になって下山します。ハルが穹をおんぶしながら、とりあえずは瑛のいる神社まで。早朝ですし、瑛は寝てしまっているだろうと帰ってきた旨を報告すべきか悩むハルですが、なんと瑛が笑顔で現れて二人を出迎えます。自分でも言ってましたけど、瑛は二人が必ず帰ってくること、夜の内に下山は無理だから朝になるだろうことを、ちゃんと判っていたんでしょうね。瑛はなんでも判っているんです。ハルと穹の関係や、二人になにがあったのか。特に説明されてなくとも、瑛には理解することが出来る。彼女は人の顔色というか、他者の反応を窺って生きてきた少女だと思うんですよ。相手がなにを考え、なにを望み、自分はどうすればいいのか。奥木染で彼女が生きて行くにはそういう術を身につけるしかなくて、それがあの達観した性格と、鋭い洞察力や読心術になっているんじゃないかな。笑顔で和らげてはいるけど、瑛は物事の核心に辿り着くのが早いと思う。
神社には瑛の他にも亮平や渚さんといった友人が集まっていて、どうやら交代で二人が下山してくるのを待っていたらしい。けれど、みんな今回の件は壮大な姉弟喧嘩であると捉えていて、事情を知っている奈緒や委員長ほど深刻に考えてはいない。ハルは当然、説明しようとするんだけど、奈緒がその場は解散させてしまいます。今は止めておいた方が良い、確かにその通りですね。良かったねムードがぶち壊れますし。
学校を休むことにして、ハルと穹は自宅へと帰ります。もう帰ってこられないかと思った我が家、とりあえず泥だらけの身体ですから、風呂にはいることにしたんですけど……あると思っていたお風呂プレイがなかった。そりゃね、帰ってきて早々そういうことをするのも、それはそれでどうかと思うよ? でも、期待はしていたわけで! あらすじに書いてあった時点で、絶対にあると信じていたのに!
穹がお風呂に入っている間にご飯の仕度を仕様としたハルですが、力尽きて途中で寝てしまいました。無理もない、一晩中穹を探し回り、尚かつおぶって下山したわけですからね。心労が溜まっていたのでしょう。テーブルの上に突っ伏して、奈緒が途中様子を見に来たのにも気付かず夜近くまで寝てしまいます。穹もハルを起こすような真似はせず、それどころかハルのために夜ご飯を用意するというかいがいしさを発揮。おにぎりでしたけど、好きな人が作った物なら愛情スパイスで普通より美味しくなるから問題なし。
夜中になり、穹は就寝前のハルの部屋を訊ね、ふすま越しに一緒に寝て良いかと訊ねます。かつてハルは、そのふすま越しに穹を拒絶した。けれど、今のハルには穹に向けて閉ざす扉なんてなかった。了承するハルと、嬉しそうに準備する穹。微笑ましいとはまた違った、安心できる光景です。
ハルは夜まで寝ていたために目がさえてしまい、なかなか寝付けませんが、穹が隣にいることと、自分がなにを失うところだったのかを再認識します。明日からは学校に通い、理解して貰えるかはわからないけど、友人たちにすべてを話そう、僕らのこれからは、本当に“これから”なんだと穹を諭しながら、眠りにつこうとします。けれど、穹はハルが寝るまで見ているといい、自分の中にある不安を打ち明けます。

「……居なくなったりしない?」

「これが夢だって事はない? 起きたら私は一人湖畔で泣いてたりしない?」

後者は個人的に印象深い台詞で、穹の心境を良く物語っていると思います。
夜は人を不安な気持ちにさせるといいますけど、無事に夜は明け、朝となりました。穹の方が早く起きて、制服に着替え、身支度を調え、朝食まで用意してくれています。焼き加減を調べたり、味見をしたパンは美味しく、何枚かは失敗しましたけど、穹がしてくれることが嬉しいハルは苦笑しながらも受け入れます。失敗したのはホットサンドとして弁当へ。
二人仲良く、手を繋いで学校に行きます。多少は人目を気にしますが、意外にも学生に会うことなく、ハル自身、罪悪感のようなものは感じていません。吹っ切れたというか、本人も言っているとおり、穹への気持ちがハッキリしたからでしょう。もうハルとは手を繋げないと思っていた穹は喜び、胸の内を吐露します。誰も居ないときまで遠慮してたらもったいないとハルはいい、二人はギリギリまでそれこそ校門をくぐるまで手を繋いで登校しました。
校内に入って、職員室の前で委員長と再会。昨日の朝に会っているとはいえ、ハルの感覚では再会という言葉が相応しいでしょう。

~告白と理解、仲間たちの想い~
昼休み、ハルは友人たちに囲まれながらも、自分と穹の間になにがあったのかを打ち明けることにしました。すべてを知っている瑛は、ハルがなにか言う前から「おめでとう」などと言っては祝福します。既に事情を知っている委員長と奈緒はともかく、反応はやはり人それぞれ。亮平はチャラけているようで芯の通った男だから、問題の深刻さに気付きますが、渚さんは作中随一の常識人であるため、すぐには理解することが出来ません。近親愛について無理解ではないにせよ、近親相姦ともなれば話は別です。常識人であればこそ、ハルが打ち明けている最中に感情が高ぶった委員長が逃げ出したように、受け入れることが困難なのも判ります。それが普通なんですよ。
奈緒はなにせ春日野兄妹に対して負い目があるし、性的な関係についてとやかく言える立場じゃありません。瑛の真意は不明瞭ですけど、彼女は倫理的や道義的な問題よりも優先すべき事があると思っていたのかも知れません。

「誰にだって大切な人を想う気持ちがあるよ。ハル君の想いは一番穹ちゃんに向いてたってことだよね。ハル君は、穹ちゃんを捜しているときに、それに気付くことが出来た」

「その気持ちは二人だけのものだよ。ハル君が気にしている周りの目っていうものと、別の問題」

このような言葉で二人の関係を受け入れる瑛は、いつもと変わらぬ笑みを浮かべていて、亮平もそれとなく悟ったようです。奈緒は逃げ出してしまった委員長を追いかけて、亮平はハルを誘ってその場を少し離れます。

「俺はこれからもお前と親友でいたいと思っている。お前が間違ったことや、つまんねーことをしたら、ぶん殴るぐらいのことはするつもりだ」

ハルと穹がなにをしたのか、大体判ったという亮平は、言葉を選びながらも語りかけます。逃げ出さず、自分たちの元に戻ってきたハルを否定せず、見捨てることもないと言い、自分の過去を振り返る。形はまるで違えども、ハルは亮平に出来なかったことやったわけですから。この辺で語られる亮平の過去については、ヨスガノソラの初佳ルートが詳しく描かれています。亮平って意外に裏があるっていうか、よっぽどのことがないと留年なんてしないわけですし、そこには深い事情があるんですよ。いや、ほんと良い奴ですよね。なんだかんだいっても、やっぱり年上なんですよ。ハルも感じたことですけど。
一方で、渚さんは瑛と二人きりになったとき、ハルと穹の関係について問いただします。すぐには思い至らなくても、委員長の反応などから察し始めてきたんでしょう。大切な友達であるが故に、いつかは理解したいと考える渚さんですが、ハルに対して常に一定の距離を保ってきただけに、思いは複雑です。瑛ほど単純になれればと言いつつも、当の瑛はこれでも色々考えていると苦笑します。渚さんは笑って流しますけど、実際として瑛は相当考え込んでると思うんですよね。渚さんを諭したときもそうですが、ハルと穹、二人の友人のために自分がなにをするべきで、なにが出来るのかをずっと考えてるんだと思う。
渚さんは自分と瑛の関係、人に知られてはいけないけど、いつかは理解して貰いたい事情を抱えているだけに、理解は出来なくともある種の共感をハルに覚え、その強さを見習いたいと思いますが、二人に対する距離の取り方に悩むこととなります。それが当然というか、普通なんですよ。渚さんは常識人で、当たり前の世界の住人ですから。

~委員長の想いと、初恋の決着~
放課後となり、帰り支度をしているハルを委員長が呼び止めます。倉永梢としてではなく、クラス委員長として先生から頼まれた言伝、職員室にて提出して欲しいプリントがあるという旨を伝えます。断るわけにも行かず、ハルは買い物を穹と瑛に任せて職員室へ。穹の分まで書いていたため時間を取られ、1時間ほど拘束されました。
解放され、鞄を取りに教室まで戻ると、そこでは委員長が一人黄昏れていました。成り行きで一緒に帰る流れとなり、ハルは委員長と共に帰宅の途に着きます。
帰り道、改めて謝罪するべきか考えるハルに、逆に委員長の方が謝ります。すみません、ごめんなさいと。すべての原因は自分にあるのではないかと思い悩み、そんな自分が許せなくて、責任を感じてしまう。ハルのことを嫌いになりたくないのに、穹との関係を認めることが怖くて出来なかった。認めてしまえば、自分の中にあるハルに対する気持ちが、想いが、永遠に届かないと判ってしまうから。
委員長の謝罪と、吐露されるハルへの想い。単なる好意を超えた恋愛感情の発露に、ハルは自分が委員長を深く傷つけていたことを再認識します。けれど、ハルはそんな委員長の強く純粋な好意に答えることが出来ません。

何故ならハルは、穹を選んだから。

初恋に、決着が付いた瞬間でした。昼休み、一度は事実から逃げ出した委員長ですが、彼女の初恋は失恋に変わり、苦みの効いた想い出となりました。受け入れて貰うか、拒絶されるか、その二択しか提示できないハルは、委員長を慰めることすら出来ません。謝ることすら、偽善でしかない現実。そもそも、謝るような問題でもないのだから。
ハルに出来たのは、物事をハッキリさせること、委員長の想いに対し明確な答えを出すことだけでした。委員長の、倉永さんの想いには応えられないと。例え彼女に嫌われようと、軽蔑されようと、それでも自分は穹を選んだ。だから、自分や穹のために自らを傷つけないで欲しい。
ずっと好きだった、けれど、例え時計の針が何度戻ったところで穹には敵わない。委員長は、倉永梢という少女はそれを悟ったのです。

「私の気持ち……聞いてくれてありがとう……」

明日からは、いつもの私に戻ります。委員長はそう心に決めて、ハルと別れます。涙ぐんだ声と表情だったけど、そこには確かな強さがあって、ハルにはそれが羨ましかった。ハルは買い物を終えた穹にそっけない返事を出し、穹はハルの心境を感じ取ったかのように、大丈夫? と返信してきます。驚き、しかし、ハルは更なる返事を出すことが、出来なかった。

帰宅した我が家では穹と、穹の相手をしてくれていた瑛がいました。このとき瑛が穹とどんな話をしたか、少しだけ気になりましたけど、ハルは楽しくお喋りをしていたんだろうと深くは考えませんでした。確かに、瑛が核心的な話題を好き好んでするとは思えず、かといって穹が望めばある程度は話したのかも知れない。
ハルは良い時間であるし、瑛を夕食へと誘いますが、やひろのところで食事を作らなければいけない瑛はこれを笑って謝絶します。避けた、というわけではないでしょうが、あるいは委員長となにかあったことを見抜き、今はまだ穹と二人きりにした方が良いと感じたのかも知れません。穹がハルを心配していたことを、それとなくハル本人に伝えていましたから。瑛は、否定者ではなく肯定者で、ハルと穹のことを無条件で受け入れ、認めてくれます。それはかつて、否定されるだけの存在だった自分を、受け入れてくれた人がいたからで、瑛にも思うところがあるのでしょう。
瑛なりの気を利かせ方とハルは言うけど、それが出来るのもまた瑛だけで、彼女の感性や感覚、感情のような物が見え隠れしています。前からずっとお互いのことが好きだった、ハルと穹の関係を瑛はそのように言いますが、思い返してみれば彼女は幼少期の二人に会ったことがあるんですよね。その頃から感じていたのか、それとも再会後にそう考え始めたのか……瑛からすれば、自分は人の気持ちに少しだけ敏感なだけだ、とでも言いそうですが。

新しいメニューに挑戦し、失敗つつも夕食を終えたハル。風呂上がりの彼の元へ、同じく風呂上がりの穹が昨晩と同じように訪れます。
一緒に寝る二人、電気を消しても羊を数えても、羊が瑛の家の猫だろうと、一向に眠気がやってこないハル。穹もそんなハルが気になり、何故ハルが悲しそうな顔をしているのか、どうして作り笑いをしてごまかそうとしているのかを、問いつめてしまう。これじゃあ一緒にいる意味がない、ハルだけが苦しむなんておかしいと穹は嘆き、ハルを助け、同じように自分も悩みたいんだと懇願します。どうして判ったのかと問い返すハルに、メールの返事が変だったから、ただそれだけのことで気付いたと明かす穹。嫌な予感がした、ハルになにかあったんじゃないかと。
しかし、ハルは委員長との間になにがあったかを話すことが出来ません。話せば、穹をまた傷つけてしまいそうだったから。それでもすがりつく穹に、ハルの気持ちを楽にしてあげたいと願う穹に、ハルは遂に折れそうになります。けれど、先に核心を突いたのは穹のほうでした。
「もしかして……委員長のことなの?」と、穹は見抜いたのです。
委員長となにがあったかを、彼女の気持ちに応えられなかったことまで、ハルは話します。穹は言います、私はそんなことでは傷つかない、だから、自分一人でなんでも背負わないで。それでもハルからすれば、委員長を振ったのは自身の決断であり、理由が穹の存在にあったにせよ、引き合いには出せないと考えます。

「ハルが応えられなかった理由は、私にもあるじゃない……」

「私がハルのこと、好きだから……」

穹の言葉は、ハルの迷いを完全には振り払いませんでした。けれど、ハルと一緒に嫌われてもいい、ハルの苦しみを自分にも分けて欲しいと訴える穹に、ハルは少なからず救われます。胸の痛みを忘れることは出来ない、けれど、彼はもう一人じゃなかった。傷つけ合っても、二人は生きていくしかない。彼女は、そんな彼の痛みを感じようとしてくれるのだから。彼も、ハルもまた、それに応えなければいけない。
穹と最後まで添い遂げること、自分たちが取った道が間違っていなかったことを証明することで、応えられなかった想いに対するケジメをつけようと、ハルは改めて誓ったのでした。

ここで最初のエロイベントなわけですが、さすがに濃厚というか、長すぎず短すぎず、それでいてゆったりとした流れでした。穹は意外に積極的というか、前作ヨスガノソラでハルが穹を強く求めたように、穹もハルを激しく求めていた。
さすがはハッシーというべきか、短い時間の中で見事なイラストを描き上げてきました。グラフィッカーの塗り具合に関しては少しだけムラがある気もしましたが、それを僅かにしか感じさせない見事な出来映えです。
意外な話のように思えますが、エロゲの場合、寝間着でのプレイって結構少ないんだよね。それこそ相手が妹とか身近な相手だったときにしかお目にかかれないシチュエーションです。まあ、二人ともパジャマってわけではないんだけど、夜の静寂に包まれた部屋の中で、乱れる双子の兄妹。いやー、エロい、エロ過ぎる。
穹も少しSっ気が出てきたというか、なるほど、ハルをいじめてみたりとはこういうことだったのか。春日野兄妹は状況に応じて互いがSにもMにもなれるというか、要するにいちゃつきっぷりが半端ないんだよね。エロシーンですらニヤニヤが止まらなくなるというか、お風呂イベントがなかったのは残念だけど、別にいいかなーという気分にならないでもない。穹→ハルという流れから、ハル→穹に切り替えるのがなかなかに上手いよね。どちらも主導を握っているというか、二人は本当に対等なんだなって思う。そう考えると、ヨスガノソラのときは少し一方的な感じがあった。強引に求めてしまったことはハルも認めてるけど、でも、それを拒絶しなかったのも穹なんだよね。そういう発想が穹には存在しなかった。
ハルカナソラはそう考えると、やや穹が前に出ている印象はあるものの、互いに互いを尊重しあった性交をしていると思う。

明けて、昨日と同じように手を繋いで登校するハルと穹。それを遠目に見つめる亮平と渚さんは、躊躇いからか声を掛けることが出来ません。けれど、そこに現れた瑛が二人を諭します。

「あたしら、ハル君と穹ちゃんとお友達じゃなかったんだっけ?」

軽く言っているようで、その言葉には結構な深みがあります。瑛はこの時点で、明確な意思表示をしてるんですよ。二人がどうであれ、自分は友達であることをやめるつもりもないし、距離置くような真似もしないと。瑛が二人の関係をどう思っているかには不明瞭な点が多いけど、ハルや穹が誰かを騙したとか、犯罪を犯したとか言うならともかく、ときには道義や倫理よりも優先するべき事があると、瑛は判っているんでしょう。
渚さんはそんな瑛の真意が読めず、どう思っているのかを問いただします。さすがに本当は良く判っていないじゃないか? というのは瑛に失礼な気もするけど、普段があんな感じだと仕方ないんだろうか。亮平は瑛の内面を、全容は知らなくても一部理解しているから、それとなく察してましたけど。
瑛は渚さんの問いに、やはり自分の意思を明確にはせず、考えを和らげるように提案します。難しく考えすぎることはない、ようはハルと穹と一緒にいたいかどうか、友達であり続けたいかどうかだと。亮平も悟りましたが、難しいことはとりあえず置いて、簡単な意識調査、意思表示こそが大事なんだと言うことです。ハルと穹はすべてを、真実をさらけ出した。ならば、自分たちはそれにどう答えるべきなのか? 他がどう思うかなんて関係ない、まずは自分の気持ちを整理して、相手に伝えるのが先決なのだから。
あたしはハル君たちを応援してあげたいなと、瑛は笑顔で言い切ります。断言しても構わないだけの関係性を、ハルと穹の間に築けているのでしょうか。確かに、瑛にとってハルや穹は貴重な友人なのかも知れない。過去のしがらみや、今もある複雑な事情に捕らわれることなく、普通に接することが出来る相手ですし。
そんな瑛に心動かされ、一時的にも弱気になった自身を亮平は叱咤します。渚さんも同じように、自分はハルと穹の友人であることを再認識。実はこのとき、渚さんがここまでハルと穹を強く思って、友情を感じていたことには意外さを憶えました。自分のルート以外では、常に一定の距離を保っていると感じていましたから、結構踏み込んでいるなと。もっともそれは、人にはいえない事情、瑛との本当の関係についてを照らし合わせた上で、ある種の共感を抱いているからでもあるのでしょうけど。
瑛、亮平、そして渚さんの三人は友達として、ハルと穹の元へ駆けます。それが三人の出した結論であり、瑛の影響力があったとは言え、ハルと穹に対してあった複雑にもつれた糸は、解きほぐされました。ギクシャクした部分はまだまだあるとはいえ、いつもの日常が戻ってきたのです。
登校途中に現れた瑛や亮平、渚さんや委員長といった面々と登校するハルと穹。なんとか穹と委員長も和解し、一応の理解を得ました。自らを未練がましいと自嘲する委員長は、穹を選んだハルに対し、すぐに納得することが出来なかったことを打ち明けます。今現在も、決してすべてを受け入れたわけじゃないんだと思います。心を整理して、とりあえず形を整えて、自分自身を無理やり納得させて……委員長の出した答えはとても脆く壊れやすいもので、けれど彼女は努力すると言います。すぐには無理でも、もう一度仲のいい友人になりたいから。


さて、日記も過去最長の文量になりましたが、ここで一区切り付けようと思います。本当は2万字ギリギリまでハルと穹のことを書こうかと思ったんですが、私の自己満足はともかく、それじゃあ読む人が読みにくいと思うので。
このようにハルカナソラの穹シナリオ、蒼穹の果てには、序盤から少し重めで、暗めの流れから始まっています。前作の穹ルートをそのまま再開させたようなものですし、その辺りは仕方ないでしょう。友人、仲間と呼べる人たちとの関係が見直され、各人が困惑や複雑な思いを抱える中で、一番始めに乗り越えたのが委員長というのは、ある意味では必然だったのかも知れません。失恋で、悲恋だけど、委員長とは決着を付けないといけなかったんですよ。
委員長シナリオとは随分落差があるというか、昨日の日記で二人の委員長の対比について書いたけど、私は穹シナリオにおける倉永梢の方が好きです。悲恋だから、というわけではないけど、片思いにせよ横恋慕にせよ、いい形での決着が付けられたと思うんですよ。結末があり得ないほど悲痛なものでも、ないよりはマシだと思うから。
けれど、委員長は自分が変わらない限り穹には敵わないと漏らしていましたが、変わった結果が委員長シナリオでの彼女なら、かなり首を傾げずにはいられない。あれは変わったというか、最初からなにかおかしいというレベルだと思う。そういう意味で、あのシナリオはどこか好きになれなかった。
だから私は穹シナリオの委員長を認めるし、正しい姿だったのかはともかくとして、好感が持てた。引き立て役とか踏み台とか言われるだろうけど、サブキャラである委員長に本来課せられた役目がそれである以上、映えるのも仕方がないというか、当然なんだと思う。ヨスガで付けられなかった決着を、失恋という形で表したのは、委員長のためでもあったんですよ。思えばヨスガでは奈緒との間に一応の決着は付けたけど、次に現れた委員長とは和解せずに終わりましたから。まあ、和解とかそういう問題でもないのかも知れないけどさ。

重苦しい風に来も後少しと言うことで、これを抜ければ当分はハルと穹のイチャラブが見られます。正直、日記とはいえ文章で書き表すのも恥ずかしいんですけど、あまりの可愛さにやられてしまいました。いや、マジで凄いよあれは。
私の乏しい文章表現能力で、あの素晴らしさをどこまで伝えられるかは不明ですが、とにかく書きまくってみようと思います。この日記も、しばらくはハルカナソラ祭りです、ハル&穹フィーバーです!
やひろシナリオだけ書かないわけにもいかないので、こっそり書いておきます。とはいえ、あまり好きなキャラじゃないから長文は無理。ハルカナソラが発売してからどっぷり浸かっているわけだけど、それに比べて別のことに対する意欲が完全に失われつつある。
ハルカナソラがどうというわけじゃなくて、単純に私の精神均衡にズレが生じただけなんですがね。つり合いが取れていると思ったんだけど、急にバランスが崩れてしまった。割と一方的に。


相性の悪い二人

まず、私の好みの問題を言わせていただくと、基本的に年上属性が皆無です。さらに気の強いキャラも好きじゃありません。なので、伊福部やひろに関してはまさにその最悪を極められてしまった。サブキャラとしては嫌いじゃないんだけど、さて、攻略ヒロインとしてはどうなんだろう。好みじゃないというのはあくまで私の感性の問題だけど、エロゲは個人が楽しむものですからね。それを無視して第三者的感想が書けるかどうか。
シナリオとしては委員長シナリオと同じく、基本的にはやひろの視点で物語は進みます。シナリオの長短を考えると、一番短いのかな? やひろは初佳と同じく学生ではないので、学園におけるハルとの交流、それに伴うイベントが皆無なんですよ。プールでおぼれちゃいました事件とか。夏祭りにも登場しなかったから、いきなり海イベントからなのはちょいとビックリした。
まあ、そこに入るまでの過程で色々あったというか、要するに飲んだくれたお姉さんを解放して家に送り届けてやったり、そういうことがあって……あれ、初佳ルートと大して変わらないな。やひろはハルを雑用としてこき使ってるんだけど、ハルはなにせ頼まれると断れない性質だからホイホイと言うことを利く。正直、こんな女のどこに惚れる要素があるのかさっぱりだけど、あるんだよ、きっと。大人の女性に憧れてしまう年頃なんだ。どう考えても初佳のほうがマシだと思うが、あくまでマシという範囲内で。
いや、このルートは初佳がよく出てくるんですよ。やひろの友人だし、暇さえあれば入り浸ってるから。

「私はいくつになっても、可愛いねって言われたいなぁ」

とか、あれ、ダメイドってこんなに可愛かったっけ。やひろと比較すると付き合いやすいというか、見てて面白いね。ダメイドは自分のルート以外だと輝いています。カラオケの話についてもその内書きますけど、いやはやなんともはや、ダメダメだからこそ面白いキャラに仕上がっている。

しかし、委員長シナリオほどではないにしろ、ハル視点が欠片程度にしかないだけに、ハルの内面がほとんどわかりません。常識的に考えて、深夜遅くに他人の家のドアを叩きまくり、大声で家人を呼び出すってどうなんでしょうか。ギャグシーンのつもりだろうし、実際にギャグシーンだろうけど、普通は警察に通報されても文句言えないはず。
あまりの煩さに頭に来た穹が、バケツの水をぶっかけようとしましたが、ハルはそれを止めます。いや、それは止めない方が良いだろう、むしろぶっかけろと。穹は当然、酔っ払い二人、やひろと初佳を家に上げることを嫌がりますし、家に上げた後もさっさと追い出すようにと言います。そりゃ、誰だって家の前で喚き散らしている酔っぱらいを家になんて入れたくないし、泊めたくもないよね。
私って、基本的に目に見える酒飲みと酔っ払いが好きではないというか嫌いなので、まあ、好きな人なんているわけありませんけど、穹はバケツの水をぶっかけて、さっさと追い返せば良かったと思う。ハルも家に上げちゃったりして、いやいやさすがにおかしいだろう。優しいとか以前にどこかずれているというか寛容も過ぎる気がする。
そこからさらに色々あって付き合うというか、エロいことしちゃったりとかするんだけど、エロシーンに関しても結構微妙だった。絵が。
最初の奴が特に違和感覚えて、体位のせいなのか角度のせいなのかわからないけど、肉質や肉感が妙に膨れ上がっている印象を受けたと言いますか、身体のバランスが……
2番目のは絵こそ問題なかったんだけど、シチュエーション的にどうかなと思った。だって、あそこだよ? 神社の裏山の湖畔だよ? なんだってまた、そんな神聖な場所で。
ハルと穹だってしただろうって? あれは、ハルと穹だから良いんだよ! なんていうか、気分的にげんなり。エロかったような気もするが、もう少し場所を選べと。

最大の問題は、あくまで個人的な意見ではあるけど、ハルとやひろがまるで合ってない。お似合いのカップル、なんて言葉が世の中にはあるわけだけど、これはその対極というか真逆というか、ギャップを楽しむ隙間すらないと思う。
ハルみたいなキャラクターだと、どうにも年上との相性が悪い気がする。ヨスガノソラは特徴として年下のキャラクターやヒロインが出てこないし、攻略対象ヒロインも同年齢が多いから、自然とそういう風にキャラが作られている気がする。
まあ、好きな人は好きなんだろうし、それを否定するつもりはないけど、なんかしっくり来ないシナリオでした。
通常版だと微妙に色合いというか色味が違うんですね。こっちの方が濃いというか、CMYKな感じがするというか、実際に違いはあるんでしょうか。通常版も一つぐらい買っておいた方が良かったのかな。
でも、同じ値段なら初回版を一つでも多く欲しいよね。

そんなわけで、ハルカナソラのプレイ日記というか、レビュー的なものを始めます。攻略じゃないよ、攻略する部分ないし。あ、ネタバレ全開だから、そこはご了承ください。


堅物な委員長だって恋をするのです(突発性誇大妄想肥大化症候群)

待ちに待った、待望の委員長シナリオ。委員長こと倉永梢がサブキャラクターからの昇格という形でショートストーリーのヒロインを務めます。最初に意外だったのが、委員長の視点や回想から始まり、その後も常に委員長視点で固定されているところ。ヨスガノソラの主人公である、ハルの視点ではないんですよ。委員長から見たハルや、ハルへの想い、ハルがいる学園生活などがメインで、それは恋に恋する少女的な妄想や願望が混じったものではあるんだけど、始終コメディタッチに進行していきます。空回りって奴かな。自分自身の妄想や想像に振り回される委員長。
ハルの周囲に集まる人間、瑛や一葉、奈緒といった面々や、もっとも彼と近い存在である穹との出会い。あのヒゲの人、中里さんは無視してください。私も無視しますはともかくとして、そういった関係や出会いの中で、委員長はハルのことというよりも、まずは彼の周囲にいる女の子たちに対して強く意識してしまう。まあ、恋する少女としては恋愛対象が女子に囲まれてたら気が気じゃないでしょうし、それは判ります。
いきなり、奈緒を校門で待ち伏せて関係を問いただそうとする行動力は凄いですけど、バレバレとはいえ一瞬で委員長の気持ちを見抜く奈緒。この時点で、まだ穹とのわだかまりも解けていないはずなのに、奈緒には年長者としてのどことない余裕がありますね。
この委員長シナリオでも、やはりもっとも密接に関わってくるのが穹です。出会いは最悪というか、ハルの留守中に春日野家を訪ねた委員長が、妄想全快でキャッキャウフフしているところに、表が騒がしいことに気付いた穹が顔を出すという……
穹シナリオにおける穹と委員長の関係は、序盤から中盤に掛けてまで比較的良好で、それは多分に委員長の気遣いと努力もあったんでしょうけど、ここら辺に関してはいつだったか日記に書いた委員長考察が詳しいです。そして、そんな二人の関係が、この委員長シナリオでは逆転しているというか、穹からしてみれば委員長は自分の家の庭先にいた不審者ですからね。ハルの学友と言うことで、少なからず対応はやわらげたんですけど、委員長が奈緒にもあっさり悟られたように、判りやすくハルへの好意を剥き出しにしてしまうから、またすぐに不機嫌に。
けれど、委員長は穹に悪印象を持っておらず、それどころか類い希な美少女として惚れ惚れします。美若干の付き合いづらさ、自身が敬遠されていることに戸惑いを憶えているようですが、そんなことでめげる委員長ではありません。
例えば、穹がハルと一緒のクラスでないことを不満に想い、
「委員長は……同じクラスなのに……」とか、「……代わって。クラス」
などの無理難題を言いますが、それも恋する乙女のパワーで全力回避です。
穹は敏感なんだよね、委員長の判りやすい想いを見抜いた上で、「委員長には教えない」とか、委員長にハルのことを話したがらない、意地悪な面を見せます。まあ、意地悪と言うよりハルを取られまいとする防衛意識からなんでしょうけど、委員長はそこまで気が回らないというか、思い至らないでの全然気付きません。そりゃあ、穹がハルのことを愛していることを、なんの説明も目撃もなしに理解したのは瑛だけだけど、彼女は別格ですからね。

それにしても、少し話ずれるけど乃木坂さんというかダメイドは微笑ましいねぇw
やひろのシナリオで詳しく書きますけど、ファンディスクにおいて一番印象が代わったのはこのキャラだったりする。それまではなんというか、これといって興味がなかったのでスルーしてきたけど、こうしてサブキャラとして要所、要所のギャグ要員を果たしているのは面白いですね。しかし、三回目のお見合いにチャレンジする苫米地さんちの娘さんとは一体。有名な洗脳・催眠学者の苫米地博士と同じ苗字ですけど、知らない人は読めないんじゃないかな。そうでもない?
話戻して、飲んだくれたダメイドをハルが介抱しているところを目撃し、委員長は軽く混乱に陥るわけですが、そのあまりにダメップリな姿に呆れ、あまつさえハルにちょっかいだそうとしていたのに腹を立て一喝してしまいます。すっ飛んで逃げ出す初佳。けど、酒飲んで一晩すれば忘れるよとか、ハルも何気に酷いですね。事実とは言え。
このように委員長は、奈緒、ダメイド、瑛、一葉などの順に、各ヒロインのハルに対する感情を気にしていくんですが、印象的だったのは渚さん。あぁ、なんでか私って一葉のことを渚さんと呼んでしまう。彼女のハルに対する距離感というか、そういうのについては以前書いたと思うけど、やっぱり瑛が強く影響してるんですね。多分、瑛が仲良くしていなかったらハルとは単なるクラスメイトで終わったんだと思う。偶然と言うよりは必然なんだろうけど、渚さん自身相性が悪いと認めているハルとの交流を拒まず、むしろ積極的に行おうとしているのは瑛のためでもあるんでしょうね。瑛はそれに気付いてるんだろうけど、ハルと渚さんが仲良くなる分には全く問題ないから、敢えてなにも言わないと。
それにしても、委員長シナリオは基本的にヨスガのシナリオをベースに、それを委員長ヒロインに置き換えた感じなんですが、祭りのパートはヨスガのほうが良かったかな。なにも穹の巫女服姿が文章記述のみで終わったこととか、どこの誰とも知らない奴らが撮影会をしていることに憤りを憶えたとか、委員長なんてどうでも良いからハルはさっさと迎えに行けというか助けに行けと思わないでもなかったけど、それ以上に会話が……ヨスガの穹ルートにおける会話は、二人が求めているもの、望んでいるもの、感性の違いが大きく出ていたと思うんですよ。結構好きなシーンだったので、そこが大きく代わってしまったのは残念というかなんというか。

夏休みに海に行くイベントがヨスガにはあって、委員長シナリオではその過程として水着の試着会をするというシーンが追加されてます。場所は何故だかハルと穹の家だけど、親のいない家庭が子供たちのいい溜まり場になるのは良くあることです。鍵っ子の家とかさ。ハルも断れないタイプだから、飲んだくれの初佳とかをほいほい家に上げちゃうし、まあ、それに比べたら女の子たちが水着の試着をしてみるぐらいのことは、軽く許容出来るのでしょう。
このときの穹の行動が面白いというか、水着に着替える際、恥ずかしがり屋な委員長が穹にバスタオルを貸してくれといって、穹はそれを別室にいるハルに持ってこさせたんですよ。当然、穹や委員長がいる部屋では女子が着替えているはずで、ハルは中に入って大丈夫なのかと訊ねます。
すると穹は、「……問題ない」と、今まさに着替えが行われている部屋にハルを招き入れます。瑛はともかくとして、女子はもう大パニック。ハルだって混乱してますけど、穹はなかなかに策士ですね。無意識の行動というか、絶対に問題ないとは思っていないはずなんですよ。この状況でハルを部屋に入れたらどうなるか、穹には分かり切っていて、分かり切っていたからこそ敢えて室内に入れたんです。昼下がりの春日野家にこだまする女子の絶叫、渚さんのスペシャルコンボで叩きのめされ、トドメを刺されるハル。
穹はこれによってハルが女子から受ける好感度が、幾分か減少することを期待していたんだと思います。もしくは、嫌われてしまえばいいぐらいには考えていたのかも。着替えを堂々と観られてしまったわけですし、瑛はともかくとしても、他の女子としてはそれほど気分が良いものでもないはずです……普通は。ただ、渚さんはハルをボコボコにして意識まで刈り取ったから、それに対する自責の念が、羞恥心を上回ってしまい平謝り。奈緒はなにせああいう関係でしたし、気にすることはするでしょうが、殊更目くじらを立てるタイプでもないです。それに、そもそもハルだったら大丈夫なんですよ。穹にミスがあったとすれば、ハルがイケメンだと言うことです。ハルは美少年なんです、穹が美少女であるように。イケメンにだったら裸の一つや二つ見られてもいいわ、という女子も世の中にいるんですよ。
ハルだからまだマシだった、ハルだから大丈夫だった、まあ、ボコボコにされた状況のどこか大丈夫なのかってことでもあるけど、穹の目論見は外れてしまったわけで、あるいはここで一つの区切りがついたのかもね。穹的に。

実際の海イベントでは、委員長とハルが二人でボートに乗ったりしてますけど、ジャンケンの結果とはいえ穹が良く認めたな。穹としては委員長の存在は面白くなくて、決して嫌いではないんだけど好きになることが許せないとでも言いますか、そんな感じなんだと思います。ボートが沖に流されたときは、かなり焦ってましたし。委員長シナリオとはいえ、やはり穹に目が行ってしまいますね。
穹が委員長を受け入れ、認めた理由というのはハッキリしていないし、私としては釈然としないものがあります。でも、別に明確にする必要はないというか、明確に出来る物でもないと思うんですよ。だから敢えて触れずに、核心は覗かないで済ませようとする。いいんじゃないですかね、委員長のシナリオなんだし。なにかしらの理由は必要だと思うし、推測や憶測はいくらだって出来ますけど、それを考察してもなんだかね。結局、このシナリオにおける穹は委員長を認めて、認めた上で自身の居場所を確保したわけですから、それもまあ、選択肢の一つだったのではないかと。
決断と言うよりは判断、穹の複雑な心境が垣間見える気がします。委員長告白後の初デートについてきた際も言ってましたけど、穹としては妥協しただけにすぎないんですよ。委員長という存在がハルを奥木染に繋ぎとめるなら、それも仕方ないだろうぐらいの感じで。将来的に別れることまで計算してますけど、あれは本音だと思う。

告白シーンまでギャグなのは苦笑しちゃいますけど、そこから先は特に書くことがないというか、晴れて恋人となったハルと委員長の話が展開されるわけなんですけど……なまじ、委員長視点だからハルの反応に実感が沸かないというか、告白された、OKした、じゃあ付き合いましょうって流れには違和感がないでもない。ハルの反応から、委員長に対する好意はともかくとしても、恋心的なものが伝わってこなかったんですよ。
更に私が一番残念というか、変だな~と感じたのが、エロシーンというかエロイベントなんですけど、ここまで長々と委員長視点でやって来たのに、エロに突入した瞬間にハル視点へと切り替わるんですよ。それが不可解というか、いきなり感がありすぎて。前述のようにハルの心や気持ち、内面的なものがまるで見えてなかっただけに、この視点切り替えはかなり微妙でした。

妄想に始まり妄想に終わる、一瞬夢オチか、夢オチなのか!? と思わせる辺りは委員長らしいと思いましたけど、私としてはいっそ夢オチのままでも良かったのではと思う。いや、別に委員長の恋物語を全否定したいわけじゃなくて、コメディタッチに進んできただけに、そういうありがちなオチ付けも面白いんじゃないかなーと。FDのショートストーリーだしね。
長く書いてきましたけど、委員長シナリオはとりあえずここまで。書きたいことをダラダラと書いたのでまとまりは良くありませんが、近日中にHPのほうで新たにヨスガノソラ、ハルカナソラのコンテンツページを作ろうと思うので、そこでもなにかしら書くと思います。
それと、委員長については穹シナリオの際にも色々書かせて貰います。むしろ、私としてはこっちのほうがメインになるのかな。委員長シナリオの委員長は決して嫌いじゃないんだけど、私の感性や好みからすると……二人の委員長、この対比は結構見物でした。多分、委員長シナリオにおける委員長は、ハルと長続きしないと思うんですよ。上記の穹じゃないけど、きっと別れる。ヨスガノソラの穹ルート、前述した祭のイベントがありますけど、あの時の会話からも分かるように、ハルと委員長の間には価値観の相違があると思うんですよ。感性の違いとでもいいますか、委員長はハルが捨てたもの、逃げてきたものに対して強い憧れとこだわりを持っていて、逆にハルは委員長がどうでもいいと思っているようなものに愛着がある。初恋の熱が冷めれば、その辺りから亀裂が生じるんじゃないかな。求めてるものと、望んでいるものに差があり過ぎるから。

委員長シナリオだけで随分と書いてしまったので、やひろシナリオをどうするか考えています。ぶっちゃけ書くことがないというか、あんまりシナリオとして面白味を感じなかったので、はてさてどうしたものかと。基本的に年上属性ないし、それ以外にも色々と不満があったというか、うーん、微妙だ。
あ、AKIBAゲームフェアについてですけど無事に行ってきましたよ。こざっぱりとしたイベントで、クリアファイルもタペストリーも無事ゲットできました。というか、30分もかからず終わったね。ああいう疲れないイベントは好きです。帰ったらすぐにハルカナソラの続きもしたし、幸せな休日送っています。さて、最後が長くなるのもあれなのでとりあえずまた明日。
買ってきたぜハルカナソラ
行ってきたぜ秋葉原はアソビットその他多くの店舗!!
そして最後に寄ったよ、帰宅途中のソフマップギガストア横浜店!!! 初回限定版が大量じゃあ!!!!
もう最高に気分良すぎるというか、今日の時点で心に抱えていた物が全部吹き飛んだ。幸福の絶頂とはまさにこのことか。

プレイ日記というか、レビュー的なものは明日からの日記で集中的に書きます。やはり、シナリオ順に書くべきですかね。委員長シナリオ&やひろシナリオを明日にでも書いて、明後日の日曜日に穹シナリオについて書きます。書きまくります。
というわけで、明後日の夜ぐらいまで音信不通になります。用がある人間は緊急回線か秘匿回線を使ってください。まあ、悲恋堂の店主は例外としても、限りなく反応速度は遅くなるのであしからず。
仕事の昼休みを利用して秋葉原に赴き、近場のアソビットから攻略したんですが、閉店という割には普通に営業してました。しかも、意外なことにかなり空いてて。それこそ並ばずにレジを済ませることが出来たから、いささか拍子抜け。アソビットだけで40分ぐらいは覚悟してたのに、他に大きなタイトルがなかったからなんですかね? それとも、予約の引き替えにそこまで焦る人間がいなかった、もしくはほとんどの人間が通販で買った……うーん、他の店舗もそれほど混んでいるって印象は受けなかったし、そもそも当日分の販売が皆無だったからなぁ。夏ノ雨すら見当たらなかったというのは少し意外だったけど、それ以前にハルカナソラの通常版というの確認出来なかった。なんでも、げっちゅ屋にはあったらしいけど、げっちゅ屋は行かなかったからなぁ。ゲマ屋では夜になって在庫をどこからか引っ張り出してきたらしい。難民が発生したかは判らないけど、秋葉でも新品はほぼ全滅したそうだ。
帰りに寄った横浜も同じで、私はソフマップで予約してたから分を引き取るだけだったし、ここも物凄い空いていたからあっという間に済みました。店内を見渡すも、やはり初回版、通常版の当日分はなし。夏ノ雨も見当たらない。夏ノ雨は出荷数が絞られたのかは判りませんが、結構売れてるってことなんでしょうか。
メロンブックスに移動して、ここは前回のヨスガノソラで惨敗しているから、入荷数がそもそも極少だったみたい。予約もすぐに締めきったし、まあ、ヨスガのときは書き下ろしテレカが奈緒だったもんねぇ。残念ながら、あれでは売れないというかなんというか。POP作ったりして穹を推そうとしてたけど、ヨスガはほら中古で多く出回ったから。
ゲマ屋横浜店やとらのあな、アニメイトも壊滅状態らしく、行かなかったけどヨドバシも恐らく無かったんでしょうね。横浜でも全滅というのは、別段不思議じゃない。ちょっと人気過ぎやしないかという懸念的なものはあるけどさ。

しかし、私も考えが浅いというか、オフィシャル通販以外は全部店舗購入にしてしまったから、初回版が入った大袋を沢山抱えて帰る羽目に。スタッフブログで見たとは言え、実物は想像以上に大きかった。そして持ち運びが困難だった。でも、それが全く苦にならない。むしろ、これぐらい持てなくてどうするんだ! という気分になる。家に帰ると、クロネコヤマトが予定時間より早く荷物を届けていたようで、身内が受け取ったみたいです。まあ、誰が受け取ろうと構わないんですが、オフィ通の段ボールもこれまた大きい。
早速開けて特典であるタペストリーを確認したんですが……まあ、A3なんてこんなもんだろうし、大きさについては分かり切っていたことではあるんだけど、色味がなぁ。なんか、色の出具合が予想よりも鈍かったというか、元が暗がりのシーンのCGだから仕方ないのかな。まあ、クッキーのシーンはアソテレカに使っちゃったし、でも、パソコンのシーンとか、それこそ保健室のシーンでも良かったのではないかな? とも思う。
でもまあ、その内飾るけど。飾れるスペースと環境が整い次第、すぐに飾るけど。
パソコン内を軽く掃除して、十分に容量を空けたらインストール開始。インストール画面は普通というか、無骨な感じですね。専用画面を作ってないところは、ヨスガも同じだったんだっけ? 風呂で汗を流している間にインストールも終了し、早速プレイを始めました。

明日はAKIBAゲームフェアに参加予定なんですけど、日記の内容は少し変動します。一応、ゲームフェアの感想も書くけど、プレイ日記と分けて書くかは考え中。ブログじゃないから、一日に何度も記事としてアップするって言うのがどうにもしっくり来なくて。
ちなみにコンプエースのコミカライズについては月曜の日記に書きます。これは別に後回しにしても構わないというか、早急に書く内容でもないからね。
じゃあ、ハルカナソラひきこもりしてきます。
私は気がつかない人間だから、気がつくことを期待されてもこまる。たりないものや、不満があったらはっきり口にすること

ダゴンの英雄、ユースフ・トパロウル元帥の言葉ですが、私も実はこれと似た感じというか、同じような心境を抱いたことがあります。私はどうしたって人の心を理解するのが苦手で、気が利かないし、なにかをやろうとしては空回りしている自分本意なやつです。
だからこそ、私は上記のような言葉を、特に重要な間柄の人には予め伝えてあります。悲恋堂に言わせるとそれは修正や直すことに対する責任放棄になるそうだけど、こうでもしないと円滑な人付き合いというのは難しいのですよ。察すること、読み取ること、汲んでやること、出来ないわけじゃないけど、私の貧弱で貧相な思考回路はそこに至るまでの道のりが結構長いわけで。ならば予め、目的地がどこなのか教えて貰いたいところです。でないと、取り返しの付かないことになる。
相手が自分になにを望んでいるのか、どんなことを期待しているのか、私はそういった気持ちに鈍感で、自分に向けられた感情や想いに気付かないことが多い。だから、私の対人関係は常に慎重で、情けないほどあれこれ考えていたりします。考えたところで答えは出ないし、なにも判らないのにね。身内に言わせればそれは私が馬鹿だからで、悲恋堂曰くそれは君の怠慢だ。どちらも正しいし、事実の一側面をカットしていると思う。
公人としての自分と、私人としての自分、私にとってそれらは明確に分けられているはずなんだけど、ある一定の分野においては公人、私人、どちらで行い、接するべきなのか判らないときがある。私は今も昔も私人としての立場を崩していないけど、それが正しき姿なのかどうか、最近判らなくなってきた。公人として望む理由が私にはなくて、私人としての感性や感情をひた走らせているわけだけど、果たしてこのままで良いのだろうか。
公人としての関係性よりも、私人としての付き合いを優先してきただけに、少なからず複雑な感じがします。この場合、互いが追い求めているものに差違があるわけで、これまで同一ではないにしろズレの少なかった感覚に違いが生じたとき、私はどうすればいいのか。それとも上手くいっていたというのは私の錯覚で、実のところはそうでもなかったというオチなのだろうか。私には良く分からない。

なんだってこんな話を書いているのかというと、色々あったんです。この一言ではなんの説明にもなってないけど、色々と思うところがあった。私は公私を混同していたのだろうか? いや、そもそも公的なものだとは思っていなかった私の認識こそが甘くて、私人としての感情は捨て去るべきなのか……なんか違う気がするけど、それも複数ある考え方の一つなのでしょう。私がその流れに合わせるのも、必然なのかも知れない。
まあ、それほど深く考える必要はないのかもね。私は今までもなにか大それたことをしてきたわけじゃないし、これからもするつもりはない。私人として楽しむべきところを楽しみ、やりたいことをやる。その考えが正しいかどうかは個々によって分かれるだろうけど、私は本来こうあるべきだ思っていることを、単に実行しているに過ぎない。あるいは、私の感性が古すぎるだけなのかもね。そういった時代を生きてきた人たちが、私の身近には多すぎる。感化されたに過ぎないにせよ、ね。
どうにも近頃は複数人に対する関係の見直しを図る時期なのかも知れない。そのもっともたるは身内ですけど、他にも幾人かね。対人関係ほど後回しにしたい問題はないけど、そうも言ってられないみたいなので。ただでさえ、同人関連で忙しくなりつつある昨今、面倒ごとはあまり抱え込みたくないんですけどね。深刻化する前に済ませておきたいこともあるのよ。

私には私のやるべきことがあって、公私どちらで望むにせよ、それを果たさなくてはいけない。けれど、ヒビの入った精神と、折れ砕けそうな心には限界がある。なんで今更私がそんな悩みに直面しなければいけないんだと思わなくはないけど、これも定めと諦めよう。生きていれば、こんなことだってあるのさ。それが嫌なら世捨て人にでもなるか、外界との関わりを断ってひきこもるしかない。そして、私はそんなことはごめんだ。
なんてこと言いながら、私は明日からひきこもるんですけどね。というか、この日記書いてる時点で既にひきこもってます。用事がある人間は、明日の日記にも書いていると思うけど、緊急用の回線等を使ってください。ただ、仕事がともかくとして、基本的に同人関連以外の反応は遅くなるから。何故なら同人関連に関しては、丁度公私の中間に置いているので。個人でやる分にはとことん私人として挑むけど、他者と協力する場合は私人でばかりもいられない。同人に関してはそういうスタンスというか、立ち位置で望んでいます。何故かって言うと、同人はそれに対する人それぞれの考え方、というのが明確に出てくるものなんですよ。例が安直すぎるけど、コミパでもあったでしょ、そういうの。私のように趣味や遊びとして捉える人、勉強・修行の一種と考える人、もしくは商業的意識から創作を行う人。どれが正しいとか、どれが間違っているとか、そういうのはないんですよ。私はどれも尊重しますし、個人個人の同人活動ってのものがあるのだから。
私はそれに合わせるだけです。我を押し通すってのは、この場合もっともしてはいけないことだと思っているので。上記の問題も、これぐらいハッキリ出来れば良かったんだけどなぁ……いやはやなんともはや、上手く行かないものです。

貴方は傲慢なんじゃなくて、高慢なんだ、か……
結局のところ、SWは連休というほど連休を味わった気がしませんでした。まあ、5日間の内、3日間も出かけていたんだから当然か。残り2日間をまもとな休みと考えても、毎週末と大して変わらないわけだし、そう考えると長かった、という気は全くしないよね。
武道館公演をどっちか蹴り飛ばしていればよかったんだろうけど、チケット買ったときはほとんどノリと勢いだったからなぁ。こういう結果や結末が待っているとは思わなかった。

そういえば、先日私の部屋で虫が発生した話は書いたと思うんですけど、その際、久方ぶりに身内と会話らしきものをしました。かれこれ一ヶ月以上は交流や会話を断っていたんですが、緊急時とはいえ迂闊でしたね。けれど、ろくに話してなかったもんだから凄い新鮮な気分だった。あぁ、あいつってこんな感の奴だったなと再認識。感情の揺れ幅とか、作りこまれたキャラとか、話していないだけで同じ屋根の下にいるというのに懐かしさすら覚えた。まあ、だからといってそれ以降の会話はないんですけどね。休みで気が緩んでいたのか不覚を取りました。
なにも休みの最後の日まで掃除をすることもないだろうと、今日はのんびり過ごしていたんですけど、気がついたら原稿に手を伸ばしていた。更新した逆襲もそうだし、色々ため込んでますからね。ハルカナソラひきこもりになる前に、ある程度は進めておく必要があるわけで。休日も平日も結局仕事以外は原稿を書いているというか、そらいろを買えなかったのでやるエロゲがない。だったら積みっぱなしのハニカミやれよということになるんだけど、はにかみの存在なんてこの日記書いてる最中に思い出したぐらいですからね。すっかり忘れてたよ、ほんと。
今月は思っていた以上に金がないというか、8月も9月も休みが多くて困ります。まあ、給料が毎月もらえるだけでもありがたい身分ではあるんですけど、こう休みが多いと嫌になってしまう。別に休みが好きじゃないわけじゃないけど、仕事が嫌いってわけでもないから、その辺りは複雑。休みの結果仕事が後回しにされて、休み明けが大変になって仕事に嫌気がさすんだから、やっぱり休みが良くないんだよ。きっとそうだ。

まあ、休みが明ければすぐに週末、ハルカナソラを抱きしめながらひきこもり生活にはいるんですけど、イベントが土日に予定されているから、こもってばかりもいられないかも。サンクリに関しては行く気がないというか、どうせ煉瓦が出すであろうラブプラス本なんて逆立ちしたって買えないし、RRRもコピー本だから行くだけの価値が見いだせない。他のサークルも、これといってなぁ。同じコミケ明けでも2月のサンクリが盛況なのと違い、秋のサンクリはパッとしないですね。理由としては色々あるんだろうけど、たとえば冬コミで落とした本をサンクリで出すとか……ほら、夏コミと違って冬コミって準備期間短いからさ。うん、大変見たいだよ同人サークルって。
私も保険として2月のサンクリ申し込もうかな。コミケとCOMIC1だけに参加し続けるのも、それはそれでどうかと思うし。なんて、そこまで同人活動に熱を上げてるわけでもないのに失礼な話ですね。そもそも、サンクリの倍率を考えれば保険として申し込むにも保険がいる状態でしょう。でも、ハルカナソラで申し込むのも面白そうだな。
サンクリに行くかどうかはともかく、前日に秋葉原で行われるAKIBAゲームフェアには行くと思います。ドリパへの参戦を決めかねている最中なんですが、新しいイベントということで興味がありまして。仮にドリパ行くとしたら、今から例のものを作らないと間に合わないな。ちょっと区役所、いや、市役所にでも行ってくるか……ただ、今のところSphereが参戦するという話は聞かないしなぁ。いや、TOYPLAがなにか出す可能性もあるんだけどさ。AKIBAゲームフェアの特徴は、会場の小さいところもさることながら、開催時間が12時からとかなり遅いところ。徹夜対策なのかは知らないけど、始発並びだとしても12時まで待機はしてられないよね。まあ、私は慣れてるからともかく、列形勢は2時間前の10時から見たい。まあ、まず守られることなんてないだろうけど、2~3時間ならそれほど苦でもないかな。本が2冊あればあっという間だ。
出展企業的に、そこまで混むことはないと思うんだけど、私の目当ては250枚しかないからね。特に買いたいものがあるわけでもなく、交通費も入場料も掛からないから参加出来るといったところです。手に入らなかったとしても、朝とお昼を無駄にするぐらいだから、それほど悪い話はない……と思う。ハルカナソラひきこもりだから、外に出ないかもだけど。

東京ゲームショーにも行かないでなにをやってるんだって感じですけど、基本的にイベント好きなんだなーって思う。TGSはここ最近行ってないけど、昔は東京キャラクターショーとか大好きだったもの。始まりから終わりまで全部参加したし、あのころが一番輝いていた気がする。アニメや漫画というものが。哀愁なんですかねぇ、こういうのも。
部屋の掃除をしています。貴重な休みになにをしているんだとか、原稿をやりたくないから別をのことを始めた、テスト勉強中の学生みたいな行動か、と思われそうですけど、結構切実な理由があります。
実は、昨晩の話になるんですけど……出たんですよ、が。およそ5年ぶり、私の部屋どころか家の中でもまるで発生していなかったので安心しきっていたのですが、どこから侵入したのか唐突に我が部屋の畳の上を這いずり回っていまして。いやー、絶叫。発狂。叫喚。私、奴だけはダメなのよ。いやまあ、虫さんは全般大嫌いなんだけど。

職場にスズメバチがやってきたときは、それなりに冷静な対応と対処が出来たんですが、奴の場合はどうにもダメだね。数年来発生しないもんだから、殺虫剤の類があるわけもなく、大捕物でした。私は掃除機で吸ってしまえと言ったんですけど、新品のタイフーンをそんなことに使用したくないという反対に遭い……結局とりもち方式で捕獲、その後叩き潰すという作戦に。オタの部屋に奴が発生すると色々と面倒というか、仕留め損なって本棚の裏に入られたりしたときとか、もう洒落になりませんね。外壁工事の関係で近隣の各家庭が片付けを初めて、その影響で虫が湧いているらしいです。要するに、汚いのは我が家じゃなくて余所様ってことね。迷惑な話です。
そんなこんなで、急遽部屋の掃除をすることにしまして。まあ、8割方発生ではなく侵入だと思うというか信じているんですけど、奴は1匹目撃したら100匹いると思え、なんていいますからね。現に掃除をしている最中にも小さいのが1匹……あぁ、恐ろしい!
私の部屋は汚いと家な汚いけど、足の踏み場くらいはあります。元々、押し入れというものが存在しないから、部屋の一角が自然と物置になるんですよね。今日は中でも、乱雑に積まれている、もしくは刺さっているポスター類の整理をしました。以前にも書いたと思うけど、百数本ないし数百本のポスターを私は持ってて、これをいい加減整理しようかなと。本当に必要なもの以外は捨てるべきだという助言も頂きましたし。

けど、ポスターの整理を初めて見ると色々歴史や年代を感じるというか、どうして私は同じエロゲのポスターを3枚も4枚も持っているんだろうか。数百本とか言いつつ、大半は重複なんじゃないかとか思いながら、古い声優のポスターとか、状態が悪いのを中心にゴミ袋行きに。サイン入りとか、特に思い入れがあるものだけは残してみたけど、それでも堀江由衣とか野川さくらとかをほいほい捨ててるから、私の心境も大分変化したようだ。中にはどうして自分がこれを持っているのかサッパリ判らないポスターとか、後になって名作とか傑作と呼ばれるようになったエロゲのとか、人によってはお宝になりそうなものが出るわ出るわ。捨てたけど。
さすがにポスターなんて売れるもんじゃないし、状態や保管状況が良いともいえないしね。処女作エロゲのポスターとか言いつつ、結局その作品が出ないまま消えてしまったブランドとか、逆に処女作が出ないままに違う作品ばっかりでているブランドとか、そういうところのポスターとかもあったりして結構面白い。捨てたけど。
必要なものだけを一纏めにして、ロケットランチャーの方針よりも太い一本の筒にして、考えてみれば私ってポスターを貼らない人間なんだよね。他の人はどうだか知らないけど、部屋の飾りとしてポスターを貼ることが全くない。今あるのって、カレンダーとくろのさんに貰った色紙(額入り)ぐらいだから、そう考えると壁面は質素……でもないか。穹関係のものが最近進出してるから。電撃姫のシーツとか、2~3枚買う予定ではあるけど普通にシーツとして使う以外は、どんな利用方法があるのやら。今から楽しみでしょうがない。

片付けが終わったら、模様替えをしつつ、ヨスガノソラとハルカナソラ関係のグッズで埋め尽くしていこうかな。なんとかしてあれを手に入れる、ことが出来るかはともかく、部屋が変われば生活も変わると言いますし、自分を変えていこうと思います。少なくとも、虫っころの一匹にビビることなどないように。
穹には魔力があるというか、穹の痛車とか見てると羨ましくなるというか……重傷だね私も。あれ欲しいというか、あれ乗りたいよね。でも、あれは眺める分にはニヤニヤできるけど、内装が穹というわけじゃないし、それほど面白味はないのかな。ハルカナソラが発売されたらどうなってしまうのか、とりあえず公式タペストリーを飾る場所を考えないと。お風呂ポスターはともかくとして。
ヨスガは今後のメディア展開もあるんでしょうけど、しばらくは戦えるだけの作品になっていると思います。というか、倫理観とか云々をヨスガで済ませているから、それさえ終わってしまえば後はいくらでも続けられるといいますか。ハルカナソラの仕上がりは気になるけど、次も期待させる、次に繋がるような作品だと嬉しいですね。
あぁ、ヨスガノソラ原稿もやらないとな。ところで、ゴミ出しが終わった後に更にポスターの山が出てきたんだけど、私は一体何本持っているんだ。
今日はカラオケをしに池袋まで行っていました。年に数回ほどパセラで開かれる、オフ会みたいなものです。まあ、私は音痴なのでカラオケが得意というわけではないんですけど、ああいうのは楽しんだ物勝ちだと思います。さすが、SWの真っ直中ということもあってかパセラもかなり混んでおり、予約していたとはいえ受付に時間が掛かりました。
みんなもっと、旅行とか行けばいいのに……と友人が行ってましたけど、私も結局行楽地とかには行かなかったな。

久々にオール面と思いきや、2名ほど不参加だったので集まったのは5人ぐらい。だけど、部屋自体は7人で予約してあったから、結構広々と過ごすことが出来ました。しかも、普段はアニメとかばっかり流れているパセラのテレビ画面も、今日に限っては川のせせらぎとか、公共放送でやってる世界の風景みたいな映像。マッタリしますね。
私は最近のアニメを全然知らないから、今期のアニメソングとかは全くダメでした。エクリップスに挑戦してみたけど、あれメチャクチャ難しいね。3人曲はDUPを歌いまくっていた時期があるけど、エクリップスは速すぎる。だれか、ルージュとバイオレットやってくれないかな。私、シトロンのパートやるから。
堀江由衣とか野川さくらとか、少し戻ってマリ姉とか往年の声優ソングを歌いつつ、アニメで少し戻って夢使いなんかをセレクト。一番意外な人が夢使いを憶えていて、私はちょっとビックリしました。しかし、川澄綾子が父親に恋して世捨て人になるアニメって、まあ、正しいといえば正しいんだけど……近親云々はともかく、世捨て人は知り合いにもいるのでなかなか共感が持てます。あれで、川澄キャラぐらいに可愛げがあればいいんだけどな。
話ずれましたけど、昨今は歌って踊る若手のアイドル声優も少なくなってきたから、どうしても声優ソングだと偏りが出ますね。スフィアはともかくとして、最近の若手は歌ではなく演技で攻めてきてますから。キタエリとか、花澤とか。え? 前者はCD出したし、後者はアイマスに入ったじゃないかって? まあ、そうなんだけどね。なかなかね、そういうのって上手くいかないように出来てるんだよ。残念な話になるけれど。

毎回、7時間ほどカラオケしてるんですけど、今回は特に料理を注文しなかったな。いつもは長い時間の中で、なにかしら注文してしまうんだけど、パセラのメニューはどれも高いからね。ハニートーストも、なんか今ある種類はどれも微妙なものばかりで。一度、フレンチメープルトーストを食べてみたいんだけど、あれは美味しいのだろうか。美味しそうだし、なくなる前に食べてみようかな。作ろうと思えば家で作れなくもないんだけど、食パンを半斤も使用するのは庶民感覚的にない……面倒だからワッフルでも焼こうかな。
まあ、次行くときは私の誕生日時期だろうし、そうなればハニトーのバースデーサービスがあるんだけどね。ただ、あれは味が選べないからな。店舗によって違いはあるみたいだけど、うっかり苦手なバナナ系とかだったらどうしよう。
なにを食べるわけでもなくひたすら歌ってましたが、混んでいたせいか混線が発生して、某特撮ソングを入れたと思ったらボーカロイドの曲が流れてきたりと、ちょっとした珍事も多発。まあ、その曲歌えたから歌ったけどね。
後は、丁度デジモンが10周年だったのね、主題歌とか挿入歌とか、AiMの曲なども結構入れました。これが少々面倒くさいというか、AiM前田愛で分かれて登録されている曲があるから、同じデジモンソングでもどっちで探せばいいのか迷う場合が。とはいえ、名義の問題だから統一するのも難しいんだろうけど……あ、いつもいつでも歌うの忘れてた。

前日、前々日の武道館を会わせると、3日も外に出掛けています。珍しいというか、5日間も休みがあってどうするんだと思ってましたけど、意外に満喫している自分がいる。まあ、武道館に関しては必ずしも満足できる出来ではなかったけど……だけど、気を紛らわせる意味でも出掛けた方がよかったんですよ。
なにせ、休みに突入すると同時にハルカナソラのフラゲ報告が……いくらなんでも早すぎだろ! SWの関係で流通が先回しになったのか、一週間以上早く買えるという事態になったみたいです。私としてはフラゲできる環境にあるわけでもないので、ひたすらネタバレ回避の方向でヨスガノソラスレにも行けません。今週末はAKIBAゲームフェアとサンクリがあるわけだけど、どちらか捨ててでもハルカナソラプレイしてようかな。特にサンクリは商業作家たちが軒並み倒れたのか、これといったサークルが参加せず。パッとしないと言えばそれまでなんですけど、私がいつも行っているサークルはあんまり来ないという。煉瓦は東方ジャンルのホールに回されたから、行きたくても行けないんだよなぁ。それにサンクリだと、大抵おかしな出し物を出してくるから、ゲットするのがかなり面倒くさい。

ネタバレの嵐に耐えながら、とりあえず原稿を書き進めることにします。ハルカナソラまでにある程度終わらせておかないと、音信不通になる可能性があるので。あー、冬コミで出すヨスガ本の表紙考えないとな。さしあたって必要なのは、身内より下でない技術力か……これがなかなか、ビックリするほど難しいことで、こういう場合の人脈が薄いことを思い知らされるね。どうしたもんか。
2日間の武道館公演を観てきて、2日間を見事に無駄にしたなぁと思っている今日この頃です。堀江由衣のファンを続けてかれこれ10年以上、既に惰性というレベルすら通り越していますが、特に乗り換える相手もいないからズルズルとここまで来ています。元々、マリ姉からの乗り換えですからね、もう型式が古いというか、このタイプのアイドル声優はウケない時代になっているので後継は多分でないと思う。

武道館に行くのも久しぶり、というのは昨日の日記にも書きましたが、実は中にはいるのは10年ぶりぐらいになるんじゃないだろうか。まりまゆ以来、これが通じる人は今日から私と知り合いになれます。友達じゃないのかって? 私の友達ハードル高いですから。いや、割と低いかも。その場にいる人間と、いつの間にか仲良くなっていることがイベント会場では多いから。でも、それは別に友達じゃないよな……
ともあれ、1日目はアリーナ席で、2日目はスタンド席。どちらが良かったと言えば、どっちもどっちだったと応えるしかありませんが、見やすさで言えばスタンドですかね。アリーナは、そりゃ距離は近いですし、触れられる距離に堀江由衣ってのもなかなかおつなものですけど、なんていうか疲れる。ほんと疲れる。あんなステージ中央最前列近い場所、私には勿体なかったかも。変なところで運が発揮されるというか、そこまで劣悪な席ってあまり経験がないな。
館内は飲食も可能ということで、家から持参した飲み物を片手にマッタリ過ごす。開演まで1時間もあると、暇ですね。先週の真綾のときもそうでしたけど、こういうときは読書に限ります。まあ、先週と違って明らかにファンの質が違うというか、声オタだなぁって感じの集まりだったんですけど、これが本来普通なんだよね。普通、なんだよね? 私も堀江由衣以外のライブ行かなくなって久しいから、ゆかりとか奈々がどんな感じなのかサッパリなんですけど、ゆかりはまだファン層被ってるんですかね。やまとなでしこも今では5年以上前の話ですし、新しいファン、知らない世代が育つには十分すぎるほどだし……ゆかりのアリーナ公演は来年の1月でしたか。安席で良いから参加したいですね。アリーナは近場だからほんと助かります。

ライブの感想としては、いつも通りというか、ライブ再開後からずっと続いている演劇方式です。ファンシーというかメルヘンな演劇風コントを演じながら、ついでに歌も歌っているといいますか。毎回、城のようなセットを作っては珍妙な劇を流しています。2ndライブまではごく平凡な内容だったんですけどね……あのとき、公演数を無理に増やしたせいかライブをやりたくなくなったようで。再開までは結構な月日、アルバムにして2枚分という年月を要します。再開後がずっとこの形態、演劇仕立てなのを考えると、多分この方が性にあってるというか、やりやすいんでしょうね。あくまで歌手じゃない、声優ですから。ライブそのものも声優の仕事して捉え、演技の一環として望んでいるのかも知れません。
まあ、参加する側としては毎回、すべての公演が演劇仕立てではいい加減飽きるというか、演劇というにもショボイし、ライブと言うにもおこがましい内容には不満があるんですけど……基本、芝居や劇が大好きな人間だから、なんか満足できないんですよ。どっちにもなりきれていない今のふざけた感じが、どうにも好きになれない。
とまあ、批判的論調で始めてますけど、面白くなかったかと言われれば面白かったですけどね。2日間同じ内容だったわけですけど、微妙に差異を付けることで差別化を図りましたし、オチも違いました。ただ、その際の付け方が1日目に参加していない理解できないものだったから、そこら辺は脚本家、舞台作家ですか? 少々、詰めが甘いと思いました。まあ、諏訪さんだとこんなもんか。

曲目に関してはどうでも良いというか、もっと詳しいところがセットリストなりを書いていると思うのでそこを見てください。手堅いというか、無難な感じでしたね。ラス曲はもう定番というか、7年は前のキャラソンをよくもまあ引っ張るなぁって感じなんですけど、一応は堀江由衣の曲らしい。元々はなるの曲だということを、果たして何人が憶えているのか。
Love Destinyもすっかり定番化したというか、Aice5とかいう連中のせいでALL MY LOVEが歌えなくなったのが辛い。堀江由衣のアルバムの内、楽園が冷遇されてるという話がよく上がりますが、私はskyのほうが酷いんじゃないかと思う。まあ、楽園よりは存在感あると思うけどさ。

武道館という一種の頂点に立ったからには、しばらくライブやコンサートもないと思います。国技館はともかく、アリーナはAice5のときに立ってますし、スパアリを埋められる人でもありません。となれば、少なくとも当面は気にしなくて良いのかな。
8000人程度は埋められるようですが、年齢的にも33歳、この先どうなるかは判りません。私としては、17歳ネタを引っ張りすぎていることにも色々思うところがあるというか、あの人はなにか勘違いをしているんじゃないだろうか。スタチャもだけど。
なんていうか、そう、面白いんだけど楽しむことは出来なかった。飽きが来すぎているんですかね。新鮮味も薄れ、面白いものを楽しく感じることが出来ないでいる。小ネタに笑う程度にしか出来ない自分が微妙です。多分、会場で2番目ぐらいに冷めた客だったんじゃないかと。
ライブとかあってないのかなぁ、今の私には。少しだけ悩みます。

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